第 73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会宮城大会 抄録集 主催 公益社団法人全日本鍼灸学会 後援 文部科学省 厚生労働省 宮城県 仙台市 公益社団法人 日本医師会 公益社団法人 宮城県医師会 一般社団法人 仙台市医師会 公益財団法人 東洋療法研修試験財団 公益社団法人 日本鍼灸師会 公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会 公益社団法人 東洋療法学校協会 公益社団法人 全国病院理学療法協会 一般社団法人 日本東洋医学会 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会 一般社団法人 日本生理学会 日本自律神経学会 全国盲学校長会 鍼灸学系大学協議会 日本理療科教員連盟 日本伝統鍼灸学会 日本良導絡自律神経学会 一般社団法人 日本災害医学会 一般社団法人 日本在宅医療連合学会 一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会 東北地区盲学校長会 一般社団法人 宮城県鍼灸マッサージ師会 公益社団法人 宮城県鍼灸師会 河北新報社 もくじ 挨拶 (公社)全日本鍼灸学会会長 若山育郎 1 第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会大会会頭 高山真 2 第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会実行委員長 三瓶真一 3 第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会宮城大会の概要 4 第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会宮城大会の参加・アーカイブ配信について 5 第73回学術大会(宮城大会)の認定受付について 10 会場アクセス図 11 会場案内図 12 宮城・仙台見どころ市場 14 健幸ウォーキングマップ 16 大会日程表 17 大会プログラム 21 特別演題抄録 47 会頭講演 「鍼灸でつながる診療、教育、研究」 48 副会頭講演 「家庭鍼灸医療学と鍼灸院経営」 49 基調講演 「東北の意味と意義」 50 特別講演1 「東日本大震災時の多組織・多職種連携に基づく災害保健医療活動」51 特別講演2 「性差医療」 52 特別講演3 「慢性疼痛診療ガイドライン −最新研究を踏まえた痛み治療の up to date−」 53 教育講演1 「不妊鍼灸の特別演題入りとこれから」54 教育講演2 「理学療法士から見た鍼灸の役割」55 教育講演3 「若い世代の学生をどう理解し、どう付き合うか」56 教育講演4 「認知心理学の観点から考える学習者支援」57 教育講演5 「多職種にも伝わるカルテの書き方」 58 教育講演6 「医療機器である鍼灸針について」59 教育講演7 「総合診療・膠原病リウマチ領域での鍼灸治療の可能性」60 教育講演8 「鍼灸師が知っておくべき漢方診療と漢方薬」61 教育講演9 「鍼灸師が知っておくとよいエコーの診方」62 日韓シンポジウム 「The Western and Korean Medicine Collaborative Treatment Approaches at the Korea National Rehabilitation Center: A Comprehensive Overview and Future Directions」 64 「Integrative Approach to ERAS-K: Enhanced Recovery after Surgery Program for Spine-KHUHGD」65 「Acupuncture Education in Medical School of Japan and Tohoku University Hospital Coordination with the Regional Acupuncture Clinic」66 「Clinical Acupuncture in University Hospital of Japan and Clinical Studies of Acupuncture in Graduate School of Medicine.」67 シンポジウム1「他職種連携企画「生殖医療における鍼灸の役割(難治性不妊の治療の現状と未来)」 「生殖医療の現状と課題、鍼灸によせる期待」68 「不妊カウンセリングの経験と鍼灸への展望」69 「当院におけるチーム医療について」70 シンポジウム2 「診療ガイドラインにおける鍼灸の現状と今後の展望〜専門医学会との連携と専門鍼灸師の育成に向けて〜」 「昨今の診療ガイドライン事情」71 「頭痛の診療ガイドライン改訂から考える多職種連携に向けた未来」72 「顔面神経麻痺診療ガイドラインにおける鍼治療の課題と展望」73 「機能性消化管疾患診療ガイドライン−過敏性腸症候群における鍼灸−」74 「過活動膀胱診療ガイドラインにおける鍼治療の現状とエビデンス」75 シンポジウム3 「スポーツ委員会報告」 「若手アスレティックトレーナー・鍼灸師の現状と問題点〜臨床・研究の狭間で〜」」76 シンポジウム4 「他職種連携企画「地域医療(在宅医療)」 「仙台市の在宅重度障害者を支える連携の仕組み」78 「福島県奥会津地域における在宅医療と鍼灸」79 「長野県伊那市営長谷鍼灸治療所の紹介と多職種連携」80 「地域診療における漢方治療の役割」81 シンポジウム5 「経穴委員会主催「教育・臨床・研究の視点からの経穴詳解−三陰交・合谷・百会について−」」 「教育の視点から−鍼灸師教育における経穴の位置づけと課題」82 「教育・臨床・研究の視点からの経穴詳解−三陰交・合谷・百会- 臨床家はどうやってツボを取っているのか」83 「三陰交、合谷、百会を研究の視点から検討する 臨床試験での対象疾患と刺激方法の現状」84 シンポジウム6 「教育研修部主催「東洋医学教育の多様性−古典教育と電子教材、授業展開と取り組み−」 「古典教育と電子教材について正しい伝統医学教育は可能か」85 「東洋療法学校協会電子教材(経穴)の運用」86 「古典医学を楽しんでもらうために 日常のどこにでもある東洋医学と経絡経穴」87 シンポジウム7 「災害と鍼灸:災害鍼灸への期待、現状、課題」 「災害と伝統医学(漢方、鍼灸)歴史と経験から考える課題」88 「東日本大震災の支援と業団体としてのその後の取り組み」89 「長期的な災害支援から広がる鍼灸の可能性」90 「災害鍼灸の課題 JLCDAMによる災害支援窓口一本化の取り組み」91 「被災地で求められるノンテクニカルスキルとテクニカルスキル」92 パネルディスカッション1 「ここぞ鍼灸の出番〜ダブルライセンス鍼灸師(鍼灸師×医師、理学療法士、 看護師、薬剤師)の視点から〜」の視点から−」 「ここぞ鍼灸の出番−ダブルライセンス鍼灸師」93 「医はき師てらぽんとしての活動」94 「鍼灸がもっと身近になるために鍼灸師になった看護師が思うこと」95 「ここぞ鍼灸の出番ダブルライセンス鍼灸師×薬剤師の視点から 漢方薬との併用、または鍼灸優先のポイント」96 パネルディスカッション2「医師・鍼灸師連携について今後の医療を見据えて」 「鍼灸と精神医療の相互連携 APネットワークの取り組み」97 「熊本赤十字病院での取り組みと病棟内鍼灸師の確立について」98 「鍼灸の臨床研究における医師と鍼灸師の連携:その意義と課題」99 パネルディスカッション3「未来を変える「評価」の取り方 〜学会発表にあと一歩が踏み出せないあなたへ〜」 「泌尿器科症状に特化した鍼灸院における患者評価の実際」100 「鍼灸の臨床研究における評価指標の活用について 腰痛治療における実例を切り口として」101 「治療成果(アウトカム)の評価アウトカムの性質に着目して」102 教育セミナー「集まれ鍼灸研究者!観察研究の統計解析ハンズオンセミナー フリーソフトEZRを使ってみよう」103 ワークショップ1「安全性委員会ワークショップ(臨床情報部主催) 「有害事象文献レビューと鍼灸安全対策マニュアルの紹介」」 「有害事象文献レビューおよび鍼灸安全対策マニュアルの紹介」104 ワークショップ2「医療従事者向け鍼灸体験」 105 実技セミナー1「バランステストの診察法と治療法〜診断法の紐解き〜」106 実技セミナー2「呼吸器疾患に対する鍼灸治療」107 実技セミナー3「長野式治療法」と「キー子スタイル」」108 実技セミナー4「末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療の実際」109 実技セミナー5「男性不妊に対する鍼灸治療」110 実技セミナー6「アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療」111 実技セミナー7「YNSA」112 実技セミナー8「操体法と鍼灸」113 特別企画コンセンサスミーティング 「月経前症候群・月経前不快気分障害診断治療管理指針コンセンサスミーティング〜鍼灸師の皆様のご意見をお聞かせください」 「月経前症候群・月経前不快気分障害指針コンセンサスミーティング」… 114特別提言「鍼灸教育モデル・コア・カリキュラムー鍼灸学系大学協議会からの発信ー」「鍼灸学系大学教育モデル・コア・カリキュラム−鍼灸学系大学協議会からの発信−」115 報告1「教育研修部企画」 「鍼灸師への鍼灸団体に対する意識調査」117 報告2「JLOM部、辞書用語部、AMED、鍼灸電カル会議/作業部会合同報告会」 「令和5年度の鍼灸を含む日本の伝統医療を取り巻く国際情勢の概説鍼灸を医療・文化・知的資源と捉えるために」118 「ISO/TC249の現状と対応」119 「WHO-FIC年次総会TMRG(伝統医学関連グループ)報告」121 「全日本鍼灸学会辞書用語部における活動について 鍼灸学用語集のWeb掲載に向けて」122 「鍼灸電子カルテの標準参照仕様の現状について」123 「鍼灸電子カルテ標準参照仕様の策定を目的とした実態調査第2報−全国92施設のカルテ状況の把握と検討−」124 市民公開講座「お家で薬膳心も身体も健やかに」125 サロン企画「Star festival七夕に願いを込めて」126 一般演題抄録 127 キーワード索引 219 演者索引 227 大会役員・実行委員 235 挨拶 第73回学術大会の開催にあたって 公益社団法人全日本鍼灸学会会長 若山育郎  東北の地における 3度目の全日本鍼灸学会学術大会開催を心からお祝いを申し上げます。今回のテーマである「つながり、通じ、いかす鍼灸〜多様性の探求と連携医療への展開〜」では、「多様性」と「連携」がキーワードであると認識しております。高山真会頭が所属する東北大学では、大学病院で鍼灸が実践されているばかりではなく、医学教育における漢方教育の一環として鍼灸が取り上げられています。全国 82の大学医学部・医科大学においては、 2001年に医学教育モデル・コア・カリキュラムに「和漢薬を概説できる」が記載されて以来今日に至るまで、すべての大学で漢方教育がなされていますが、その半数弱では時間はわずかながら鍼灸教育も取り入れられています。このように近年は少なくとも漢方・鍼灸に少しでも触れたことのある医師が輩出されています。  一方、現在学会で進めている新・認定鍼灸師制度は「医師との連携」を進めて行くことができる鍼灸師を育成する制度です。鍼灸を少しでも知る医師と医師との連携を目指す鍼灸師がこれからのあたらしい日本の医療を作っていく、そのような将来が待っていると思います。  今後、鍼灸は、開業鍼灸院はもちろんのこと、病院や地域医療において広く利用されてくることが期待されます。そこでは、開業鍼灸院と病院の連携はもちろん、地域医療における鍼灸介入もどんどん増えてくると予想されます。すなわち、多様な職種が連携する中での鍼灸の実践が必要になってきます。そうした背景もあり、今回の宮城大会が、鍼灸に関する多様性と連携の必要性をさらに広く周知し、それが日本国民に根付いてくることを願っています。  末筆になりましたが、現地開催+オンデマンド配信方式で、多様な人材が関わり連携する学術大会を準備いただいた高山真会頭、中沢良平副会頭、三瓶真一実行委員長はじめ実行委員会の皆様、メーカーの皆様、ご講演・ご発表予定の皆様のご尽力に心から感謝するとともに大会のご成功を祈念いたします。 挨拶 第73回 (公社)全日本鍼灸学会学術大会宮城大会開催にあたって 第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会宮城大会大会会頭 高山真  第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会(宮城大会)が 2024年5月24日(金)、25日(土)、26日(日)の3日間、仙台国際センターにおいて開催されることとなりました。東北での全日本鍼灸学会学術大会は、 1994年の青森(弘前)と 2015年の福島(郡山)に続き宮城大会で 3回目の開催となります。この宮城大会は東北支部が担当となり、新型コロナウイルス感染症が蔓延する時期より準備を開始しました。感染症法上二類相当から五類に移行し、現地での開催ができることを大変うれしく思います。  さて、宮城大会テーマは、「つながり、通じ、いかす鍼灸−多様性の探求と連携医療への展開−」とさせていただきました。 2019年から蔓延した新型コロナウイルス感染症により、国内並びに国外とのつながりは分断されてしまいました。一方で、オンラインを用いた新たな技術展開により、人の移動無しに、つながりを持つことが可能にもなりました。医療においても遠隔診療などが導入され、より簡便にアクセスができ提供される時代になってきました。しかしながら、伝統医学の本質は、患者と直接向きあい、接し、個人の体質や病態を把握し、志向などを取り入れて患者に合う治療、施術を行うところにあります。そのような意味で、患者とつながること、考えが通じること、それを通して鍼灸をいかすという意味でテーマを設定いたしました。また、多様化する社会において、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、医師、歯科医師など、それぞれの立場で鍼灸に携わる方々がつながり、そのつながりから各人の専門性をいかした医療連携が展開されることも重要と考え、その意味もこのテーマに含まれています。さらに、医学教育、歯学教育、薬学教育、看護学教育の各モデル・コア・カリキュラムに漢方医学が取り上げられたこともあり、日本の伝統医学としての鍼灸も今後多くの医療職の理解が望まれる段階に入りました。多様性の中には、教育者、研究者、臨床家など様々な意味も含まれております。教育機関の鍼灸師、研究を行い情報発信する鍼灸師、臨床で高い技術を持ち施術を行う鍼灸師、など多くの立場で伝統医学を伝え、発展させる方々のそれぞれの立場のつながりも重要と考えます。高い施術技術が教育され、臨床の現場における疑問から研究が進み、研究結果が各施術に応用されるなど、教育、研究、臨床はそれぞれの立場があるものの、一体となって鍼灸のレベルを底上げするものと考えています。  本大会において、鍼灸師、歯科医師、医師、薬剤師、看護師、教育者、研究者、臨床家、学生など、多くの職種、立場を踏まえた企画を作り準備を進めてまいりました。皆をつなぎ、つながりを通じ、社会において活かす鍼灸の実践が展開されることを祈念致します。 挨拶 杜の都でお会いしましょう 第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会宮城大会実行委員長 三瓶真一  長らく準備を続け、東北で 3回目となるこの大会をようやく開催できる運びとなりました。大盛会であった前回神戸大会実行委員長である坂口俊二先生をはじめ関係各位には、多大なご助力を賜り改めて感謝申し上げます。  この大会の会頭には東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座特命教授である山真先生にご就任いただき、「つながり、通じ、いかす鍼灸−多様性の探求と連携医療への展開−」の大会テーマを高く掲げていただきました。鍼灸を含む東洋医学が活躍する場の多様性と、これからの連携医療と教育を強く意識したテーマで、準備を担当する企画調整委員全員で想いを込めて肉付けし百花繚乱多彩な企画を準備してきました。一般口演発表は新型コロナウイルスから社会生活の制限がなくなったことから、本大会では従来通りのポスター発表として約 180演題の登録となりました。演者と聴講者が同じ高さの目線、質問者との間合いや息遣いと相互の緊張感が強く感じられるポスター発表は、やはり学術大会の華です。また鍼灸医療は世界の共有財産であることから、本大会では英語でのポスター発表枠も設けました。英語ポスターを含む一般口演発表、学生ポスター発表の演者の皆様へは、本大会実行委員会から山会頭名で素晴らしいデザインの発表証明書を発行いたします。さらに本来隔年開催であった日韓シンポジウムも大韓鍼灸医学会( KAMMS)との交流がさらに深まり、昨年の神戸大会に続いて本大会でも開催することとなりました。また鍼灸に関わる方だけの参加ではなく、鍼灸に興味のある看護師、介護士や理学療法士、作業療法士などの養成学校の学生にも参加を周知し、参加者の多様性からも将来の多職種連携を目指します。  杜の都と呼ばれる宮城県仙台市には、ランドマークのひとつに青葉山があります。頂上には仙台城址があり、甲冑をまとった騎馬姿の伊達政宗像が仙台の街並みを見下ろしています。その青葉山の中腹にある仙台国際センターがこの大会会場です。会期である 5月下旬の杜の都は緑も一段と濃くなり、一年で一番良い季節です。会場である仙台国際センターから『青葉城恋歌』で広く知られた清流広瀬川を足元に、振り返ると青葉山の木々の緑が一段と鮮やかです。この抜群のロケーションで本大会自慢のプログラムをたくさん用意し、皆様をお待ちしております。ぜひ 5月にこの杜の都でお会いしましょう。 大会概要 大会名 第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会宮城大会 テーマ つながり、通じ、いかす鍼灸−多様性の探求と連携医療への展開- 学会会長 若山育郎(公社)全日本鍼灸学会会長 大会会頭 高山真 東北大学大学院医学系研究科 漢方・統合医療学共同研究講座特命教授 実行委員長 三瓶真一 三瓶鍼療院院長 大会会期 2024年5月24日(金)〜 26日(日)現地開催 2024年6月17日(月)〜 7月22日(月)アーカイブ配信 大会会場 仙台国際センター 〒980-0856仙台市青葉区青葉山無番地 http://www.aobayama.jp/ 主催(公社)全日本鍼灸学会 担当 第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会実行委員会 ホームページ https://www.tohoku-kyoritz.jp/73jsam/index.html 大会事務局 相澤はり・きゅう・マッサージ治療院 〒985-0042宮城県塩竈市玉川一丁目 3-28 E-mail:73miyagi@jsam.jp お問い合わせ 株式会社東北共立 運営事務局 〒982-0001仙台市太白区八本松 2-10-11 TEL: 022-246-2591 FAX: 022-399-7749(受付時間:平日 10:00〜17:00) E-mail:73jsam@tohoku-kyoritz.co.jp 第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会宮城大会の参加・アーカイブ配信について 宮城大会会期中の会議・式典 ・開会式 5月25日(土) 09:00〜09:30(第1会場メインホール) ・通常総会 5月25日(土) 13:00〜13:50(第1会場メインホール) ・高木賞表彰式 5月25日(土) 14:00〜15:00(第1会場メインホール) ・学生発表表彰式 5月26日(日) 13:00〜13:50(第1会場メインホール) ・理事会 5月24日(金) 12:30〜14:30(1階小会議室 1) ・顧問参与会議 5月24日(金) 14:50〜15:50(1階小会議室 1) ・鍼灸学術団体協議会 5月24日(金) 16:00〜17:00(1階小会議室 1) ・臨時理事会 5月26日(日) 12:10〜12:50(3階小会議室 8) 1.総合受付 会議棟 2階ホワイエに総合受付を設置します。 ※受付時間 5月24日(金) 13:00〜 15:30 5月25日(土) 08:30〜 17:00 5月26日(日) 08:00〜 16:00 2.学術大会の受付 1)2月1日〜 4月30日に事前参加登録の方参加証は事前に送付しています。参加証はネームホルダーに入れてご着用ください。参加証が届いていない場合には、総合受付までお越しください。 ※事前参加登録の方の当日受付は行いません。直接、各会場にお越しください。 ※決済終了後は、事情の如何に関わらず参加費の返還には応じられませんのでご了承ください。 2)5月1日〜 5月23日正午までに事前参加登録の方 2階総合受付までお越しください。参加証をお渡しします。なお、 5月16日までに決済を終了された方には、所属、氏名を予め印字いたします。 3)当日参加登録の方  当日、会議棟 2階ホワイエ前で参加登録をお済ませください。 正会員 13,000円(抄録集送付済)学生会員 5,000円(抄録集送付済)一般 17,000円(抄録集付)一般学生 8,000円(抄録集付) ※学生の方は、学生証をご提示ください。 3.参加証  大会会場内では、参加証をネームホルダーに入れて必ずご着用ください。会場入ロにおいて参加証を確認させていただきます。予めご了承ください。 4.PCデータ受付(スライド受付動作確認) 会議棟 2階ホワイエになります。 ※受付時間 5月25日(土) 8:00〜 17:00 5月26日(日) 8:00〜 16:00  発表の30分前にはスライド受付と動作確認を終了してください。 発表で使用したデータは、発表終了後、責任をもって、消去します。 発表者の方は、セッションの開始 10分前までに会場内(次演者席)にお越しください。 5.抄録集  抄録集は各自でご持参ください。宮城大会ホームページより電子版をご確認いただくことも可能です。なお、購入希望の方は、総合受付で 1部2,000円(税込)で販売します。 6.クローク  1階の小会議室 2にクロークを設置しています。会場の都合上、クロークでお預かりできる数には限りがありますのでご了承ください。また、貴重品や壊れ物は各自で保管をお願いします。ご利用時間は、 25日(土) 8:00〜18:00、26日(日) 8:00〜17:30です。毎日ご利用時間内に必ず荷物のお引き取りをお願いします。 7.視覚に障がいのある方へのサポート  会議棟 2階ホワイエの総合受付に視覚障がいサポート受付を設置します。 参加登録の際にお申込みされた方は、総合受付にてお申し出ください。 8.当日の昼食について  仙台国際センターではお弁当の持込は禁止されており、会場内で食べることができるのは、事前申込されたお弁当とランチョンセミナーで提供されるお弁当のみです。また、会場周辺の飲食店は限りがございますので、予めお弁当の申込をお薦めいたします。 5月16日(木)まで事前参加登録フォームから受け付けをします。 9.ランチョンセミナーについて  ランチョンセミナーの弁当数は 25日(土) 4会場 480食、 26日(日)は 4会場 580食となっておりますが、全参加者分を賄うには足りません。ランチョン整理券の配布は会議棟 2階ホワイエの総合受付にて、 8時30分から 10時30分の時間におこないますので、お早めに入手ください。第 2,3,4会場は企業で準備した弁当数より多く座席を用意しています。事前申込されたお弁当(上記 8.当日の昼食について参照)を持ち込むことや聴講のみも可能ですので、各会場の担当者にお尋ねください。 10.写真撮影・ビデオ撮影・録音について  大会事務局の承諾なく、会場内での写真撮影・ビデオ撮影・録音はお断りします。 大会事務局の許可を受けた方は、必ず腕章を分かりやすいように着けてください。 11.企業展示  会議棟 2階の桜にて行います。 25日(土) 10:00〜17:00、26日(日) 9:00〜15:00です。 12.喫煙所について  喫煙室は会議棟 2階屋外階段喫煙所に設けています。その他の場所では禁煙となっています。 また、近隣住民の苦情を避けるため仙台国際センター周辺の歩道での喫煙はご遠慮ください。 13.一般口演発表、学生発表演者への依頼事項  一般口演発表ならびに学生発表は全てポスター発表となります。アーカイブ配信はありません。 14.ポスターによる口演発表(ポスター発表・英語発表・学生ポスター発表)  ポスター受付は 2階の桜に設置します。 1)作成上の注意点(学会ホームページにポスター作成のポイントが掲載されています)  ポスターパネルの大きさは縦 180cm横 120cmです。右図を参照にポスターを作成してください。左上角に演題番号( 20cm×20cmの大きさ)を貼付しますので、このスペースにはなにも貼らないでください。演題名、所属、氏名(縦 30cm横70cmの大きさ)は各自でご用意ください。ポスターはボードから離れても判読できるよう見やすくしてください。文字や図表も十分読み取れる大きさにしてください。筆頭演者は発表内容に関する企業・組織や団体との過去 1年間の申告すべき COIの有無をホームページ内、「利益相反( COI)状態の開示について(https://jsam.jp/convention/congress/coi/)に従ってポスターの最初(左上)に必ず表示してください。また、支部学術集会の一般演題で発表した研究の二次発表の場合、次の例を 参考に表示してください。(例:本研究は令和 5年度(公社)全日 本鍼灸学会関東支部で発表した研究の二次発表である。) 2)ポスターの掲示・撤去 ポスターは日毎の張替えになりますので、各人の発表日に貼付・撤去を行なってください。 5月25日(土) 9:00〜10:00 11:00〜12:00 14:00〜17:00 17:00〜18:00 5月26日(日) 8:00〜 9:00 09:00〜12:00 13:00〜17:00 17:00〜18:00  画鋲はポスター会場に用意いたします。時間内に撤去されていないポスターは大会事務局側で撤去・廃棄いたします。なお、撤去したポスターの返却はいたしません。なお、学生発表のポスターについては、貼替えなしで 2日間の貼付となります。 25日(土)の 9:00〜10:00までに掲示ください。 26日(日)の 17:00を過ぎましたら撤去を行ってください。撤去されていないポスターは大会事務局側で撤去・廃棄し、ポスターの返却はいたしません。 3)集合時間 発表されるセッション開始 10分前までには会場内で待機してください。 4)発表時間 一般口演発表:発表 7分質疑応答 5分 学生ポスター発表:発表 7分 質疑応答 3分 5)「学生ポスター優秀賞」について  学生ポスター発表のうち、発表内容、発表方法(プレゼンテーション・質疑応答)、ポスターのデザインなどを統合して審査し、優秀であった発表を「学生ポスター優秀賞」として表彰いたします。審査は 5月25日(土)の 10時から開始(発表時のみではなく、掲示した時点から審査されています)しますので、それまでに必ずポスターを掲示してください。表彰式は、 5月26日(日)の 13時00分から第1会場(会議棟 2階大ホール)にておこないます。なお、学生ポスター発表の演者 1名は必ず表彰式に出席してください。 15.座長の先生方へ 1)特別講演・教育講演・シンポジウム・パネルディスカッション等の座長の先生方へ開演 30分前までには 2階の総合受付までお越しください。担当スタッフが控室までご案内します。なお控室は、開演1時間前よりご入室できます。 2)一般口演発表、学生発表の座長の先生方へポスター発表(学生ポスター発表)の座長の先生方は、ご担当セッション開始 30分前までに 2階の桜のポスター会場内に設置しているポスター受付にお越しください。セッション開始の 10分前には会場内で待機し、定刻になりましたらセッションを開始してください。進行は座長にお任せしますが、時間厳守でお願いします。 16.懇親会(事前登録制) 日時: 5月25日(土) 18:00〜20:00 会場:仙台国際センター展示棟展示室 3(会議棟隣) 参加費: 10,000円 ※宮城大会ホームページ( https://www.tohoku-kyoritz.jp/73jsam/)の参加登録からお申込みください。 ※領収書は参加登録マイページからダウンロード可 ※5月16日(木)まで申込を受け付けますが、それまでに予定人数に達した場合はその時点で締切といたします。 ※一度お支払いいただきました参加費は、事情の如何にかかわらず返金には応じられませんのでご了承ください。 17.託児サービス(事前登録制)  宮城大会ホームページ( https://www.tohoku-kyoritz.jp/73jsam/)からお申込みください。 ※5月8日(水)までに「にこにこサポート」に事前申込を行ってください。利用料は無料です。 18.学術大会の取材をされる皆様へ  宮城大会の取材を予定されている方は、できるだけ 5月16日(木)までに大会事務局までメールで(73miyagi@jsam.jp)ご連絡ください。大会当日は、身分を明らかにできるものをご持参の上、総合受付にお越しください。取材腕章をお渡しします。 ご申請いただきたい事項 1.貴社名 2.取材予定日 3.掲載予定媒体名 4.取材方法(写真撮影 VTR録画・インタビュー等) 5.取材対象(各セッションを取材される場合は、事務局を通じて講演者の許可を得てください) 6.取材者人数 7.ご担当者氏名 8.ご連絡先 【アーカイブ配信視聴について】 1.参加方法  アーカイブ配信視聴には、参加登録された際のログイン IDとパスワードが必要となります。宮城大会ホームページ https://www.tohoku-kyoritz.jp/73jsam/から参加登録された際のログイン IDとパスワードでログインしてください。 2.大会開催期日終了後のアーカイブ視聴の申込について  アーカイブ配信の視聴は、事前参加登録及び当日参加登録だけではなく、大会終了後も宮城大会ホームページ https://www.tohoku-kyoritz.jp/73jsam/より視聴申込登録が可能です。費用は当日参加登録と同額となります(下記参照)。正会員 13,000円学生会員 5,000円一般 17,000円一般学生 8,000円 3.配信の期間について  アーカイブ配信受付期間: 2024年5月27日(月) 0:00〜7月22日(月) 12:00 アーカイブ配信視聴期間: 2024年6月17日(月) 0:00〜7月22日(月) 12:00 ・配信の期間中は、録画を自由に選んで視聴できます。 ・配信内容は、第1会場メインホール(※開会式、総会、高木賞表彰式、学生発表表彰式、市民公開講座は除く)、第 2会場橘、第 3会場萩、第 4会場白橿 1(本部企画)、第 5会場白橿 2(実技セミナー)で、ランチョンセミナーは除きます。 ※講師等の承諾が得られず、録画の再配信ができない場合があります。 4.ログインについて  1つの IDとパスワードでログインできるデバイスは 1台のみです。同時に複数のデパイスでログインすることは出来ません。 IDとパスワードを他人に漏らしたり、 SNSに投稿したりすることなどはおやめください。不正なログインが疑われる場合は、ログインをブロックする場合もあります。 5.録音・録画などの禁止について  宮城大会でのすべてのコンテンツにおいて、録音、録画、画面のスクリーンショットや印刷などはおやめください。著作権は、各演者に帰属します。 6.問い合わせ先 @宮城大会実行委員会(宮城大会全般について) E-mail:73miyagi@jsam.jp A参加登録受付デスク(宮城大会事前参加申込について) 第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会宮城大会参加登録デスク 株式会社東北共立 〒982-0001仙台市太白区八本松 2-10-11 TEL: 022-246-2591 FAX:022-246-1754 E-mail: 73jsam@tohoku-kyoritz.co.jp ※マイページのIDとパスワードは一切教えることができません。紛失にはご注意ください。 B一般口演発表・学生発表に関する問い合わせ (公社)全日本鍼灸学会学術部 E-mail:gakujutu@jsam.jp (お知らせ)今後の新型コロナウイルス感染症等の感染状況の推移によっては実施することが困難なプログラムが発生する可能性も否定できません。不可抗力による変更や中止などもあり得ることを、予めご了承ください。(2024年3月1日現在) 認定受付について (公社)全日本鍼灸学会認定委員会  宮城大会の認定単位登録については、下記の方法で実施します。 T.対象と認定単位  対象者は、 (公社 )全日本鍼灸学会正会員が対象です。 ※入会には審査も含めて 1ヵ月程度必要です。 本大会での認定単位は、学術大会参加による 14単位です。 U.宮城大会での認定得点登録の方法 1.会場参加の場合認定受付 (2階ホワイエ総合受付の横 )および会場内に認定に関するポスターの QRコードにてログインいただいたフォームから登録ください。 2.アーカイブ配信視聴による参加の場合 配信期間中に視聴画面よりログインいただいたフォームから登録ください。 3.登録の期間と時間 会期中: 5月25日(土) 9:30〜 5月26日(日) 16:00 アーカイブ配信の期間中: 6月17日(月)〜 7月22日(月) 注意事項:宮城大会に参加しても、登録忘れの場合は認定単位が付与されません。 参加されましたら早めの登録をお願いします。 フォームに登録された情報と参加費入金情報により認定単位を認めます。 V.登録内容 ・会員番号※事前に会員番号をご確認ください。 ・氏名 ・ふりがな W.その他 ・ご不明な点は、認定委員会デスクもしくは、メール( nintei@jsam.jp)にてご質問ください。なお、メールの場合はすぐに返信できない場合もありますことをご了承ください。 The Program of The 73rd Annual Congress of The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion, May 24~26, 2024, Miyagi 大会プログラム 特別演題の部 大会会頭講演 5月26日(日) 11:00〜11:50《メインホール》 PL「鍼灸でつながる診療、教育、研究」 演者:東北大学病院総合地域医療教育支援部(総合診療科、漢方内科)高山真 座長:(公社)全日本鍼灸学会会長 若山育郎 副会頭講演 5月25日(土) 10:00〜10:50《メインホール》 VPS「家庭鍼灸医療学と鍼灸院経営」 演者:一寸法師ハリ治療院 中沢良平 座長:明治国際医療大学 矢野忠 基調講演 5月26日(日) 9:00〜9:50《メインホール》 KL「東北の意味と意義」 演者:東北大学学術資源研究公開センター史料館 浦山きか 座長:仙台赤門医療専門学校 浦山久嗣 特別講演1 5月25日(土) 11:00〜11:50《メインホール》 SL1「東日本大震災時の多組織・多職種連携に基づく災害保健医療活動」 演者:東北大学病院総合地域医療教育支援部 石井正 座長:(公社)全日本鍼灸学会東北支部長 中沢良平 特別講演2 5月25日(土) 15:00〜15:50《メインホール》 SL2「性差医療」 演者:国立成育医療研究センター女性の健康ナショナルセンター設立準備室 小宮ひろみ 座長:中和医療専門学校 清水洋二 特別講演3 5月26日(日) 10:00〜10:50《メインホール》 SL3「慢性疼痛診療ガイドライン−最新研究を踏まえた痛み治療の up to date−」 演者:明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科 伊藤和憲 座長:北海道鍼灸専門学校 川浪勝弘 教育講演1 5月25日(土) 9:30〜9:50《橘》 EL1「不妊鍼灸の特別演題入りとこれから」 演者:三瓶鍼療院 三瓶真一 座長:鍼灸サロン Libera 益子勝良 教育講演2 5月25日(土) 14:00〜14:50 《橘》 EL2「理学療法士から見た鍼灸の役割」 演者: 医療法人清生会谷口病院 冨田健一 座長: 山田鍼灸治療院 山田愉生 教育講演3 5月25日(土) 15:00〜15:50《橘》 EL3「若い世代の学生をどう理解し、どう付き合うか」 演者:宮城教育大学教育学研究科高度教職実践専攻長 本田伊克 座長:仙台赤門医療専門学校 宍戸新一郎 教育講演4 5月25日(土) 16:00〜16:50《メインホール》 EL4「認知心理学の観点から考える学習者支援」 演者:藤田医科大学医学部医療コミュニケーション 藤江里衣子 座長:学校法人明治東洋医学院専門学校 福田文彦 教育講演5 5月25日(土) 16:00〜16:50《橘》 EL5「多職種にも伝わるカルテの書き方」 演者:札幌医科大学総合診療医学講座 佐藤健太 座長:新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 金子聡一郎 教育講演6 5月25日(土) 17:00〜17:50《メインホール》 EL6「医療機器である鍼灸針について」 演者:セイリン株式会社国内営業部営業課 西村直也 座長:東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 木村友昭 教育講演7 5月26日(日) 14:00〜14:50《メインホール》 EL7「総合診療・膠原病リウマチ領域での鍼灸治療の可能性」 演者:三井記念病院総合内科・膠原病リウマチ内科 増田卓也 座長:新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 粕谷大智 教育講演8 5月26日(日) 15:00〜15:50《メインホール》 EL8「鍼灸師が知っておくべき漢方診療と漢方薬」 演者:東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 有田龍太郎 座長:埼玉医科大学東洋医学科 山口智 教育講演9 5月26日(日) 11:00〜11:50《橘》 EL9「鍼灸師が知っておくとよいエコーの診方」 演者:弘前大学医学部附属病院総合診療部 小林只 一般社団法人日本臨床リカレント教育研究センター( JCREARC)理事長 銭田良博 座長:口之津病院内科・総合診療科 寺澤佳洋 日韓シンポジウム 5月25日(土) 10:00〜11:50《萩》 Chairman: Vice President of KAMMS, Kyung Hee University Prof. NAM Dongwoo National University Corporation Tsukuba University of Technology Prof. ISHIZAKI Naoto SI-1「The Western and Korean Medicine Collaborative Treatment Approaches at the Korea National Rehabilitation Center: A Comprehensive Overview and Future Directions」 Department of Korean Medicine Rehabilitation, Korea National Rehabilitation Center, Seoul, Korea Son Chihyoung SI-2「Integrative Approach to ERAS-K: Enhanced Recovery after Surgery Program for Spine-KHUHGD」 Department of Acupuncture & Moxibustion, College of Korean Medicine, Kyung Hee University, Seoul, Republic of Korea Seo Byung-Kwan SI-3「 Acupuncture Education in Medical School of Japan and Tohoku University Hospital Coordination with the Regional Acupuncture Clinic」 Department of Education and Support for Regional Medicine, Department of Kampo Medicine, Tohoku University Hospital, Japan Takayama Shin SI-4「Clinical Acupuncture in University Hospital of Japan and Clinical Studies of Acupuncture in Graduate School of Medicine.」 Department of Education and Support for Regional Medicine, Department of Kampo Medicine, Tohoku University Hospital Kaneko Soichiro シンポジウム1 5月25日(土) 10:00〜11:20《橘》 「多職種連携企画「生殖医療における鍼灸の役割(難治性不妊の治療の現状と未来)」」 座長:明生鍼灸院木津正義三瓶鍼療院 三瓶真一 S1-1「生殖医療の現状と課題、鍼灸によせる期待」 公立大学法人福島県立医科大学附属病院生殖医療センター 菅沼亮太 S1-2「不妊カウンセリングの経験と鍼灸への展望」 公立大学法人福島県立医科大学附属病院生殖医療センター 本田明奈 S1-3「当院におけるチーム医療について」医療社団法人厚仁会厚仁病院 松田尚香 シンポジウム2 5月25日(土) 14:00〜15:20 《萩》 「診療ガイドラインにおける鍼灸の現状と今後の展望 〜専門医学会との連携と専門鍼灸師の育成に向けて〜」 座長: 埼玉医科大学東洋医学科 山口智 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 粕谷大智 S2-1「昨今の診療ガイドライン事情」 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 大川祐世 S2-2「頭痛の診療ガイドライン改訂から考える多職種連携に向けた未来」 茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター 石山すみれ S2-3「顔面神経麻痺診療ガイドラインにおける鍼治療の課題と展望」 埼玉医科大学東洋医学科 堀部 豪 S2-4「機能性消化管疾患診療ガイドラインー過敏性腸症候群における鍼灸ー」 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 谷口博志 S2-5「過活動膀胱診療ガイドラインにおける鍼治療の現状とエビデンス」 烏丸いとう鍼灸院 伊藤千展 シンポジウム3 5月25日(土) 14:00〜15:20《白橿1》 「スポーツ委員会報告「若手アスレティックトレーナー・鍼灸師の現状と問題点〜臨床・研究の狭間で〜」」 座長:法政大学スポーツ健康学部泉重樹立教大学スポーツウエルネス学部 吉田成仁 演者:国立スポーツ科学センタースポーツ科学・研究部玉井伸典呉竹学園東洋医学臨床研究所 川口健太郎 西早稲田整形外科斉藤海新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 村越祐介 学校法人滋慶学園東京メディカル・スポーツ専門学校 細井聡 シンポジウム4 5月25日(土) 15:30〜16:50《萩》 「他職種連携企画「地域医療(在宅医療)」」 座長:はり・きゅう・マッサージ仙台けんえい訪問院栗和田健規はぎの鍼灸院 萩野利赴 S4-1「仙台市の在宅重度障害者を支える連携の仕組み」 喀痰吸引等第1号2号3号登録研修機関くりはら介護塾 遠藤美紀 S4-2「福島県奥会津地域における在宅医療と鍼灸」 福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室 津田恭輔 S4-3「長野県伊那市営長谷鍼灸治療所の紹介と多職種連携」 長野県伊那市役所長谷総合支所長谷総合支所市民福祉係長谷鍼灸治療所 大木島さや香 S4-4「地域診療における漢方治療の役割」 東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 齊藤奈津美 シンポジウム5 5月26日(日) 10:30〜11:50 《萩》 「経穴委員会主催「教育・臨床・研究の視点からの経穴詳解 ー三陰交・合谷・百会についてー」」 座長: 関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科 坂口俊二 アコール鍼灸治療院 河原保裕 S5-1「教育の視点から」 森ノ宮医療大学 医療技術学部 鍼灸学科 仲村正子 S5-2「教育・臨床・研究の視点からの経穴詳解ー三陰交・合谷・百会ー」 経絡経穴委員会 山見宝 S5-3「三陰交、合谷、百会を研究の視点から検討する」 せりえ鍼灸室 小井土善彦 シンポジウム6 6月26日(日) 10:30〜11:50《白橿1》 「教育研修部主催「東洋医学教育の多様性ー古典教育と電子教材、授業展開と取り組みー」 座長:学校法人呉竹学園東京呉竹医療専門学校 中村真通 明治東洋医学院専門学校鍼灸学科 福田文彦 S6-1「古典教育と電子教材について正しい伝統医学教育は可能か」 仙台赤門医療専門学校 浦山久嗣 S6-2「東洋療法学校協会電子教材(経穴)の運用」 森ノ宮医療専門学校 松下美穂 S6-3「古典医学を楽しく学んでもらうために」 学校法人呉竹学園臨床教育研究センター 船水隆広 シンポジウム7 5月26日(日) 14:00〜15:20《橘》 「災害と鍼灸:災害鍼灸への期待、現状、課題」 座長:独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局 小早川義貴 災害鍼灸マッサージプロジェクト 三輪正敬 S7-1「災害と伝統医学(漢方、鍼灸)」 東北大学病院総合地域医療教育支援部(総合診療科、漢方内科)高山真 S7-2「東日本大震災の支援と業団体としてのその後の取り組み」 公益社団法人宮城県鍼灸師会 稲井一吉 S7-3「長期的な災害支援から広がる鍼灸の可能性」 はり灸レンジャー 森川真二 S7-4「災害鍼灸の課題」 日本災害鍼灸マッサージ連絡協議会(JLCDAM)小野直哉 S7-5「被災地で求められるノンテクニカルスキルとテクニカルスキル」 国立病院機構本部 DMAT事務局福島復興支援室 小早川義貴 パネルディスカッション1 5月26日(日) 9:00〜10:50《橘》 「ここぞ鍼灸の出番〜ダブルライセンス鍼灸師(鍼灸師×医師、理学療法士、看護師、薬剤師)の視点から〜」 座長:学校法人呉竹学園 坂本歩 さとう鍼灸院 佐藤駿 PD1-1「ここぞ鍼灸の出番 -ダブルライセンス鍼灸師の視点から -」 医療法人清生会谷口病院リハビリテーション科 冨田健一 PD1-2「医はき師てらぽんとしての活動」 口之津病院 寺澤佳洋 PD1-3「鍼灸がもっと身近になるために」 はりきゅう SORA 野村美香 PD1-4「ここぞ鍼灸の出番ダブルライセンス鍼灸師 X薬剤師の視点から」 有限会社おいで薬局 生出拓郎 パネルディスカッション2 5月26日(日) 9:00〜10:20《白橿1》 「医師・鍼灸師連携について今後の医療を見据えて」 座長:公益社団法人未来工学研究所 小野直哉 PD2-1「鍼灸と精神医療の相互連携」 昭和大学発達障害医療研究所 中村元昭 PD2-2「熊本赤十字病院での取り組みと病棟内鍼灸師の確立について」 熊本赤十字病院総合内科 加島雅之 PD2-3「鍼灸の臨床研究における医師と鍼灸師の連携:その意義と課題」 三井記念病院総合内科・膠原病リウマチ内科 増田卓也 指定発言:埼玉医科大学東洋医学科 山口智 パネルディスカッション3 5月26日(日) 14:00〜15:20《白橿1》 「未来を変える「評価」の取り方〜学会発表にあと一歩が踏み出せないあなたへ〜」 座長:帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 脇英彰 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 松浦悠人 PD3-1「泌尿器科症状に特化した鍼灸院における患者評価の実際」 烏丸いとう鍼灸院 伊藤千展 PD3-2「鍼灸の臨床研究における評価指標の活用について」 筑波技術大学保健科学部保健学科 松田えりか PD3-3「治療成果(アウトカム)の評価」 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 大川祐世 教育セミナー 5月26日(日) 13:00〜13:50《白橿1》 ES「集まれ鍼灸研究者!観察研究の統計解析ハンズオンセミナー」 演者:福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室 加用拓己 座長:埼玉医科大学東洋医学科 堀部豪 ワークショップ1 5月26日(土) 15:30〜16:50《白橿1》 「安全性委員会ワークショップ(臨床情報部主催)「有害事象文献レビューと鍼灸安全対策マニュアルの紹介」」 WS-1「有害事象文献レビューおよび鍼灸安全対策マニュアルの紹介」 座長:東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 菅原正秋 演者:東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 菅原正秋 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 福世泰史 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 宮脇太朗 ワークショップ2 5月26日(日) 10:00〜10:50《白橿2》 WS-2「医療従事者向け鍼灸体験」 座長:仙台赤門医療専門学校 宍戸新一郎 演者:仙台赤門医療専門学校 古川雄一郎 実技セミナー1 5月25日(土) 10:00〜10:50 《白橿2》 PS-1「バランステストの診察法と治療法」 演者: ガネーシャ鍼灸院 川嶋睦子 座長: 森ノ宮医療大学 尾崎朋文 実技セミナー2 5月26日(土) 14:00〜14:50 《白橿2》 PS-2「呼吸器疾患に対する鍼灸治療」 演者: 前倉鍼灸院 前倉知典 座長: 池岡クリニック・池岡鍼灸院 小西未来 実技セミナー3 5月25日(土) 15:00〜15:50《白橿2》 PS-3「長野式治療法」と「キー子スタイル」」 演者:長野式研究会 村上裕彦 座長:仙台赤門医療専門学校 川嶋睦子 実技セミナー4 5月25日(土) 16:00〜16:50《白橿2》 PS-4「末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療の実際」 演者:埼玉医科大学東洋医学科 堀部豪 座長:鍼灸まる 古田大河 実技セミナー5 5月26日(日) 9:00〜9:50《白橿2》 PS-5「男性不妊に対する鍼灸治療」 演者: SR鍼灸グループ 伊佐治景悠 辛島充 座長:三瓶鍼療院 三瓶真一 実技セミナー6 5月26日(日) 14:00〜14:50《白橿2》 PS-6「アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療」 演者:新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 江川雅人 座長:明治国際医療大学鍼灸学部 廣正基 実技セミナー7 5月26日(日) 15:00〜15:50《白橿2》 PS-7「YNSA」 演者:東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 神谷哲治 座長:東北大学大学院医学系研究科地域総合診療医育成寄附講座 石井祐三 実技セミナー8 5月26日(日) 16:00〜16:50《白橿2》 PS-8「操体法と鍼灸」 演者:はり処愈鍼 小泉直照 座長:新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 金子聡一郎 5月26日(日) 13:00〜13:50《橘》 「月経前症候群・月経前不快気分障害診断治療管理指針コンセンサスミーティング〜鍼灸師の皆様のご意見をお聞かせください」 SS-1「月経前症候群・月経前不快気分障害指針コンセンサスミーティング」 演者・座長:近畿大学東洋医学研究所 武田卓 座長:明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科 田口玲奈 5月26日(日) 9:00〜10:20 《萩》 「鍼灸教育モデル・コア・カリキュラムー鍼灸学系大学協議会からの発信ー」 SS-2「鍼灸学系大学教育モデル・コア・カリキュラム」 座長: 明治国際医療大学 河井正隆 東京有明医療大学 坂井友実 演者: 明治国際医療大学 矢野忠 明治国際医療大学 河井正隆 東京有明医療大学 坂井友実 明治東洋医学院専門学校 福田文彦 報告1 5月25日(土) 17:00〜17:50 《橘》 教育研修部企画 R-1「鍼灸師への鍼灸団体に対する意識調査」 演者:日本理学療法器材工業会鍼灸作業部会 鈴木沙有理 座長:相澤はり・きゅう・マッサージ治療院 相澤啓介 報告2 5月26日(日) 14:00〜15:50《萩》 JLOM部、辞書用語部、 AMED、鍼灸電カル会議/作業部会合同報告会 座長:帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 久島達也 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 木村友昭 R2-1「令和 5年度の鍼灸を含む日本の伝統医療を取り巻く国際情勢の概説」 演者:明治国際医療大学 小野直哉 R2-2「ISO/TC249の現状と対応」 演者:常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 新原寿志 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 木村友昭 千葉大学医学部附属東洋医学センター墨田漢方研究所 森田智 R2-3「WHO-FIC年次総会 TMRG(伝統医学関連グループ)報告」 演者:九州看護福祉大学看護福祉学部鍼灸スポーツ学科 田口太郎 R2-4「全日本鍼灸学会辞書用語部における活動について鍼灸学用語集のWeb掲載に向けて」 演者:全日本鍼灸学会辞書用語部伝統医学班 和辻直 R2-5「鍼灸電子カルテの標準参照仕様の現状について」 演者:鈴鹿医療科学大学医用工学部医療健康データサイエンス学科 山下幸司 R2-6「鍼灸電子カルテ標準参照仕様の策定を目的とした実態調査第2報」 演者:鍼灸電子カルテ参照仕様の策定に関する会議作業部会 村橋昌樹 5月26日(日) 16:00〜16:50《メインホール》 LP「お家で薬膳心も身体も健やかに」 演者:本草薬膳学院仙台教室講師 横須賀まな美 座長:東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座 高山真 ランチョンセミナー1 5月25日(土) 12:00〜12:50《橘》 LS-1「「未来を拓く手掛かり」研究者の道と鍼灸の役割−セルフケアの重要性−」 座長:新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 粕谷大智 演者:新茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター 石山すみれ 東京有明医療大学保健医療学部 谷口授 共催: セイリン株式会社 ランチョンセミナー2 5月25日(土) 12:00〜12:50《萩》 LS-2「超音波画像診断装置(エコー)を最大限に活かす、皮膚刺激ツールの有効性」 座長:常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 沢崎健太 演者:一般社団法人日本臨床リカレント教育研究センター(JCREARC) 株式会社ゼニタ 銭田良博 共催:東洋レヂン株式会社 ランチョンセミナー3 5月25日(土) 12:00〜12:50《白橿1》 LS-3「呼吸器疾患と東洋医学」 座長:東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座 高山真 演者:東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 菊地章子 共催:株式会社ツムラ ランチョンセミナー4 5月25日(土) 12:00〜12:50《白橿2》 LS-4「お灸でつながる『ひと×えがお』お灸を中心とするセルフケア普及の活動報告 Part1」 座長:せんねん灸お灸ルーム長 小泉洋一 演者:せんねん灸サポーター 共催:セネファ株式会社 ランチョンセミナー5 5月26日(日) 12:00〜12:50《橘》 LS-5「生殖医療から始まる鍼灸の可能性と未来(医師からの信頼を得るために)」 座長:医療法人社団厚仁会厚仁病院生殖医療部門鍼灸ルーム長 松田尚香 演者:京都なかむら第二針療所・滋賀栗東鍼灸整骨院鍼灸部門総院長 日本レーザーリプロダクション学会理事 中村一徳 共催:東京医研株式会社、日進医療器株式会社(ユニコ) ランチョンセミナー6 5月26日(日) 12:00〜12:50《萩》 LS-6「肌再生鍼としてのダーマローラー」 座長:かなざわ鍼灸院院長博士(鍼灸学)石川県鍼灸マッサージ師会理事 竹田太郎 演者:日本鍼灸師会業務執行理事肌リジェ代表 田中一行 共催:ダーマローラージャパン ランチョンセミナー7 5月26日(日) 12:00〜12:50《白橿1》 LS-7「鍼灸が精神医療に貢献できること〜医師に求められる鍼灸師像とは〜」 進行:株式会社メイプル名古屋鍼灸企画部 井上尚子 演者:東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 松浦悠人 メモリーケアクリニック湘南 吉田勝臣 メディカルサロン Freesia 坂野翔子 共催:メイプル名古屋株式会社 ランチョンセミナー 85月26日(日) 12:00〜12:50《白橿2》 LS-8「お灸でつながる『ひと×えがお』お灸を中心とするセルフケア普及の活動報告 Part2」 進行:座長:せんねん灸お灸ルーム長 小泉洋一 演者:せんねん灸サポーター 共催:セネファ株式会社 ES「Star festival七夕に願いを込めて」 宮城大会実行委員会 開会式 5月25日(土) 9:00〜9:30《メインホール》 総会 5月25日(土) 13:00〜13:50《メインホール》 高木賞表彰式 5月25日(土) 14:00〜15:00《メインホール》 学生発表表彰式 5月26日(日) 13:00〜13:50《メインホール》 一般演題の部 演題番号の見方 演題番号は、「通し番号 -発表曜日 -発表区分 -発表時間」の順に並んでいます。 発表曜日: Sat→5月25日(土)、Sun→5月26日(日) 発表区分: P1、P2、P3、P4→ポスター発表、 G→学生発表 発表時間: 14:00→14時00分 例: 001-Sat-P1-14:00 通し番号 001ー5月25日(土)ーポスター発表 1ー14時00分より発表 英語発表「英語@」 5月25日(土) 14:00-15:00 座長:高山真 深澤洋滋 001-Sat-P1-14:00 Literature review on acupuncture treatment for long COVID-19 Department of acupuncture and moxibustion, Niigata University Health and Welfare Kaneko Soichiro 002-Sat-P1-14:12 Acupuncture and massage support for disaster victims Department of Education and Support for Regional Medicine, Department of Kampo Medicine, Tohoku University Hospital Takayama Shin 003-Sat-P1-14:24 Necessary Contents for Safe Acupuncture in Disaster Areas Department of Acupuncture and Moxibustion, Faculty of Health Care, Teikyo Heisei University Tsunematsu Mikako 004-Sat-P1-14:36 Effect of autonomic nerves on opioid-induced constipation Department of Acupuncture and Moxibustion, Meiji University of Integrative Medicine Okada Misaki 005-Sat-P1-14:48 Behavior analysis using DeepLabCut of a chemobrain model rat Graduate School, Meiji University of Integrative Medicine Hiraiwa Shinya 英語発表「英語A」 5月25日(土) 15:00-16:00 座長:鈴木雅雄 山下 仁 006-Sat-P1-15:00 Quantitative Analysis of the Supporting Hand in Acupuncture Ritsumeikan University Graduate School of Sport and Health Science Miyamoto Nao 007-Sat-P1-15:12 Acupuncture for panic disorder with agoraphobia Department of Acupuncture and Moxibustion, Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences, Tokyo, Japan Matsuura Yuto 008-Sat-P1-15:24 The Current State of Acupuncture for Sleep Department of Acupuncture and Moxibustion, Faculty of Health Care, Teikyo Heisei University Nakamura Suguru 009-Sat-P1-15:36 Bleeding risk of acupuncture for hematological malignancies Department of Kampo Medical Research Institute, Aizu Medical Center, Fukushima Medical University Kayo Takumi 010-Sat-P1-15:48 Antispasmodic Gastric Motility with Acupuncture. Department of Kampo Medicine, Aizu Medical Center, Fukushima Medical University School of Medicine, Aizuwakamatsu Suzuki Masao 一般演題「耳鼻科・めまい」 5月25日(土) 16:00-16:48 座長:鶴 浩幸 011-Sat-P1-16:00鍼灸治療を行った末梢性めまい患者の経過 市立砺波総合病院 林 佳子 012-Sat-P1-16:12片側内耳点のローラー鍼刺激が回転負荷後の体の揺れに及ぼす影響 一般社団法人反応点治療研究会 吉田和平 013-Sat-P1-16:24突発性難聴に対する鍼治療の症例集積 埼玉医科大学東洋医学科 井畑真太朗 014-Sat-P1-16:36耳鳴に対する鍼灸治療で耳鳴質問(THI)のスコアが改善した1症例 関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科 坂口俊二 一般演題「COVID-19関連」 5月25日(土) 11:00-12:00 座長:恒松美香子 関 真亮 015-Sat-P2-11:00コロナ禍における鍼灸施術の状況に関する調査 (公社)全日本鍼灸学会臨床情報部安全性委員会 恒松美香子 016-Sat--P2-11:12新型コロナウイルス罹患後症状の咳に対する鍼の一症例 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 関真亮 017-Sat--P2-11:24知的障害者家族の心身変化にあはき師が継続的に関わった一症例 ここちめいど 飯田通容 018-Sat--P2-11:36コロナ禍が特別支援学校理療科臨床実習受療者の実態に及ぼす影響 筑波大学人間系(理療科教員養成施設)工藤滋 019-Sat--P2-11:48教育機関のはりきゅう治療室におけるコロナ禍前後の患者の変化 筑波大学理療科教員養成施設 沖中美世乃 一般演題「古典・経絡1」 5月25日(土) 14:00-15:00 座長:高山美歩橋本巌 020-Sat-P2-14:00『黄帝内経素問』(水熱穴篇第六十一)における四肢の治療 (学)花田学園日本鍼灸理療専門学校 木戸正雄 021-Sat-P2-14:12東洋医学と中医学の概論書記載の病証と系譜 日本鍼灸研究会 木場由衣登 022-Sat-P2-14:24日本の鍼灸臨床に即した十二経脈病証の確立のための調査研究 明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学講座 和辻直 023-Sat-P2-14:36経絡治療の創成時期について 日本鍼灸研究会 中川俊之 024-Sat-P2-14:48皮膚色と五臓、五味、五志との関連についてのパイロットスタディ 東京医療福祉専門学校教員養成科 仙田昌子 一般演題「古典・経絡2」 5月25日(土) 15:00-15:48 座長:和辻直 025-Sat-P2-15:00腎兪の穴位主治条文の検討 愛媛県立中央病院鍼灸治療室 大塚素子 026-Sat-P2-15:12穴位主治条文による上部督脈の検討 愛媛県立中央病院鍼灸治療室 阿部里枝子 027-Sat-P2-15:24エビデンスに基づく少沢( SI1)の主治症の検討 熊本針灸小雀斎 渡邉大祐 028-Sat-P2-15:36テキストマイニングによる『明堂経』主治と経脈病証分析の試み 九州看護福祉大学看護福祉学部鍼灸スポーツ学科 内田匠治 一般演題「産婦人科」 5月25日(土) 15:48-16:48 座長:田口玲奈 小井土善彦 029-Sat-P2-15:48 PCOSに対する鍼治療の1症例 きむら鍼灸 木村雅洋 030-Sat-P2-16:00 低AMHの難治性不妊症に対する不妊鍼灸治療の1症例 キュアーズ長町 小松範明 031-Sat-P2-16:12 妊産婦の悩み対する実態調査 レディース鍼灸院 HIROYULARI 高橋靜佳 032-Sat-P2-16:24 妊産婦の麻痺性イレウスにより緊急入院を要し鍼灸が著効した一例 熊本赤十字病院 総合内科 三谷直哉 033-Sat-P2-16:36 月経不順に対する鍼灸治療の効果 一般社団法人 JISRAM 田邊美晴 一般演題「顔面神経麻痺」 5月25日(土) 11:12-12:00 座長:山口智 034-Sat-P3-11:12陳旧性顔面神経麻痺後遺症に対する鍼治療の有用性 東京女子医科大学附属東洋医学研究所 高橋海人 035-Sat-P3-11:24末梢性顔面神経麻痺の鍼治療期間後に形成外科手術に至った1症例 鍼灸サロンZouzou 会沢いずみ 036-Sat-P3-11:36末梢性顔面神経麻痺に対し鍼治療併用で QOL向上に寄与できた1症例 鍼灸サロンハリシア 遠藤伸代 037-Sat-P3-11:48 Emotricsで表情筋麻痺を評価した末梢性顔面神経麻痺患者の1症例 埼玉医科大学東洋医学科 堀部豪 一般演題「ペイン・鎮痛」 5月25日(土) 14:00-15:24 座長:皆川陽一 加納 舞 038-Sat-P3-14:00訪問鍼灸が運動機能及び ADLにおよぼす影響 つじい鍼灸整骨院 塩田誠也 039-Sat-P3-14:12舌痛症に鍼灸、漢方併用が有効だったと思われた一症例 北里大学北里研究所病院漢方鍼灸治療センター 伊東秀憲 040-Sat-P3-14:24頭部の帯状疱疹後神経痛に対して鍼灸治療が奏功した1症例 東京医療福祉専門学校教員養成科臨床専攻課程 大内晃一 041-Sat-P3-14:36鍼灸治療と傾聴で関節リウマチの症状改善をサポートした一症例 ここちめいど 屋由美 042-Sat-P3-14:48鍼治療は慢性痛の電流知覚閾値に影響する 昭和大学医学部麻酔科学講座 松本美由季 043-Sat-P3-15:00顎関節症の痛みに対する鍼治療の効果の一症例 東京有明医療大学大学院保健医療学研究科鍼灸学分野 山田隆寛 044-Sat-P3-15:12抗がん剤副作用における味覚異常・手足の痺れへの鍼灸の効果 柳谷素霊記念東洋鍼灸治療院 毛塚巳恵 一般演題「灸」 5月25日(土) 15:24-17:00 座長:冨田賢一 松本毅 045-Sat-P3-15:24 市販加工灸の特性について(I) 千葉大学柏の葉鍼灸院 後藤唯 046-Sat-P3-15:36 市販加工灸の特性について(2) 千葉大学医学部附属病院 松本毅 047-Sat-P3-15:48 電気灸と温灸による脳内機能的結合の変化 東明治国際医療大学大学院 永田宏子 048-Sat-P3-16:00 施灸面の角度が燃焼する台座灸およびその周囲の温度に与える影響 九州医療科学大学 社会福祉学部 スポーツ健康福祉学科 冨田賢一 049-Sat-P3-16:12 灸刺激による脾臓サイトカイン産生誘導への神経系の関わりの検討 明治国際医療大学大学院 大下紘平 050-Sat-P3-16:24 台座灸の製造安定性について 第1報 Cubic Lab. 糸井信人 051-Sat-P3-16:36 台座灸の製造安定性について 第2報 国際メディカル専門学校 谷口美保子 一般演題「スポーツ領域」 5月25日(土) 11:00-12:00 座長:近藤宏 泉重樹 052-Sat-P4-11:00女子陸上長距離選手における大腿骨疲労骨折の1症例 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 村越祐介 053-Sat-P4-11:12 灸セルフケアが認知反応時間に与える影響−第2報- 森ノ宮医療大学 医療技術学部 鍼灸学科 宮武大貴 054-Sat-P4-11:24 アメリカンフットボールチームにおける鍼治療の試み 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 藤本英樹 055-Sat-P4-11:36 スポーツ外傷・障害に対する鍼治療の疫学調査 東京有明医療大学大学院 保健医療学研究科 鍼灸学分野 石井輝 056-Sat-P4-11:48 中学生へのスポーツを通した東洋医学的観点からの健康教育の試み 明治国際医療大学 鍼灸学部 吉田行宏 一般演題「超音波1」 5月25日(土) 14:00-15:12 座長:林健太朗 藤本英樹 057-Sat-P4-14:00安全性・再現性の高い坐骨神経鍼通電療法の電気生理学的検討 筑波技術大学保健科学部保健学科鍼灸学専攻 渡邊健 058-Sat-P4-14:12超音波診断装置を用いた呼吸による腎臓深度の検討【第2報】 鈴鹿医療科学大学大学院医療科学研究科 大森祐輝 059-Sat-P4-14:24超音波画像診断装置を用いた後頭下筋群への安全刺入深度の検討 名古屋トリガーポイント鍼灸院 高橋健太 060-Sat-P4-14:36エコーを用いた小殿筋・関節包靱帯の安全深度と範囲の検討 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 母袋信太郎 061-Sat-P4-14:48超音波画像装置を用いた女性の腸骨筋刺鍼点の検討 東京有明医療大学附属鍼灸センター 小田木悟 062-Sat-P4-15:00超音波画像診断装置を用いた低周波鍼通電時の筋収縮動体評価 早稲田大学スポーツ科学学術院 前道俊宏 一般演題「超音波2」 5月25日(土) 15:12-16:24 座長:小川一 西村健作 063-Sat-P4-15:12後頚部痛に対し1回のエコー下鍼治療により著効した症例 一鍼灸院 瀧本一宏 064-Sat-P4-15:24超音波画像診断装置を利用した腰部の可動域変化に対する鍼治療 BODYREMAKER鍼灸治療院 種市敢太 065-Sat-P4-15:36超音波画像診断装置を利用した腰痛に対する皮下組織への介入 鍼灸院My+ 近藤海斗 066-Sat-P4-15:48経絡内部のエコー装置による血管の可視化(第2報) 日本鍼灸理療専門学校 橘綾子 067-Sat-P4-16:00深部トリガーポイントに対しエコー下鍼治療が有効であった1症例 名古屋トリガーポイント鍼灸院 前田寛樹 068-Sat-P4-16:12左殿部および鼠径部痛へ超音波ガイド下鍼通電療法が奏功した1例 合同会社青山かがやき鍼灸整骨院 西村健作 一般演題「美容鍼」 5月25日(土) 16:24-17:00 座長:中村優 069-Sat-P4-16:24 非接触型 3Dカラースキャナーを用いた美容鍼灸の効果検証 一般財団法人 日本美容鍼灸マッサージ協会 上田隆勇 070-Sat-P4-16:36 八卦頭鍼法による顔面・頸部の皮膚粘弾性への肌美容の検討 関西医療大学 東洋医学研究センター 池藤仁美 071-Sat-P4-16:48 カラースケールガムを使用した鍼治療による咀嚼機能評価モデル 湘南慶育病院 青木奈美江 一般演題「腰痛1」 5月26日(日) 9:00-9:48 座長:井上基浩 072-Sun-P1-9:00 慢性腰痛者に対するトリガーポイントへの鍼刺激時間の検討 関西医療大学 保健医療学部 はり灸・スポーツトレーナー学科 北川洋志 073-Sun-P1-9:12 腰痛の背景に心理状態が存在する可能性に関する多面的探索 中央大学理工学部 渡邉真弓 074-Sun-P1-9:24 非特異的腰痛患者の鍼治療効果に影響を及ぼす因子の探索 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 南雲世以子 075-Sun-P1-9:36 慢性の腰下肢痛に対する鍼治療 東京大学 医学部附属病院 リハビリテーション部 小糸康治 一般演題「腰痛2」 5月26日(日) 9:48-10:48 座長:北川洋志 小糸康治 076-Sun-P1-9:48腰部脊柱管狭窄症が北里方式経絡治療で改善した一症例 北里研究所病院漢方鍼灸センター鍼灸科 富澤麻美 077-Sun-P1-10:00初診時車椅子で来院した腰部脊柱管狭窄症の鍼治療の一症例 東京有明医療大学附属鍼灸センター 判治由弘 078-Sun-P1-10:12下肢神経痛に対し漢方治療と鍼灸施術の併用で効果を示した一例 東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座 小泉直照 079-Sun-P1-10:24上・中位腰椎の神経根障害と推測された腰下肢痛の一症例 東京有明医療大学附属鍼灸センター 山口紗和 080-Sun-P1-10:36痺れを伴う慢性腰痛に鍼通電療法が有効であった1症例 筑波技術大学大学院技術科学研究科保健科学専攻鍼灸学コース Bolot kyzy Shirin 一般演題「実態調査1」 5月26日(日) 10:48-12:00 座長:今村頌平 仲嶋隆史 081-Sun-P1-10:48 医療機関における鍼灸治療の実態と養成校への要望に関する調査 森ノ宮医療大学 医療技術学部 鍼灸学科 松熊秀明 082-Sun-P1-11:00 eスポーツプレイヤーが抱える身体愁訴に関するアンケート調査 大阪府鍼灸マッサージ師会 佐藤想一朗 083-Sun-P1-11:12 東京医療専門学校教員養成科附属施術所の患者動態調査 東京医療専門学校 教員養成科 栗林晃大 084-Sun-P1-11:24 はりきゅう・あん摩・柔道整復利用者のがん検診の受診状況 岡山大学 医学部 疫学・衛生学分野 松木宣嘉 085-Sun-P1-11:36 大学附属鍼灸施術所におけるインシデント・アクシデントの分析 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 菅原正秋 086-Sun-P1-11:48 埼玉医科大学病院における鍼治療受診患者の実態調査 埼玉医科大学病院 東洋医学科 田口知子 一般演題「実態調査2」 5月26日(日) 14:00-15:12 座長:宮崎彰吾 高野道代 087-Sun-P1-14:00世界マスターズ水泳選手権 2023九州大会ボディケア報告 東雲鍼灸治療院 仲嶋隆史 088-Sun-P1-14:12強化クラブ女性アスリートに対する健康状態や鍼灸に関する調査 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 高野道代 089-Sun-P1-14:24開業鍼灸院における鍼灸施術を離脱する要因のアンケート調査 ここちめいど 岩澤拓也 090-Sun-P1-14:36統合医療施設の卒後研修修了者を対象としたアンケート調査 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター 櫻庭陽 091-Sun-P1-14:48湘南慶育病院鍼灸科における受診動機の解析 湘南慶育病院 小川修平 092-Sun-P1-15:00オンラインを活用した開業鍼灸師による共同研究の実施(第2報) ここちめいど 加藤久仁明 一般演題「実態調査3」 5月26日(日) 15:12-16:12 座長:宮嵜潤二 仲村正子 093-Sun-P1-15:12無料温灸器配布によるレディース鍼灸認知への影響 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 仲村正子 094-Sun-P1-15:24地域鍼灸院と漢方診療を行う医師との医療連携の取り組み 東京女子医科大学附属東洋医学研究所 水野公恵 095-Sun-P1-15:36鍼灸院におけるうつと不安症状を有する患者の実態調査 (第3報) ここちめいど 米倉まな 096-Sun-P1-15:48看護介護職員が有する自覚症状に対する自己対処法アンケート調査 公益財団法人積善会曽我病院 足立恵子 097-Sun-P1-16:00冷え症とバター摂取頻度との関連:横断研究 慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学 宮嵜潤二 一般演題「精神科領域」 5月26日(日) 9:00-10:00 座長:伊藤剛 脇英彰 098-Sun-P2-9:00 鍼灸臨床における HADスケールを用いた不安・抑うつ調査 鈴鹿医療科学大学 鍼灸治療センター 光野諒亮 099-Sun-P2-9:12 ミラーニューロンに着目した自閉症スペクトラム障害の鍼灸治療法 一般財団法人 ファジィシステム研究所 山川烈 100-Sun-P2-9:24 パニック症患者に対する治療に重要と感じたこと ここちめいど 外松恵三子 101-Sun-P2-9:36 うつ病患者に対する鍼療法と認知行動療法の併用を試みた一症例 帝京平成大学 ヒューマンケア学部 鍼灸学科 脇英彰 102-Sun-P2-9:48 鍼灸と湯液による治療が奏効した難治性身体表現性障害の1症例 北里大学 北里研究所病院 漢方鍼灸治療センター 伊藤剛 一般演題「睡眠領域」 5月26日(日) 10:00-10:48 座長:藤田洋輔 103-Sun-P2-10:00うつ症状に対する現代医学的考察による鍼刺激の評価法 大阪公立大学都市健康・スポーツ研究センター 山下和彦 104-Sun-P2-10:12睡眠障害に対する灸セルフケアの血圧に与える影響 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 鍋田智之 105-Sun-P2-10:24中途覚醒を訴える患者に対する鍼灸治療と灸セルフケア実施の1例 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 堀川奈央 106-Sun-P2-10:36挙児希望患者が有していた睡眠障害に対する鍼通電療法の効果 ここちめいど 田中隆一 一般演題「自律神経系」 5月26日(日) 10:48-11:36 座長:二本松明 107-Sun-P2-10:48かかりつけ鍼灸師として患者の命と生活の質を守る 中村整骨院 中村吉伸 108-Sun-P2-11:00パーキンソン病患者の自律神経症状が経絡治療で軽快した一例 鍼灸アキュミット 大谷倫恵 109-Sun-P2-11:12鍼刺激が呼吸数に及ぼす影響とHRV解析との関係 帝京平成大学健康科学研究科 廣井寿美 110-Sun-P2-11:24局所治療に遠隔部刺激を加えた時の心拍数・血圧への影響の検討 履正社国際医療スポーツ専門学校 古田高征 一般演題「教育1」 5月26日(日) 14:00-15:12 座長:戸村多郎 成島朋美 111-Sun-P2-14:00あはき教員養成機関の学生への生成 AIの認識や活用状況等の検討 明治国際医療大学基礎教養講座 河井正隆 112-Sun-P2-14:12鍼灸教育において教材の特性が及ぼす学習に及ぼす影響について 明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科 宮城凌央 113-Sun-P2-14:24統合医療講義を受けて医学生は何に対し興味や関心を示したか? 東北大学病院総合地域医療教育支援部 村上慶泰 114-Sun-P2-14:36解剖学学習アプリの月次ダウンロード変化とユーザー特徴の分析 関西医療大学大学院 戸村多郎 115-Sun-P2-14:48呉竹学園東洋医学臨床研究所での臨床実習における学びの検討 呉竹学園東洋医学臨床研究所 紀平晃功 116-Sun-P2-15:00鍼灸の歴史教育に現代の視点を取り入れた教育効果 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 谷口博志 一般演題「教育2」 5月26日(日) 15:12-15:36 座長:中村真通 117-Sun-P2-15:12脳卒中生活期患者への鍼灸施術を実現する職員研修に関する調査 脳梗塞リハビリセンター 石上邦男 118-Sun-P2-15:24鍼灸養成課程における多職種連携教育の必要性 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター 成島朋美 119-Sun-P2-15:36伝統医療従事者に必要なコンピテンシー 仙台赤門医療専門学校安齋昌弘 一般演題「教育3」 5月26日(日) 15:48-16:36 座長:河井 正隆 120-Sun-P2-15:48 グラフ文書を用いた鍼灸師向けオンライン学習支援に関する検討 玉川大学工学部 柴田健一 121-Sun-P2-16:00 脈診訓練法の開発(第 25報) 日本鍼灸理療専門学校 光澤弘 122-Sun-P2-16:12 山崎良齋著『最新鍼灸医学教科書』における「鍼灸学」について 明治東洋医学院専門学校 鍼灸学科 矢島道子 123-Sun-P2-16:24 オンライン授業と対面授業での習熟度比較 明治東洋医学院専門学校 中村沙樹 一般演題「消化器領域」 5月26日(日) 9:00-10:12 座長:谷口授 石崎直人 124-Sun-P3-9:00がん性疼痛患者の便秘症に対する鍼灸治療の1症例 香川大学医学部公衆衛生学 神田かなえ 125-Sun-P3-9:12 質問紙による若年女性の便秘の要因分析 関西医療学園専門学校 中井一彦 126-Sun-P3-9:24 胃切除後の嘔吐に鍼治療が奏功したことで退院が可能となった1例 福島県立医科大学 会津医療センター 鍼灸研修 山田雄介 127-Sun-P3-9:36 鍼灸治療が著効した機能性ディスペプシア患者の1症例 ここちめいど 杉山英照 128-Sun-P3-9:48 鍼灸研究を視野に入れた胃音と胃電図の同時記録 帝京平成大学健康科学研究科 長嶺澄佳 129-Sun-P3-10:00 標準治療に奏功しなかった上部消化管愁訴に対する鍼灸治療の症例 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 谷口授 一般演題「中枢神経系」 5月26日(日) 10:12-11:36 座長:松本淳 武田真輝 130-Sun-P3-10:12脳卒中急性期に生じた持続性吃逆に対する鍼治療の効果 市立砺波総合病院 武田真輝 131-Sun-P3-10:24脳卒中患者の評価ツール「鍼灸ケアシート」の特徴(第一報) 脳梗塞リハビリセンター 宮澤勇希 132-Sun-P3-10:36痙縮に伴う腹部絞扼感に対する鍼灸治療の一症例 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター 陣内哲志 133-Sun-P3-10:48片麻痺の上肢痙縮に対して鍼治療を行い関節可動域が改善した一例 東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 神谷哲治 134-Sun-P3-11:00意識障害軽減と呼吸安定に鍼治療が有用であった重症頭部外傷例 岐阜大学医学部附属病院第二内科 松本淳 135-Sun-P3-11:12座位保持が困難な頸部ジストニア患者に対しての鍼治療 スピカ鍼灸・マッサージ院 高橋護 136-Sun-P3-11:24上肢の震えが著明で ADLに支障をきたした上肢ジストニアの一症例 関西医療大学神経病研究センター 東内あすか 一般演題「運動器1」 5月26日(日) 14:00-14:48 座長:水出靖 137-Sun-P3-14:00頚部経穴の内部の可視化及び 3Dモデルの製作(第 2報) 日本鍼灸理療専門学校 小川一 138-Sun-P3-14:12運動負荷による筋硬度変化と鍼通電が筋硬度に与える影響について 関西医療大学大学院保健医療学研究科 山下勝大 139-Sun-P3-14:24慢性肩こり患者における鍼治療の効果の意味に関する質的研究 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 高梨知揚 140-Sun-P3-14:36肩こりに対する鍼治療の影響 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 林健太朗 一般演題「運動器2」 5月26日(日) 14:48-15:36 座長:高梨知揚 141-Sun-P3-14:48東洋医学的な視点で治療した下肢痛の1例 市立砺波総合病院 土方彩衣 142-Sun-P3-15:00太白穴への円皮鍼刺激がヒラメ筋の筋緊張に与える変化の検討 健康スタジオキラリKirari鍼灸・マッサージ院 山崎正史 143-Sun-P3-15:12太白穴への置鍼刺激がヒラメ筋の筋緊張に与える変化 健康スタジオキラリKirari鍼灸・マッサージ院 吹野将大 144-Sun-P3-15:24足関節可動域に対する鍼治療効果のレビュー 九州看護福祉大学看護福祉学部鍼灸スポーツ学科 古庄敦也 一般演題「泌尿器科領域」 5月26日(日) 15:36-16:00 座長:伊藤千展 145-Sun-P3-15:36膀胱痛症候群に鍼灸治療が有効であった1症例 北里研究所病院漢方鍼灸治療センター鍼灸科 井田剛人 146-Sun-P3-15:48夜間頻尿に対するへの鍼治療の1症例(第2報) 東京有明医療大学附属鍼灸センター 加持綾子 一般演題「鍼ー基礎」 5月26日(日) 9:00-9:48 座長:谷口博志 147-Sun-P4-9:00 鍼刺激のイメージは脊髄前角細胞の興奮性を増加させる 北海道鍼灸専門学校 二本松明 148-Sun-P4-9:12 変形性膝関節症モデルラットに対する鍼通電の効果 昭和大学大学院 医学研究科 生体制御学分野 チュロウンバト オユンチメグ 149-Sun-P4-9:24 鍼刺激による膝前十字靭帯損傷予防の可能性について 関西医療大学 はり灸・スポーツトレーナー学科 山口由美子 150-Sun-P4-9:36 四肢と体幹を模した生体モデルへの鍼通電状況のシミュレーション 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 木村友昭 一般演題「環境感染・安全性」 5月26日(日) 9:48-10:48 座長:菅原正秋 新原寿志 151-Sun-P4-9:48施術所における災害対策の調査報告 公益社団法人日本鍼灸師会研修委員会 今村頌平 152-Sun-P4-10:00衛生的刺鍼のための鍼管のアイデア 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 新原寿志 153-Sun-P4-10:12上肢の肢位の違いが背部経穴の鍼の安全刺入深度に影響を与えるか 平成医療学園専門学校鍼灸師科 佐原俊作 154-Sun-P4-10:24安全性を配慮し電気ていしんコードで横隔神経刺激を行った1症例 東北大学大学院医学系研究科地域総合診療医育成寄附講座 石井祐三 155-Sun-P4-10:36衛生的で安全性の高いクリーンニードルテクニックの特許開発 全国出張はりきゅう院 平岡光一 一般演題「社会鍼灸学」 5月26日(日) 10:48-12:00 座長:今井賢治 木村 友昭 156-Sun-P4-10:48 高額訴訟事例から後頸部刺鍼のトラブル回避についての考察 森ノ宮医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 尾崎朋文 157-Sun-P4-11:00 プレゼンティーズムに対する鍼灸治療その1 株式会社はあとふるあたご はあとふる鍼灸マッサージ治療院 高田光俊 158-Sun-P4-11:12 中国における江南地域の中医鍼灸について 大阪医療技術学園専門学校 奈良上眞 159-Sun-P4-11:24 GHQによる「鍼灸禁止令」の歴史的意義 呉竹鍼灸柔整専門学校 奥津貴子 160-Sun-P4-11:36 令和6年能登半島地震における鍼灸マッサージ施術導入までの報告 常葉大学浜松キャンパス 健康プロデュース学部 健康鍼灸学科 村上高康 161-Sun-P4-11:48 災害支援活動からみえた鍼灸マッサージ師の資質 DSAM 堀口正剛 一般演題「小児科領域」 5月26日(日)14:00-15:00 座長:尾崎朋文 桐浴眞智子 162-Sun-P4-14:00頭痛により不登校となった中学生男児への小児はり灸治療の1症例 どんぐり鍼灸室 山口あやこ 163-Sun-P4-14:12小児のアトピー性皮膚炎のそう痒感にてい鍼治療が著効した1症例 こうたの森のはり灸院 森野弘高 164-Sun-P4-14:24ストレスによる胸痛のある児に対する鍼治療 大阪医科薬科大学病院麻酔科・ペインクリニック 桐浴眞智子 165-Sun-P4-14:36伊勢地域における「疳切り」の調査 じねん堂はり灸治療院 西出隆彦 166-Sun-P4-14:48症状の聴取に工夫を要した小児片頭痛に対する鍼灸治療の一症例 東京有明医療大学附属鍼灸センター 曽田真由美 一般演題「頭顔面部の疼痛」 5月26日(日) 15:00-15:48 座長:石山すみれ 167-Sun-P4-15:00左側上下顎臼歯部の痛みに対して鍼治療を行った1症例 大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科 高橋沙世 168-Sun-P4-15:12持続性特発性顔面痛と診断された患者に対する鍼治療の1症例 大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科 酒井浩司 169-Sun-P4-15:24オトガイ神経知覚異常患者に対する鍼灸治療 大阪大学歯学部付属病院歯科麻酔科 山本伸一朗 170-Sun-P4-15:36下歯槽神経損傷に伴う知覚鈍麻・痺れに対する鍼治療の1症例 埼玉医科大学東洋医学科 山本彩子 一般演題「免疫・アレルギー」 5月26日(日) 15:48-16:36 座長:江川雅人 171-Sun-P4-15:48 鍼灸刺激による口腔内免疫活性 の変化 九州看護福祉大学 看護福祉学部 鍼灸スポーツ学科 花田雄二 172-Sun-P4-16:00ギラン・バレー症候群によるしびれに鍼治療が有効であった1症例 福島県立医科大学会津医療センター鍼灸研修 宮田紫緒里 173-Sun-P4-16:12上頸神経節置鍼法を用いたアトピー性皮膚炎の一症例(第2報) 山田鍼灸治療院 山田幹夫 174-Sun-P4-16:24アトピー性皮膚炎に対する鍼治療 名古屋平成看護医療専門学校はり・きゅう学科 辻大恵 学生発表「基礎・臨床」 5月25日(土) 10:50-11:30 座長:岡田岬 175-Sat-G-10:50 鍼灸施術に応用できる腰痛に関連する要因の検討 帝京平成大学 ヒューマンケア学部 鍼灸学科 鈴木宥翔 176-Sat-G-11:00 ヒトにおける足三里への鍼通電刺激は全血 LPS耐性を変容するか? 帝京平成大学 ヒューマンケア学部 鍼灸学科 藤川新大 177-Sat-G-11:10 鍼刺激による精巣機能への効果ついて 関西医療大学 保健医療学部 はり灸・スポーツトレーナー学科 武井陽星 178-Sat-G-11:20 鍼刺激による男性型脱毛症への効果について 関西医療大学 保健医療学部 はり灸・スポーツトレーナー学科 西川陽菜 学生発表「調査・フィールドワーク」 5月25日(土) 11:30-12:00 座長:中村優 179-Sat-G-11:30肩こり・腰痛患者数と気象データとの相関 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 荒瀬巧麻 180-Sat-G-11:40教科書に記載される五臓病証 大分医学技術専門学校鍼灸師科 久保田晃一 181-Sat-G-11:50疼痛に悩む育児中の女性に有用な対策の検討 帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 大澤佑斗 The Program of The 73rd Annual Congress of The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion, May 24~26, 2024, Miyagi 特別演題抄録 大会会頭講演 大会副会頭講演 基調講演 特別講演1〜3 教育講演1〜9 日韓シンポジウム シンポジウム1〜7 パネルディスカッション1〜3 教育セミナー ワークショップ1〜2 実技セミナー1〜8 特別企画コンセンサスミーティング 特別提言 報告1 教育研修部企画 報告2 JLOM部/辞書用語部/AMED研究班/鍼灸電子カルテ会議合同報告会 市民公開講座 サロン企画 大会会頭講演 座長:(公社)全日本鍼灸学会会長 若山育郎 PL鍼灸でつながる診療、教育、研究 高山真 東北大学病院総合地域医療教育支援部(総合診療科、漢方内科) 2024年、第73回公益社団法人全日本鍼灸学会学術大会にご参加をいただきまして、心から感謝申し上げます。2019年から蔓延した新型コロナウイルス感染症の間、私が所属しております東北大学病院では、宮城県内の広域感染対策を行い、特に当部局では軽症者等宿泊療養施設の医療支援を行ってまいりました。その経験から、これまでに経験のない疾病に対して、歴史的観点から伝統医学を活用することで貢献できることを感じました。コロナによる社会制限の一方で、オンラインを用いた新たな技術展開により、人の移動無しに、つながりを持つことが可能にもなりました。医療においても、遠隔診療などが導入され、より簡便にアクセスができ、提供される時代になってきました。便利になる一方で、人と人との直接的なつながりも見直されてきております。伝統医学の本質は、患者と直接向きあい、接し、個人の体質や病態を把握し、思いをくんで通じ合い、患者に合う治療、施術をするところにあります。多様化する社会において、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、医師、歯科医師など、それぞれの立場で鍼灸に携わる方々がつながり、そのつながりから各人の専門性をいかした医療連携が展開されることが期待されます。さらに、医学教育、歯学教育、薬学教育、看護学教育の各モデル・コア・カリキュラムに漢方医学教育が取り上げられたこともあり、日本の伝統医学としての鍼灸も今後多くの医療職種の理解が望まれるステージに入りました。他職種の中には、教育者、研究者、臨床家など様々な意味も含まれます。教育機関の鍼灸師、研究を行い情報発信する鍼灸師、臨床で高い技術を持ち施術を行う鍼灸師、など多くの立場で伝統医学を伝え、発展させる方々のそれぞれの立場のつながりも重要です。高い施術技術が教育され、臨床の現場における疑問から研究が進み、研究結果が各施術に応用されるなど、教育、研究、臨床はそれぞれの立場があるものの、一体となって鍼灸のレベルを底上げするものと考えています。世界的には、伝統医学として鍼灸が非常に広く活用されてきております。その臨床効果も日本から発信され、医療現場での活用も日々広がってきております。今後の鍼灸の発展を祈念しつつ、私が歩んできた医師の立場から鍼灸に向き合う姿勢をお話しさせていただきます。 キーワード:鍼灸、漢方、連携、活用、相互理解 ●略歴 1997年宮崎医科大学医学部医科学科卒業 1997年山形市立病院研修 2001年石巻赤十字病院循環器科 2010年東北大学大学院医学系研究科医学博士課程修了、ミュンヘン大学麻酔科留学 2011年東北大学大学院医学系研究科先進漢方治療医学講座講師 2015年東北大学病院総合地域医療教育支援部准教授・副診療科長 2019年東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座特命教授 大会副会頭講演 座長:明治国際医療大学 矢野忠 VPS家庭鍼灸医療学と鍼灸院経営 中沢良平 一寸法師ハリ治療院 “医”は「医学」と「医療」に分けられることがあります。これに倣い“鍼灸”を分けるとしたら「鍼灸医学」と「鍼灸医療」になります。また、「家庭医療」という分野があり、「家庭医療学」という学問も存在します。  今回の講演では、家庭医療の視点を持った鍼灸医療学という内容で「家庭鍼灸医療学」と名付け、その考えを披露したいと思います。さらに“経営”という意味には「継続的・計画的に事業を遂行すること」とあり、「経営学」としては「企業経営の経済的・技術的・人間的諸側面を研究する学問」(広辞苑)と記されています。鍼灸院経営には、もちろん高度な技術としての治療が求められますが、治療家として人間的諸側面の問題も扱わなければなりません。鍼灸の知識と技術、そして人間的な資質向上のバランスが取れた経営が求められることは今も昔も同じです。  家庭医療は、「患者中心の医療の方法( Patient-Centered Medicine)」「家族指向型ケア」「地域包括プライマリ・ケア」の 3つから成り立つとされます。家庭医療の定義はプライマリ・ケアの定義とほぼ同じとされ、家庭医療学を学ぶことはプライマリ・ケアを学ぶということにもなります。  自身の地域に役立つ鍼灸院を経営するには治療技術のみならず、家庭医療を学び、患者中心の医療の方法や家族指向型ケア、コミュニティアウトリーチなどを用いての地域包括プライマリ・ケアの実践も必要です。人間的諸側面を研究するのに家庭医療の学問は役立ちます。  人口減少が進む我が国では、そうした家庭医療を実践する鍼灸院が今後求められると考えます。皆さんと一緒に国民医療としての鍼灸について考えたいと思っています。 キーワード:家庭医療学、プライマリ・ケア、鍼灸院経営 ●略歴 【学歴】 1981年法政大学文学部卒業 1983年日本鍼灸理療専門学校卒業 【現職】公益社団法人全日本鍼灸学会理事・東北支部長一般社団法人福島県鍼灸師会監事兼相談役一寸法師ハリ治療院院長 【所属学会】一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会一般社団法人日本東洋医学会一般社団法人日本災害医学会 【受賞】 2017年厚生労働大臣表彰 2019年福島県知事表彰 基調講演 座長:仙台赤門医療専門学校 浦山久嗣 KL東北の意味と意義 浦山きか 東北大学学術資源研究公開センター史料館 【問題の所在と方法】所与の「東北に関して考察する」というテーマに対し、中国の思想書を対象に「東北」という言葉の意味を探るとともに、日本医学史における「東北(地方)」の意義について、その内容と位置づけを考える。 【結果】 1.中国思想における「東北」の意味 「東北」は、「日の出づる処」であった。夏至の日の出が北よりであることから、『淮南子』天文訓に 「(日)夏至出東北維」といい、『論衡』説日に「案夏日長之時、日出東北」という。また『史記』封禅書に「東北」を「神明之舎」と言い換える。これを陰陽で表現すれば、『春秋繁露』陽尊陰卑に「故陽気出於東北」といい、『礼記』郷飲酒義に「天地温厚之気、始於東北」と位置づけられた。時間と空間を十二支によって表現する場合は、「東北」は「丑寅」の間にあり、八卦で示せば「艮」に当たる(『周易』説卦・正義)。時間においては一日の始まりを示すとともに、季冬から孟春へと移る一年の始まりに当たるため、循環の境目を意味した。この境目が疫鬼等が出現するところと考えられ、またそれらを祓い封じるために、東北は「鬼門」とされたものらしく、漢代以降広く行われた。 2.日本医学史における「東北」の意義 伊達藩においては、伊達政宗は、医学に造詣が深く、自身も脈診を行い、藩医に処方を求める書状を送っていた。米沢上杉藩(現在の山形県)や伊達藩の支藩である一関藩(岩手県)においては救荒書が編纂された。近年は米沢上杉藩の藩医である堀内家についての研究が進められた。日本が西洋医学と文化を受容する過程において、「東北地方」の果たした役割は大きく、一関藩の建部家と大槻家は特筆すべきである。 『解体新書』の挿図を描いた小田野直武は角館(秋田県)の出身であり、シーボルトに学んだ高野長英も水沢藩(岩手県)の出身である。 『厚生新編』(『生計纂要』)は、大槻玄沢がフランス人・ショメールの著わしたオランダ語訳『日用百科辞典』の幕府に命じられ翻訳し、刊行されなかったが、写本が宮城県図書館伊達文庫に保存されている。【考察】日の出の位置という自然現象を踏まえ、「東北」は「日(陽気)の出づる処」と考えられていた。十二支による表現の中で「鬼門」が現れ、定着していった。また、日本が西洋医学と文化を受容する過程において、東北地方の果たした役割と後世への影響は大きかった。【利益相反】利益相反に該当する内容は含まれない。 キーワード:東北、日本医学史、中国思想 ●略歴 2014年より東北医科薬科大学非常勤講師 2014年より森ノ宮医療大学客員教授 2018年より東北大学史料館協力研究員学位:博士(文学、東北大学)専門分野:医学史研究テーマ:東アジアの伝統医学主著:『漢文で読む『霊枢』 (森ノ宮医療大学出版部、2006年、第21回間中賞受賞) 『中国医書の文献学的研究』(H25年度科研費研究公開費・学術図書205010、汲古書院) 特別講演1 座長:全日本鍼灸学会東北支部長 中沢良平 SL1東日本大震災時の多組織・多職種連携に基づく災害保健医療活動 石井 正 東北大学病院総合地域医療教育支援部 東日本大震災により宮城県石巻市、東松島市、女川町からなる石巻医療圏は最大被災地となったが、圏内唯一の災害拠点病院で免震構造を備えた石巻赤十字病院は、石巻市内 86の医療施設のうちただ一つ 100 %機能を維持しえた医療施設で、かつ高次対応可能な施設でもあったため必然的に現地医療救護活動の拠点本部となり、当時同院の医療社会事業部長で宮城県災害医療コーディネーターでもあった筆者が、「石巻医療圏」の医療救護活動のマネージメントを担うことになった。また石巻市の行政や保健所も被災し、発災直後にその機能が著しく低下したため、本来行政や保健所が担うべき業務についても当初は筆者らが深く関与することとなった。この震災において石巻赤十字病院は、発災後 4分で災害対策本部を立ち上げ、トリアージエリア設置完了まで要した時間はわずか 57分であった。その後、地域からの患者を全例応需するだけでなく、様々な組織と連携し、同院へ避難してきた多数の在宅酸素患者、妊婦、透析患者などに有効に対応する独自のシステムを構築するなど様々な工夫をし、また東北大学病院と密に連携して患者の適切な後方搬送を行った。 2012/3/20、東北大学、医師会、自治体等の関係機関と直接調整し、石巻の支援に入った全ての組織の救護チームを一元化した「石巻圏合同救護チーム」を立ち上げ、圏内に当初 300か所以上あった避難所全てに対し環境・衛生状態・傷病者内訳などを項目としたアセスメントを継続的に行い、被災情報を収集し対応することとした。被害が甚大かつ広域であったため、石巻医療圏を 14のエリアに分け、エリアごとに必要に応じて救護チームを割り振る「エリア・ライン制」を敷いた。主業務となる避難所巡回診療活動の他にも、収集した被災情報に基づき自動ラップ式トイレの配布、無医地域における 2か所の救護所の設置、回復遅延地域における4か所の救護所の設置、処方薬のデリバリーシステムの構築など、亜急性期から慢性期にかけて、多組織・多職種と連携しながら被災地のヘルスケアにかかる様々な施策を実施した。 9/30に合同救護チーム活動終了まで、登録延べ 955チームが参加し、カバーした避難所数は最大 328ヶ所( 46480名)、避難所や定点救護所で診療した延べ人数は 53696名であった。本講演では、これらの経験を紹介するとともに、今後のクライシスへの対応の tipsについても述べてみたい。 キーワード:東日本大震災、クライシス対応、多組織連携、多職種連携 ●略歴 1989年東北大学医学部卒業 1998年東北大学大学院医学系研究科(外科学専攻)修了 1998年岩手県立遠野病院救急医療科長 2002年石巻赤十字病院第一外科部長 2007年石巻赤十字病院医療社会事業部長 2012年現職 特別講演2 座長:中和医療専門学校 清水洋二 SL2性差医療 小宮ひろみ 国立成育医療研究センター女性の健康ナショナルセンター設立準備室 性差医療とは、男女比が圧倒的に一方の性に傾いている病態、発症率はほぼ同じでも、男女間で臨床的に差をみる疾患、生理的、生物学的解明が男性または女性で遅れている病態、社会的な男女の地位と健康の関連などに関する研究の結果を疾病の診断、治療法、予防措置へ反映することを目的とした医療と定義されている。すなわち、性差医療では、種々の疾患や病態での受療率、罹患率、死亡率に注目し、さらに男女間で臨床的に差をみる疾患(代表例としては、虚血性心疾患がある。虚血性心疾患は閉経前の女性では、男性に比較すると罹患率は低いが、閉経後 10年が経過すると、男性にキャッチアップし、最終的には発症率は男女で変わらない)に注目し原因分析を行う。さらに、性差医療は、生物学的性だけではなく、ジェンダーを重視する医療である。性差医療を実践する臨床の場が女性外来である。女性外来は、従来の女性医療にジェンダーの視点を導入した。日本に女性外来が初めて設置されてから 20年以上が経過したが、患者を心身両面から総合的な診療を提供し、ジェンダーやライフステージを意識した医療を実践している。女性外来の特徴として、完全予約制、診療の時間を十分に確保し(初診 30分以上)、担当医師も同性が話しやすいという患者さんも多く、ほぼ女性医師が担当している。当院の女性外来は 2004年に設置され、 2008年性差医療センターとして診療体制を強化した。現在、婦人科、心身医療科、乳腺外科、内科、歯科口腔外科の女性医師が、 one-stop型の総合医療を提供している。当センターの特徴は Narrative Based Medicineの実践、漢方療法、多職種連携である。特にコ・メディカルは専任の看護師と医療事務が配置され、トリアージや電話対応など重要な役割を果たしている。女性外来の意義を理解し、患者に対応できるコ・メディカルの存在は治療効果を向上する。女性は補完代替療法の有用性が報告されており、女性外来は、生物学的性差とジェンダーの知識を有する多職種の医療従事者が活躍できる分野である。近年、ジェンダード・イノベーションという概念が注目されている。性差分析という新しい手法を取り入れることで、研究や技術開発の革新を目指している。性差を常に考慮することで、医学・医療、国民の健康に寄与することが性差医療に課せられた使命と考える。 キーワード:性差医療 ●略歴 1986年山形大学医学部附属病院入職 1996年山形大学医学部免疫・寄生虫学講座助手 1998年米国ベイラー医科大学分子細胞生物学博士研究員 2001年福島県立医科大学産婦人科入職 2008年福島県立医科大学産婦人科講師 福島県立医科大学附属病院性差医療センター部長 2010年福島県立医科大学医学部准教授 2014年福島県立医科大学附属病院漢方内科部長 2017年福島県立医科大学附属病院性差医療センター教授 2024年国立成育医療研究センター女性の健康ナショナルセンター設立準備室理事長特任補佐 特別講演3 座長:北海道鍼灸専門学校 川浪勝弘 SL3慢性疼痛診療ガイドライン −最新研究を踏まえた痛み治療の up to date- 伊藤和憲 明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科 慢性疼痛に対する鍼灸治療の効果は、数多く報告されている。特に腰痛のような筋骨格系(末梢性・脊髄性)の痛みに関しては数多くの臨床試験が実施されており、腰痛や頭痛などに対して鍼灸治療の有用性が報告されている。これらは末梢性や脊髄性の治効機序が働き、疼痛局所では血流改善に伴う発痛物質の減少や、脊髄でのコントロールで痛みを軽減することが知られている。一方、線維筋痛症のような中枢性(脳性)の痛みに関しても、臨床試験が実施され、その有用性も報告されている。治効機序としては、末梢性とは異なり、脊髄後角を経由して中脳水道周囲灰白質などの脳機能を活性化させ、下行性疼痛調整系を賦活させることが知られている。また、鎮痛系以外にも自律神経系や免疫系にも作用することで様々な症状が改善することが明らかとなっている。このように、鍼灸治療は慢性疼痛患者の各症状に対して効果的であることから、 2021年に発刊された慢性疼痛診療ガイドラインでは慢性頚部痛や慢性頭痛、線維筋痛症などの慢性疼痛に対して、弱く推奨されている。しかしながら、痛みのメカニズムや治効機序を考慮して鍼灸治療を行わなければ効果が得られないことも明らかとなっているため、ガイドラインには「慢性疼痛に対して適切な知識を有する鍼灸師」に診察してもらうことが必要と記載されている。 他方、近年では原因が明確でない痛みは痛覚変調性疼痛と呼ばれ、線維筋痛症や CRPSなどがその代表である。その背景には、扁桃体や背外側前頭前野などの脳機能異常や脊髄過敏化により痛覚受容機構や鎮痛機構を変調させているため、新たな診療ガイドラインが必要とされている。実際、痛覚変調性疼痛患者では、鍼灸治療の効果が減弱することが知られており、効果が認められにくい。そのため、痛覚変調性疼痛患者では、通常の治療に加えて、脊髄過敏化を抑制するような内臓症状へのアプローチ、大脳辺縁系をコントロールするようなラポール形成、背外側前頭前野をコントロールするような頭皮鍼通電や認知行動療法、さらには社会的つながりを改善するための社会的処方(養生)などが必要となる。 このように、慢性疼痛に対する診察や鍼灸治療はシステマティックに行う必要があるため、いつでもどこでも同じ診察・治療・生活指導が行えるように電子カルテと体調管理アプリを用いたエビデンスに基づく次世代型の疼痛診療が鍼灸領域でも始まっている。 キーワード:慢性疼痛、痛覚変調性疼痛、下行性疼痛調整系、慢性疼痛ガイドライン、養生 ●略歴 2002年明治鍼灸大学大学院博士課程修了 2002年明治鍼灸大学鍼灸学部臨床鍼灸学教室助手 2008年トロント大学(カナダ)研究職員 2009年明治国際医療大学鍼灸学部臨床鍼灸学教室講師・准教授 2015年同教室教授 2017年明治国際医療大学大学院研究科長・教授 2019年明治国際医療大学鍼灸学部学部長・鍼灸学講座、兼鍼灸臨床部長 2021年 YOJYOnet株式会社 CEO 2023年日本養生普及協会会長 教育講演1 座長:鍼灸サロン Libera 益子勝良 EL1不妊鍼灸の特別演題入りとこれから 三瓶真一 三瓶鍼療院 不妊鍼灸は、全国の開業鍼灸院でごく普通に取り扱われている。そのセミナーなども、地方の鍼灸師会などの団体主催、またセイリンなどに代表される商用開催など多彩に行われている。本学会でも全国の支部学術活動でも賑わっているし、年に 1回の学術大会でも参加者が多く見込める目玉セッションとしてほぼ毎年開催されている。 本学術大会でこれまで不妊症に対する鍼灸治療について一般演題発表はあってもエビデンスに乏しいという理由から、第 64回ふくしま大会( 2015年郡山市開催)まで長らく特別講演や教育講演、シンポジウム、パネルディスカッションなどの特別演題にならなかった歴史がある。これは PubMedなどで世界的に文献を検索しても不妊症に鍼灸が効果的であるという良質な論文があまりなかったからのようである。ただし当時すでに広く日本国内で不妊症に鍼灸治療が広く行われており、当時私は第 64回ふくしま大会企画調整委員として当初から不妊鍼灸でのセッションを提案した。本部の福田学術部長に渋られたが、『これだけ国内で扱われているのであれば、シンポジウムなら』という条件で特別演題として企画された。本学術大会における不妊鍼灸の特別演題入りである。 当時と現在を PubMEDで比較して調べてみた。 1997年から 2023年までで臨床試験、 MA(メタ解析)、 RCT、それらを論じた Rv(レビュー)や SR(システマティックレビュー)の数は 217編あるが、第 64回ふくしま大会の企画構想を練り始めた 2013年当初は 78編しかなく、 RvやSRについてはあまり良質ではないものが 35編しかなかった。一方、 2022年と 23年だけで 33編の RvとSRが登録され急に文献が増えた強い印象がある。しかも 2022年2月に登録された Kewei Quanらの 27件のサブグループ研究( 7,676人)について臨床妊娠率などを比較したものでは、多くのサブグループ研究で、鍼灸の介入したグループで優位に臨床妊娠率など成績が良かったとするものが多数あった。このような事から、いまや不妊鍼灸にエビデンスはあると言えるだろう。ただし残念ながらほとんどの研究は海外特に中国などからの発信である。 今後われわれは日本鍼灸で多数の研究を集め、世界に Made in JAPANの良質な研究を発信していく必要がある。福島で耕して種を蒔いた土壌に、宮城でわれわれは今日、不妊症から一歩踏み出した難治性不妊のシリーズ企画を水として撒く。若い芽が今後大きな天を衝く大樹に育つことを願っている。 キーワード:不妊症、不妊鍼灸、不妊、エビデンス ●略歴 1986年東京医療専門学校専科卒 2013年福島県鍼灸師会副会長 2015年第64回(公社)全日本鍼灸学会学術大会ふくしま大会事務局長 【現職】 一般社団法人福島県鍼灸師会会長 一般社団法人 JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)監事 東北鍼灸学会副会長 全日本鍼灸学会東北支部学術委員 有限会社三瓶鍼療院代表取締役 2022年第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会宮城大会実行委員長 教育講演2 座長:山田鍼灸治療院 山田愉生 EL2理学療法士から見た鍼灸の役割 冨田健一 医療法人清生会谷口病院リハビリテーション科 理学療法士は名実ともに運動療法が主要な仕事。つまり理学療法士の目線で鍼灸の役割を考えた場合、それは運動療法への支援となる。では、運動療法への支援とは?それは患者が運動療法を滞りなく実施するために、阻害因子を極力減らすことである。運動療法が必要な患者には、個体・環境・運動課題の三つの問題点がある。そして鍼灸の役割には患者を中心として、ミクロとマクロな役割がある。このミクロな役割というのは個体への対処であり、マクロな役割は環境の把握である。そして運動課題は双方の要素がある。ミクロな役割とは、四診などを参考に、体調管理や徐痛を目的に鍼灸を施術する一般的な鍼灸師の活動であり、一見違和感は無いかもしれない。しかしながら常に運動療法を実施するタイミングや併用・進捗状況を考慮しながらの取り組みとなるため、運動療法の適応や方法に対する理解は不可欠となる。またマクロな役割とは、患者の主訴の要因となりうる家庭や居住地域の環境を把握し、対処することである。このマクロな役割は訪問鍼灸であれば把握しやすいが、院内での治療を中心とする鍼灸師においても問診での把握は必須である。例えば 30cmの段差昇降時に膝の疼痛があり、来院した患者がいたとしよう。筋力低下が著明であり 30cmの段差昇降が困難な身体機能であれば、どれだけ素晴らしい鍼灸治療を施したとしても、何の解決にもならない。鍼灸治療をする時間があれば、ホームセンターでブロックを購入し、段差解消する方が最適解である。段差昇降に必要な筋力トレーニングを実施する方法もあるだろう。つまり鍼灸師だからといって、初めから鍼灸の施術を前提とするのではなく、患者の主訴の原因を把握し、鍼灸の範疇に囚われない対処ができなければ、主訴の原因を除去せずに鍼灸の直後効果だけを延々と提供する日々となってしまうのである。近年、我が国は地域包括ケアシステムに大きく舵を切りました。鍼灸師がその一部を担い地域で生き残るためには、従来の鍼灸師としての取り組みに加え、鍼灸の範疇を超える事例において、然るべき職種へ情報提供し速やかに対処するための幅広い知識とチームアプローチ(連携医療)を有効利用する能力が必要となります。今回の教育講演では地域における患者を中心としたミクロとマクロな鍼灸師の役割について提案します。開示すべき COI関係にある企業はありません。 キーワード:連携医療、病鍼連携、チームアプローチ、多職種連携、地域包括ケア ●略歴 1998年高知医療学院理学療法科卒業 1998年明治国際医療大学附属病院リハビリテーション科入職 2007年仏眼鍼灸理療学校鍼灸学科(夜間部)卒業 2009年明治国際医療大学リハビリテーション科学ユニット助手 2017年医療法人清生会谷口病院リハビリテーション科入職 教育講演3 座長:仙台赤門医療専門学校 宍戸新一郎 EL3若い世代の学生をどう理解し、どう付き合うか 本田伊克 宮城教育大学教育学研究科 「世代」の違いによって、私たちは一見同じ場所にて、同じ出来事を経験しているようでも、実は考えていること、感じていることは違います。もちろん、私たち一人ひとりはそれぞれの考え方や感じ方をもち、お互いの違いを尊重しながら生きていくほかありません。しかし、世代によって、おおよそ、考え方や感じ方に違いがみられることも確かです。どんな時代に子供時代を過ごし、あるいは青年期を過ごしたかということは、今生きている時代に生起する出来事の意味をどのように捉えるかという点で、より若い世代との認識のギャップも生み出します。 大学教員として 30近くも年の離れた学生と接している一人として、若い世代は自分のときと考え方も感じ方も違うなと思うところも多々あります。さすがに、 30も違う世代の人たちと同じ波長でコミュニケーションはできませんが、自分の世代にはない発想や、優しさやいたわりの気持ちも感じます。何より、同じ人間として尊重し合う関係性を築こうとすることで、私自身、人との関りが豊かになります。 若い世代のことをどう理解し、付き合っていけばよいか。皆さんと考える機会になればと思います。 キーワード:世代効果、若者文化、 Z世代 ●略歴 2009年一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了 2011年宮城教育大学教育学部准教授 2015年宮城教育大学教育学研究科准教授 2020年宮城教育大学教育学研究科教授 教育講演4 座長:学校法人明治東洋医学院専門学校 福田文彦 EL4認知心理学の観点から考える学習者支援 藤江里衣子 藤田医科大学医学部医療コミュニケーション 皆さんの目の前に、学習成果が上がらないという学生や研修生が現れた時、その原因は何だと思いますか?まず思いつくのは、学習時間の少なさかもしれません。しかし、十分な学習時間を確保しているにもかかわらず、それが結果に表れない場合、教育者としては何をすれば良いのか、頭を悩ませた経験のある方も少なくないのではないでしょうか。 この背景にはいくつかのことが考えられます。一つは臨床心理学的背景です。すなわち、何らかの情緒的苦痛や精神疾患などメンタルヘルス的な課題をベースとした学習への取り組みの不安定さが見られる場合です。 もう一つが、学習方法の不適切さです。これは、身につく学習方法を知らない場合と、得意・不得意のばらつきがあることから、学習したことが成果に結びつきづらい場合が考えられます。この時、学習者が抱える困難を考えるヒントを与えてくれるのが、認知心理学の視点です。今回は、こちらに焦点を当ててお話ししていきます。 本教育講演では、まず最初に、記憶の多重貯蔵モデルを基盤とし、記憶のプロセスとその途上で生じ得る躓き、およびその対策を紹介します。これは、情報が感覚記憶、短期記憶を経て、長期記憶として定着するまでの流れを示したもので、各段階への移行を促進するポイントがあります。 さらにこのモデルは、得意・不得意のでこぼこが大きい発達障害のある学習者の支援についても、多くの示唆を与えてくれます。このため今回は、発達障害の特徴も説明し、先のモデルから、学習の具体的なサポートとしてどのような方法が考えられるかをお伝えします。 そして最後に、メタ認知についてもお話しします。メタ認知とは、自分の内面的な動きや自身が置かれている状況を俯瞰して見ることです。学習に限らず自らの行動を見直し、調整するためには、メタ認知が非常に重要となります。 みなさまが学習者支援を行う際に、本講演が相手の困難を理解する一助となることを願っています。 キーワード:認知心理学、記憶の多重貯蔵モデル、学習者支援 ●略歴 2004年東京大学教育学部教育心理学コース卒業 2009年名古屋大学大学院教育発達科学研究科心理発達科学専攻博士課程後期課程満期退学 2014年名古屋大学大学院医学系研究科地域総合ヘルスケアシステム開発寄付講座助教 2019年藤田医科大学医学部医療コミュニケーション講師 教育講演5 座長:新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 金子聡一郎 EL5多職種にも伝わるカルテの書き方鍼灸師らしさと読みやすさを両立するために 佐藤健太 札幌医科大学総合診療医学講座 千歳市民病院総合診療科 医師にとってのカルテ(診療録)は、記載する法的義務があるだけでなく、頭の中の情報や思考を書き出すことで自身の脳内を客観視して「論理的思考能力を鍛え上げるためのツール」である。また、全世界共通のルールに基づいて蓄積されたデータは、業界全体の底上げのために必要な「臨床研究の基礎データ」にもなる。したがって、医師育成においては、ひとり立ちするまでに標準的なカルテ記載法を習得することが必須となっている。 また、昨今の高齢化に伴って患者が抱える問題も多領域にまたがるようになり、施設内外で様々な専門職と連携することが求められている。多職種協働が必須となる急性期病院内においては、自分のためのメモではなく「他の職種が読んで理解できるカルテ」を書き、共通言語でコミュニケーションできることは必須条件である。 一方で鍼灸師の場合は、施術録記載の法的制約がないことや、卒前教育や卒後生涯学習のなかで施術録記載について系統的に学ぶ機会が少ないこと、医療系専門職と診療録を共有する機会に乏しいこともあり、各々が独自のルールで記載しているのが現状と思われる。 実際に、鍼灸師の記載した施術録や手紙(診察依頼状や療養費同意書など)を読んでも病状や依頼内容をうまく読み取れず、直接の会話や電話であればすんなりニーズをつかめるという場面もたびたび経験する。 そこで本講演では、「医師・看護師と共通のカルテ記載フォーマット」の基本を学びつつ、「鍼灸師としての見立てや思考過程を記載し、医師とは異なる鍼灸の独自性を反映させるヒント」も提示する。提示された情報を参考にしながら各々の診療環境でどう再現するかを考えていただくことで、「自分しか読めない施術メモ」からレベルアップし、自身の生涯学習を加速しつつ、多職種コミュニケーションに参加できるような『他職種が読んで理解できる、鍼灸師らしいカルテの型』をイメージできることを目指す。 キーワード:診療録、カルテ、多職種協働 ●略歴 2005年東北大学医学部卒業 2005年勤医協中央病院臨床初期研修・総合診療後期研修 2011年勤医協札幌病院内科・総合診療科科長・副院長 2020年札幌医科大学総合診療医学講座診療医 2022年札幌医科大学南檜山地域医療教育学講座特任助教 2024年千歳市民病院内科 【資格】総合内科専門医・総合診療専門医、リハビリテーション認定医 【著書】「型」が身につくカルテの書き方 教育講演6 座長:東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 木村友昭 EL6医療機器である鍼灸針について 西村直也 セイリン株式会社国内営業部営業課 日常、私たちが手にする「鍼灸針」とは、いったいどのようなデバイスなのか。「鍼体」なる細長い金属の先端に「鍼尖」なる鋭利加工がされ、「鍼柄」なる持ち手部分が組み合わされた物。そんな言葉だけにすると単純な物を、有資格者が人体に刺鍼することで様々な生体反応を引き起こすデバイスとなる。ところが臨床現場、学校教育においては使用方法や手技等の技術面が注目され、「鍼灸針」自体へ関心を持つ機会は少なく「鍼灸針」がデバイスとなるまでの背景、法規制等の取り巻く環境の多くは知られていない。本講演では少しでも医療機器デバイスである「鍼灸針」について、関心を抱いていただけるように下記の観点から解説する。 1.鍼灸針のターニングポイント日本国内においてディスポーザブル鍼灸針が普及した背景 2.鍼灸針の関連法規医薬品医療機器等法・日本産業規格(規格番号: T9301) 3.鍼灸針のリスクマネジメント添付文書(添文ナビ)・鍼灸安全対策ガイドライン キーワード:単回使用毫鍼、添付文書、安全性、リスクマネジメント ●略歴 2010年鈴鹿医療科学大学鍼灸学部卒業同年セイリン株式会社国内営業部営業課 2019年セイリン株式会社国内営業部医療・企画推進課 2024年セイリン株式会社国内営業部営業課 教育講演7 座長:新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 粕谷大智 EL7総合診療・膠原病リウマチ領域での鍼灸治療の可能性 増田卓也 三井記念病院総合内科・膠原病リウマチ内科 東邦大学医療センター大森病院東洋医学科 (一社)北辰会 明治初期まで、鍼灸は漢方薬と同様に国民の全ての領域の医療を担う総合診療そのものであった。明治時代以降の西洋医学、基礎医学研究偏重の影響もあり、近年鍼灸の作用機序の解明が大きく進み、昨今ではトップジャーナルに鍼灸の論文が掲載されるようになった。しかし、『黄帝内経』など古典をベースとし、数百年以上もの間に臨床実践を経て完成された日本鍼灸の恐るべき治療効果は、未だ完全に解明されているとは言い難い。演者が所属する北辰会では、手技以外にも患者への深い人間理解、正確無比の触診や弁証論治、診療中の雰囲気などそれら全てが治療効果を左右しうることが経験的に知られている。鍼灸の臨床は、 Illness:主観的な病(やまい)の物語の診療(ナラティブ・メディスン)や、 Bio-Psycho-Socialモデルを駆使した診療の一つの完成形なのである。こうした側面は、卓越した臨床医が診療の場の雰囲気で知らぬ間に患者を治療してしまっているのと同様であり、臨床試験においても数字として表れにくい面である。 現代の総合診療で課題として、膠原病など診断はなされたが西洋医学で対処困難な症状や、外来受診患者の約 3割を占める、医学的に説明できない症状( Medically Unexplained Symptoms: MUS)がある。それに対し、未だに西洋医学は解決の糸口を見出したとは言い切れず、重度の症状を自覚する患者にとっては治療法のない難病に罹患したも同然である。それらの中には、適切に漢方薬や鍼灸の診療を受けることで症状の緩和や社会復帰の達成が期待できる患者がいるが、現状、鍼灸院との連携が未確立であることや、漢方専門医が約 2,000人程度である背景もあり、日本では東洋医学診療の提供体制が良く整備されているとは言い難い。 演者は、鍼灸の研修を受け総合診療や膠原病領域の診療で実践しているが、鍼灸が時に大きな gamechangerとなりうる場面を何例も経験した。鍼を握ることは、古人の総合診療の技と叡智を継承することと同義であり、今までにはなかった臨床の視点を得ることができるのである。本講演では、自験例を提示しつつ総合診療・膠原病領域での鍼灸治療の可能性や、今後の課題について臨床医の視点から概説する。 キーワード:総合診療、膠原病、鍼灸 ●略歴 2017年久留米大学医学部卒業 2019年大船中央病院初期臨床研修修了 2022年三井記念病院総合内科・膠原病リウマチ内科専攻研修修了 2022年同院総合内科・膠原病リウマチ内科医局員 2022年東邦大学医療センター大森病院東洋医学科非常勤勤務 教育講演8 座長:埼玉医科大学東洋医学科 山口智 EL8鍼灸師が知っておくべき漢方診療と漢方薬 有田龍太郎 東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 漢方は中国伝統医学を基礎としており、元来は鍼灸も漢方薬も同じように治療が行われていました。伝統医学的な考え方で診療する場合は、望聞問切の四診を行います。特に腹診は日本漢方独特の診察法です。診察の結果から、陰陽、虚実、寒熱、表裏、気血水、六病位、五臓などを基本として証を把握し治療法を考えています。…という漢方診療をしているのは、実は一部の漢方の専門家に限られてきています。年々漢方薬の市場規模は増加傾向にあり、全ての医師の 9割は漢方薬を処方した経験があるとされ、実際に外来患者の 13.5%( 7.5人に 1人)には漢方薬が処方されています。それほど、漢方薬は日常ありふれた薬となっています。ただし、漢方薬を処方する医師全員が漢方の系統的学習をしているわけではないのです。漢方に精通した先生もいれば、エビデンスを元に処方する先生、保険病名だけを見て処方する先生もいるのが実情です。薬局で販売される漢方薬は、患者さん自身が選んでいる場合もあります。患者さんの中には、漢方薬は自然由来で安全と思っている方も少なくありません。もちろんショウガやシナモンなど、食物と共通するものもありますが、漢方薬にも副作用があります。医療用漢方薬の 7割以上に含まれる甘草という生薬は、高血圧や頭痛、低カリウム血症を起こす偽アルドステロン症という副作用の原因となり得ます。特に高齢者で起こりやすいため、漢方薬を常用している方でこうした症状が出ている場合は、注意が必要です。一方、鍼灸診療と漢方薬を組み合わせるメリットもあります。患者さんのお薬手帳を見せてもらうと、処方されている漢方薬が分かります。そこからある程度、患者さんの状態も分かる場合があります。例えば、八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は高齢者の筋力低下や下半身の痛み、泌尿器症状に用います。漢方医学的には腎虚の治療薬であり、経穴でいえば太谿の補法的な治療に相当するかと思います。鍼灸の診療で、漢方薬と同じ方向の治療をするのか、漢方薬が治療していない病態を治療するのか考えたり、医師と連携したりするのも診療の幅が広がることがあります。漢方診療の特徴や実情をお話しいたします。現地開催ですので、その場でご質問頂けましたら嬉しく思います。 キーワード:漢方薬、伝統医学 ●略歴 2007年慶應義塾大学医学部卒 2009年慶應義塾大学卒医学部漢方医学センターにて漢方研修 2021年東北大学大学院医学系研究科博士課程卒 2023年東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科助教 【助教資格】日本東洋医学会漢方専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医日本漢方生薬ソムリエ協会生薬ソムリエ(中級) 教育講演9 座長:口之津病院内科・総合診療科 寺澤佳洋 EL9-1鍼灸師が知っておくとよいエコーの診方可視と不可視の交錯、大衆化する医療機器 小林只 弘前大学医学部附属病院総合診療部 一般社団法人日本整形内科学研究会 金沢大学医薬保健研究域医学系機能解剖学分野 株式会社アカデミア研究開発支援 経穴・経絡は知覚できるか? 人は、見える、触れる等の五感で知覚できる対象を真実と、そして知覚できない対象を虚偽と認識しがちである。しかし五感では知覚できない電磁波や分子を、我々はテクノロジーで認識し、実生活に利用する。医学の歴史では、人体内の観察は、屍体解剖による観察が主だったが、 X線写真により生体内の観察が可能となった。西洋医学は、静止画記録と分析を強みとする構造分類学として発展した。脳、心臓、筋肉など境界が明瞭な臓器が生体を機能させ、これらを繋ぐ結合組織は「その他」として除外分類されてきた。 CTやMRIという高性能機器もまた、臓器中心の疾病探しに発展し、結合組織はノイズとして扱われてきた。超音波診断装置(エコー)は、 MRIより解像度が高く、かつ生体の動きも評価できる。内視鏡機器と同様、我々はようやく生体内を動画で精密に観察できるようになった。 医療機器を使用できるのは誰か? 医師法では、医業(医行為を業として実施すること)を独占行為として規定する。医行為とは、医師でなければ実施するのが危険な行為であり、業とは反復継続の意志(有償無償を問わない)と解される。そして、医療機器とは医行為を目的とした機器であり、その危険性によりクラス 1〜4に分類される(4が最も危険)。厚生労働省は、テクノロジーの活用による自動化(例:クラス2の自動血圧計、クラス3の自動体外式除細動器, AED)、または使用者への適切な教育(例:クラス2の経鼻胃管カテーテル)により、“後追い”で公に使用可能な対象者を認可してきた。エコーは近年、血圧計や体温計のように医師、看護師、療法士、鍼灸師、一般人でも利用が広がり、大衆化されつつある。一方で、眼への使用は眼障害のリスクから薬機法上の規制対象であるなど、その使用には一定の知識が必要である。鍼灸師が、医師が使用する注射針と同じ分類の医療機器(クラス2)である鍼を使用できるのは、その扱いを教育課程で学ぶからである。私は看護師のエコー活用教育システム(Pocket Echo Life Support, PELS)を開発し 2016年より展開してきた。今後、鍼灸師がエコーを学ぶ仕組みの構築が期待される。 解剖分類学と部分観に基づく西洋医学の鍼 Dry needling、機能学と全体観に基づく東洋医学の鍼 Acupunctureは現状区別される。ファシアとエコーは知覚対象を広げ、東西医学を繋ぐ架け橋となるだろう。 キーワード:医師法、薬機法、超音波診断装置、エコー、ファシア ●略歴 2008年島根大学医学部医学科卒業(医師) 2012年六ケ所村国民健康保険尾駮診療所 2016年金沢大学大学院医薬保健学総合研究科機能解剖学修了(博士) 2016年弘前大学医学部附属病院総合診療部助教 2020年同上学内講師 2021年一級知的財産管理技能士(国家資格)取得 2022年知的財産高等裁判所専門委員(兼任) 2022年株式会社アカデミア研究開発支援代表取締役社長(兼任) 2024年島根大学医学部客員准教授(兼任) 教育講演9 座長:口之津病院内科・総合診療科 寺澤佳洋 EL9-2鍼灸師が知っておくとよいエコーの診方東洋医学と西洋医学を繋ぐファシアとエコー 銭田良博 一般社団法人日本臨床リカレント教育研究センター(JCREARC)理事長 一般社団法人日本整形内科学研究会株式会社 ゼニタ銭田治療院千種駅前 鍼灸師が知っておくと良いエコーの診療における活用方法(診方)として、本講演ではレッドフラッグ、精密治療としての Fasciaファシア(全身を繋げ、支える立体網目状の線維構成体)、東洋医学と西洋医学の共通言語と多職種連携の 3点について主に紹介する。 レッドフラッグとは、見逃してはいけない疾患を示唆する徴候や症状のことであり、鍼灸師にとっては鍼灸治療の医学的な不適応病態とも言える。例えば、急性頚部痛で受診する脳卒中や、肩こり症で受診する心筋梗塞、関節炎(偽痛風、感染症など)が生じている関節疾患、出血傾向の強い患者への深部刺鍼などが挙げられる。エコーは、後 2者の判断について役立つ。 発痛源を正確に評価し、アプローチすることは治療精度に直結する。経穴はファシアに存在し、経絡はファシアの機能解剖学的連続性で説明可能とも報告されている。そのため、私達鍼灸師は、ファシアを治療する専門家ともいえる。ファシアの異常病変を見分けるためには、筋・腱・血管・末梢神経・脂肪組織などを構造的に把握し、これらの診方の技術が必要となる。エコーは解剖構造認識(体表解剖、肉眼解剖、エコー解剖)の一致性を高め、これらの学習を通じて、治療精度を向上させる。 ファシアは、東洋医学と西洋医学の共通言語として活用でき、多職種連携を促す。レントゲン・ CT・ MRIではファシアを評価することは困難であるが、エコーは MRIよりも高い解像度、そして動画評価により動きまで評価できる。高性能化するエコーは、東洋医学の可視化というパラダイムシフトを促す機器の 1つとしても期待されている。例えば「得氣」は局所性単収縮( Local twitch response, LTR)として観察でき、治療手技の 1つである「雀啄」が生体内でどの構造をどのように刺激しているかも観察できる。このようにエコーは、今までは表現困難であった鍼灸師の治療(介入)前後の変化を示すことが可能になりつつある。 エコーは鍼灸師にとって、現代科学のテクノロジーの活用という側面を有する。運動機能疾患であれば、上記 3つの観点に基づく整形内科学的評価を通じて、鍼灸師が医師へ相談する知識と技能の修得を促し、医師が鍼灸師に頼る機会を増やし、医療業界の臨床・教育・研究・連携・経営にも活かすことができる可能性を秘めている。 キーワード:ファシア、エコー、整形内科、レッドフラッグ ●略歴 1992年信州大学医療技術短期大学部理学療法学科卒業 1996年早稲田医療専門学校東洋鍼灸学科 II部卒業 2024年信州大学大学院博士課程総合医理工学研究科総合理工学専攻ファイバー工学分野在学中 2013年医療法人昌峰会加藤病院総合リハビリテーション室 2016年学校法人河合塾学園トライデントスポーツ医療看護専門学校理学療法学科顧問 2024年株式会社ゼニタ代表取締役 日韓シンポジウム Chairman:Vice President of KAMMS, Kyung Hee University Prof. NAM Dongwoo National University Corporation Tsukuba University of Technology Prof. ISHIZAKI Naoto SI-1 The Western and Korean Medicine Collaborative Treatment Approaches at the Korea National Rehabilitation Center: A Comprehensive Overview and Future Directions Prof. Son Chihyoung Department of Korean Medicine Rehabilitation, Korea National Rehabilitation Center, Seoul, Korea Objectives: This aims to provide a concise overview of the WKM collaborative treatment system at the Korea National Rehabilitation Center (KNRC). Methods: The WKM collaborative treatment system at KNRC is described through the center's evolution and the coexistence of the Department of Korean Medicine Rehabilitation. emphasizing collaborative efforts between Western and Korean medicine. Statistical analyses revealed treatment data and patient characteristics for stroke and spinal cord injury. It also discusses the WKM collaborative studies, particularly the randomized controlled trial on hemiplegic shoulder pain and subsequent clinical pathways at KNRC. Results: KNRC's WKM collaborative treatment system demonstrates effectiveness, with high patient satisfaction and positive outcomes. Symposiums, conferences, mutual education, and clinical research were conducted to enhance mutual understanding. KNRC's study on stroke patients undergoing collaborative treatment shows predominant characteristics: male, 50s, with main symptoms of paralysis, pain, and dysphagia. Acupuncture, electroacupuncture, moxibustion, and cupping, covered by health insurance, are common Korean Medicine treatments. For spinal cord injury patients, mainly male, high school graduates, married, with AIS-D classification and trauma, similar Korean Medicine treatments were utilized. An RCT on post-stroke shoulder pain revealed acupuncture's efficacy over sham acupuncture, leading to the development of a clinical pathway at KNRC. Plans include advancing the EMR system for more data and establishing a collaborative committee to enhance the system. Conclusions: KNRC's collaborative treatment approach, marked by intra-institutional collaboration, proves impactful. Ongoing efforts in research, education, and quality improvement contribute to positive patient outcomes. Challenges, including committee establishment, are acknowledged, and future directions focus on expanding collaborative protocols based on research findings. Key words:Western and Korean Medicine, Collaborative treatments, Korea National Rehabilitation Center, Stroke, Spinal cord injury ●Brief personal record Director of Korean Medicine Rehabilitation at Korea National Rehabilitation Center, Ministry of Health and Welfare Korean Medicine Doctor with a Ph.D. from Kyung Hee University Specialist in Acupuncture and Moxibustion Medicine Master's in Public Health from Seoul University Visiting Scholar at Duke University in 2017 Email. cecilson@hanmail.net 日韓シンポジウム SI-2 Integrative Approach to ERAS-K : Enhanced Recovery after Surgery Program for Spine-KHUHGD Prof. Seo Byung-Kwan, K.M.D., Ph.D. Prof. Lee Jae-Dong, K.M.D., Ph.D. Kyung Hee University In this session, the collaborative treatment system and ongoing research on Enhanced Recovery After Surgery for spine -Kyung Hee University Hospital at Gangdong (KHUHGD) will be briefly reported. Kyung Hee University (KHU) is building an integrated education and hospital system covering all medical fields, including Korean medicine, medicine, dentistry, pharmacy, and nursing, under the founding spirit of creating a cultural world. In addition to individual colleges, KHU have the East-West Medical Graduate School. Medical institutions also have a medical center system that combines individual hospitals such as Korean Medicine University Hospital, Medical University Hospital, Dental University Hospital, and Cancer Hospital. KHUHGD has a unique collaboration centers, so called "integrative medicine center" including Brain center, Spine center and joint-rheumatology center. Multidisciplinary treatment teams specializing in specific diseases gather in one space to provide patients with a variety of treatments non-stop. From the foundation in 2006, Spine center take a pivotal role in integrative center. Professors specializing in spinal diseases were gathered with the purpose of providing treatment and research in on place, regardless of western or Korean medicine. The Department of Neurosurgery and Orthopedic Surgery, which is in charge of surgery, the Department of Anesthesiology and Pain Medicine, and the Department of Rehabilitation Medicine, which are in charge of conservative treatment, provide treatment and communicate in the same purpose as the Department of Acupuncture & Moxibustion Medicine of Korean Medicine University Hospital. With several studies including Creation 21, KHUHGD look back on the history of collaborative care and identify areas for improvement, in order to make successful cooperation between E-W medicine part, several key issues need to be proposed with development of EWCC models. Based on previous studies and clinical experiences, KHUHGD are currently conducting research on developing a new concept integrated medical service model and applying it to clinical sites by overcoming the limitations of the collaborative hospital treatment system. These efforts could be visualized as a project ERAS-k, for the patients suffering spinal surgical procedures. We have to focus on the treatment processes at each and every stage from preadmission, preoperative, intraoperative and postoperative. Each element should be defined the target effect. We have to make the statement about what the medical faculties should be careful and focus in the stage. Through the agreement on the purpose, faculties, patients, and guardians can understand what happens to the patient at each stage and become familiar with their respective tasks. ERAS-K CP has been developed and is currently being applied clinically. The results are expected to be announced as a draft in 2024. Key words:Integrative approach, ERAS-K, Enhanced Recovery after Surgery, Spine ●Brief personal record 1.Professor, Department of Acupuncture & Moxibustion, College of Korean Medicine, Kyung Hee University, Seoul, Republic of Korea 2.Director of Insurance Affairs, Society of Korean Medicine 3.Vice President, Korean Acupuncture & Moxibustion Medicine Society 4. Director of General Affairs, The Association of College of Korean Medicine 日韓シンポジウム SI-3 Acupuncture Education in Medical School of Japan and Tohoku University Hospital Coordination with the Regional Acupuncture Clinic Shin Takayama, Soichiro Kaneko, Yuzo Ishii, Tetsuharu Kamiya, Naoteru Koizumi, Yoshiyasu Murakami, Ryutaro Arita, Natsumi Saito, Rie Ono, Akiko Kikuchi, Minoru Ohsawa, Tadashi Ishii Department of Education and Support for Regional Medicine, Department of Kampo Medicine, Tohoku University Hospital, Japan Only physicians, dentists, and acupuncturists are allowed to perform acupuncture and moxibustion in Japan. Acupuncture and moxibustion education for acupuncturists is provided in four-year or three-year programs, herein, we describe the education of Kampo medicine including acupuncture and moxibustion within the education of physicians. The Japan Council for Kampo Medical Education (JCKME) was established by all Japan medical schools to create a basic curriculum for Kampo medical education that could be implemented in medical schools nationwide in 2015. The model slides and lecture guides containing these teaching contents were created, and textbooks based on these contents were published in 2020. JCKME model slides in acupuncture includes health insurance coverage, anatomy, acupuncture needles, moxibustion, and side effects. Students in our university can receive Kampo medicine education from 1st grade to 6th grade. In the presentation, I introduce 2nd grade Problem Based Learning, 4th grade Kampo medicine lecture, and 5th grade clinical practice training which are important milestones. Our hospital includes a Kampo medicine clinic, which also includes an acupuncture clinic. We provide Kampo medicine along with acupuncture treatments for common diseases and symptoms in general medicine settings. It also is provided to patients whose diseases or symptoms cannot be controlled under usual treatment. To continue acupuncture treatments, we transfer patients to the nearest clinic or Adjacent Prefectures clinic as part of cooperation between hospitals and acupuncture clinics. Communication and cooperation between doctors and acupuncturists have continued under the cooperation between The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion and The Japan Society for Oriental Medicine. Key words:Japan, Acupuncture, Education, Student, Physician ●Curriculum Vitae Dr. Shin Takayama belongs to the Department of Kampo and Integrative Medicine, Tohoku University Graduate School of Medicine, Department of Education and Support for Regional Medicine, Department of Kampo Medicine, Tohoku University Hospital. He graduated from Miyazaki Medical college in 1997 and Tohoku University Graduate School of Medicine in 2010. He has been specially appointed professor at Tohoku University Graduate School of Medicine since 2019 and conducting a program of education in Kampo Medicine including Acupuncture for medical students. Vice President of the Japan Society for Oriental Medicine, Editor in Chief of Traditional and Kampo Medicine, and Director of International Society of Oriental Medicine. 日韓シンポジウム SI-4 Clinical Acupuncture in University Hospital of Japan and Clinical Studies of Acupuncture in Graduate School of Medicine. Soichiro Kaneko1,2), Shin Takayama1), Akiko Kikuchi1), Ryutaro Arita1) , Tetsuharu Kamiya1), Yuzo Ishii1), Minoru Ohsawa1), Rie Ono1) , Natsumi Saito1), Satoko Suzuki1), Naoteru Koizumi1), Yoshiyasu Murakami1) , Shinichi Nagata1), Tadashi Ishii1) 1) Department of Education and Support for Regional Medicine, Department of Kampo Medicine, Tohoku University Hospital, Japan 2) Niigata University Health and Welfare, Department of acupuncture and moxibustion In this session we will focus on " Clinical Acupuncture in University Hospital of Japan " and " Clinical Studies of Acupuncture in Graduate School of Medicine ". In Japan, Kampo medicine treatment is carried out by doctors in medical institutions and acupuncture treatment is carried out outside medical institutions by acupuncturists. Under these situations, doctors and acupuncturists work together in clinical practice at Tohoku University Hospital. To start with, we would like to present some of the cases we reported at the conference. Generally, acupuncture treatment targets stiff shoulders and back pain, but our acupuncture outpatients are treated for a wide range of symptoms. Secondly, we would like to discuss acupuncture research in graduate school. We have systematically carried out the effects of acupuncture stimulation using ultrasound equipment. Three acupuncturists have completed postgraduate course work at Tohoku University, systematically using ultrasound equipment to study the effects of acupuncture stimulation. Our laboratory also collaborates with ophthalmology and gerontology. In Japan, the research that acupuncturists can carry out is limited; however, acupuncturists can carry out high-level research by belonging to a graduate school. Key words:Clinical Acupuncture, University Hospital In Japan, Clinical Acupuncture Studies, Case Report ●Curriculum Vitae 1997 Chuo University, department of science and engineering, graduation, 4 years, bachelor 2003 Goto college of medical arts and sciences (acupuncturist course), graduation, 3 years, BS 2005 Goto college of medical arts and sciences (teacher-training course), graduation, 2 years, BS Gifu University Graduate School of Medicine department of oriental medicine, Part-time Researcher 2007 Department of Traditional Asian Medicine, Graduate School of Medicine, Tohoku University, Part-time Lecturer 2014 Graduate School of Medicine, Tohoku University, Comlete, 4 year, Ph.D in medicine 2016 Department of Education and Support for Regional Medicine, Tohoku University Hospital, Assistant professor 2017 Tohoku University Graduate School of Medicine, Department of General Practitioner Development, Assistant professor 2023 Niigata University Health and Welfare Department of acupuncture and moxibustion シンポジウム1 他職種連携企画「生殖医療における鍼灸の役割(難治性不妊の治療の現状と未来)」 座長:明生鍼灸院 木津正義 三瓶鍼療院 三瓶真一 S1-1生殖医療の現状と課題、鍼灸によせる期待 菅沼亮太 公立大学法人福島県立医科大学附属病院生殖医療センター 公立大学法人福島県立医科大学産科婦人科学講座 福島県不妊専門相談センター 不妊治療の中核をなす生殖補助医療は、1978年英国での世界初の体外受精児の誕生によりブレイクスルーを迎える。以前は手術療法が無効な場合は挙児が叶わない、卵管性不妊症に対する体外受精 -胚移植は、その後、重症男性不妊症に対する ICSI(卵細胞質内精子注入法)や、配偶子・胚を長期安定的に保存し治療に用いるための凍結・融解技術などに発展・応用され、その功績から2010年にエドワード博士がノーベル生理学・医学賞を受賞するまでに世界に広く認められた技術となっている。これら生殖補助医療は、がん生殖医療としての妊孕性温存療法(配偶子・胚の凍結保存、卵巣組織凍結保存など)、着床前診断法(受精卵の細胞の一部を分析し異常のない胚を移植する技術)、社会的適応の妊孕性温存療法(すぐに妊娠・出産を希望されない女性のための未受精卵子凍結保存)など、不妊症治療のみならず、多くの診療科や生殖年齢層の男性・女性に対して広く用いられる医療技術となっている。 2022年に日本国内において生殖補助医療の保険適用が拡大され、それまで保険適用外であった体外受精胚移植、顕微授精、凍結融解胚移植、人工授精などが保険診療として全国一律の医療費で治療を受けられるようになった。日本産科婦人科学会による最新の報告では、2021年に国内で実施された生殖補助医療による総治療数は約 50万周期であり、約8万人が出生している。しかし総治療周期あたりの妊娠率は約 18%であり、新たな医療技術や医療機器の発展によっても改善困難な問題がある。特に女性年齢に伴う妊孕性の低下(卵子数の減少・卵子の質の低下)、胚発生障害、着床障害、造精機能障害による完全な無精子症などは有効性の確立された治療方法がないのが現状である。 生殖医療に対する補完代替療法の一つとして、鍼灸に対する期待は大きい。不妊症治療と鍼灸に関して、古くは世界保健機構(WHO)による婦人科系疾患に対する鍼灸の適応症として、更年期障害や月経困難症、冷え性などと共にとり上げられており、最近も米国生殖医学会において、体外受精胚移植や人工授精の3か月前から鍼灸を勧めるとされている。国内においても、生殖医療における鍼灸の有効性に関する情報の周知と、相互の情報提供などの診療連携の構築が望まれる。 本講演では、生殖医療の概要と治療成績、問題点や課題点について扱い、加えて鍼灸に期待をよせる内容についての情報共有の場とできれば幸いである。 キーワード:生殖医療、生殖補助医療、不妊治療 ●略歴 1997年福島県立医科大学医学部卒業 1997年福島県立医科大学産科婦人科学講座入局 2002年ハワイ大学生殖生物学研究所研究員 2020年福島県立医科大学附属病院生殖医療センター部長 2023年福島県立医科大学附属病院病院教授 【資格】 2002年日本産科婦人科学会専門医 2009年生殖医療専門医 【学会】日本産科婦人科学会、日本生殖医学会、日本アンドロロジー学会評議員、日本 IVF学会評議員、日本がん生殖医学会 シンポジウム1 S1-2不妊カウンセリングの経験と鍼灸への展望 本田明奈 1,2)、菅沼亮太 1,2,3) 1)公立大学法人福島県立医科大学附属病院生殖医療センター 2)福島県不妊専門相談センター 3)公立大学法人福島県立医科大学産科婦人科学講座 不妊とは、カップルのいずれかが挙児を希望した時に初めて直面するものである。不妊に直面したカップルは以後、常に多くの自己決定をしていかねばならないが、その過程は決して平坦で単一なものではない。不妊治療では、カップルである男女それぞれの家族観や社会的立場、経済的側面、年齢や病気といった身体の状態等を考慮しながら検査や治療方針を決めていくことになるのだが、そこには様々な感情が渦巻くため、苦悩に満ちたものになる。医療の分野では、産婦人科・泌尿器科の医師、看護師、胚培養士、不妊カウンセラー、事務員等といった、多種多様なスタッフが不妊に悩むカップルと向き合い、妊娠に向けた治療やケアを行っている。不妊カウンセラーはそのようなカップルに対し、適切な情報提供を行うとともに、カップルが適切な治療選択ができるようにサポートする役割を担っている。 福島県不妊専門相談センターと福島県立医科大学附属病院生殖医療センターでは 2020年度より不妊カウンセラーを設置、当方がその 2つを担っている。福島県立医科大学附属病院生殖医療センターでは、通院中の不妊治療中のカップルに対する相談を受け付けている。 2020年5月〜 2024年2月末までに延べ 488件(ART治療前の相談: 483件、治療中のカウンセリング: 5件)の相談に対応した。 ART治療前の相談では治療のスケジュールや治療費、採卵時の痛みに関する相談が多く寄せられた。治療中のカウンセリングについては、不妊治療に行き詰まった方が不安を吐露し、カウンセラーと対話し自分自身と向き合う場として活用いただいている。また、福島県不妊相談センターでは不妊に悩む県民からの相談を受け付けており、電話やオンライン面談、県内各地で個別相談会やオンラインセミナーを開催しながら治療前〜治療中の個々の悩みに対応している。 本講演ではこれらの経験を踏まえながら、不妊カウンセラーの立場から見た、不妊で悩むカップルに対する鍼灸師の役割について考察していきたい。 キーワード:不妊、カウンセリング ●略歴 2015年明治国際医療大学鍼灸学部卒業 2017年公立大学法人福島県立医科大学会津医療センター鍼灸卒後臨床研修前期課程修了 2020年公立大学法人福島県立医科大学会津医療センター鍼灸卒後臨床研修後期課程修了 2020年公立大学法人福島県立医科大学附属病院生殖医療センター 福島不妊専門相談センター シンポジウム1 S1-3当院におけるチーム医療について 松田尚香 医療社団法人厚仁会厚仁病院 当院は香川県丸亀市にある生殖医療施設であり、 2018年4月に鍼灸ルームが開設された。当時は一般社団法人 JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)に所属する鍼灸師が非常勤で週 3回施術を担当しており、 2023年6月からは私が常勤鍼灸師として週 5日施術を担当している。私は看護職の資格も所持している為、鍼灸の予約が無い時間帯は看護業務を兼務している。それぞれ業務内容は異なるが、直接診察の流れを見ることで、医師や看護職側の患者への関わり方を知ることが出来るため、貴重な機会だと考えている。 さて、鍼灸院で働いていた頃とは異なり、病院内で鍼灸施術をする際は、診療カルテを確認し、時には患者の診察時の状況等を直接他のスタッフに確認出来るメリットがある。しかし、 2022年4月から開始された不妊治療の保険適応により、当院でそれを利用する患者は混合診療禁止の兼ね合いで、院内での鍼灸を利用できないというデメリットも存在する。そのため、鍼灸を利用する人の多くは、年齢や回数制限によって保険適応外となった難治性の患者である。そのような方々に対し、鍼灸師としてどのように他職種と連携し、患者をサポートしていけば良いか模索する日々である。 また、病院内で働くスタッフや患者の中には、鍼灸について興味をお持ちの方、好意的に捉えている方もいれば、鍼灸に対する恐怖心をお持ちの方、医療職者であっても鍼灸の適応症等について詳しく知らない方もおり、鍼灸の認知度の低さを実感することも少なくない。患者を病院というチームでサポートしていく中で、患者だけでなく他職種にも鍼灸の効果を知ってもらうことも、鍼灸師として大切な役割だと考えている。 今回のシンポジウムでは、現在当院で行っている他職種間での医療連携や取り組み、また臨床成績についても少し話をしていきたい。他の生殖医療施設で働く鍼灸師含め、多くの方々のご参考になれば幸いである。 キーワード:チーム医療、不妊治療、生殖医療施設、病院勤務鍼灸師 ●略歴 2013年神戸大学医学部保健学科看護学専攻卒業 2013年〜 2016年東邦大学医療センター佐倉病院勤務 2019年大阪行岡医療専門学校長柄校鍼灸科卒業 2019年〜 2023年株式会社いしん(なかむら第二針療所・栗東鍼灸整骨院鍼灸部門)勤務 2023年〜医療社団法人厚仁会厚仁病院勤務 シンポジウム2「診療ガイドラインにおける鍼灸の現状と今後の展望 〜専門医学会との連携と専門鍼灸師の育成に向けて〜」 座長:埼玉医科大学東洋医学科 山口 智 新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 粕谷大智 S2-1昨今の診療ガイドライン事情−矛盾と課題 大川祐世 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 森ノ宮医療大学鍼灸情報センター Mindsは診療ガイドライン(Clinical Practice Guidelines, CPGs)を“健康に関する重要な課題について、医療利用者と提供者の意思決定を支援するために、システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し、益と害のバランスを勘案して、最適と考えられる推奨を提示する文書”と定義している。いわば現時点でのエビデンス(様々な臨床研究によって提示される科学的根拠)を網羅しそれに基づいて最良の医療選択肢を“オススメ”してくれるものが CPGsである(オススメにはその治療を行うこと、行わないことの両方向がある)。 CPGsに強制力はないが、科学的根拠に基づく医療、通称 EBM(evidence-based medicine)が主流の現代医学の中で、その推奨が医療の意思決定において非常に大きな重みを持つ。 我々はこれまで鍼灸について推奨を記載している国内 CPGsを継続的かつ網羅的に収集し、その内容の妥当性やガイドラインそのものの質評価を行ってきた。その結果、それらの CPGsの質は必ずしも高くないことが示唆された。具体的には、事前に定義された基準とは矛盾する推奨(鍼灸についての過小評価)が作成されていたり、明らかに不適切な方法で作成された推奨が記載されていたりするという問題があることが分かった。そのような背景には標準的な CPGs作成手順が厳守されていないという初歩的な問題があると考えられた。さらに鍼灸の推奨に関していえば、鍼灸の特性やあらゆる事情を考慮してエビデンスを適切に解釈し、それを臨床の意思決定場面にまで落とし込むことができる専門家が CPGs作成メンバーに含まれていないことが課題である。そのような中で 2021年に出版された慢性疼痛診療ガイドラインには本学会が CPGs作成メンバーとして参加した。これは大きな前進である。そして、その他にも鍼灸師が CPGs作成に関わる事例が近年増えつつあり、鍼灸に対する正当な評価が得られるようになってきた。今後、益々医療の中の一選択肢を鍼灸治療あるいは鍼灸師が担っていくためには、各専門医学会と連携し CPGs作成に鍼灸師が参入することが必須である。そのためには鍼灸のエビデンスを積み上げることも必要だが、各専門医学会において鍼灸あるいは鍼灸師に対する信頼を得るため、その成果を継続的に発信していくなどの地道な活動が同じくらい必要になってくるのではないだろうか。 キーワード:診療ガイドライン、 CPGs、推奨、質評価、 EBM ●略歴 2014年森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科修士課程修了修士(保健医療学) 2014年森ノ宮医療学園専門学校入職 2015年愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室臨時職員 2017年森ノ宮医療大学入職鍼灸情報センター助教・鍼灸学科助教を経る 2023年森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科博士後期課程修了博士(医療科学) 2023年現職 シンポジウム2 S2-2頭痛の診療ガイドライン改訂から考える多職種連携に向けた未来 石山すみれ 茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター 片頭痛に悩む患者は多く、日本人を対象とした片頭痛の疾病負担の調査では、約20%が中等度から重度の頭痛による障害があることが報告されている。さらに。頭痛発作がない発作間欠期においても、片頭痛の重症度(発作頻度)に相関して仕事や社会生活、無力感を感じるなど疾病負荷が高い疾患であることが注目されている。そのような流れの中で、薬剤だけでない非薬物療法が以前よりガイドラインに掲載されており、片頭痛において鍼灸治療は推奨グレードBにあった。さらに 2021年、頭痛診療の中の鍼灸治療に大きな動きがあった。特記すべき点としては、CQその他の片頭痛の急性期治療薬にはどのようなものがあるか、という項目に補完代替療法として鍼治療が推奨グレード Bとして記載されたことである。片頭痛急性期発作に対する鍼治療のシステマティックレビューでは、鍼治療が偽鍼治療よりも治療後 2時間の頭痛消失率が高い可能性が示唆されている。試験の質や評価項目など改善すべき課題は多くあるが、ガイドラインの新たな項目に鍼灸治療が追加されたということは、こうした一つ一つの臨床試験が積み重なった結果である。2022年、本邦では初となる薬剤の使用過多による頭痛(Medication overuse headache;以下 MOH)の疫学研究が行われ、国内の MOH患者数は 2.32%であることが報告された。 MOHは予防可能な頭痛とされており、鍼治療を含む非薬物治療はガイドラインにおいて薬物療法に対する不応例、不耐例、禁忌例、患者の嗜好、妊娠中・授乳中の女性患者などに対して考慮されるが、薬物療法との併用や複数の非薬物療法の組み合わせにより単独治療に比べ一層高い効果が期待できる、と記載されている。片頭痛診療に携わる鍼灸師は、どの程度の知識を有しているのが望ましいのだろうか。私たちの職種に求められていることは「治療効果」だけなのだろうか。ライフスタイルの指導や服薬状況の確認など、患者と接する時間の長い鍼灸師だからこそできることは、鍼灸治療以外にも多くあると感じている。本シンポジウムでは、ガイドラインで引用されている論文紹介、海外でのランダム化比較試験の現状、専門医と連携を取りながら国内での臨床研究の推進を行うために必要なことをまとめ、本学会のテーマである多職種を含めた「つながり」を広めるためにやるべきことについて皆様と一緒に考えていきたい。 キーワード:頭痛の診療ガイドライン 2021、多職種連携、医鍼連携 ●略歴 2012年新宿鍼灸柔整専門学校(現:新宿医療専門学校)卒業 2016年筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター研修修了 2017年筑波大学大学院人間総合科学研究科フロンティア医科学修了 2021年筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻修了 2022年茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター助教現在に至る シンポジウム2 S2-3顔面神経麻痺診療ガイドラインにおける鍼治療の課題と展望 堀部 豪 埼玉医科大学東洋医学科 2023年5月に「顔面神経麻痺診療ガイドライン(以下、ガイドライン)」が発刊された。2011年に発刊された「顔面神経麻痺診療の手引き(以下、手引き)」から実に 12年ぶりの改訂である。鍼治療の推奨度について、手引きでは「C2:科学的根拠がないので勧められない」であったが、ガイドラインでは急性期・慢性期ともに「弱い推奨」となった。また、顔面神経麻痺の治療フローチャートに鍼治療が組み込まれたことは、現代医療に鍼治療を位置付けるための大きな一歩である。一方で、ガイドラインに引用されている急性期顔面神経麻痺患者を対象とした鍼治療の文献のほとんどは海外、特に中国からの報告が大多数であり、ガイドラインでもバイアスの影響による過大評価の可能性が指摘されている。肝心の日本の文献は 2000年の岡村らの準ランダム化比較試験のみが引用されており、その他の介入研究は渉猟した限り存在しない。また、慢性期については韓国とトルコの文献が引用されており、本邦からの質の高い報告はない。つまり、鍼治療はガイドラインでは弱い推奨とされているものの、そのエビデンスの質は低く、また、本邦で実践されている薬物療法をはじめとする現代医学的治療と鍼治療の併用効果に関するエビデンスも不足していると言える。加えて、既知の通り、本邦の鍼灸治療における理論形態は様々なものが存在し、いわゆる標準的な鍼治療方法が存在しない。このことは顔面神経麻痺領域についても同様であり、顔面神経麻痺患者に対してどのような鍼治療が実践されているのかも不明である。これらのことから、顔面神経麻痺における鍼治療の実態を把握し、日本発の高品質な臨床研究を計画・実施し、本邦の実情に即したエビデンスを構築することが急務であると考える。本講演では、ガイドラインの実情を概説した上で、顔面神経麻痺に対する鍼治療の課題と展望を述べる予定である。 キーワード:顔面神経麻痺、ガイドライン、鍼治療 ●略歴 2012年明治国際医療大学鍼灸学部卒業 2014年明治国際医療大学大学院博士前期課程修了修士(臨床鍼灸学) 2014年埼玉医科大学東洋医学科(非常勤) 2016年埼玉医科大学東洋医学科(専任) 【現職】埼玉医科大学かわごえクリニック東洋医学はり外来(兼担) シンポジウム2 S2-4機能性消化管疾患診療ガイドラインー過敏性腸症候群における鍼灸- 谷口博志 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 過敏性腸症候群( IBS)は、腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹痛と便通異常、あるいはそのいずれかが、 3ヶ月の間に間欠的に生じるかもしくは持続する疾患である。本邦における IBSの有病率は 6.1〜14.0%と報告されており、鍼灸臨床でも遭遇しうる疾患の 1つである。警告症状、危険因子、通常臨床検査、大腸検査で異常がなく、 IBSのRome IVの定義「繰り返す腹痛が、少なくとも診断の 6ヶ月以上前に出現し、最近 3ヶ月で少なくとも週に 1日あり、 1)排便に関連する、 2)排便頻度の変化に関連する、 3)便形状(外観)の変化に関連する、の 3項目のうち 2項目以上を伴うもの」を満たすものが IBSと診断される。 IBSには感染性腸炎、ストレス、腸内細菌・粘膜透過性亢進・粘膜微小炎症、神経伝達物質・内分泌物質、心理的異常、遺伝などが関わるとされ、複数の病態が複雑に絡みあい発症することがわかっている。鍼灸治療による IBS改善の可能性は、ラットを用いた基礎研究により先行して示されてきた。足三里への鍼刺激は正常な結腸運動時には Barrington核を介した骨盤神経による平滑筋運動亢進が示されている。また、コルチコトロピン放出因子の脳室内投与やストレス負荷により誘発された結腸運動の過剰亢進に対し足三里への鍼刺激は、脳内のオキシトシンを介した正常化作用が生じると報告されている。このように IBSの1因子であるストレスを用いたモデルラットに対する鍼刺激による改善作用が示されている。一方、 2020年に『機能性消化管診療ガイドラインー過敏性腸症候群( IBS)』が発刊され、「IBSに補完代替医療は有用か?」との問いの一部として鍼灸が取り上げられ、鍼と灸ともにRCTやメタアナリシスでの有効性を示しつつ、標準治療法または抗うつ薬にうまく反応しなかった場合の代替療法として鍼治療を行うことを提案するにとどまっている。ガイドラインでは IBSと関わる各々の病態に対する治療法について推奨度が明示されており、推奨度が高いものの中には、基礎研究分野における結腸運動異常の改善や上位中枢を介した機能改善などが示されている。鍼灸治療の作用機序から考えると、これらの病態に対する臨床効果は十分に示せるものと示唆される。しかしながら、未だ IBSに対する本邦からの質の高い臨床研究は出されていない。これが実現することで、ガイドラインにおける鍼灸治療の立ち位置が確立されていくものと期待される。 キーワード:機能性消化管疾患診療ガイドライン−過敏性腸症候群(IBS)、過敏性腸症候群、鍼灸、体性−自律神経反射 ●略歴 2002年明治鍼灸大学卒業 2007年明治鍼灸大学大学院博士後期課程修了(鍼灸学博士) 2007年明治鍼灸大学基礎鍼灸学教室助教 2007年デューク大学外科学教室特別研究員 2008年ウィスコンシン医科大学外科学教室ポストドクトラルフェロー 明治国際医療大学基礎鍼灸学講座助教 2017年東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科講師 シンポジウム2 S2-5過活動膀胱診療ガイドラインにおける鍼治療の現状とエビデンス 伊藤千展 烏丸いとう鍼灸院 明治東洋医学院専門学校鍼灸学科 過活動膀胱(Overactive Bladder: OAB)は、 2002年に国際禁制学会により定義された尿意切迫感を必須症状とする症状症候群である。日本排尿機能学会の調査によると、OABの有症状率は40歳以上人口の14.1 %と、現在の人口構成から 1000万人を超えることが推定され、実際に鍼灸臨床においても高頻度に遭遇する愁訴の一つとなった。さらに近年、OAB症状が広範にわたる QOL低下をきたすことや、フレイルや認知機能低下との高度な関連性も大きな問題となっている。過活動膀胱に対する治療は、ここ10年ほどで大きく発展し、2022年改訂の過活動膀胱診療ガイドライン第3版ではいくつかの治療の位置付けが見直された。治療の根幹をなす薬物療法については、従来の抗コリン薬に加え、β3受容体作動薬が推奨グレードAとなり治療薬選択の幅は拡大された。また薬物治療抵抗性の尿失禁例に対してはボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法やニューロモデュレーションの一つである仙骨神経刺激療法が保険適応となったことも大きな話題となった(いずれもグレードA)。一方、鍼治療は 2015年に改訂された過活動膀胱診療ガイドライン第 2版に「その他の保存療法」として初めて収載された。推奨グレード C1(行っても良い)と明示されたことは大きな一歩であったが、 2022年改訂の第3版では引き続き C1にとどまる結果となった。その論拠には、第2版で引用された 2005-15年報告のランダム化比較試験( Randomized controlled trial: RCT)3編の結果が引き続き用いられている。しかしながら、OABに対する鍼治療の臨床研究は 2015年以降も報告が増加しており、 2022年にはコクランにより、成人のOABに対する鍼治療の RCT15編(鍼vs無治療:1編、鍼 vs sham鍼:5編、鍼 vs骨盤底筋訓練:2編、鍼 vs抗コリン薬:11編、総参加者1395例)に基づく系統的レビューが報告された。OAB症状の改善効果について、 sham鍼との比較による有意性は示されなかった( SMD- 0.36, 95%CI -1.03 to 0.31; 3編; 151例)ものの、抗コリン薬(ソリフェナシン、トルテロジン)との比較では、鍼治療は有意に症状改善/治癒を増加させた( RR1.25, 95%CI 1.10 to 1.43; 5編; 258例)ことなど、新たな知見も蓄積されつつあり、今後の推奨度格上げが期待される。本シンポジウムでは、過活動膀胱の病態とともに、過活動膀胱症状に対する鍼治療の有効性についてエビデンスを共有し、泌尿器科医療の中での鍼灸の役割について議論を深める機会としたい。 キーワード:下部尿路症状、過活動膀胱、鍼治療 ●略歴 2010年明治国際医療大学鍼灸学部卒 2012年明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科博士前期課程修了 2009-2020年中安外科クリニックリハビリテーション科 2012-2014年泌尿器科上田クリニック 2013-2014年国際東洋医療鍼灸学院鍼灸学科非常勤講師 2015年烏丸いとう鍼灸院開院 2021年明治東洋医学院専門学校鍼灸学科非常勤講師 シンポジウム3 スポーツ委員会報告 座長:法政大学スポーツ健康学部 泉重樹 立教大学スポーツウエルネス学部 吉田成仁 S3-1若手アスレティックトレーナー・鍼灸師の現状と問題点〜臨床・研究の狭間で〜 玉井伸典 1)、川口健太郎 2)、斉藤海3)、村越祐介 4)、細井聡5) 1)国立スポーツ科学センタースポーツ科学・研究部 2)呉竹学園東洋医学臨床研究所 3)西早稲田整形外科 4)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 5)学校法人滋慶学園東京メディカル・スポーツ専門学校 日本アスレティックトレーニング学会と全日本鍼灸学会スポーツ鍼灸委員会が東京大会(2022年)、神戸大会(2023年)において合同で開催したシンポジウムはいずれも会場が満席になるほど盛会となり、スポーツ現場における他職種連携、つまり鍼灸師、アスレティックトレーナー(以下AT)に対するニーズと役割分担に関する議論を深める良いきっかけになったと考えている。その一方で若手の鍼灸師や ATたちが順風満帆に現場活動や臨床活動、さらに研究を行っているとは言い難い面がある。今回のパネルティスカッションでは両学会の委員がモデレーターとなり、全国各地で活躍している若手鍼灸師 /ATをパネリストとして、彼ら彼女らの現状や抱えている問題などを報告してもらい、現状把握とともに改善策等を議論する場を設けたいと考えている。多職種、多競技、多施設に従事する鍼灸師 /ATの立場からの様々な意見を汲み取り議論することでアスリートサポートを目的とした職場環境の改善や多職種連携の最適化、そしてアスレティックトレーニングならびにスポーツ鍼灸のエビデンスの構築に寄与することを企図している。 キーワード:アスレティックトレーニング、鍼灸師、スポーツ、アスレティックトレーナー ●略歴 ■玉井伸典 2016年帝京短期大学ライフケア学部柔道整復専攻卒業 2017年東京医療専門学校鍼灸マッサージ科T部卒業 2018年東京スポーツ・レクリエーション専門学校アスレティックトレーナー養成科卒業 2019年筑波大学理療科教員養成施設卒業 2019年人間総合科学大学大学院人間総合科学研究科心身健康科学専攻修士課程修了 2022年筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツ医学専攻 3年制博士課程修了 2022年現職 ■川口健太郎 帝京大学医療技術学部、東京医療専門学校卒業後、整形外科クリニック併設ジム、大学アメリカンフットボール部と野球部に勤務。 JSPO-AT、鍼師、灸師、あんまマッサージ指圧師帝京大学体育局サッカー部選手兼トレーナー( 2016-2018)ノースアジア大学明桜高等学校サッカー部(第 99回高校サッカー選手権)関東第一高等学校サッカー部(第 100回高校サッカー選手権) ■村越祐介 2018年東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科卒業 2020年東京有明医療大学大学院保健医療学研究科博士前期課程卒業 2023年〜新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科助教 トレーナー活動 2018〜19年社会人アメリカンフットボール Xリーグアサヒビールシルバースター(現オリエンタルバイオシルバースター ) 2019年〜千葉県私立昭和学院中学校女子バスケットボール部 ■細井聡 筑波大学体育専門学群、日本鍼灸理療専門学校卒業後、東京学芸大学蹴球部アスレティックトレーナー、ジュビロ磐田アスレティックトレーナーを経て、 2020年より現職。はり師、きゅう師、あんまマッサージ指圧師、 JSPO-AT、NSCA-CSCS元Jリーグトレーナー会代表( 2017〜2020)、サッカー日本代表( 2020〜現在)、女子サッカー日本代表アスレティックトレーナー( 2023)など ■斉藤海 2017年 法政大学スポーツ健康学部 卒業 2017年 花田学園日本鍼灸理療専門学校 入学 2018年〜 2021年 ホッケー男子 U 21日本代表 2019年〜 西早稲田整形外科 リハビリ科 2020年 花田学園日本鍼灸理療専門学校 卒業 2021年〜 ホッケー男子日本代表 シンポジウム4 他職種連携企画「地域医療(在宅医療)」 座長:はり・きゅう・マッサージ仙台けんえい訪問院 栗和田健規 はぎの鍼灸院 萩野利赴 S4-1仙台市の在宅重度障害者を支える連携の仕組み 遠藤美紀 喀痰吸引等第1号2号3号登録研修機関くりはら介護塾 現在仙台市内のいたるところで、重度の障害を抱えた方々が気管切開をして人工呼吸器を着け生活をされている。その生活を多職種が連携をして支えている。私が保健師として働き始めた平成3年には、介護保険制度もなく介護が必要な方のお世話は家族が中心であった。しかし高齢化が急速に進み介護は個人で支えるから社会で支えるに変わり、平成12年に介護保険制度ができた。私もケアマネ資格を取り4年ほどケアマネ業務にも携わった。その後ご縁があり、平成22年から往診専門クリニック(以下往診とする)で働き始めた。当時600人程の往診をしていたが、驚いたことに約1割の50人程が気管切開をして人工呼吸器を着けて家で普通に暮らしておられた。普通にというのは語弊があるかもしれないが、パソコン等でコミュニケーションをし、胃ろうから食事を摂り、さらに好みのお酒を楽しむ姿もあった。院長先生は「生活なんだからお酒を飲むのも当たり前」と、健康面に配慮しながら飲酒も了解されていた。また「人工呼吸器は妻(夫)より大事な伴侶」など、これまで怖さを感じていた医療に対して全く別の考え方を学んだ。私が医療の素人である介護職に医療的ケアを伝えられるのは、往診での学びがあったからに他ならない。そして入職した翌々年、介護職員の喀痰吸引等の制度ができ、国主催の指導者養成講習を受け往診の研修機関として介護職の研修を開始した。制度ができたことは喜ばしいことであったが、重度の障害をお持ちの方々を支えるには内容が不十分であった。しかし往診の院長先生は、制度化される以前から「吸引は業である前に人助けである」という「緊急避難」の考え方を介護職の方へ伝えて育て、障害の方や家族を支えておられた。そのため仙台では十年以上も前から独居の全身麻痺、人工呼吸器、胃ろうの方を多職種が支える仕組みができている。シンポジウムでは仙台での現状について紹介させていただきたい。 キーワード:医療的ケア、多職種連携、在宅医療介護、重度障害 ●略歴 1990年国立習志野病院附属看護学校卒業 1991年宮城県総合衛生学院公衆衛生看護学科卒業 2010年仙台往診クリニック勤務( 2013年〜介護職員喀痰吸引等第 3号研修担当) 2018年介護職員喀痰吸引等第 1号2号3号研修機関「くりはら介護塾」開設 【資格】 1990年看護師免許取得 1991年保健師免許取得 2001年介護支援専門員(ケアマネジャー)資格取得 2018年喀痰吸引等指導者資格取得 シンポジウム4 S4-2福島県奥会津地域における在宅医療と鍼灸 津田恭輔 福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室 2020年7月に高齢化、医療過疎が著しい福島県奥会津地域(柳津町・三島町・金山町・昭和村の4町村が対象)において、福島県、県立病院、当院の協働で在宅医療を展開する奥会津在宅医療センターが設立された。奥会津在宅医療センター長より当研究室に奥会津地域の在宅医療における訪問鍼灸診療の誘致があり、2021年4月より参画し、訪問鍼灸診療を実施してきた。本シンポジウムではその活動内容の概要を経験した症例を交えて報告する。奥会津在宅医療センターは、医師3名、看護師 5名、事務員1名、ドライバー2名体制で訪問診療、訪問看護を中心に提供しており、対象は4町村の在宅医療の希望があり、基準を満たした住民である。4町村の人口は約 7000名、高齢化率は 50%を超える限界集落で、4町村の面積は770km2と広大であるが、医療機関は県立病院1施設、国保診療所3施設で、常勤医師は5名の医療過疎地域である。訪問鍼灸診療は、2021年4月に開始し2023年1月末日まで、週1回の頻度で行った。鍼灸対象者は奥会津在宅医療センターで在宅医療を受けている患者が中心で、医師からの紹介を経て、訪問鍼灸診療が開始となる。延べ患者数は17名[男性9名、女性8名]、平均年齢は 83.7歳[標準偏差 7.15]、開始時主訴は腰痛6例、肩痛3例、労作時呼吸困難3例、頸部痛2例、四肢痺れ2例、膝痛1例であった。平均治療回数は17.2回[15.1]で、全体の総鍼灸診療回数は 293回、転機は在宅での居住継続 15例、入院2例、内 1例が病院で死亡の転機をとった。また、金山町において、健康状態と鍼灸治療についてアンケート調査を実施した。健康状態については、健康関連 QOLをSF-8(SF8 Health Survey)で評価し、鍼灸治療のついては、先行調査を基に作成した調査票を用いて行った。結果は、全体で 153名(男性 40名、女性 113名)からアンケートを回収した。全体の平均年齢は 77.0[標準偏差 8.2]歳(男性 76.8[9.1]歳、女性 77.1[8.0]歳)であった。 SF-8における全体の平均身体的サマリスコアは 44.9[7.7]、平均精神的サマリスコアは 50.4[6.3]であり、身体的な問題を抱えている住民が多く含まれていた。鍼灸治療については、「知っている」と回答したのは125名( 82%)であったが、「受けたことがある」は 48名( 32%)と多くの住人は認識しているが、受けたことがないことが分かった。一方で、「受けてみたい」と回答したのは 82名(55%)で潜在的なニーズがあることが分かった。 キーワード:地域医療、在宅医療、鍼灸 ●略歴 2018年明治国際医療大学鍼灸学部卒業 2018年福島県立医科大学会津医療センター附属病院鍼灸研修 2023年福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室研究員現在に至る シンポジウム4 S4-3長野県伊那市営長谷鍼灸治療所の紹介と多職種連携 大木島さや香 長野県伊那市役所長谷総合支所長谷総合支所市民福祉係長谷鍼灸治療所 伊那市営長谷鍼灸治療所は、2004(平成16)年に当時の長野県上伊那長谷村に設置されました。長野県内には公営の鍼灸治療所が3つありますが、長谷鍼灸治療所は行政組織の中に組み込まれた珍しい施設です。 開設当初、かつての長野県上伊那郡長谷村は、人口2000人ほどで高齢化率40%にせまる、まさに日本の未来図ともいえる地域で、村おこしと住民の健康的な生活を実現するため、医療・心理学者・行政がタッグを組んで保健福祉活動を行っていました。さらに東洋医学的視点も取り入れたいという要望から、漢方専門医・鍼灸治療所がその中に仲間入りしました。 市町村合併によりその枠組みは現在変化していますが、通常の鍼灸施術のほかに、市役所保健師や社会福祉協議会、自治会などとともに活動する機会が得られ、新たな連携のアイデアを模索しています。 今回の発表では、これまでの経緯と現在の様子をご紹介したいと思います。 キーワード:地域医療、多職種連携 ●略歴 1996年明治鍼灸大学鍼灸学部卒業 1996年日産厚生会玉川病院東洋医学研究センター研修生 1998年東京女子医科大学附属東洋医学研究所勤務 2004年長野県上伊那郡長谷村役場長谷鍼灸治療所勤務 2006年市町村合併により伊那市役所長谷総合支所となる シンポジウム4 S4-4地域診療における漢方治療の役割在宅診療、高齢者施設診療での漢方薬の活用 齊藤奈津美 東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 地域診療、とりわけプライマリ・ケアの現場では、日常生活やライフサイクルの中で直面する症状や疾患に対応していくことが必要不可欠である。在宅診療や高齢者施設での診療では、病院や診療所などでの外来診療よりも更に身体機能の低下した高齢者が患者となる。そのため、とりわけ加齢に関連した様々な症状・病態に直面することとなる。 高齢者に見られる特徴を二つ挙げる。一つ目は高齢者には多くの疾患が併存していることである。在宅診療へと至る時、複数の医療機関や診療科での治療を一手に担うこととなる。その際に、高齢者では処方薬剤数が増加した状態であるポリファーマシーが顕在化することが多々ある。高齢者薬物治療ガイドライン2015は抗精神病薬や睡眠導入薬、解熱鎮痛薬、緩下剤などの投与中止を推奨しているが、処方薬に中止が推奨されている薬剤が多く含まれていることが少なくない。加齢による身体および臓器の機能低下などから処方薬による有害事象のリスクを考慮する必要があり、在宅診療ではそれまでの処方薬を整理しながら全身状態を維持することが求められる。 二つ目は、高齢者では認知症やフレイルなどの加齢に伴う臓器や生理機能の低下によって多彩な身体症状が出現してくることである。そのため適切な薬物治療を選択し、症状緩和を図っていく必要がある。 近年、高齢者の臓器および生理的加齢による諸症状に対する漢方治療のエビデンスも蓄積されており、漢方治療が活用できることも多くなっている。また、漢方薬を用いることでリスクの高い処方薬を中止することができる可能性もある。 今回は登米市立上沼診療所での在宅診療および高齢者施設診療における臨床経験を踏まえて、漢方治療の介入をした症例を提示し、在宅診療や高齢者施設診療における漢方治療の活用法と注意点などを述べていく。 キーワード:在宅診療、プライマリ・ケア、漢方薬、ポリファーマシー ●略歴 2009年横浜市立大学医学部卒業 2012年釧路赤十字病院臨床研修医修了 2015年国立病院機構相模原病院呼吸器アレルギー科 2015年登米市立上沼診療所 2018年栗原市立栗原中央病院内科 2022年東北大学大学院医学系研究科博士課程修了 2023年東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科助教 【資格】プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医・指導医、日本病院総合診療特任指導医、総合診療専門医特任指導医 シンポジウム5 経穴委員会主催「教育・臨床・研究の視点からの経穴詳解ー三陰交・合谷・百会についてー」 座長:関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科 坂口俊二 アコール鍼灸治療院 河原保裕 S5-1教育の視点から−鍼灸師教育における経穴の位置づけと課題 仲村正子 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 鍼灸師にとって経絡経穴学は、教育・研究・臨床において重要な役割を持つが、それぞれの立場によって重視されることが異なる。私の発表では、三陰交・合谷・百会の三穴について教育の視点から深堀し、研究・臨床的視点がどのように関連しあっているかを再確認することを目的とする。 1.学生からみた経穴 自身が大学生であった4年間、ティーチングアシスタントを経験した大学院生での 2年間、そして大学での鍼灸師養成教育の職に就き 7年目となるが、学生・大学院生・教員のどの立場からみても経絡経穴学を苦手科目とする学生は少なくなかった。特にその傾向が強いのは経穴名や部位を丸暗記するという学修となる低学年であるが、高学年になると他の科目との関連性や臨床実習での応用、国家試験対策では得点源となることがわかるとやや緩和されるという流れがあるように感じる。 2.鍼灸師教育における経穴の位置付け 2020年度(第29回)国家試験より経絡経穴概論の問題数は20問に増え、他の科目でも経穴の知識を必要とする問題を併せると全体の1/6程度で経穴に関連する問題が出題され、当然のことながら重要な位置付けがされていると言える。 本学の4年間では、1年次に経穴名と部位、2年次に経穴の局所解剖、3年次に経穴や体表指標の触診、4年次には臨床実習での応用と国家試験対策というカリキュラムとなっている。また、入学前教育では経穴名の暗唱を課題としている。 3.百会、合谷、三陰交 いずれも臨床で多用される経穴であり、臨床を想定した使用方法や臨床研究で得られている知見について説明している。また、解剖学的な視点からの安全性について、ご献体の解剖から得られた研究データを踏まえて説明している。 2023年に開催したオンデマンドでの鍼灸安全性セミナーでは、受講後のアンケートで頭頂孔について授業で学修していないと回答した参加者が多くみられた。 4.臨床・研究とのつながり 臨床実習の指導を兼務する教員には、授業で教える『指標』としての経穴と、臨床実習で教える『反応点・治療点』としての取穴方法との乖離によるジレンマを抱える方も多いのではないだろうか。組織や硬結を治療点とする、いわゆる西洋医学的な治療でも生じる事象である。まとめ教育の役割として、臨床と研究をつなげることが重要であると考える。臨床で生じた疑問を研究的な思考で解明していくことができる人材の育成をしていく必要がある。 キーワード:経絡経穴学、教育、三陰交、合谷、百会 ●略歴 2016年浜松大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科卒業 2018年明治国際医療大学大学院鍼灸学専攻修士課程修了(鍼灸学修士) 2018年森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科助手 経絡経穴学関連授業科目を担当 2020年森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科助教現在に至る シンポジウム5 S5-2教育・臨床・研究の視点からの経穴詳解 ー三陰交・合谷・百会ー 臨床家はどうやってツボを取っているのか 山見宝 全日本鍼灸学会経絡経穴委員会 愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室 森ノ宮医療大学鍼灸情報センター 臨床家は、どうやってツボをとっているのか?代田文誌は、『鍼灸真髄』において、「道の至極の処は実参実究により自得するより他に致し方ない低のものである。」と記している。この表現は、学び、体験し、反省修正し、研究することが重要であると私は理解している。時代が移り、表現・理解は異なっているが、教育・臨床・研究の視点からの経穴の詳解は非常に意義深いものである。『医道の日本888号発刊記念特集ツボのとらえ方』(2017)には、85人それぞれの立場での考えが、寄稿集としてまとめられている。多くの先生方は、ツボは反応点であり治療点であると考えていることがわかる。生体は何らかの反応を体表に表しており、その反応を正確にとらえることが重要である。また、そのツボの反応をとらえる指頭感覚の重要性も指摘している。そこには、経験・訓練・センスが必要である。皆さんは、駅の構内などの雑踏の中に、友達の存在に気付いた経験をお持ちでしょう。また、止まっているエレベーターに躓いた経験も然りである。なぜそのようなことが起こるのでしょうか。脳が勝手に情報を処理し、自分の意思に反した行動をするために起こる反応(反射)であると言われている。定位反応(反射)も、その一つである。しかし、知識も、情報も、経験、もない場合には起こるものではなく、無意識に沈んでいる知識・情報・経験に反応し、センスも大切のようである。シンポジウムでは、私の知識・情報・経験の一つとして、 1:湯液に『神農本草経』があるように、鍼灸には明堂経がある、 2:ツボは反応点であること、 3:ツボは固定されたものではなく変化(状態・空間的位置・機能)するものであること、 4:ツボの決定は定位反応(反射)とセンスが働いていること、 5:三陰交、合谷、百会についての、ツボの探り方・ツボの反応・ツボに対する手技・ツボの主治症など、について報告する。 キーワード:経穴詳解、臨床家、定位反応、主治症 ●略歴 1990明治鍼灸大学(現:明治国際医療大学)卒業同年愛媛県立中央病院東洋医学研究所技師 2013愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室(施設名変更)現在に至る 2014森ノ宮医療大学鍼灸情報センター客員講師現在に至る シンポジウム5 S5-3三陰交、合谷、百会を研究の視点から検討する 臨床試験での対象疾患と刺激方法の現状 小井土善彦 せりえ鍼灸室 【目的】三陰交、合谷、百会は、古くから臨床で多く使用されている。これら3経穴は、 Pubmed、 Cochrane Library、医中誌、 eJIMなどのデータベースで多くの論文が検出できる。しかし、対象疾患や刺激方法を明らかにした報告は少ない。そこで、本研究は、これら3経穴の臨床試験での対象疾患と刺激方法を明らかにすることを目的とした。利益相反(COI)はない。【方法】 2024年1月に、 2019から 2023年までの臨床試験を、国内外のデータベースで調査した。国外は Pubmedを使い、検索語は、 Sanyinjiao、Hegu、Baihuiとし、論文タイプは Clinical Trialとした。国内は医中誌 Webを使い、検索語は、三陰交、合谷、百会とし、論文タイプは比較研究とした。対象疾患は、 A整形外科疾患、 B呼吸・循環器疾患、 C消化器・代謝疾患、 D神経疾患、 E精神疾患、 F膠原病、 G耳鼻科・眼科疾患、 H産婦人科疾患、 I泌尿器疾患、 J小児科疾患、 K外科領域への応用、 L緩和医療への応用、 Mその他に、刺激方法は、鍼、灸、鍼灸併用、その他に分類した。【結果】 Pubmedで三陰交は 115編、合谷は 97編、百会は 115編が検出された。対象疾患は、上記アルファベットで表記し、上位 3疾患を示す。三陰交は Dが24編( 20.9%)、Kが23編(20.0%)、Hが20編(17.4%)、合谷は Kが27編(27.8%)、Dが23編(23.7%)、Gが13編(13.4%)、百会は Dが43編(37.4%)、Eが17編(14.8 %)、KとHが各 12編(10.4%)であった。刺激方法は、鍼は三陰交が81編(70.4%)、合谷が65編(67.0%)、百会が90編(78.3%)、灸は三陰交が5編(4.3%)、合谷が2編(2.1%)、百会が8編(7.0%)、鍼灸併用は三陰交が5編(4.3%)、合谷が2編(2.1%)、百会が5編(4.3%)、その他は、三陰交が27編(23.5%)、合谷が 34編(35.1%)、百会が14編(12.2%)であった。医中誌 Webで三陰交は10編、合谷は 3編、百会は 4編が検出された。対象疾患は、三陰交は Hが5編(50.0%)、Mが4編(40.0%)、Eが1編(10.0%)、合谷は Eが1編(33.3%)、Gが1編(33.3%)、Mが1編(33.3%)、百会は Eが2編(50.0%)、Mが2編(50.0%)であった。刺激方法は、鍼は三陰交が3編(30.0%)、合谷が2編(66.7%)、百会が 3編(75.0%)、灸は三陰交が4編(40.0 %)、鍼灸併用は三陰交が2編(20.0%)、その他は三陰交が 1編(10.0%)、合谷が 1編(33.3%)、百会が 1編(25.0%)であった。【考察と結語】本研究から、これら 3経穴は臨床試験で多く使用され、様々な刺激方法が用いられていることが分かった。今後は、基礎研究などさらに詳細な研究が必要である。 キーワード:鍼灸、調査、臨床研究、 Pubmed、医中誌 ●略歴 【学歴】 2014年明治国際医療大学大学院鍼灸学専攻修士課程終了 【略歴】 1992年〜現在せりえ鍼灸室院長 2008年〜現在神奈川県立衛生看護専門学校助産師学科非常勤講師 2009年〜 2016年森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科非常勤講師 2016年〜現在東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科非常勤講師 シンポジウム6 教育研修部主催 「東洋医学教育の多様性ー古典教育と電子教材、授業展開と取り組みー」 座長:学校法人呉竹学園 東京呉竹医療専門学校 中村真通 明治東洋医学院専門学校鍼灸学科 福田文彦 S6-1古典教育と電子教材について正しい伝統医学教育は可能か 浦山久嗣 仙台赤門医療専門学校 日本伝統鍼灸学会 経絡治療学会 【問題の所在と定義】ここでいう古典とは近代以前に東アジアの言語で記述されたすべての文献を指しており、独り古代中国で著録された特定の医書を意味しない。しかし、研究対象が伝統的な中国古伝医学をエヴィデンスとする以上、漢文文献が中心になることは必然である。【目的】伝統医学である以上、過去の記録内容を根拠として立論せざるを得ないが、現代医学の常識と齟齬するものは随時修正していく必要がある。また、その齟齬がどこにどの程度生じているかを論証しない限り、実用的な伝統医学とは呼べない。そこで、各用語を逐一定義づけるとともに現代用語との違いを探ることが教育の目的とせざるを得ない。【方法】伝統的な解剖学用語一つを例にとっても、必ずしも正しく理解されておらず、 WHO経穴であっても古典とは異なる部位にプロットされていることを、実例をもって論証を試みたい。【結果と考察】例えば、『甲乙経』巻三中の 3穴、すなわち「尺沢:在肘中約上動脈(肘窩横紋上の動脈)」「曲沢:在肘内廉下陥者中屈肘得之(肘窩横紋内側端の陥凹部)」「少海:在肘内廉節後陥者中動脈応手(肘関節内側上顆の上尺側側副動脈上の陥凹部)」を見ても明らかなように、現在我々が認識している経穴部位とは明らかに異なる。このように、「古典」の理解は時代や地域によって随時変化していることを考慮する必要がある。【結語】果たして、現実の伝統医学は科学的臨床実験を行い得ているのだろうか。 キーワード:古典、漢文、解剖学用語、経穴部位、臨床実験 ●略歴 1988年赤門鍼灸柔整専門学校鍼灸指圧科卒業 2004年 WHO西太平洋事務局経穴部位国際標準化会議伝統医学テンポラリィアドバイザー(〜 2006年) 2007年赤門鍼灸柔整専門学校東洋療法教育専攻科勤務(〜 2022年) 2022年仙台赤門東洋医療専門学校(鍼灸マッサージ東洋医療科・鍼灸医療科第二部)勤務 シンポジウム6 S6-2東洋療法学校協会電子教材(経穴)の運用 松下美穂 森ノ宮医療専門学校 公益社団法人東洋療法学校協会(以下、学校協会)では、 2022年6月より、電子教材検討会を立ち上げた。その活動内容は、今後、 ICT教育を推進していくために、学校協会編教科書の電子版の発刊・授業や実習で使用できる電子教材の作成・ ICT教育を取り入れていくための方法の検討・提案を行っている。電子教材と呼ばれるものは様々なものがあるが、電子教材検討会ではまず動画の作成を取り組むこととなった。動画教材は、授業時の教員が使用できるだけでなく、事前に学生に配信することにより予習することもでき、また、自信のペース合わせて繰り返し学習することが可能となる。現在、動画教材として経絡経穴概論・徒手検査の作成を行っている。経絡経穴概論の動画作成では、当初、取穴の動画を作成する予定であった。しかし、検討していくなかで、体表指標を正しく触れなければ取穴はできない、体表指標の触れ方・説明の仕方に教員間に大きな差がみられる、体表指標を触れることができれば取穴だけでなく解剖学の学習にもなる、経穴の特性については教員間で考え方の差が大きく、それが取穴にも大きく関わるため様々な意見が出てくる可能性がある、などの意見が出された。初年次に経絡経穴概論を学ぶことが多いが、教員によって指標が異なることは、特に初学者は混乱することになり、学ぶことの苦手意識につながっている可能性も示唆される。また、直接患者の身体に触れて施術を行うあはき師にとって、身体に正しく触れることにより、傷害などの評価をすることにも重要なものであると思われる。そのため、今回は取穴ではなく「取穴に必要な体表指標を触れ方」を動画として作成することとなり現在、撮影・編集を行っている。臨床の場面においての経穴は、必ずしも取穴部位通りではなく、患者のその日の身体の反応によって差異がみられることは多い。それにより、学生は取穴部位を覚えることの意義に疑問を感じることもあるが、標準的な経穴の部位を正しく取ることができれば、その部位からどのようにずれているかということも説明することが容易となる。電子教材を活用することは、学生が自学自習するためだけでなく、今までの学校教育に +することにより、これまで以上の教育を目指すための大きなツールの一つであると考えられる。 キーワード:ICT教育、電子教材 ●略歴 1999年京都教育大学教育学部スポーツ健康コース卒業 2003年森ノ宮医療学園専門学校鍼灸学科卒業 2002年トレーナーズラボ勤務 2006年森ノ宮医療学園専門学校鍼灸学科専任教員 2006年〜 2014年大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座口腔解剖学第 2教室専修学校研修員 2015年森ノ宮医療学園専門学校鍼灸学科学科長 2023年森ノ宮医療学園専門学校校長補佐 シンポジウム6 S6-3古典医学を楽しく学んでもらうために日常のどこにでもある東洋医学と経絡経穴 船水隆広 学校法人呉竹学園臨床教育研究センター 鍼灸やあん摩マッサージ指圧の養成学校に入学し最初に期待する科目は、東洋医学概論・経絡経穴概論であると考えられます。日常に目にしてきた現代医学的な要素ではなく、古典に基づいた伝統医療の科目は、どの養成学校でも 1学年に学ぶ、まさに THE東洋医学の出発点となり、期待度が最も高い科目とも言えます。ただし、それは日常には感じることがなかった思想や難解な漢字や専門用語の山でもあり、期待値が高かった分、苦手意識が強く感じてしまうと嫌いになる科目度合いも大きくなってしまいます。複雑な漢字が苦手・難解な考え方が苦手・回りくどい言い方が不得意など苦手意識が毎回の授業ごとに産み出され、学びの姿勢がいつの間にか暗記偏重に変換され、真の意味を理解しないまま学ぶと、先人たちがその生命をかけて獲得してきた知恵と知識を継承すること無い、奥行きが無い、無味無臭の東洋医学となり、臨床に活かされること無いまま、将来の人々の健康が危機的状況に陥るきっかけになるかもしれません。そこで初学者に対し苦手意識を産み出さず、楽しく頭にスラスラと入り、学生が将来「自ら考え実践できる東洋医学」になるための授業方策が必要となります。今回のシンポジウムでは、その方策をいくつかの例を挙げご紹介していきます。 キーワード:東洋医学、経絡経穴概論、東洋医学概論 ●略歴 2001年学校法人呉竹学園東京医療専門学校教員養成科卒業 2018年人間総合科学大学大学院人間総合科学研究科心身健康科学専攻修士課程卒業 2015年学校法人呉竹学園東京医療専門学校鍼灸マッサージ科科長就任 2018年学校法人呉竹学園臨床教育研究センターマネージャー就任 シンポジウム7「災害と鍼灸:災害鍼灸への期待、現状、課題」 座長:独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局 小早川義貴 災害鍼灸マッサージプロジェクト 三輪正敬 S7-1災害と伝統医学(漢方、鍼灸) 歴史と経験から考える課題 高山真 東北大学病院総合地域医療教育支援部(総合診療科、漢方内科) 日本の伝統医学は主に中国より伝わり、その後に独自の発展を重ねて現在の医療のなかで活用されている。鍼灸治療と漢方薬治療については、後漢の時代に編纂された傷寒論の中に、疫病や争いごと、飢饉などの状況での活用が記載されており、現代の災害時にも活用の参考になる。急性発熱性感染症や外傷、疼痛などについては、いまだ有用であるものも数多くある。演者は、2011年の東日本大震災後の避難所の支援活動に参加し、避難者を対象に漢方薬や鍼マッサージを行った経験から、現地でもこれらの支援が有用であることを認識した。また、2016年の熊本地震の際にも特定非営利活動法人AMDAの活動に参加し、避難者を対象に鍼マッサージの支援を行い、疼痛緩和や排尿排便障害、不眠などの症状の改善が即効性をもって得られることを実感した。2024年の能登半島地震においても、被災地での支援者支援として、1.5次避難所での避難者支援として、鍼マッサージが行われた報告が、災害支援鍼灸マッサージ師合同委員会 (DSAM)や日本災害鍼灸マッサージ連絡協議会(JLCDAM)含め、複数のウェブサイトで確認することができる。2011年に支援活動を行っていた際には情報の共有が不十分であり、どこでどの団体がいつ活動を行っていたかが不明で、情報が集まったのが発災から1年後であったが、2016年、2024年ではさほどのタイムラグが無く情報が公開され、有資格者のボランティアも参加しやすい状況に変わってきた。一方で、実際に現地で鍼マッサージによる支援を行う際には、様々な課題があり配慮が必要と思われる。支援は現地のニーズに合わせて行うものであり、ニーズ調査と現地の業団との連携、行政との連携が重要となる。また、現地での交渉や準備調整には担当を集約する必要があり、指揮命令系統の明確化が望まれ、これがうまくいかないと混乱を招くこととなる。施術については、鍼マッサージを行えるプライベート空間が必要であり、清潔操作や鍼の管理にも細心の注意が必要となる。施術内容も刺激が過度に大きくならないような配慮が必要となる。受療者の中には、疾患を抱えている方々も多く、背景の聴取、バイタルチェックを行うこと、必要に応じて医師、保健師への引継ぎや情報提供が望まれる。災害時支援においての人道的な配慮のもと、鍼マッサージによる支援が安全にかつ適正に行われることを目標に、意見交換をしたい。 キーワード:災害、伝統医学、鍼、マッサージ ●略歴 1997年宮崎医科大学医学部医科学科卒業 2010年東北大学大学院医学系研究科医学博士課程修了 2010年ミュンヘン大学麻酔科ペインクリニック留学現在、東北大学病院漢方内科副科長・医局長、東北大学病院総合地域医療教育支援部副部長、東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座特命教授 シンポジウム7 S7-2東日本大震災の支援と業団体としてのその後の取り組み 稲井一吉 公益社団法人宮城県鍼灸師会 東日本大震災の支援と業団体である本会のその後の取り組みを、発生時から時系列的に列記し、最後に課題をまとめてみた。 【東日本大震災の発災時の状況と支援内容】 2011年3月11日、 1000年に一度と言われた未曾有の大震災が宮城県沖で発生。半月以上に亘り、私の生活および仕事はマヒ状態に陥ったが、少し生活や気持ちが落ち着いた時点で、個人でボランティア活動を開始。近くの避難所を回るも、受け入れや需要がなく、施術には至らなかった。 4月後半から、業団体である宮城県鍼灸師会(以下、本会)の会長(当時)樋口秀吉氏が、個人としてボランティア基地局を立ち上げ、全国から集まったボランティアの宿泊を支援し、避難所への派遣コーディネートを行った。 本会は、その支援団体として、基地局運営やボランティア活動を支援した。 支援終了後、本会としての災害への意識の薄れもあり、具体的な災害対策はなされないままになっていた。 【震災後の本会の災害支援への取り組み】 2019年10月に発生した台風 19号により県内の多くで豪雨被害が発生。 ボランティア活動について、本会が初めて主体となって活動することを決定。樋口前会長の指南を受け、丸森町と大郷町で活動開始。延べ人数 200人程の避難所ケアをすることができた。しかし振り返ると、災害時の準備が足りなかったため、初動対応、人員集め、避難所での活動など多くの課題が浮き彫りになった。そこで、一番の課題を本会独自のガイドライン作りとして掲げ、 2021年「災害鍼灸支援ガイドライン」が完成。翌年にボランティア部分を抽出したマニュアルを作成した。 2022年2月に発生した震度 5強の地震では、ガイドラインが活かされ、会員安否や被害状況をスムーズに把握することができた。 【今後における課題】 1、丸森町では、先ず避難所に活動に入る難しさを感じた。災害時の需要に素早く応えられるには、普段 どのような準備をしておくべきなのか。 2、人は時間の経過とともに、災害の意識が薄れることを実感。危機意識を如何に保ち続け、継承するか。 3、丸森町でのケアの際、我々が入る前に、個人で避難所に入りケアを行なったボランティアがいたらし く、「ケアをしてもらったが却って調子が悪くなり、もう施術は遠慮したい」との声があった。安全 に避難所ケアをするために、必要なことは何か。以上 3点について、業団体の視点から述べてみたい。 キーワード:三つの課題 ●略歴 1982年赤門鍼灸柔整専門学校鍼灸科卒業 1985年稲井はり灸院開業 1999年経絡治療学会東北支部講師 2001年(公社)宮城県鍼灸師会副会長 2003年(公社)日本鍼灸師会理事 2016年(公社)宮城県鍼灸師会会長 シンポジウム7 S7-3長期的な災害支援から広がる鍼灸の可能性 森川真二 はり灸レンジャー 2011年、東北地方を襲った東日本大震災。その惨状を目にして、心動かされた方も多かったのではないでしょうか?当時、被災地の為に何か出来ることはないかと同じ思いを持った仲間で結成されたのが「はり灸レンジャー」です。始めはどんなことでもお役に立てればという気持ちで、被災障害者を支援するNPO団体の一ボランティアとして被災地に入りました。そこで鍼灸の必要性を感じ、私たちの支援活動 がスタートしました。障害者支援から始まったことから、災害弱者と呼ばれる障害者や高齢者、さらにその支援者(家族や介護職員)など、支援が届きにくい人や地域を主な支援対象としました。 しかし、被災地では、鍼灸が未経験の方も多く、鍼灸に対して強い拒絶反応を示される現実もありました。他の医療関係者からも理解を得るには、まず鍼灸を取り入れて貰う為の工夫が必要でした。その一つが、施術にローラー鍼や台座灸を使用し、それらを希望者には無償で提供することでした。鍼灸を受けて貰うきっかけにもなりました。そして、被災者の健康を維持する為には、その場限りの施術だけでなく、ご自身で健康管理できることの重要性も感じました。そこで、セルフケアを効率良く伝えられる「お灸教室」「親子小児はり教室」なども開催することになりました。 多くの災害医療支援は急性期でかつ短期的なものが多いですが、私たちは細く長くの支援を続けてきました。それは始めから意図していたものではなく、被災地の声に応え続けることで、実現したものです。 特に東北沿岸部では被害が広範でかつ甚大で、復興には長期的な支援が求められました。東北には約 8年間に渡り 18回の訪問を続けました。現地に訪問し続けたからこそ分かる被災者の苦悩などを知ることもできました。 災害支援に携わる鍼灸団体も多種多様です。組織的で計画的な支援活動が求められる場合もあれば、私たちのような少人数で機動性の効く細やかな支援が求められる場合もあります。ただ、一個人で出来ることはしれています。何より、混乱した被災地での個々の活動は逆に迷惑をかけることもあります。他の団体と連携しながら、多様性が活かされる支援が展開されれば、私たち鍼灸師による災害支援活動は被災地の復興の一助となるものだと確信しています。 そんな一ボランティアから始まった支援活動を通して、被災地で感じた鍼灸の可能性をご紹介します。 キーワード:災害支援、鍼灸、ボランティア、セルフケア、ローラー鍼 ●略歴 2003年岡山大学農学部総合農業科学科卒業 2010年神戸東洋医療学院鍼灸科卒業 2010年〜 SORA鍼灸院院長 2011年〜はり灸レンジャー結成(関西代表) 2017年〜神戸東洋医療学院非常勤講師 2021年明治国際医療大学大学院鍼灸学専攻修士課程修了 2022年〜一般社団法人反応点治療研究会理事 シンポジウム7 S7-4災害鍼灸の課題 JLCDAMによる災害支援窓口一本化の取り組み 小野直哉 日本災害鍼灸マッサージ連絡協議会(JLCDAM) (公財)未来工学研究所 明治国際医療大学 2011年3月の東日本大震災以降、鍼灸関連諸団体により災害時の鍼灸による支援活動が活発になっている。災害支援では、被災地となる自治体の防災担当者や災害派遣医療チーム(DMAT)、災害派遣精神医療チーム(DPAT)、災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)、日本赤十字社救護班(日赤救護班)等、防災や災害支援諸団体との多様者・多職種連携が必須となっている。 災害支援の共通原則を示す共通言語にCSCATTTとCSCAHHHがある。傷病者の救護では TTT(Triage:トリアージ、Transport:搬送、 Treatment:治療)が、要配慮者の救護では HHH(Health care Triage:ヘルスケアトリアージ、Helping Hand:手を差し伸べる、Handover:つなぐ)が主たる災害支援であるが、何にも共通するのは CSCA(Command and Control:指揮と連携、Safety:安全確保、Communication:情報収集伝達、Assessment:評価)である。故に、災害支援では各職種にも指揮命令系統の窓口一本化が求められる。各職種の指揮命令系統の窓口一本化は、災害支援での防災や災害支援諸団体との多様者・多職種連携にも必須であり、日本の鍼灸界の災害支援の窓口一本化が課題となっていた。 この課題を解決するために、2018年6月の全日本鍼灸学会大阪大会会期中に大阪市内で、災害時の鍼灸による支援活動を行ってきた鍼灸関連諸団体により、災害時の情報共有と連絡の場として、日本災害鍼灸マッサージ連絡協議会(JLCDAM)設立の会合が持たれた。 2018年7月の平成 30年7月豪雨(西日本豪雨)を切掛に、JLCDAMのメーリングリストが立ち上がり、日本鍼灸師会と全日本鍼灸マッサージ師会による災害支援鍼灸マッサージ合同委員会(DSAM)や災害鍼灸マッサージプロジェクト(災プロ)、鍼灸地域支援ネット、はり灸レンジャー、東京路上鍼灸チーム( TRAST)、プロジェクトさとわ、AMDA関係者、他有志等がメンバーとなり、全日本鍼灸学会や日本伝統鍼灸学会、社会鍼灸学研究会等がオブザーバーとなっている。 JLCDAMでは、多様性の中の統一を前提に、災害時の鍼灸による支援活動を行ってきた鍼灸関連諸団体の相互理解による顔の見える関係を構築し、各団体の多様な特性の尊重と活用による、災害時の有機的連携の枠組みを構築するために、災害支援活動の情報共有・協力・連携、平時の防災や災害支援に係る情報共有等を行なっている。本講演では、 JLCDAMによる災害支援窓口一本化の取り組みを紹介する。 キーワード:災害支援、窓口、一本化、 JLCDAM ●略歴 明治鍼灸大学卒業後、明治鍼灸大学附属病院卒後研修生、東京医科歯科大学大学院修士課程を経て、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻博士後期課程在籍中に、医療経済研究機構リサーチ・レジデント及び協力研究員、先端医療振興財団科学技術コーディネーター、(公財)未来工学研究所主任研究員等に従事。現在、日本災害鍼灸マッサージ連絡協議会(JLCDAM)世話人、(公財)未来工学研究所特別研究員、明治国際医療大学客員教授。 シンポジウム7 S7-5被災地で求められるノンテクニカルスキルとテクニカルスキル 小早川義貴 国立病院機構本部DMAT事務局福島復興支援室 医療安全分野ではノンテクニカルスキルの重要性がいわれている。具体的にはコミュニケーション、チームワーク、リーダーシップ、状況認識、意思決定のプロセスを内包するが、これらは災害時に重要な CSCA-TTTのmedical management(CSCA)とほぼ重複する。すなわち、 CSCAを確立することは、被災地での医療安全を提供する基礎的要素となりうる。 同時に被災地ではテクニカルスキルも求められる。例えば避難所で肩こりの住民がいた場合、コミミュケーションが十分に取れ、またチームワークも完璧で、リーダーシップもすばらしく、状況認識も完璧で意思決定も円滑に行える鍼灸師がいたとしても、施術がまったくできなくては、その意味は半減する。被災地では専門家としてのテクニカルスキルも求められ、これは TTTに相当する要素である。 被災地で活動する場合、さまざまな問題が発生する。支援者間の摩擦、組織間の摩擦などの問題である。最終的な目標は同じだとしても、個人間の問題では、最前線の要因と本部での要因の共通認識や現状把握の違いから、また組織間の摩擦では、用いる手法や介入時期の違い等から不況和音が鳴ることもある。個人間のトラブルが組織間の問題に変換されたり、現場で解決した問題が数日後により大きな話(=風評・流言)となって、上位本部から煽られることも経験することである。被災地で発生しうる事象を知っておくことは、円滑な被災地活動に有効である。 鍼灸師が被災地で活動するためにさまざまな仕組みがこの10年で整備されてきた。これらによって令和6年能登半島地震では多くの鍼灸師が被災地で活動した。本発表では主に直近の能登半島地震での筆者の経験と鍼灸師との連携事案から、鍼灸師が災害時によりよく活動できるための話題を提供したい。(本発表での鍼灸師とはあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の総称とする) キーワード:鍼灸師、災害医療、ノンテクニカルスキル、 CSCATTT ●略歴 2004年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業 2004年島根県立中央病院初期臨床研修医 2006年島根県立中央病院後期臨床研修医(救命救急科) 2009年島根県立中央病院救命救急科医長 2011年国立病院機構災害医療センター臨床研究部・ DMAT事務局 2014年福島復興支援室兼務 2020年組織改組により国立病院機構本部 DMAT事務局・福島復興支援室 パネルディスカッション1「ここぞ鍼灸の出番〜ダブルライセンス鍼灸師(鍼灸師×医師、理学療法士、看護師、薬剤師)の視点から〜」 座長:学校法人呉竹学園 坂本歩 さとう鍼灸院 佐藤駿 PD1-1ここぞ鍼灸の出番 −ダブルライセンス鍼灸師の視点から- 冨田健一 医療法人清生会谷口病院リハビリテーション科 理学療法士の主要な仕事である筋力トレーニングも関節可動域訓練も、最終的には患者の新陳代謝や恒常性に委ねています。つまり五臓が良好な状態でなければ、どんなに素晴らしい理学療法も効果は上がりません。しかしながら理学療法士には五臓を良好な状態に導く手段は持ち合わせておらず、理学療法の範疇を越える多様な症状で悩む患者を、特に在宅で目の当たりにした際には、何もできない無力感を覚えます。この患者からの多様な訴えに即座に対応できる確率を上げてくれたのが鍼灸のライセンスでした。鍼灸師と理学療法士のダブルライセンスでは 1.理学療法士では不可能な運動療法の下地作り 2.数字では表せない生命徴候の把握の二点が可能となります。一つ目の理学療法士では不可能な運動療法の下地作りとは、運動療法を円滑に進めるために、日々変化する患者の心身を整えることです。訪問リハビリを開始する際の『今日のお加減はいかがですか?』という問いに対し、患者は『イライラして寝むれないの』『空腹だけど食欲がないの』など、リハビリの適応となった疾病や外傷に直接関与しない、そしてライセンスの範疇を越えた主訴を返答してくる事があります。もちろん公的制度における訪問リハビリでは、鍼灸の施術による解決はできません。しかしながら鍼灸の概念を用いて、予測される病態と自分で行える対処方法の説明(症状を寛解させる可能性のある経穴の紹介や施灸の方法そして養生法の指導)を実施する事は、運動療法は元より患者さんとの信頼関係の構築に役立っています。次に数字では表せない生命徴候の把握とは、一般的な生命徴候では表現されない身体状況を把握しリスク管理に生かすことです。生命徴候とは呼吸・体温・血圧・脈拍のことを指し、正常値と共に運動療法の禁忌となる基準値があります。つまり運動療法の禁忌となる数値に該当しなければ、運動療法を咎める理由はありません。しかしながら生命徴候が正常値でも、気色や舌の状態、脈状が不良であることは珍しくなく、この四診の価値観が運動療法の負荷量の調整や運動療法後の養生に役立っています。近年の地域包括ケアシステムの構築に伴い在宅医療の重要性が高まる中、各専門職は地域に根差すほど、ライセンスの範疇を超えた役割が求められます。今回の講演では鍼灸師と理学療法士のダブルライセンスによる有益性について紹介します。開示すべき COI関係にある企業はありません。 キーワード:ダブルライセンス、地域医療、養生法、生命徴候、リハビリテーション ●略歴 1998年高知医療学院理学療法科卒業 明治国際医療大学附属病院リハビリテーション科入職 2007年仏眼鍼灸理療学校鍼灸学科(夜間部)卒業 2009年明治国際医療大学リハビリテーション科学ユニット助手 2017年医療法人清生会谷口病院リハビリテーション科入職 パネルディスカッション1 PD1-2医はき師てらぽんとしての活動 寺澤佳洋 口之津病院 私は高校卒業後、明治鍼灸大学(現:明治国際医療大学)にて、はり師・きゅう師の国家資格を取得した後、医師の道を歩み始めました。現在は内科および総合診療科を中心に、医師として15年目の臨床経験を積んでいます。私自身、鍼灸で腰痛が改善したこともあり、鍼灸は素晴らしいものと思っていますし、正しく広まるこ とを願っています。 そのため、日常診療のかたわら、「医はき師(=医師、はり師、きゅう師)てらぽん」として活動しています。鍼灸が正しく広まり、活用され、困っている人々がより良い生活を送れるよう支援することを目指しています。 このパネルディスカッションでは、鍼灸と西洋医学の融合、鍼灸が医療界でどのような位置づけで考えられ、活用されているかについてなどを経験、実例や文献に基づき紹介したいと思います。そして、鍼灸の更なる進展と発展のために、皆様と共に深い議論を交わすことを楽しみにしています。 キーワード:医はき師、医師、西洋医学、総合診療 ●略歴 2004年明治鍼灸大学(現明治国際医療大学)鍼灸学部卒業 2010年東海大学医学部医学科卒業 2020年グロービズ経営大学院経営研究科卒業 2012年藤田保健衛生大学(現:藤田医科大学病院)や豊田地域医療センターなど 2020年〜医療法人弘池会口之津病院内科・総合診療科 パネルディスカッション1 PD1-3鍼灸がもっと身近になるために鍼灸師になった看護師が思うこと 野村美香 はりきゅう SORA 看護とは、あらゆる年代の個人や家族、集団、地域社会を対象とし、そのすべてが最大限の健康を取り戻し、できる限り質の高い生活ができることを目的とした支援的活動である。本来その人が持つ自然治癒力に働きかけ、回復しやすい環境を整え、健康の保持増進や病気の予防や苦痛の緩和を行い、生涯を通して、その人らしく暮らしていくことができるよう、身体的、精神的、社会的に支援することである。 看護の仕事とは、患者の日常生活への支援(療養上の世話)や医師の指示に基づき安全で効果的に治療が受けられるように、専門知識を持って、治療をサポートすること(診療の補助)であり、また、患者自身の治療に向けた選択をサポートする相談や、自立に向けた指導、一緒に活動する医療スタッフの調整なども大切な仕事である。 演者は看護学校を卒業後 700床規模の病院で病棟看護師として勤務をしていた。鍼灸という言葉さえ知らずに、日々の看護に注力していた。多種多様な疾患を持つ患者の看護に携わるなかで、患者の苦痛全てに看護力だけでは、軽減できないこともあり、ジレンマを感じていたが、多忙な日々に追われ、何もアクションを起こせずにいた。自身が喘息を発症し、コントロール不良となった。主治医から漢方薬を勧められるが効果がないと拒否し続けたが、入院を機に漢方薬の内服を開始した。想像以上に効果を感じ、東洋医学ってすごいではないかと思い、漢方薬を自己学習し、薬膳インストラクターを取得した。ある日、腱鞘炎になり装具を付けていると、漢方医に「鍼してみる」と勧められ、何それと思いつつ受けると、その場で痛みが治まり「これは魔法」と聞くと、「魔法ではありません、これは鍼灸治療です」と言われた。これが、鍼灸との出会いであった。効果を実感し、それ以後、鍼灸治療を受けるようになった。治療を受ける中で、これまで看護だけでは対応できなかった症状などにも、鍼灸が介入できると知り、自身でも実施したいと思い、鍼灸師を目指した。鍼灸学校入学から、今日までに感じたことを交え、鍼灸が身近になるためには、患者の一番近くにいる看護師と繋がり、そこから派生して患者、医師、他のコメディカルとも繋がること、 SNSなどを利用して鍼灸の素晴らしさを情報発信して、鍼灸を知らない人と繋がること、何よりも全国の鍼灸師と繋がり情報共有して、患者を紹介し合えるようになることが必要だと考えている。 キーワード:看護師、鍼灸師 ●略歴 1987年泉州看護専門学校卒業 1987年公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院入職 2021年北野病院退職 2020年明治東洋医学専門学校卒業 2022年はりきゅう SORA開院 パネルディスカッション1 PD1-4ここぞ鍼灸の出番ダブルライセンス鍼灸師×薬剤師の視点から 漢方薬との併用、または鍼灸優先のポイント 生出拓郎 (有)おいで薬局 薬剤師として働きながら鍼灸師になろうと思ったきっかけの一つが、あまりにも多い多剤併用です。漢方薬局で勤務していたため、西洋医学よりも中医学の対応が適している際は漢方薬を勧めるのですが、あまりにも服用薬が多い場合は、漢方薬といえども勧めるのを躊躇します。せっかく相談に来ていただいても、対応できる手札が無い。そんな時に、服薬以外の方法でアプローチができればと思い、鍼灸師を取得をしました。そのため、服用薬が多い場合は、まずは鍼灸を優先させます。鍼灸の効果により、上手く併用薬が減ってきた場合は、状況により漢方薬の追加を検討します。また当たり前の事ですが、鍼灸施術では胃腸を直接通過しない為、漢方薬でも脾胃の負担になる方には鍼灸に利点があります。脾胃の働きを強化する漢方薬ですら、負担に感じる方もおりますので、この点は改めて鍼灸の強みであると感じます。さらに、本来中医学では、漢方薬と鍼灸は車の両輪として併用される事が一般的ですので、併用により相乗効果を期待できます。併用する事で一番期待できるのは、効果がでるスピードです。主に、即効性・鎮痛・鎮静目的で鍼灸を、継続的な改善目的で漢方薬を使いますが、併用する事で単独よりも、効率的よく効果が発揮できます。他にも、鍼灸、漢方薬いずれか一方をベースとして、補助的に併用する場合もあります。こちらは主訴により、どちらをベースにするか相談の上で対応しております。 キーワード:漢方薬との併用、薬剤師 ●略歴 2004年東北薬科大学(現:東北医科薬科大学)薬学部薬学科卒業 2006年同仁堂薬局勤務 2014年おいで薬局勤務 2018年赤門柔整鍼灸専門学校卒業 2020年おいで鍼灸院開院 パネルディスカッション2「医師・鍼灸師連携について今後の医療を見据えて」 座長:公益社団法人未来工学研究所 小野直哉 PD2-1鍼灸と精神医療の相互連携APネットワークの取り組み 中村元昭 昭和大学発達障害医療研究所 精神医療の現場では、抗うつ薬の目覚ましい普及にも関わらず、うつ病患者は増え続けており、アメリカや中国などにおいては、「うつ」を主訴として鍼灸院を訪れる人は少なくない。鍼灸は気分障害における代替医療として注目されており、世界保健機関(WHO)もうつ病や神経症に鍼灸が有効である可能性を支持しており、精神科鍼灸の臨床研究のエビデンスも集積されつつある。しかし、わが国における精神科鍼灸の普及や研究は世界から立ち後れていると言わざるを得ない。演者は10年間にわたる精神科病院での鍼灸臨床研究の経験から、精神疾患を患う患者に対する鍼灸の有用性を実感している。具体的には、精神疾患患者の不安抑うつ症状に加え、自律神経失調などにともなう診断名のつかない身体愁訴を改善する効果を確認している。研究活動のみにとどまらず、精神疾患に悩む患者さんに鍼灸という医術を届けるシステムの構築が重要であると考え、 APネットワークを立ち上げた。APネットワークとは、鍼灸師(A: Acupuncturists)と精神科医(P: Psychiatrists)の相互的な連携システムである。そのミッションは「東西両医学を駆使し、メンタルヘルス不調に寄り添う治療と養生を社会に届ける」であり、ビジョンは「東西両医学を越境し人々がつながり、常に学び合い、助け合う場となる」である。コロナ禍の 2021年12月末にAPネットワークのメーリングリストを立ち上げて、現在は 500名以上が参加している。2ヶ月毎にオンライン研究会を開催し、既に12回ほど開催した。さらにAP連携の強力なツールとなる「鍼灸院リスト」の初版が完成した。本発表では、演者の実施した精神科鍼灸研究を概観し、APネットワークの活動内容を報告し、今後の方向性・発展性について議論を深めたいと考えている。 キーワード:精神医療、気分障害、発達障害 ●略歴 1996年日本医科大学卒業 1996年東京都多摩老人医療センター(現・多摩北部医療センター) 1998年都立広尾病院神経科 2000年東京医科歯科大学附属病院精神科(医員) 2003年ハーバード大学医学部精神科(ポスドク研究員) 2007年神奈川県立精神医療センター芹香病院(医長) 2014年神奈川県立精神医療センター(部長) 2017年昭和大学発達障害医療研究所(副所長・准教授) パネルディスカッション2 PD2-2熊本赤十字病院での取り組みと病棟内鍼灸師の確立について 加島雅之 熊本赤十字病院総合内科 熊本赤十字病院は、490床33診療科、平均在院日数9.2日、年間救急総数50002名、救急車搬入件数8642件(2022年度)と超急性期の総合病院である。その中で、 2019年度から常勤鍼灸師が1名おり、入院患者および一部の職員に対しての鍼灸施術を行っている。2019年から2024年2月現在で、延べ800名以上に対して鍼灸施術を施行している。 現代医学では、手術療法や抗生物質に代表される病巣の排除および、抗炎症療法に代表される体内の過剰な反応の遮断、輸液・循環作動薬・人工呼吸に代表される循環・呼吸管理の基本的な管理に優れている。一方で、人体が治癒していくことに対する働きかけに乏しい。漢方には人体の治癒機転を促進するための方法論が数多く開発されてきた。人体の治癒を促進する因子を考えてみると、食べて、寝て、動いて、苦痛が除かれることと想定できる。これらに対して漢方薬も一定の効果を上げることが出来るが、現在の社会情勢から求められる入院期間の短縮においては、効果が得られるまでに時間がかかりすぎる。鍼灸は即効性を期待することができ、急性期の入院医療において低コストであり大きな意義を発揮しうる。また、急性期の神経系の症状や筋症状に対しての現代医学の治療方法は、腫瘍や血腫に対する手術、血管内治療、抗炎症療法しかなく、多彩な神経症状に対する十分な治療法が確立できているとは言いが痛い。これらに対しても鍼灸は大きな効果を期待することができる。当院では、主にこれらをターゲットした鍼灸療法を導入している。 こうした取り組みから見えてきた病棟で活躍できる鍼灸師の条件として、上記内容に対する施術技術は勿論のこと、漢方医とのコンビネーションの場合は漢方的病態についてのディスカッションが出来ることや、患者の西洋医学的な病態の把握、特に易感染性・血行動態不安定などの鍼灸施術が禁忌となる病態の理解、カルテの読み方・記載、医師および他の医療スタッフとのコミュニケーションが西洋医学の文脈でも行え、高度な感染対策といった急性期医療のための基礎知識が必要である。また、この分野の研究開発・発信を行うための、 EBMの方法論、症例発表・臨床研究の基礎知識、更に古典などの急性期を鍼灸が担っていた時代の記録を応用できる素養も求められる。 キーワード:病棟内鍼灸師 ●略歴 2002年宮崎医科大学医学部卒業熊本大学医学部総合診療部入局 2005年〜熊本赤十字病院内科勤務 2013年〜総合内科副部長 2014年〜総合診療科兼務 2017年〜熊本大学医学部臨床教授漢方医学系統講義担当 熊本大学薬学部非常勤講師 東邦大学医療センター大森病院東洋医学科客員講師 2018年〜宮崎大学医学部臨床教授総合内科担当 2019年〜現職 パネルディスカッション2 PD2-3鍼灸の臨床研究における医師と鍼灸師の連携: その意義と課題 増田卓也 三井記念病院総合内科・膠原病リウマチ内科 東邦大学医療センター大森病院東洋医学科 (一社)北辰会 近年、鍼灸治療の作用機序や治療効果のエビデンスが得られてきたが、日本は欧米と比較し医療機関に おける鍼灸治療の提供は普及しておらず、よい適応であるにも関わらず治療の機会を失っている患者が多い。 既に海外では、診療ガイドラインに鍼灸が組み込まれている。例えば、ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)の線維筋痛症(FM)ガイドライン 2016年度版では、鍼灸を始めとした非薬物療法を First-lineで開始することを推奨している。日本のFMガイドライン 2017年度版は、上記 EULARの治療アルゴリズムを引用しているが、日本人に対するエビデンス不足との結論となっている。よって、日本人での鍼灸の臨床試験が望まれるが、そのためには病院や診療所と鍼灸研究機関や、臨床研究の経験のある鍼灸師が連携し、エビデンスを創生していくことが必要となる。 2024年現在、国立がん研究センター中央病院緩和医療科では、化学療法誘発性末梢神経障害、乳房切除後疼痛症候群に対する鍼灸治療の臨床試験が行われている。演者もオブザーバーとして参加しているが、臨床試験の課題として、 1.提供できる鍼灸治療体制のキャパシティに限界があること、 2.今後のランダム化比較試験に向け、多施設共同研究が必要になること、 3.臨床試験参加後の継続治療の際に、紹介先の鍼灸院の確保が難しいこと(緩和ケア領域に詳しく、また臨床研究の経験があると望ましいため)が挙げられた。そこで演者は、緩和ケア鍼灸の卒前臨床教育・卒後臨床研修も見据え、都内近隣にある鍼灸師養成校の専門学校、大学に所属する鍼灸師と臨床試験担当医師とのミーティングの機会を設けた。その結果、主にがん完治後の軽度の後遺症例の鍼灸継続治療の紹介先として鍼灸の教育・研究機関が機能し得るか、まずは臨床での連携を試みることとなった(抄録提出時現在調整中)。こうした連携を通して、現場での手応えや課題を蓄積し、今後の多施設共同研究を計画していく予定である。また、担当する鍼灸師側に緩和ケアの鍼灸 /がん患者に対する医療接遇の研修の機会があると望ましいこと、鍼灸師側より施術中 の急変時などの際に病院側へ対応の要望などの課題が浮上した。 こうした、鍼灸の臨床試験を病院の医師と近隣の鍼灸研究機関/教育機関の鍼灸師が連携して行うことは、まさに今後の医療を見据えた先進的な取り組みである。講演では、上記の新たな形の連携について概説する。 キーワード:医師と鍼灸師の連携、臨床研究、他施設連携 ●略歴 2017年久留米大学医学部卒業 2019年大船中央病院初期臨床研修修了 2022年三井記念病院総合内科・膠原病リウマチ内科専攻研修修了 2022年同院総合内科・膠原病リウマチ内科医局員 2022年東邦大学医療センター大森病院東洋医学科非常勤勤務 パネルディスカッション3「未来を変える「評価」の取り方〜学会発表にあと一歩が踏み出せないあなたへ〜」 座長:帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 脇英彰 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 松浦悠人 PD3-1泌尿器科症状に特化した鍼灸院における患者評価の実際 伊藤千展 烏丸いとう鍼灸院 明治東洋医学院専門学校鍼灸学科 安全かつ効果的に鍼灸治療を提供するためには、妥当性・信頼性のある評価尺度を用い、患者の症状やQOLの程度を把握したうえで、臨床判断に繋げていく必要がある。パネルディスカッションのテーマ「評価の取り方」に対して、本口演では下部尿路症状に特化した鍼灸院の視点からその実際について述べる。下部尿路症状とは、排尿に関連する種々の症状を指し、蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状に大別される。その中でも、特に尿意切迫感・頻尿・尿失禁といった蓄尿症状を呈する過活動膀胱は、疫学調査によると現在1000万人を超える患者が推定され、鍼灸臨床においても高頻度に遭遇する愁訴の一つとなっている。しかしながら、鍼灸臨床において下部尿路症状を評価する意義については、十分に認識されているとは言えない。頻尿や尿失禁は直接生命を脅かす病態ではないものの、心の問題、睡眠、身体活動、就業など広範囲に及ぶQOL低下が大きな問題となる。また夜間頻尿については将来的な冠動脈疾患やうつ病の発症リスクとなること、さらに国内外のコホート研究からは死亡率を上昇させることも指摘されている。これらの観点から、鍼灸臨床においても下部尿路症状の適切な評価は極めて重要であり、必要に応じ専門医との連携を考慮すべきである。蓄尿症状に対する初期評価は、先ず尿意切迫感,昼間・夜間頻尿,尿失禁について問診を行い、次いで質問票・排尿日誌による評価を行う。妥当性の検証された症状質問票の主要なものとして、下部尿路症状のスクリーニングには主要下部尿路症状スコア(CLSS)、過活動膀胱症状スコア(OABSS)、排尿症状を伴う場合には国際前立腺症状スコア(IPSS)が挙げられ、 QOL評価にはキング健康調査票(KHQ)、過活動膀胱質問票(OAB-q)、IPSS-QOLなどが推奨される。本口演では、主に下部尿路症状全般の把握に有用である「排尿日誌」について、症例を供覧しながら解説する。排尿日誌は、患者自身が排尿毎に排尿量を記録するもので,排尿回数、 1回排尿量、 24時間尿量などを客観的に示すことができる。また頻尿を伴う症例では、多尿との鑑別に有用であり、鍼灸治療の適応について判断する初期評価としても意義が大きいものと考える。今後、本学会での下部尿路症状に関する議論が、共通性のある評価尺度・パラメータに基づいて行われ、鍼灸の新たなエビデンス創出に発展することを期待したい。 キーワード:下部尿路症状、症状質問票、排尿日誌、鍼灸治療 ●略歴 2010年明治国際医療大学鍼灸学部卒 2012年明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科博士前期課程修了 2009-2020年中安外科クリニックリハビリテーション科 2012-2014年泌尿器科上田クリニック 2013-2014年国際東洋医療鍼灸学院鍼灸学科非常勤講師 2015年烏丸いとう鍼灸院開院 2021年明治東洋医学院専門学校鍼灸学科非常勤講師 パネルディスカッション3 PD3-2鍼灸の臨床研究における評価指標の活用について腰痛治療における実例を切り口として 松田えりか 筑波技術大学保健科学部保健学科 1.はじめに 鍼灸臨床では慢性的な痛みや不調を主訴とする患者と向き合うことが頻繁であり、患者の心理社会的要因を考慮し、長期的な予後や治療方針を検討することが必要である。しかし、心理社会的な事項をどのように取り扱い、どのように評価すべきであろうか?今般は、パネルディスカッションのテーマである「評価のとりかた」の一例として、腰痛を切り口とした評価尺度の利用について紹介する。 2.評価尺度の利点 質問票の設問に患者自らが回答するアウトカムの評価方法は Patient-Reported Outcome(PRO)とよばれ、健康関連 QOLや心理社会的なもの等、広範な研究・開発が行われている。質問票と、スコア化の手順の一式は尺度とよばれるが、尺度は信頼性、妥当性および再現性などの検証を経ているため、そのスコアの利用は質の高い研究を指向するために有効である。 3.腰痛における尺度の利用 (1)心理社会的要因と治療効果について 腰痛患者において、心理社会的要因が鍼治療の直後効果と継続治療効果(治療開始から 4週間後の効果)に与える影響について検討した。使用した尺度は痛みの破局的思考( PCS)、腰部関連 QOL(RDQ)、不安・抑うつ( HADS)、痛みに対する自己効力感( PSEQ)である。治療効果との関係が顕著だったのは PCSで、直後効果と継続治療効果の双方について、有意な関連が認められた。 HADS、PSEQ、および RDQについては、継続治療効果に関して有意な経時変化が認められた。 (2)心理社会的要因を考慮した指標による予後予測について STarT Back Screening Tool(以下、 SBST)は、腰痛の慢性・難治化リスクを簡便に評価するためのツールで、質問票に心理社会的な設問を包括している。鍼治療を受療した腰痛患者 71例における解析では、起点において SBSTにより high risk群に分類された患者では、 4週後の VASの値が、 medium risk群および low risk群の患者よりも有意に高かった。この意味で SBSTによる予後予測の可能性が示唆された。 4.結び 評価の指標となる尺度について紹介したが、尺度のスコアのデータは、種々の統計計算に供することができる。個々の研究において適切な尺度を選択して使用することにより、研究発表につながるような結果の導出が可能となる場合もあると期待される。 キーワード:評価、腰痛、尺度、心理社会的要因、予後予測 ●略歴 2017年福井県立盲学校高等部理療科卒業 2017年ロイテ朝霧整骨院鍼灸院 2019年筑波大学理療科教員養成施設卒業 2021年筑波技術大学大学院技術科学研究科修士課程修了 2021年筑波大学大学院人間総合科学学術院障害科学学位プログラム博士後期課程入学 2021年筑波技術大学保健科学部保健学科客員研究員 2022年日本学術振興会特別研究員 2024年筑波技術大学保健科学部保健学科助教 パネルディスカッション3 PD3-3治療成果(アウトカム)の評価 アウトカムの性質に着目して 大川祐世 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 森ノ宮医療大学鍼灸情報センター 筆者は鍼灸臨床における“評価”を大きく 2つのフェーズに分けて考えている。一つは病態の評価である。目の前の患者はどこに異常があり、どういう状態にあるかといったことを評価する。そしてもう一つは治療成果の評価である。鍼灸治療を開始した後、患者がどのような経過をたどっていくのかを評価する。このような治療成果のことをアウトカムと呼ぶ。アウトカムを評価するにはその指標が必要となる。つまり、何がどうなったら患者が改善した、あるいは治癒したと言えるのか、その判断基準をあらかじめ考えておく必要がある。そこで意識していただきたいのがアウトカムの性質であり、真の(true)アウトカムと代理(surrogate)アウトカムの二つに分けられる。真のアウトカムとは患者の生命や生活にとって真に重要なものであり、重要性が高い順に死亡、罹患、患者報告アウトカムがある。患者報告アウトカムとは患者自身による主観的評価のことであり、症状や機能の程度、 QOL(quality of life)などが含まれる。しかし、真のアウトカム評価にはしばしば長期間に渡る観察が必要となることから、代わりに検査測定値(糖尿病患者における HbA1C)や生理学的指標(高血圧患者における血圧)などの比較的変化が起こりやすい指標を治療成果とすることがあり、これを代理アウトカムと呼ぶ。鍼灸の臨床に当てはめてみると、脈の変化、筋緊張の変化、圧痛の変化などがこれにあたると考えられる。代理アウトカムは真のアウトカムとの間に相関をもつものでなければならないが、必ずしも代理アウトカムの改善が真のアウトカムの改善につながるというわけではない。したがって、一般的には真のアウトカムの方が医療の意思決定において優先される。 上述のアウトカムの性質を意識して日々の臨床に臨みたい。できれば治療初期の段階において観察するアウトカムを設定し、それを時系列と共に記録していく。そして振り返って評価をし直し、必要があれば方針を修正する。この繰り返しが自分自身のスキルアップにつながり、また患者にとっての最良を目指すことにもつながると筆者自身も考えている。そしてもしその中から何か新規性が得られるような症例に巡り合うことができれば、症例報告あるいは症例集積として一定のルールに基づき公表したい。そのアクションが自身の未来、患者の未来、そして鍼灸界の未来を変えることにつながると信じている。 キーワード:評価、アウトカム、真のアウトカム、代理アウトカム ●略歴 2014年森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科修士課程修了修士(保健医療学) 2014年森ノ宮医療学園専門学校入職 2015年愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室臨時職員 2017年森ノ宮医療大学入職鍼灸情報センター助教・鍼灸学科助教を経る 2023年森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科博士後期課程修了博士(医療科学) 2023年現職 教育セミナー 座長:埼玉医科大学東洋医学科 堀部豪 ES集まれ鍼灸研究者!観察研究の統計解析ハンズオンセミナーフリーソフトEZRを使ってみよう 加用拓己 福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室 本セミナーでは、観察研究で頻用される統計解析の手法を無料の統計ソフトウェア EZRで実行する方法について解説します。 観察研究では、興味のある曝露群(治療群)と非曝露群(非治療群)の群分けがランダム化されていないため、各群における背景要因の分布が不均衡となっている場合が多く、したがって、曝露(治療)の効果を推定するためには、これら不均衡な背景要因を適切に調整する必要があります。背景要因の調整は、一般に統計ソフトウェアによって行われますが、商用のソフトウェアは個人で購入するには高価であり、またプログラミングに関する知識も求められます。一方、本セミナーで解説するEZRは、無料かつ基本的にマウス操作だけで解析を実行できるユーザーフレンドリーなソフトウェアであり、すでに多くの研究論文で使用されています。 本セミナーでは、多変量回帰モデルや傾向スコア法といった観察研究で頻用される統計解析をEZRで実行する方法について解説します。また、セミナー内容をまとめた資料を当日配布することも予定しています。 本セミナーに参加される方は、以下の2点が事前に実行されたご自身のパソコンを会場にお持ちくださいますようお願い致します。 1. EZRのインストール EZRは、開発者である神田善伸先生が所属する「自治医科大学附属さいたま医療センター血液科」のホームページ(https://www.jichi.ac.jp/saitama-sct/)からインストールすることができます。ご自身のパソコンのOS(Windows、Macなど)に合わせてインストールしてください。以前にインストールされている方についても、最新版のインストールをお願いします。また、 EZRが正常に起動することも確認しておいてください。 2.解析用データのダウンロード セミナーで使用する架空の解析用データを用意しました。以下のURLから「 Analysis data.csv」という CSVファイルをご自身のパソコンにダウンロードしておいてください。解析データダウンロード用 URL: https://xgf.nu/s9sAH キーワード:観察研究、統計解析、EZR ●略歴 2007年明治鍼灸大学鍼灸学部鍼灸学科卒業 2009年明治国際医療大学大学院博士前期課程修了(鍼灸学修士) 2009年明治国際医療大学研究生 2011年社会福祉法人青藍会山口アレルギー呼吸器病センター 2013年医療法人社団汐咲会しおさき鍼灸施術所 2018年福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室助手 2019年大阪大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了(公衆衛生学修士) ワークショップ1安全性委員会ワークショップ(臨床情報部主催)「有害事象文献レビューと鍼灸安全対策マニュアルの紹介」 座長:東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 菅原正秋 WS-1有害事象文献レビューおよび鍼灸安全対策マニュアルの紹介 菅原正秋 1)、福世泰史 2)、宮脇太朗 3) 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 3)鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 (公社)全日本鍼灸学会臨床情報部安全性委員会では、継続して鍼灸の有害事象に関連した文献の収集を行っている。そして、4年ごとにこれを集計し、文献レビューとして全日本鍼灸学会雑誌に投稿している。今回のワークショップの前半では、学会員への情報提供と注意喚起を目的として、2020年から2023年に発表された鍼灸の有害事象文献の中から、いくつかの注目すべき事例を抜粋し、紹介する。 また、我々は委員会活動の一環として2020年に鍼灸安全対策ガイドライン2020年版(以下、ガイドライン)を公開している。このガイドラインは、前述の鍼灸の有害事象文献レビューを基に作成しており、鍼灸臨床において安全性を考慮して実施すべき事項あるいは慎むべき事項を簡潔に記載してある。しかしながら、記載が簡潔であるため、臨床における具体的な対処法や予防策などが明記されていなかった。そこで、今回、我々はガイドライン基づいた臨床を実践するために、「鍼灸安全対策マニュアル(以下、マニュアル)」を作成し、刊行することとした。ワークショップの後半では、ガイドラインとの関係性を示しつつ、いくつかの有害事象への具体的な対策についてマニュアルに記載されている内容を紹介する。 本マニュアルが刊行された際には、学会員諸氏にご一読いただき、日々の臨床における安全対策の参考としていただければ幸いである。 キーワード:有害事象、文献レビュー、鍼灸安全対策ガイドライン、鍼灸安全対策マニュアル ●略歴 ■菅原正秋 2013年東京医療保健大学大学院医療保健学研究科博士課程修了博士(感染制御学) 2009年東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科助教 2014年東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科講師 同大学院保健医療学研究科講師 ■福世泰史 2013年明治国際医療大学大学院(通信教育課程)修了修士(鍼灸学) 2008年アスレ鍼灸接骨院勤務 2009年常葉学園医療専門学校附属とこは鍼灸接骨院勤務 2013年常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科勤務 ■宮脇太朗 2002年明治鍼灸大学鍼灸学部鍼灸学科卒業 2007年明治鍼灸大学大学院鍼灸学研究科博士後期課程修了博士(鍼灸学) 2013年専門学校ユマニテク医療福祉大学校鍼灸学科学科主任 2021年鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科助教(現職) ワークショップ2 座長:仙台赤門医療専門学校 宍戸新一郎 WS-2医療従事者向け鍼灸体験 古川雄一郎 セイリン(株)・セネファ(株)・東日本医療専門学校・仙台赤門医療専門学校 本講座は、医療従事者・学生の方々を対象に、「はり・きゅう」の理解と認知を深め広めることを目的としたセミナーです。内容としまして、「はり」や「きゅう」についてメーカーの方々にご説明いただき、さらに近年の慢性疾患への対応や予防医学の必要性といったことに対する鍼灸治療の取り組みやエビデンスも交え、お伝えしたいと思います。さらに東洋医学ならではの「未病」の考えをセルフケアへつなげる橋渡しとして、「はり・きゅう」を体験していただこうと思います。はり・きゅうは兎角、「痛い」・「熱い」といった先入観にとらわれがちなところがあると思いますが、「はり」による機械的刺激、「きゅう」による温熱刺激の侵襲性の度合いや安全性を体感していただき、健康につながる医療ディバイスとしての有効性を伝えていきたいと思います。またレントゲンなどもない時代に身体の中でおこる症状が和らぐポイントとして、2000年以上遡り確立されてきた「ツボ」についても紹介し、その部位や探し方を解説しながら、「はり・きゅう」と「ツボ」のペアリングの巧みさと効果を味わっていただこうと思います。なお参加につきましては、定員30名とし、医師・看護師・理学療法士など、鍼灸師以外の医療従事者・学生を優先といたします。 キーワード:医療従事者向け、はりきゅう体験、セルフケア ●略歴 2009年国際メディカル専門学校入学 2011年国際メディカル専門学校卒業 2011年湊川鍼灸接骨院入社 2012年仙台赤門医療専門学校(旧赤門医療専門学校)教育専攻科入学 2014年仙台赤門医療専門学校(旧赤門医療専門学校)教育専攻科卒業 2014年小野寺鍼灸マッサージ院入社 2015年東洋鍼灸専門学校専任教員 2019年仙台赤門医療専門学校専任教員(現在に至る) 実技セミナー1 座長:森ノ宮医療大学 尾崎朋文 PS-1バランステストの診察法と治療法〜診断法の紐解き〜 川嶋睦子 ガネーシャ鍼灸院 鍼灸臨床における診察法には「病態を認識する診察法」と「治療のための診察法」の二つがあります。病態を把握する診察法の大きな目的は、鍼灸の適応・不適応を鑑別し、現代医学的な診断によって、病態を把握し、予後を診察することです。理学的な検査、神経学的な情報から病態を正しく認識し、治療効果の客観的な観察をします。鍼灸の適応と判断した時点で、当然ながら治療のための診察法が必要となってきます。医療面接や身体診察の技量を深めれば確実に臨床能力が高めることができると「バランステスト」を考案した川嶋和義氏は述べています。治療のための診察法には、伝統的な「望診・聞診・問診・切診」の四診法や、あるいは独特な診察法や、筋緊張、圧痛、硬結…などからアプローチする診察法です。日常の鍼灸臨床で扱う患者さんは、動きで愁訴の誘発や、増悪する患者さんが多く、診察所見が陰性であっても、動きの制限や痛みの再現が診られることが少なくありません。また愁訴と異なる部位に動きの制限が診られることから、まず全身の動きの分析による診察所見を再評価し、そしてそれを経絡、病経検索に生かすことができれば治療のための診察法になってきます。バランステストの診断法は 4項目となっています。 A.立位での診察 B.坐位での診察 C.背臥位での診察(1.臓腑・経絡の変調を把握、 2.経筋・経別による病態把握) D.経脈・経穴の選択・位置・深さの判断・診察手順(1.短脚・長脚、 2.左右の鎖骨上窩、 3.頚部、 4.下腿、 5.胸部、 6.寸・関・尺の経別、 7.募穴・背部兪穴、 8.原穴・絡穴および他の要穴を中心に望診、 9.発汗,緊張,弛緩,硬結から病経を診察、 10.左右・上下・前後偏差から相関連動する経を診察、 11.絡穴を中心に子午配穴,同名配穴を判断) 「なぜ下腿を診断法にしたのか?」という疑問から、 6年間体表解剖をしました。今回は腹部、下腿の部位の体表解剖・経絡・経筋・経別の診断点にしぼり実技供覧します。 キーワード:バランステスト、臓腑経絡、経筋・経別、体表解剖、下腿部位診断 ●略歴 1992年赤門鍼灸柔整専門学校鍼灸指圧科卒業 1992年医療法人愛宣会秦病院リハビリ科勤務 1994年佐藤はり灸院勤務 2000年東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科卒業 2000年赤門鍼灸柔整専門学校非常勤講師 2001年ガネーシャ鍼灸院開院 2002年赤門鍼灸柔整専門学校専任教員 2014年日本医療リンパドレナージ中級セラピスト資格取得 2021年東北大学歯学研究科口腔器官解剖学分野修士課程修了 実技セミナー2座長:池岡クリニック・池岡鍼灸院小西未来 PS-2呼吸器疾患に対する鍼灸治療 前倉知典 前倉鍼灸院 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター 医療法人上野会上野会クリニックリハビリテーション科 鍼灸治療は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を中心に様々な呼吸器疾患で応用され、疾患特異的な症状の改善に用いられている。我々は、COPD患者において鍼治療(週1回を12週間、計12回)が、労作時呼吸困難感を改善し、呼吸指標にどのような変化を与えるかを、CPETを用いて評価した。CPETの漸増負荷試験(IET)において運動終了時の酸素摂取量と運動終了時の分時換気量が増加し、定常負荷試験( CWRET: at 70% peak of the IET)では運動時間が大幅に延長し、運動終了時の酸素摂取量と酸素抽出能(吸気酸素濃度 -呼気酸素濃度)、isotimeでのBorg scaleは有意に改善した。鍼治療を受けたCOPD患者は少ない酸素消費量と換気量で運動を行えることを示し、COPDに対する鍼治療の効果は、主に運動中の筋肉での酸素利用効率改善と必要換気量の減少が、労作時呼吸困難感の改善と運動時間の増加に寄与していた。鍼治療は、 COPD患者に有益で安全な介入である。 また、食欲不振を訴える慢性呼吸器疾患患者10例(非結核性抗酸菌症6例、 COPD1例、肺リンパ管筋腫2例、特発性間質性肺炎1例)に対して、入院中に鍼治療(週 3回を3週間、計9回)を行い、その効果を検討した。介入により、食欲不振は改善し、1日の平均食事摂取量(Kcal)は1461から1696へ、血中Alb(g/dl)値は3.3から 3.5へと有意に増加した。鍼刺激による食事摂取量の増加は、体性 -内臓反射中心による消化管運動の改善と、交感神経緊張を緩和し胃腸などの消化酵素の分泌が改善した結果、慢性呼吸器疾患患者の食欲不振は改善し、食事摂取量が増加したと考える。一方で呼吸器疾患患者への刺鍼による気胸のリスクは、他疾患に比べても高く、重症度が増すと痩が進行してさらに高くなる。このような患者では、気胸が生死に関わることから、安全性に十分留意する必要がある。例えば、痩た(BMI16程度) COPD患者の中府穴をエコーで描出すると、体表から7mmで小胸筋筋膜へ到達し、壁側胸膜まで16.9mmあった。この為、我々は、気胸予防策として胸部CT画像と超音波エコーを用いて、事前に刺鍼深度を測定して使用鍼などを決定している。 気胸による医療事故は、毎年のように報告があり、本実技セミナーを通じて呼吸器疾患に対する鍼治療に加えて、刺鍼による気胸リスクについて、先生方と一緒に考えさせて頂く機会になればと切に願っている。 キーワード:呼吸器疾患 ●略歴 2012年明治国際医療大学鍼灸学部卒業 2013年明治国際医療大学臨床鍼灸学講座研究生 2015年明治国際医療大学博士前期課程修了(修士:鍼灸学) 独立行政法人国立病院機構刀根山病院研究員 2016年医療法人上野会上野会クリニックリハビリテーション科前倉鍼灸院 2017年一般社団法人メディカルフィットネス協会 滋慶医療科学大学院研究員 大阪ハイテクノロジー専門学校非常勤講師 実技セミナー3 座長:仙台赤門医療専門学校 川嶋睦子 PS-3「長野式治療法」と「キー子スタイル」 村上裕彦 長野式研究会 尚古堂 故長野潔先生が体系立てられた長野式治療法は、主たる診断が脉診です。 大分市在住のため、近隣では学ぶ機会もほとんど無く、交通手段も限られオンデマンドも無い時代では、中央の勉強会に参加することも出来ず、書籍を読み臨床で試行錯誤しながら経験を重ねていく以外にありませんでした。更に視力障碍者でもあり、学ぶ環境はより困難を極めたかと思われ、診断が脉診に依るのは当然だったのかも知れません。 師に付いて学ぶ機会が無かったために、先生の脉診は独特のものがあり、論文を『医道の日本』誌に長年にわたって投稿されたにもかかわらず、反応が無く理解されることもほとんどありませんでした。一方、アメリカで鍼灸学校の講師をされていた松本岐子氏は、自らの治療を高め、新たな鍼灸治療法を学生に教えるために、休暇には日本に戻り『医道の日本』誌に掲載されている著名な鍼灸師に教えを乞い新たな知識を吸収していきました。 そこで長野先生に出会われ、生涯の師として学ばれることになりましたが、臨床を学ぶ時に、先生の脉診を会得する困難さにぶつかります。松本氏は、当時『Hara Diagnosis』(腹診)という古今東西の腹診についての著書があり、腹診についてのオーソリティであり、長野先生の脉診を腹診から理解しようと試みられます。長野先生は脉診が主たる診断ですが、先生の著書には、脉診だけではなく腹部や背部などの所見も同時に書かれていることが少なくありません。 例えば、先生の著書『鍼灸臨床新治療法の探究』の慢性膵炎の治療についての項では、〔慢性膵炎の脉状は「細・軟・沈・遅」であり、症状は「右期門」〜「左期門」にかけての帯状の圧痛があり…〕と書かれています。松本氏は、この腹診の部分を慢性膵炎の腹診所見としています。この様に、松本氏は長野先生の腹診を加え、また、臨床では刺鍼する前にその効果の有無を確認するクロスチェックという方法を使用し、初心者にも分かり易い治療法を確立しました。 長野式治療法をベースにしたこの治療法は「キー子スタイル」と呼ばれ、松本氏は十数ヵ国でセミナーを行い、ハーバード大学でも講師を務められています。長野式治療法が比較的短い期間に広く認知されることになりましたのは、松本氏が長野先生の脉診を腹診に翻訳したことがあります。 今回の私の治療も、キー子スタイルを中心とした長野式治療法で行います。 キーワード:長野式治療、松本岐子 ●略歴 1980年 日本鍼灸理療専門学校卒 1993年 故長野潔先生に師事 1994年 長野式研究会(後に、長野式研究会& w-key netと改称)を主宰 2002年〜 東京衛生学園専門学校 2008年〜 2018年神奈川県立精神医療センター東洋医学研究室非常勤鍼灸師 2008年〜東京医療専門学校・鍼灸マッサージ教員養成科 2014年〜 2018年東京衛生学園専門学校・臨床教育専攻科 2018年〜神奈川衛生学園専門学校 2019年〜横浜市立盲特別支援学校※以上、非常勤講師 実技セミナー4 座長:鍼灸まる 古田大河 PS-4末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療の実際 堀部豪 埼玉医科大学東洋医学科 末梢性顔面神経麻痺は顔面神経が核下性に障害されることで生じる表情筋麻痺を主症状とし、Bell麻痺やRamsay Hunt症候群に代表される。これらの予後は軸索変性の程度によって大きく異なる。軸索変性が軽度であり、Sunderland分類における Grade 1や2では、一過性の伝導障害または軸索の障害に止まることから、後遺症なく早期に治癒する。一方で、Grade3以降では、神経内膜や神経周膜が障害されることから、軸索の迷入再生をきたす可能性が高く、中でも重度の神経変性を認めた場合、表情筋麻痺が残存する症例も少なくない。表情筋麻痺の評価法には、柳原法が存在する。柳原法は、安静時対称性と9つの表情筋運動をそれぞれ確認し、40点満点で評価するものである。柳原法は顔面神経麻痺診療ガイドラインで規定される表情筋麻痺の治癒判定基準にも採用されている。また、10点以下の完全麻痺と12点以上の不全麻痺では治癒率が異なる報告もあり、そのために予後予測にも活用されている。よって、柳原法は鍼灸臨床においても実践したい評価法である。末梢性顔面神経麻痺に対して鍼治療を実施する際、上述の通り重症度を勘案して施術をする必要がある。具体的には、柳原法による予後推定や、顔面神経をターゲットとした鍼通電刺激によって得られる表情筋収縮反応の程度によって重症度を推定する。特に中等症から重症例については、後遺症が出現することから、表情筋への鍼治療による後遺症抑制に加えて患者自身による表情筋マッサージ等のセルフケアが重要である。本実技セミナーでは、顔面神経麻痺の評価法である柳原法を実践し、評価法を再確認いた上で、当科で実施している病期・麻痺の程度による鍼治療の実際を紹介する。 キーワード:末梢性顔面神経麻痺、柳原法、鍼治療 ●略歴 2012年明治国際医療大学鍼灸学部卒業 2014年明治国際医療大学大学院博士前期課程修了修士(臨床鍼灸学) 2014年埼玉医科大学東洋医学科(非常勤) 2016年埼玉医科大学東洋医学科(専任)現職埼玉医科大学かわごえクリニック東洋医学はり外来(兼担) 実技セミナー5 座長:三瓶鍼療院 三瓶真一 PS-5男性不妊に対する鍼灸治療 伊佐治景悠、辛島充 SR鍼灸グループ 本邦の出生数は減少の一途を辿っており少子化が社会的な問題となっている。少子化対策の一環として 2022年4月から不妊治療の保険適応範囲が拡大され、回数制限は設けられているが生殖補助医療(Assisted Reproductive Technology: ART)も保険診療が可能となった。 不妊症は、世界保健機関の調査で原因の半数は男性にあると明らかになってからも女性の問題と捉えられることが多い。保険診療となったARTは、精液所見が低値であっても受精させることが可能であるため、卵子と比較して精子の質は未だに注目されることが少ない。しかし、精液所見の低値群と高値群を比較すると精子の DNA断片化率が低値群の方が高く、また精子の DNA断片化率が高い状態であると良好胚盤胞の獲得率が低下するなど、近年精子の重要性を示す研究も増加している。一方、これまでに我々は中穴の骨膜刺激が精巣の血流増加や前立腺特異抗原の分泌量上昇、鼠径部刺激が精巣の血液循環向上の作用を有していると報告している。今回の実技セミナーではこれらの刺激方法を紹介する。なお、開示すべきCOI関係にある企業等はありません。 ARTが保険診療となり経済的なハードルは低下したが、回数制限が設けられていること、女性の肉体的、精神的負担が高いなど多くの問題点も残されている。鍼灸治療で造精機能を向上させることが ART回数や期間の短縮に繋がる可能性もあり、不妊治療を行っている患者の負担軽減に寄与するのではないかと考えられる。 キーワード:男性不妊、精巣血流、前立腺特異抗原、不妊、生殖補助医療 ●略歴 ■伊佐治景悠 2013年明治国際医療大学鍼灸学部卒業 2015年明治国際医療大学大学院修士課程修了 2018年明治国際医療大学大学院博士課程修了 2018年 SR鍼灸烏丸開院 2019年東洋医療専門学校非常勤講師 2021年 SR鍼灸茨木 -蔵-開院 2023年 SR鍼灸 -はなれ -開院 2023年 SR鍼灸大阪開院 ■辛島 充 2014年明治国際医療大学鍼灸学部卒業 2016年明治国際医療大学大学院修士課程修了 2019年 SR鍼灸烏丸勤務 実技セミナー6 座長:明治国際医療大学鍼灸学部 廣正基 PS-6アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療 江川雅人 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 アレルギー性炎症、皮膚バリア機能低下、嗜癖的掻破行動など多面的な病態を形成しているアトピー性皮膚炎( Atopic dermatitis: AD)は、ステロイド外用薬を中心とした薬物療法、スキンケア、悪化因子の検索と対策、を治療の方法としている(治療ガイドライン 2021)。しかし、本疾患においては、体質を基にして病状は慢性化し、長期に亘る治療を必要とするために、ステロイド剤の使用を極力減らしたいという患者や、治療に抵抗を示す患者が鍼灸治療を求めることも多い。本セミナーでは複雑な病態を有する ADの病態や症状を改めて理解し、鍼灸臨床については簡潔に治療に導入できる臨床能力を養う目的で行う。 ADの中医学的な弁証分類〔治則〕は、風熱証〔清熱涼血〕、風湿証〔去風化湿〕、風寒証〔去風散寒〕、気血両虚証〔気血双補〕を一時的な分類とし、治則に従った施術を行う。また、治痒穴、曲池穴、豊隆穴、足三里穴は特効穴と考えられるが、各々病態に合わせた刺激方法(刺鍼方法や灸療法の選択)の工夫が必要である。セミナーでは二次的な分類を含めた弁証分類と共に、代表的な経穴への実際的な取穴や刺激の方法について実演したい。同時に、病状と治療効果を的確に評価するために、鍼灸臨床において有用な掻痒感、皮疹、 QOLの評価方法、東洋医学的な視点からのセルフケア方法を紹介する。 演者らのデータ集積では、鍼灸治療により概ね 8割の患者で掻痒感や皮疹の軽減を認めた。また掻痒感や皮疹の軽減した症例においては、血中 IgE値や好酸球数、サイトカイン(IL-31)値の低下も示され、アレルギー疾患としての改善も示唆された。特にアトピー体質(IgE RIST>400IU/ml)を有する患者への鍼灸治療では、 Th1/Th2リンパ球バランスの改善が示された。この結果は、鍼灸治療による AD患者の生体の歪みの是正が、自律神経機能の平衡状態につながったものと推察され東洋医学としての鍼灸治療の有益性を示すものである。安全・安心な鍼灸治療が「つながり、通じ、いかす鍼灸」として現代医学において多様な連携を可能にする考えに通じるものであると感じている。 キーワード:アトピー性皮膚炎、鍼灸、アレルギー、弁証、リンパ球 ●略歴 1987年明治鍼灸大学卒業 1990年明治鍼灸大学附属病院研修鍼灸師修了 1990年明治鍼灸大学東洋医学教室入局 2004年博士号(鍼灸学)取得「アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療の臨床的効果」 2011年明治国際医療大学教授・同大学院教授兼任 2019年明治国際医療大学きららの湯若狭鍼灸院院長 2022年新潟医療福祉大学教授(現在に至る) 実技セミナー7 座長:東北大学大学院医学系研究科地域総合診療医育成寄附講座 石井祐三 PS-7 YNSA 神谷哲治 東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 広胖堂はりきゅう治療院 MATAHARI 清水内科外科医院 はじめに、Yamamoto New Scalp Acupuncture(YNSA)は 1973年に山元敏勝医師によって考案された頭鍼療法である。1975年にスウェーデンのストックホルムで行われた鍼灸学会で、初めて西欧で発表されたのをきっかけに世界中に広まった。現在では主に疼痛・麻痺疾患のコントロールに用いられる世界的にも非常に有名な治療法である。YNSAは所謂経絡・経穴を用いた治療法ではなく、阿是穴やトリガーポイントなどとも異なる。山元医師が独自に開発した診断方法と治療点を用いた治療法である。診断方法には合谷診、首診、上腕診、腹診等があり、治療点は主に運動器疾患に用いられる基本点、感覚器疾患に用いられる感覚点、脳神経疾患や慢性疾患に用いられる脳点、内臓疾患に用いられる Y点など、基本となる治療点は 40個と多くはない。治療は大きく基礎治療部分と応用治療部分の2つに分けることが出来る。基礎治療は合谷診、上腕診、首診といった診断点の反応に則って治療点を決めていく方法を用いる。応用治療は症状ごとに対応する治療点を選択する。治療の主な流れは先ず合谷診を行い左右の圧痛硬結の差を診て圧痛硬結の強い方を治療側と決めて治療していく。刺鍼部位は上腕診・首診により反応のあった部位に対応する治療点を頭から選んで刺鍼していく、ここまでを基礎治療とする。基礎治療だけでも症状が改善することも多いが、症状に変化が見られなかった場合はさらに応用治療として症状に対応する治療点を選んで刺鍼していく。このように治療法がシステム化されており、難しい理論や経験を必要としないために初学者でも学習後すぐに実践できる。YNSAの最大の特徴は触診を用いた診断ツールと即効性にある。診断ツールを用いることで正確な取穴と確実な効果が容易に習得でき、即効性も期待できる。YNSAではそのほとんどを頭皮に刺鍼するため手足が自由に動かせる。疼痛や麻痺などにより動作制限が有る場合にその動作を確認しながら刺鍼することができる、また徒手や運動療法、その他の鍼灸治療と組み合わせる事も可能である。今回の鍼灸実技セミナーでは YNSAにおける基礎治療をメインに紹介したい。 キーワード:YNSA、頭皮鍼 ●略歴 2003年上海中医薬大学鍼灸推拿学科卒業 2007年東京衛生学園専門学校東洋医療はりきゅう科卒業 2007年東北大学大学院医学系研究科先進漢方治療医学講座 2014年広胖堂はりきゅう治療院 MATAHARI開設 2019年東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座 実技セミナー8 座長:新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 金子聡一郎 PS-8操体法と鍼灸 小泉直照 はり処 鍼 東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 はじめに、操体法(そうたいほう)は、仙台の医師橋本敬三( 1897-1993)が提唱した健康法・治療法である。「生体の歪みを正す橋本敬三論想集」によると、橋本は、東北帝大医学部・藤田俊彦教授のもとで生理学を専攻する生理学者だった。その後、函館の民間病院に移り外科を担当したが、臨床経験に乏しく、臨床効果が出ず悩んでいた。そこで、これまでの西洋医学以外に日本に伝えられていた民間療法 (正体術・骨格矯正療法など)や武道、東洋的養生法、東洋医学(指圧・整骨・鍼灸・按摩・灸)やマッサージなどに着目、研究し、その結果 1936年に操体法が誕生した。操体法において、健康とは、「個体の生命エネルギー収支のバランスがとれていて環境に適応する状態」を指す。そして、健康の状態を維持するために、自己責任として行わなければならない 4つの因子として、呼吸(息)・飲食(食)・運動(動)・精神活動(想)をあげ、そこに環境(環)が加わった 5つの因子のバランスが重要であるとしている。自己責任としての 4つの因子について簡単に紹介する。 ・呼吸(息):腹式呼吸を推奨。特に就寝前に毎晩腹式呼吸( 1分間に 2〜3回程度の速度)を 10回程度することを推奨している。 ・飲食(食):犬歯や臼歯など歯の種類と数に注目し、これに比例させるように食物の種類と量を採ることを推奨。歯の種類や数から考えると植物食が主となる食事内容を推奨している。 ・運動(動):運動の根本は身体の中心に重心を安定させることであるとし、そのために上肢は手の小指側に、下肢では足の親指側に、力を入れて運動することを推奨している。 ・精神活動(想):精神活動の基本は感謝の心としており、天地の恵みと親や人々の愛情に支えられて生きていることを自覚し、感謝の心を持つことの重要性を説いている。 以上の 4つの因子および環境を整えるのが、操体法の健康法としての側面である。一方で、橋本は臨床医として患者に操体法を行っていた。飲食や精神活動については必要に応じて患者に指導し、呼吸と運動を用いた方法で運動器系の「歪み」を是正していた。また、橋本は鍼灸にも精通しており、操体法と鍼灸を組み合わせて、患者の治療を行っていた。本鍼灸実技セミナーでは、操体法の健康法・治療法両面の紹介および、鍼灸臨床において操体法をいかに組み合わせていくか、実技を交えて紹介したい。 キーワード:操体法、鍼灸 ●略歴 2006年赤門鍼灸柔整専門学校柔道整復科卒業 2006年医療法人橋本クリニック・温古堂入職 2011年赤門鍼灸柔整専門学校鍼灸指圧科卒業 2013年赤門鍼灸柔整専門学校教育専攻科卒業 2013年医療法人橋本クリニック・温古堂退職 2017年鍼灸院はり処愈鍼(ゆしん)開設 2021年東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座 特別企画 コンセンサスミーティング 「月経前症候群・月経前不快気分障害診断治療管理指針コンセンサスミーティング 〜鍼灸師の皆様のご意見をお聞かせください」 座長:近畿大学東洋医学研究所 武田 卓 明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科 田口玲奈 SS-1月経前症候群・月経前不快気分障害指針コンセンサスミーティング 武田卓 近畿大学東洋医学研究所 東北大学医学部産婦人科 昭和大学医学部産婦人科 東京医科歯科大学医学部産婦人科 東京歯科大市川総合病院産婦人科 医療法人杏和会阪南病院精神科 弘前大学保健学科保健学専攻 月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)は、月経前の不快な精神・身体症状を特長とし、QOLを著しく障害する。我が国においては、諸外国に比べても疾患認知が遅れており、また治療に関しても普及していないのが現状である。そこで、日本産科婦人科学会女性ヘルスケア委員会(令和3年度・4年度)「月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療実態調査小委員会」において、産婦人科医・精神科医を対象に実態調査を実施した。その結果、いくつかの問題点が明らかとなり、PMS/PMDDに関する産婦人科医への教育の必要性が考えられた。そこで、令和5年度より EBMや世界・日本での医療の現状を踏まえて診断・治療指針作成を開始し、12項目からなるクリニカルクエスチョン(CQ)原案が作成された。代替医療は世界的にも、PMS/PMDD治療において大きな役割を果たしており、特に米国産婦人科学会から最近報告された診療ガイドラインにおいても、鍼治療が低侵襲治療としてある程度の推奨度をもって記載された(conditional recommendation, low quality evidence)。そこで、現在作成中の指針においても、CQ案「補完代替医療をどのようにもちいるか?」としてビタミン、ハーブ、栄養素等の代替医療を独立したCQとして取り上げた。さらに、このCQに対するアンサーで「鍼治療を用いる」として他の治療法と並列で鍼治療を明示した。産婦人科診療においては、鍼灸治療はあまり馴染み深いものではないが、世界の趨勢を考慮すると治療方法の一つとして今後認知していく必要性があると考えられる。そこで、今回の企画では、 PMS/PMDDに関する西洋医学的なエビデンスを概説するとともに、指針案を提示しコンセンサスミーティングとして全日本鍼灸学会会員の皆様のご意見を頂戴できればと考えている。このような企画を通じて、今後のPMS/PMDD診療における産婦人科医・鍼灸師との連携が促進されることを期待したい。 キーワード:PMS、PMDD、管理指針、産婦人科、代替医療 ●略歴 1987年大阪大学医学部卒業 1995年大阪大学医学部大学院博士課程修了 1997年大阪大学医学部産婦人科助手 1998年大阪府立母子保健総合医療センター産科診療主任・医長 2001年大阪大学医学部産婦人科助手 2004年大阪府立成人病センター婦人科副部長 2007年大阪大学医学部産婦人科助教(学内講師) 2008年東北大学医学部先進漢方治療医学講座准教授 2012年近畿大学東洋医学研究所所長教授、東北大学産婦人科客員教綬 特別提言「鍼灸教育モデル・コア・カリキュラムー鍼灸学系大学協議会からの発信ー」 座長:明治国際医療大学河井正隆東京有明医療大学 坂井友実 SS-2鍼灸学系大学教育モデル・コア・カリキュラム−鍼灸学系大学協議会からの発信- 河井正隆1)、矢野忠1)、坂井友実2)、福田文彦3) 1)明治国際医療大学 2)東京有明医療大学 3)明治東洋医学院専門学校 【本提言の目的】『鍼灸学系大学教育モデル・コア・カリキュラム』を広く紹介し、参加者とともに今後の鍼灸教育の海図を共有すること。 【本提言の背景と意義】「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」(第2条)には、文部科学大臣の認定した学校又は厚生労働大臣の認定した養成施設において解剖学、生理学、病理学、衛生学など、あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師に必要な知識及び技能を修得した者に、国家試験の受験資格を与えると記されている。その国家試験の受験資格は「あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師に係る学校養成施設認定規則」に記載があるものの、鍼灸師に必要な知識・技能の具体的項目と到達目標については明記されていない。また、卒業時に鍼灸師が最低限の修得すべき項目も触れられていない。それらは、教育現場に任されているのが実情である。そのような状況では、教育の内容や質について学校間で差異が生じることは必然である。ただ一つ共通目標は、国家試験の合格であり「国家試験出題基準」が教育内容の代替として用いられているのが現状と思われる。現行の「国家試験出題基準」は、教育現場で使用している教科書(特別支援学校の理療科及び東洋療法学校協会指定の教科書)を参照して作成されたもので、その内容は教科書の項目を大・中・小項目として整理したものに過ぎず、教育現場では海図なき航海のごとくである。また、「はり師又はきゅう師となるのに必要な知識及び技能」とは何か、そして、どのような知識・技能を修得すればよいのか、といった基本的な検討が無いまま教育は進められてきた。これらのことを直視し、鍼灸教育の基礎・基本に立ち返ることが今、強く求められる。その意味で、鍼灸教育における海図ともいえるモデル・コア・カリキュラムの作成は極めて重要かつその意義は大きい。医学教育・看護教育・理学療法教育等の医療人養成教育においては、すでにモデル・コア・カリキュラムが作成され、改定作業を通して常に時代に応じた医療人の養成教育の実践に努めている。看護学教育に至っては、「わが国の大学における看護学教育の質保証−日本看護系大学協議会の挑戦−」の具体化として「日本看護学教育認証評価機構」を設立し、看護学の質保証に取りかかっている。以上を踏まえ、改めてモデル・コア・カリキュラムの構築は鍼灸教育の喫緊の課題といえる。 キーワード:鍼灸教育、モデル・コア・カリキュラム、海図 ●略歴 ■河井正隆【学歴】2003年大阪大学大学院人間科学研究科教育学専攻博士課程修了(博士(人間科学) 【略歴】 1989年明治東洋医学院専門学校専任教員 2019年明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科准教授 2021年明治国際医療大学基礎教養講座人文科学・外国語ユニット准教授(現在に至る) ■矢野忠【学位】 1987年帝京大学医学博士 【略歴】 1978年東京教育大学教育学部附属理療科教員養成施設卒業 1990年〜 2023年明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科教授 2018年〜 2023年明治国際医療大学学長 2023年〜明治国際医療大学名誉学長・鍼灸学部鍼灸学科名誉教授(現在に至る) ■福田文彦【学位】 2007年明治鍼灸大学(現、明治国際医療大学)博士(鍼灸学) 【略歴】 2015年明治国際医療大学・大学院教授 2019年〜明治国際医療大学特任教授、大学院教授 2019年〜明治東洋医学院専門学校鍼灸学科長(現在に至る) ■坂井友実【学位】 2004年明治鍼灸大学(現、明治国際医療大学)博士(鍼灸学) 【略歴】 1978年東京教育(現、筑波)大学理療科教員養成施設卒業 1978〜1984年筑波大学理療科教員養成施設臨床専攻生、非常勤講師、文部技官 1984年東京大学医学部物療内科文部技官 1991年筑波技術短期大学鍼灸学科助教授 2005年筑波技術大学保健学科鍼灸学専攻教授 2009年〜東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授(現在に至る) 報告1教育研修部企画 座長:相澤はり・きゅう・マッサージ治療院 相澤啓介 R-1鍼灸師への鍼灸団体に対する意識調査 鈴木沙有理 1,2)、松本修1,3)、松尾知美 1,4)、中川善貴 1,5)、川本譲司 1,6)、加用拓己 7)、福田文彦 8)、鈴木雅雄 7) 1)日本理学療法器材工業会 2)セイリン株式会社 3)株式会社日本特殊医科 4)株式会社いっしん 5)株式会社山正 6)株式会社カナケン 7)福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室 8)明治国際医療大学鍼灸学講座・明治東洋医学院専門学校 全日本鍼灸学会の会員数は 2022年度の報告書では 5,069名であり、鍼灸関連学会では会員数が最も多い。一方で、就業鍼灸師の全体数は、 2020年度の報告では 126,798人となっており就業鍼灸師全体からすると加盟率は 3.99%と決して多くない状況にある。矢野らが 2008年に日本鍼灸師会会員を対象に行った調査では、 1,555名中 704名( 45.3%)が全日本鍼灸学会に入会しているが、 544名( 35%)は鍼灸学会を含む鍼灸関連学会や研会などに所属をしていないことがわかった。所属しない理由としては、「会に所属しなくても(総会)参加はできるから」という回答が最も多く得られていた( 37.1%)。 今回、日本理学療法器材工業会鍼灸部会が中心となり、学術団体や業団体に所属していない鍼灸師も含めた幅広い層の就業鍼灸師を対象として、アンケート調査を実施し、改めて就業鍼灸師が業界関連団体に求めているニーズを探ることにした。また、矢野らが一般住民を対象として行った調査研究から見えてきた国民が求める鍼灸治療の受療要件に関連した内容(安全性、適応の根拠、専門性の公表、医療連携、認定鍼灸師について)を就業鍼灸師がどのように考えているのか等を調査している。これらの調査を基に、鍼灸学術団体、鍼灸業団体のより一層の活性化を図り、国民の鍼灸治療受療率の向上を目指すべく、本報告では、これらのアンケート調査結果について発表する。 キーワード:意識調査 ●略歴 2019年赤門鍼灸柔整専門学校鍼灸指圧科卒業 2019年セイリン株式会社勤務現在に至る 報告2 JLOM部、辞書用語部、 AMED、鍼灸電カル会議/作業部会合同報告会 座長:帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 久島 達也 東京有明医療大学保健医療学部 鍼灸学科 木村 友昭 R2-1令和 5年度の鍼灸を含む日本の伝統医療を取り巻く国際情勢の概説 鍼灸を医療・文化・知的資源と捉えるために 小野直哉 明治国際医療大学(公財)未来工学研究所 日本災害鍼灸マッサージ連絡協議会(JLCDAM) 鍼灸を含む日本の伝統医療界は、国際標準化機構(ISO)における鍼灸を含む東アジア地域の伝統医療の国際標準化に対応してきた。世界保健機関(WHO)でも、標準鍼用語集や鍼の基本教育と安全ガイドライン、経穴部位の国際標準、伝統医学に関する国際標準用語等、鍼灸の国際標準化が行われ、日本・中国・韓国の鍼灸を含む伝統医療を盛り込んだ国際疾病分類第 11版(ICD-11)が採択されている。但し ISOやWHOは、日本の伝統医療を取り巻く国際情勢の氷山の一角である。 国連教育科学文化機関(UNESCO)での伝統医療の古典医学書(韓国の「東医宝鑑」、中国の「黄帝内経」と「本草綱目」)の世界記憶遺産への登録や伝統医療(中国の「中医鍼灸」と「蔵医学ルム薬湯」)の無形文化遺産への登録、生物多様性条約(CBD)での伝統医療に関する遺伝資源や伝統的知識へのアクセスと利益配分の議論、世界知的所有権機関(WIPO)での伝統医療に関する伝統的知識(遺伝資源関連も含む)の議論、さらに世界貿易機関(WTO/TRIPS)、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、国連食糧農業機関(FAO)等の国際機関や条約においても伝統医療に関する議論が同時多発的に展開されている。また、今後の CPTPPの動向次第では、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)においても同様の議論が行われる可能性は否めない。伝統医療に関する遺伝資源や伝統的知識に係る事柄は、産業・医療・文化・環境・知的財産・貿易・農業等の多岐に亘る国際機関や条約で、同時多発的に、個別且つ専門的に議論されており、各国の駆け引きや攻防が随所で展開されている。 一方、中国や韓国、ベトナム、インド等、「自国の伝統医療は自国の資源(医療資源・文化資源・知的資源)」と明確に捉えている国々では、自国の伝統医療を取り巻く国際情勢への対策を取りながら、自国の伝統医療を自国の国民の福祉と利益に積極的に利活用し、自国の国益に貢献している。 日本の伝統医療界は、否応なしに、多岐に亘る国際機関や条約での伝統医療に関する遺伝資源や伝統的知識の議論を包括的且つ有機的に捉え、俯瞰的な視点で、個々の国際機関や条約での日本の伝統医療に関わる問題解決に当らなければならない。本講演では、日本の鍼灸を医療・文化・知的資源として捉えるために、令和 5年度の日本の伝統医療を取り巻く国際情勢を概説し、日本の鍼灸関係者との情報共有を図る。 キーワード:伝統医療、伝統的知識、知的財産、国際機関、国際条約 ●略歴 明治鍼灸大学卒業後、明治鍼灸大学附属病院卒後研修生、東京医科歯科大学大学院修士課程を経て、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻博士後期課程在籍中に、医療経済研究機構リサーチ・レジデント及び協力研究員、先端医療振興財団科学技術コーディネーター、(公財)未来工学研究所主任研究員等に従事。現在、明治国際医療大学客員教授、(公財)未来工学研究所特別研究員、日本災害鍼灸マッサージ連絡協議会( JLCDAM)世話人。 報告2 R2-2 ISO/TC249の現状と対応 新原寿志 1)、木村友昭 2)、森田智3) 1)常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)千葉大学医学部附属東洋医学センター墨田漢方研究所 本報告会では、 ISO/TC249(国際標準化機構/伝統中医学)の現状とその対応について報告する。 1.ISO/TC249 WG3(鍼の品質と安全使用)に関わる国際規格(IS)の動向について報告する(担当:新原寿志)。昨年、 2023年6月の WG3会議では、「滅菌済み単回使用鍼刀」が再提案され、修正後、新業務項目提案( NP)投票へ進むこと、新規提案の「単回使用糸埋没鍼 Part2医療用吸収性縫合糸」は、発行済みの「単回使用糸埋没鍼(ISO 22236: 2020)」に組み込まれ再開発されることが合意された。「滅菌済み単回使用三稜鍼(ISO/CD 6559)」は、昨年 7月に国際規格案(DIS)投票を通過した。 ISの「滅菌済み単回使用毫鍼( ISO 17218: 2014)」と「電気刺激のための単回使用毫鍼の検査法(ISO 20487:2019)」は本年 4月から定期見直し期間(SR)に入る。 2.ISO/TC249 WG4(鍼以外の TCM領域医療機器の品質と安全性)に関わる国際標準化の動向について報告する(担当:木村友昭)。「貼付型永久磁石磁気治療器( ISO 22587: 2023)」は 2023年6月27日に ISとして正式に発行された。同年 12月の第 24回WG4会議では、「艾の品質に関する試験方法(ISO/CD TS 6818)」の進捗が報告され、一部コンセンサスが得られていない点について再検討の上で発行段階に進捗させることとなった。また、「舌診解析システムパート 3:カラーチャート( ISO/TS 20498-3: 2020)」と「皮膚電気抵抗測定器(ISO 20495: 2018)」は SRに関する報告がなされ、特に変更なく更新されることとなった。 3.ISO/TC249 WG5/JWG1 (Scope:用語と情報科学)の鍼灸に関わる国際規格(IS)の動向を報告する(担当:森田智)。昨年 10月の WG5会議では、「機器の語彙パート 1:灸機器」が、修正後、技術仕様書(TS)を目標に NP投票に進むことが合意された。また、昨年 6月の JWG1会議では、「診断情報のコーディ ング規約パート 1:舌とパート 2:脈」が、修正後、 TSを目標に NP投票へ進むことで合意された。昨年 11月の JWG1会議では、 SRの「鍼を表現するための範疇構造規格パート 1:穴( ISO/TS 16843-1: 2016)とパート 2:鍼法(ISO/TS 16843-2: 2015)」が議題に上り、 ISを目標に DIS登録され改訂されることとなった。「推拿を表現するための範疇構造規格」は TSを目標に NP投票へ進むことで合意されたが、「鍼治療を表現するための範疇構造規格」は予備業務項目(PWI)として保留となった。 キーワード:国際規格(IS)、ISO/TC249 ●略歴 ■新原寿志【現職】常葉大学健康プロデュース学部教授【委員歴】(公社)全日本鍼灸学会臨床情報部副部長(安全性委員会委員)、JLOM部部員、 日本東洋医学サミット会議(JLOM)ISO/TC249推進会議委員(WG3主査)(一社)日本東洋医学会 JLOM委員会(外部委員) 【略歴】 1999年明治鍼灸大学大学院博士後期課程修了(博士/鍼灸学) 1999年明治鍼灸大学鍼灸学部助手 2010年明治国際医療大学(旧明治鍼灸大学)鍼灸学部講師 2015年明治国際医療大学鍼灸学部准教授 2017年現職 ■木村友昭【現職】東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科准教授東京有明医療大学大学院保健医療学研究科准教授【委員歴】(公社)全日本鍼灸学会 JLOM部副部長、編集部員日本東洋医学サミット会議(JLOM)ISO/TC249推進会議委員( WG4主査)(一社)日本東洋医学会 JLOM委員会(外部委員) 【略歴】 1994年明治鍼灸大学大学院修士課程修了(修士/鍼灸学) 1994年筑波技術短期大学鍼灸学科助手 2004年博士/医学(昭和大学) 2007年国立大学法人筑波技術大学保健科学部保健学科鍼灸学専攻助教 2009年現職 ■森田智【現職】千葉大学医学部附属東洋医学センター墨田漢方研究所客員研究員【委員歴】(公社)全日本鍼灸学会安全性委員会委員、日本東洋医学会渉外委員会国際担当委員 日本東洋医学サミット会議(JLOM)委員会 2・3委員、国内対策委員会委員 【略歴】 2018年3月千葉大学大学院医学研究院博士後期課程修了(博士/医学) 2018年4月千葉大学医学部附属病院鍼灸外来主任 2023年4月現職 2024年1月名古屋市立大学客員研究員 報告2 R2-3 WHO-FIC年次総会 TMRG(伝統医学関連グループ)報告 田口太郎 九州看護福祉大学看護福祉学部鍼灸スポーツ学科 「WHO-FICとは何か?」と問われて端的に回答できる方は少ないと想像する。 WHO-FICの概念は、少なくとも過去 3回大きく変更されているが、現在の WHOの説明では“ The WHO-FIC is a set of integrated classification products that share similar features and can be used individually or jointly to provide information on different aspects of health and health systems.”となっている。演者の意訳は「各国の医療や健康管理に関する様々な情報(診断、機能障害、治療法、保険サービス等)のコード化を目的とした枠組みを提供するための国際的な仕組み」である。ここで言うコード化とは、要は医療情報のグローバル化を目指すものであり、したがって ISOとも非常に親和性が高く、実際に WHO-FICの国際会議では ISO/TC249のエキスパートも散見される。本報告会では、昨年 10月にドイツのボンで開催された WHO-FIC年次総会における T MRG(Traditional Medicine Reference Group:伝統医学関連グループ)での各国の動向を共有させていただくが、大前提として WHO-FICは医療情報のグローバル化のための仕組みであることを念頭に置いていただきたい。 さて、上記の年次会議の大部分は TM1(Traditional Medicine Conditions Module 1:漢方・鍼灸のモジュール)、TM2(アーユルベーダ・シッダ・ユナニのモジュール)、ICHIについて時間が割かれており、これらを中心に報告する。以下に抜粋を示しておく。中国) 1995年から ICDをカバーした国内製コーディングを導入、 2021年には TM1をカバーしたバージョンで運用、 2023年からは治療法についてもコーディングを開始。韓国) 1952年から国内製コーディングを導入、 ICD-11のカバーは 2026年から運用予定。米国)伝統医学系大学評議会や米鍼灸師協会を教育して TM1をクリニックレベルで拡散する準備中。インド)国内製コーディングに TM2をカバーしたバージョンを 2024年リリース予定。 キーワード:WHO-FIC、ICD-11、ICHI ●略歴 2004年明治鍼灸大学大学院修士課程修了(修士/鍼灸学) 2004年鹿児島鍼灸専門学校鍼灸科専任教員 2007年福岡柔道整復専門学校鍼灸科専任教員 2010年九州看護福祉大学鍼灸スポーツ学科専任講師 2014年同准教授 【委員歴】全日本鍼灸学会安全性委員会委員、 JLOM部部員、日本東洋医学サミット会議 ISO/TC249委員会 2委員長 WHO CC協力ネットワーク運営会議臨時構成員、日本東洋医学会用語及び病名分類委員会委員 報告2 R2-4全日本鍼灸学会辞書用語部における活動について鍼灸学用語集の Web掲載に向けて 和辻直 全日本鍼灸学会辞書用語部伝統医学班 全日本鍼灸学会辞書用語部現代医学班 全日本鍼灸学会辞書用語部部長 1.辞書用語部についての概要学術用語の整理は教育や研究、臨床の基盤となることから、その領域の学術の進歩や正しい普及において極めて重要な手段であるとされている。日本の鍼灸に関する用語の整理は以前から必要とされてきたが、学会レベルで十分に検討されておらず、今日に至っている。近年では世界保健機関西太平洋地域事務局(WHO/WPRO)で 2007年に東アジア伝統医学の国際標準用語を作成した。世界保健機関(WHO)や国際標準化機構(ISO)で伝統医学の標準化が盛んとなっており、 WHOのWebサイトには 2022年3月に WHO international standard terminologies on traditional Chinese medicineが掲載され、 ISO/TC249やTC215では伝統医学用語の標準化など求められている。このため、鍼灸用語の整理は日本の鍼灸分野において重要な課題となっている。当会辞書用語部は 2018年から委員会の活動から始まり、鍼灸に関連する伝統医学と現代医学の用語に対応するため、伝統医学班と現代医学班を編成し、日本鍼灸の用語を整理し鍼灸学用語集の作成を進めている。また伝統医学の用語は、現代医学の用語とは異なり、用語の意味に諸説があって整理が必要とされている。このため伝統医学の用語に関して、基本的用語を選定して定義を作成している。 2.用語集について 辞書用語部では、日本の教育、研究、臨床、行政などの場で、はりきゅうに係る者が、論文や教科書の執筆、診療記録の記載、行政文書の作成などで活用する必要な鍼灸学用語を選定することにした。用語は鍼灸師養成施設で用いる教科書や『はり師きゅう師国家試験出題基準』の索引用語を中心に、伝統医学的用語の約 3,500語と現代医学的用語の約 10,000語を抽出し、必要な用語として伝統医学的用語 1,754語、現代医学的用語 6897語に整理した。 2023年度からは公開に向けた用語の精査、鍼灸用語に対する英訳は複数の用語辞書を用いて作成中で、用語集に付加する予定である。 3.今後の活動について 用語集を本学会の Webサイトに『全日本鍼灸学会鍼灸学用語集』として 2023年に掲載予定であったが、用語検索などを改良が必要であったため、次年度の掲載になった。今後の活動は鍼灸学用語集を本学会 Webサイトに掲載後、用語集への意見公募を行い、更新する予定である。 キーワード:辞書用語部、鍼灸用語、伝統医学、現代医学、鍼灸学用語集 ●略歴 現職 明治国際医療大学鍼灸学部教授、明治国際医療大学大学院教授 1987年明治鍼灸大学鍼灸学部卒業 1991年明治鍼灸教員養成施設卒業 2004年博士(鍼灸学)取得 2015年明治国際医療大学教授 報告2 R2-5鍼灸電子カルテの標準参照仕様の現状について 山下幸司 鈴鹿医療科学大学医用工学部医療健康データサイエンス学科 WHO国際統計分類(WHO-FIC)のうち、 2022年2月発効した WHO国際疾病分類第 11版(ICD-11)に初めて伝統医学が入り、伝統医学の疫学的実態把握が世界的に期待されている。このような背景の中で鍼灸電子カルテの策定を目的に鍼灸関連 6団体において「鍼灸電子カルテ標準参照仕様の策定に関する会議」および作業部会が組織され、 2023年度の全日本鍼灸学会学術大会神戸大会において中間報告を行った。今回では、「鍼灸電子カルテ標準参照仕様の策定に関する会議」についての活動のうち 2023年10月から現在までの報告を行う。 標準参照仕様を検討していくうえで、データ化していくときに何をみたいのか、何を集計したいのか?絶対に取りたいデータは何か?を検討をした。特にデータとしては、 1.症状: ICPC-2、2.伝統医学病名・証: ICD-11伝統医学章、 3.介入の部位、道具、方法(手技)などが必要である。 さらに鍼灸電子カルテを利用する際のメリットについて検討を行った。利用者側にデータをフィードバックできる仕組みや日々の業務などがスムーズに行えるようになることが必要だと考えられる。具体的には 1.紹介状を書くときにスムーズにかけるようなもの、 2.患者説明ツール(患者に治療の効果を見える化できるようなもの)、3.同意書を書いてもらうための施術報告書が簡単に書くことができるような仕組み、 4.医療との連携(他職種との情報共有)ができるようなもの、 5.病名を集計することで、どのような疾患を得意としているかを患者に提示することができるものなどの機能をもつことが必要である。 今後、全国の鍼灸カルテの実態調査を行っている作業部会と連携をしながら、鍼灸電子カルテ標準参照仕様についてまとめていく予定である。また、デジタル庁参事官、厚生労働省が検討を行っている標準型電子カルテについても注視しながら取り組んでいく必要がある。 キーワード:電子カルテ、 ICD-11、標準参照仕様、医療 DX、データヘルス ●略歴 2002年鈴鹿医療科学大学医用工学部医用情報工学科助手 2006年鈴鹿医療科学大学医用工学部医用情報工学科講師 2010年鈴鹿医療科学大学医用工学部医用情報工学科准教授 2022年鈴鹿医療科学大学医用工学部医療健康データサイエンス学科准教授 報告2 R2-6鍼灸電子カルテ標準参照仕様の策定を目的とした実態調査第2報 −全国 92施設のカルテ状況の把握と検討- 村橋昌樹1)、中川紀寛1,3)、荒木善行1,2,4)、清水洋二1,2,3,4)、 橋本隆1,5)、福島正也1,2,6)、藤田洋輔1,2,7)、村瀬智一1,2)、 茂木麻美1,5)、山下幸司1,2) 1)鍼灸電子カルテ参照仕様の策定に関する会議作業部会 2)公益社団法人全日本鍼灸学会 3)公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会 4)公益社団法人日本鍼灸師会 5)一般社団法人日本伝統鍼灸学会 6)鍼灸系大学協議会 7)公益社団法人東洋療法学校協会 【背景・目的】 2022年1月に国際疾病分類第 11版( ICD-11)への伝統医学章収載に伴い、本邦においては伝統医学章の活用および活用データの収集が必要となった。これらの膨大なデータを収集するためには鍼灸業界で統一したデータ集積システムが必須であることから、鍼灸電子カルテの策定を目的に鍼灸関連 6団体において「鍼灸電子カルテ参照仕様の策定に関する会議」および作業部会が組織された。 2022年8月から本作業部会の活動が開始され、 2023年度の全日本鍼灸学会学術大会神戸大会において鍼灸電子カルテ標準参照仕様の策定を目的とした実態調査の中間報告を行った。中間報告では全 92施設(鍼灸院が 58施設、専門学校が 14施設、鍼灸系大学と大学病院がそれぞれ 10施設)から収集されたのべ 177の帳票から抽出した6,521のカルテ項目名とその SOAP分類についての分析を報告した。第 1報では東洋医学的な項目を含む多岐に渡る表現や項目があり、通常の医療用カルテでは使用しない稀な項目も含まれ、その分析については今後の課題と報告した。【対象・方法】本報告では帳票種類がカルテに該当する 91帳票から抽出した 3080の項目データを対象に 9人の電子カルテ作業部会員内で同一項目か否かのコンセンサスをとり、重複項目を評価した上でカルテ項目の整理および出現頻度の分析を行った。なお、項目分類は SOAPおよび患者基本情報等に分類した。【結果・考察】今回、出現頻度の上位に現れた項目は鍼灸電子カルテ標準参照仕様の策定に必須な因子となることが考えられる一方で、項目出現頻度の低い項目においても我が国における多様な流派および団体にとっては必須な項目も存在すると考えられることから、鍼灸電子カルテへの項目の組み入れについては慎重な検討が必要と考える。【結語】全92施設、 3080のカルテ項目の重複整理を行い、項目出現頻度の調査を行った。今後は高出現頻度の項目を中心に鍼灸電子カルテの策定に向けて詳細な検討が必要となる。 キーワード:鍼灸、電子カルテ、カルテ項目、実態調査 ●略歴 2014年東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科卒業 2021年自治医科大学大学院医学研究科緩和医療学専攻修士課程修了 2014年素問堂鍼灸室入社 2016年福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座入職 2019年福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座退職 2021年埼玉医科大学東洋医学科非常勤職員入職 2023年埼玉医科大学東洋医学科常勤職員 市民公開講座 座長:東北大学病院総合地域医療教育支援部(総合診療科、漢方内科)高山 真 LPお家で薬膳心も身体も健やかに 横須賀まな美 本草薬膳学院仙台教室講師 1.「幸せな人生は食べ物で実現できる」 20数年前に薬膳という言葉を知り中医薬膳学を一から学び始めた。中国古代哲学、陰陽五行や整体観念が根底にあり、調和を重んずる。食物は身体と心を左右する、食べることで体や心の乱れ(不調)を常に調和させられる。仙薬を手に入れたように思った。 2.「人間はその人が食べたものである」 食べたものが人を作る、よく聞く言葉。食べ物の影響がいかに大きいか。食材の持つ性質を知ると、目の前の人が何を好んで食べてきたかわかることがある。余計なおせっかいを言いたくなる。 3.薬膳は「食べたらどうなるのか」という経験医学。 この植物は食べられるのか、食べられないのか、食べてみなければわからない、その結果元気になった、あるいは食べたら毒だったと、長い歴史の中で繰り返した結果が食薬学として確立された。命拾いして幸せに生きられた人、不幸にも亡くなった人のおかげで、植物の性質が知れて、薬や食べ物になっていった。 4.「食べ物にはすべて性質がある」 現代栄養学ではカロリー・ビタミン・ミネラルで評価、薬膳は食物の持つ働きや作用を重視。体を温めか冷ますか、興奮させるか落ち着かせるか、どの臓腑に向かうかといった性質。性味・昇降浮沈・帰経。特別な食材だけでなく、身近な野菜や果物にももちろんある。 5.薬膳は調和が大事 食材の持つ性質を知ることは大前提だが、もう一つ重要なことがある。食べる人の状態(年齢や性別はじめ、暑がりか寒がりか、鬱々か、高揚状態か…などなどなど)。今の気候や湿度、環境も考慮。陽を補って温める、熱を除いて冷やすなど。バランスを整え調和させるには、食材と人と、両方の情報が不可欠。 6.食材選びの質問 1:暑がり・冷え性 2:疲れやすい・食が細い 3:物忘れ・めまい・立ちくらみ・動悸 4:ため息・不安や憂うつ 5:シミ・そばかす・肩こり・頭痛 6:のぼせ・ほてり・寝汗 7:むくみ・痰がからむ 7.幸せな人生の作り方 薬膳の資格を取得した後、鍼灸を学び始めました。私が紹介する薬膳料理は「お家薬膳」です。中薬をほとんど使わず身近な食材で料理するので、穏やかに作用するものです。平穏に暮らすのが目的です。ただ現在の苦痛に対処するためには、ピンポイント&即効で痛みを消す手段も必要。薬膳と鍼灸を合わせれば幸せな人生が作れると思いませんか。 キーワード:おうち薬膳 ●略歴 1981年茨城キリスト教短期大学英語科卒業 2006年国際薬膳師 2007年国際中医師 2011年はり師灸師 サロン企画 「Star festival七夕に願いを込めて」宮城大会実行委員会 〜仙台七夕飾りがご来場のみなさまをお迎えいたします〜 東北三大祭りのひとつ仙台七夕まつりは、仙台藩祖の伊達政宗公が江戸時代初期に、婦女に対する文化向上の目的で、中国の風習に由来する「七夕」を奨励し、年中行事の 1つになったと言われています。大会期間中、会場にいらしたみなさまに、青・赤・黄・白・黒(紫)の 5色の短冊をご用意しております。願い事を書いて笹に飾っていただき、七夕飾りをみなさまの願い事で完成させましょう。なお短冊は 2種類お渡しいたします。 1枚は会場の七夕飾りに、もう一枚はお預かりしまして、 8月に行われます仙台七夕まつりの笹竹に飾らせていただきます。仙台七夕まつりに飾られた短冊を探しに、夏の宮城に、東北にまたお越しいただきたいと思います。 キーワード:七夕、短冊 The Program of The 73rd Annual Congress of The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion, May 24~26, 2024, Miyagi 一般演題抄録 001 -Sat-P1-14:00 Literature review on acupuncture treatment for long COVID-19 1)Department of acupuncture and moxibustion, Niigata University Health and Welfare 2)Department of General Practitioner Development, Tohoku University Graduate School of Medicine 3)Department of Kampo and Integrative Medicine, Tohoku University Graduate School of Medicine 4)Medical Education Center, Jichi Medical University Kaneko Soichiro1-4)、Ishii Yuzo2,3)、 Kamiya Tetsuharu3)、Koizumi Naoteru3)、 Murakami Yashiyasu3)、Arita Ryutaro3)、 Kanno Takeshi4)、Kikuchi Akiko3)、Kasuya Daichi1)、Takayama Shin3)、Ishii Tadashi2,3) [Introduction]Recently, long COVID-19 in mild cases have been increasingly reported. In Japan, acupuncture treatment is often provided at the clinics in the city, and although it is assumed that acupuncture treatment is being provided for minor cases. In this study, a literature review was conducted in preparation for case accumulation of acupuncture treatment for long COVID-19. [Methods]A literature review was conducted under the following conditions. Target databases: PubMed and Japan Medical Abstracts Society (JMAS); Keywords: terms related to long COVID-19 and acupuncture treatment. Search date: 17-24 Nov 2023; search limitations: peer-reviewed literature was recruited for the period 2020-2023 and conference proceedings were excluded. Extracted items were literature type and evaluation method. [Results]PubMed: 27, JMAS: 5 articles were included. Literature types included randomized controlled trials (RCT): 1, protocols: 5, case reports: 6, qualitative studies: 1, letters: 3, review articles: 18. The symptoms covered ranged from fatigue, depression, taste and olfactory disorder in RCTs, protocols and case reports. The Numerical Rating Scale (NRS), which indicates degree, was used to assess in 3 of the 6 case reports. Discussion and conclusion There were not many reports of acupuncture treatment for long COVID-19, and among the few that were available, the types of symptoms were varied. We plan to conduct further research on evaluation methods and utilise them in the accumulation of cases of acupuncture treatment for post-acupuncture symptoms in acupuncture clinics in the city. キーワード: Long COVID-19、Acupuncture、Literature review 002 -Sat-P1-14:12 Acupuncture and massage support for disaster victims 1)Department of Education and Support for Regional Medicine, Department of Kampo Medicine, Tohoku University Hospital 2)SAIPRO 3)Niigata University Health and Welfare, Department of acupuncture and moxibustion Takayama Shin1)、Miwa Masataka2)、 Kaneko Soichiro3) enLarge-scale natural disasters, such as earthquakes, tsunamis, volcanic eruptions, and typhoons, occur worldwide. After the Great East Japan Earthquake and Tsunami Disaster (GEJED) and the Joso City Flood (JCF), our medical support operation's experiences suggested that acupuncture and traditional medicine is useful for treating various symptoms observed in the survivors. However, little information is available regarding these treatments in disaster situations. Considering that further disasters are likely to occur, we studied the medical support operation for evacuees with acupuncture and massage therapy (AP/MT) and analyzed its efficacy in this article. We retrospectively investigated treatment with AP/MT after the GEJED and JCF based on the medical records. The most common complaints, shoulder, back, and knee pain, were reported in 67.6 % of patients after the GEJED and 80.9 % of patients after the JCF. AP/MT significantly decreased the median Face Scale score of symptoms in evacuees (3.0 before vs 1.0 after AP/MT, P<0.001) and supporters (3.0 before vs 1.0 after AP/MT, P<0.001). Thus, evacuees and supporters in affected areas benefitted from AP/MT for relief of subjective symptoms.I reported this study on ICMART 2018 and received the Poster Award at the congress. I present this poster with ICMART permission. キーワード:Acupuncture、Support、Disaster 003 -Sat-P1-14:24 Necessary Contents for Safe Acupuncture in Disaster Areas Through Interviews with Acupuncturists Department of Acupuncture and Moxibustion, Faculty of Health Care, Teikyo Heisei University Tsunematsu Mikako、Ikemune Sachiko、Imai Kenji [Introduction] Acupuncture is being used to care for victims in disaster areas, including through volunteer activities. Acupuncture in disaster areas differs from treatment in a clinic, and may require advance preparations and measures. The aim is to identify the preparations and measures required for safe acupuncture in disaster areas through interviews with acupuncturists who have experience in treating patients in those areas.[Method] The subjects were six acupuncturists with experience in disaster areas. We asked the subjects about safety considerations they thought should be considered when performing acupuncture in a disaster area. The interviews were recorded and the content transcribed. Interview statements were analyzed qualitatively and categorized according to their content. [Results] Interview statements were grouped into 27 subcategories. Furthermore, the subcategories were grouped into eight categories ("Collaboration with local staff", "Advance preparation of treatment equipment and personnel of acupuncturists", "Considering how acupuncturists with different characters will work together", "Consideration for being a one-time-only treatment", "Measures to prevent incidents during treatment", "Safety and health management of practitioners", "Consideration for victims" and "Communication with victims"). [Conclusion]In the case of safe acupuncture in disaster areas, advanced basic preparation and understanding unique to the acupuncture treatment there are required for acupuncturists. キーワード: disaster area、volunteer activities、 safe acupuncture、interview 004 -Sat-P1-14:36 Effect of autonomic nerves on opioid-induced constipation 1)Department of Acupuncture and Moxibustion, Meiji University of Integrative Medicine 2)Department of Acupuncture and Moxibustion, Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences 3) Department of Acupuncture, Takarazuka University of Medical and Health Care 4)Department of Acupuncture and Moxibustion, Faculty of Health Science, Teikyo Heisei University Okada Misaki1)、Taniguchi Hiroshi2)、 Taniguchi Sazu2)、Kitakoji Hiroshi3)、 Itoh Kazunori1)、Imai Kenji4) [Aims] We have previously studied the effects of electroacupuncture (EA) on opioid-induced constipation (OIC) by the peripheral μ-receptor agonist(loperamide). It has suggested that EA improves constipation by the enhanced parasympathetic pathway. This study aimed to examine the pathophysiology of OIC in detail. [Methods]Fifteen male SD rats were divided into three groups as follow; OIC, naloxone methiodide and neostigmine group. The operation had been demonstrated for set the cannula into the cecum to connect the proximal colon to inject markers. From 3 to 5 days after the surgery, all rats were administrated the loperamide to produce OIC. At 6 days after the surgery, 20 metal radiopaque markers were administered to the proximal colon and visible throughout the gastrointestinal tract via soft X-ray immediately after the administration of markers. Before measurement, rats were administrated naloxone methiodide or neostigmine. Colonic transit (CT) was calculated by the geometric center on the images of those. [Results] The naloxone methiodide and neostigmine groups were significantly accelerated compared to the OIC group at 120 (OIC, naloxone methiodide, neostigmine: 30.2, 152.6, 111.2) and 180 minutes periods (41.2, 166.4, 130.8), respectively (p<0.05). [Conclusions] The peripheral μ -receptor antagonist (naloxone methiodide) and the cholinesterase inhibitor (neostigmine) showed acceleration of the delayed CT in this study. The CT of OIC was suggested to be improved by parasympathetic stimulation by EA. キーワード: opioid-induced constipation、autonomic nervous system 005 -Sat-P1-14:48 Behavior analysis using DeepLabCut of a chemobrain model rat 1)Graduate School, Meiji University of Integrative Medicine 2)Department of Acupuncture and Moxibustion, Meiji University of Integrative Medicine Hiraiwa Shinya1)、Okada Misaki2)、 Fukuda Fumihiko2) [Aims]We have previously examined electroacupuncture (EA) in Chemobrain rats using behavior analysis. However, manual methods limited objectivity. In this study, we used DeepLabCut (DLC) for objective behavior measurement. [Methods] Nine SD rats performed the novel object/place recognition test (NOPRT), which was included a control group, a chemobrain group (administration of paclitaxel(PTX)), and a chemobrain+ EA group. It was used to evaluate the visual and spatial memory functions utilizing a discrimination index (DI), which was calculated from the exploration time of novelty and familiar objects. It was performed at three-time points. For the manual method, the exploration time was measured by the visual judgment of the recorded video using a stopwatch. For the DLC method, coordinates of the rat nose and explored object in the video were initially obtained, followed by the calculation of the exploration time. Intraclass correlation coefficient (ICC) and Bland Altman(BA) analysis were used for statistical analysis. [Results]A total of 24 DI value points were used for the analysis. As a result, the ICC of the DI measured by the two methods was highly reliable (ICC(2,1)=0.96, p<0.01). Moreover, the BA analysis indicated the absence of a fixed bias (95% CI: -0.06 to 0.01, p =0.18) and a proportional bias (p =0.47). [Conclusions]The results suggest the potential of DLC as a substitute for manual measurements. In the future, we will utilize this DLC-based behavioral analysis to reveal the various efficacies of acupuncture. キーワード: Chemobrain、DeepLabCut、 Behavior analysis 006 -Sat-P1-15:00 Quantitative Analysis of the Supporting Hand in Acupuncture Using a Pressure Sensor and 4K Camera Ritsumeikan University Graduate School of Sport and Health Science Miyamoto Nao [Introduction] Among the myriad techniques in acupuncture, the supporting hand technique stands as a pivotal method, with potential implications for patient discomfort and pain. This study introduces a novel approach to objectively evaluate the effects of this technique objectively, employing silicone gel with skin-like elasticity, high-precision pressure sensors, and high-resolution cameras. [Methods] The silicone gel model comprises three distinct layers to simulate human tissue: a soft peach layer representing the skin, a slightly firmer blue layer for muscle, and a hard white layer to mimic bone or ligaments, each layer measuring 7 mm thick. Four pressure sensors, with a sensitivity range from 0 to 30 kg, were strategically utilized in this study. [Results and Discussion] The sensors accurately measured the pressure exerted by the supporting hand, while the color-coded layers and a 4K camera facilitated the deformation tracking. This setup enabled a quantitative assessment of pressure intensity and tissue deformation, offering valuable insights into the mechanics of the supporting hand technique in acupuncture. [Conclusion]This methodological approach sheds light on the intricacies of the supporting hand technique but also holds significant promise for educational purposes and clinical research. It paves the way for the standardization of therapeutic techniques and the evaluation of their effectiveness, ultimately contributing to the advancement of acupuncture treatment methodologies. キーワード: Pressure Sensors、Image Analysis、 Silicone Gel、objective evaluation 007 -Sat-P1-15:12 Acupuncture for panic disorder with agoraphobia A case report Department of Acupuncture and Moxibustion, Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences, Tokyo, Japan Matsuura Yuto、Yasuno Fumiko、Sakai Tomomi [Background] Panic disorder (PD) is marked by recurrent, unexpected panic attacks accompanied by ongoing concerns or maladaptive behaviors about future attacks, often co-occurring with agoraphobia. This case report details a case where acupuncture treatment effective in managing severe panic attacks in a PD patient, also afflicted with agoraphobia. [Case]A 38-year-old Japanese woman suffering from PD with agoraphobia presented at our hospital with complaints of repeated panic attacks and anxiety. Initially experiencing symptoms in her late teens, she avoided psychiatric consultation due to reluctance toward psychotropic medications. Before starting acupuncture treatment, she was formally diagnosed with PD by a psychiatrist. Acupuncture treatment aimed at improving panic attack, psychiatric and physical symptoms was performed weekly. The primary outcome, Panic Disorder Severity Scale (PDSS), assessed PD severity by an unbiased psychiatrist. [Results]From the initial to the sixth visit, the PDSS score decreased from 21 to 12 points (57% reduction). The patient experienced reduced panic attack frequency and severity, with restored confidence to go out despite agoraphobia. Along with the alleviation of PD, there was also a decrease in anxiety, depressive symptoms, and physical symptoms. [Conclusion]This case report is the first to demonstrate the effects of acupuncture on PD with agoraphobia using PDSS, suggesting its potential as a nonpharmacological treatment option for patients with PD and agoraphobia. キーワード: Acupuncture、Agoraphobia、Case report、 Panic Disorder、 Panic Disorder Severity Scale 008 -Sat-P1-15:24 The Current State of Acupuncture for Sleep Classical Interpretation and Application 1)Department of Acupuncture and Moxibustion, Faculty of Health Care, Teikyo Heisei University 2)Research Institute of Oriental Medicine, Teikyo Heisei University 3)High Technology Research Center, Kokushikan University 4)Sleep & Circadian Neurobiology Laboratory, Stanford Sleep Research Center 5)Department of Psychiatry and Behavioral Sciences, Stanford University School of Medicine Nakamura Suguru1,2,3)、Nishino Seiji4,5) [Objective] As social problems related to sleep are greatly expanding in Japan today, acupuncture has shown great promise in this field as a treatment method that does not involve the use of medication. In addition, Sleep is mentioned a lot in antiquarian books like Su-wen and Ling-Shu, indicating its importance. However, here are only a few studies that have investigated the effects of acupuncture on sleep itself, and those with classical interpretations are extremely rare. In this study, Investigates the effects of acupuncture treatment on sleep disorders and reports the results with classical interpretation. [Methods]Using the online database Pubmed, documents were extracted for "each sleep disorders and acupuncture", duplicates were removed, and interpretation was performed based on the descriptions of sleep in the Su-wen and Ling-Shu. [Results] Much of the research on the effects of acupuncture treatment on sleep has been for insomnia. In addition, the statement in the classics that the key to good sleep is the defense qi, Eyes, Bloods, and Yin-Yang heel vessels in the classics reveals many similarities between the sleep mechanisms of modern medicine and the sleep interpretations of the classics. [Discussion and Conclusion] The present study reveals that research on the effects of acupuncture stimulation on sleep is still in its infancy. The study also suggests the possibility of clinical application of acupuncture with a classical interpretation of sleep. キーワード: Sleep、Acupuncture、Sleep disorders、 Sleep problems、Classical Interpretation 009 -Sat-P1-15:36 Bleeding risk of acupuncture for hematological malignancies Department of Kampo Medical Research Institute, Aizu Medical Center, Fukushima Medical University Kayo Takumi、Suzuki Masao [Background] The safety of acupuncture for patients with hematological malignancies remains uncertain. This study assessed the bleeding risk of acupuncture in patients with hematological malignancies accompanying thrombocytopenia. [Methods]Retrospective review of medical records for patients with hematological malignancies receiving acupuncture at a medical center in Japan. Acupuncture sessions were grouped by patients' platelet count: 1)<20×103/μL, 2) 20−49×103/μL, 3) 50−99×103/μ L, 4) ≧100×103/μL. The following sessions were excluded: platelet count was not measured on the same day of acupuncture, platelet transfusions were performed on the same day before acupuncture, the timing of either acupuncture or platelet transfusion was unknown, and non-penetrating acupuncture was conducted. Occurrences of event, which were defined as grade 2 or higher bleeding at the acupuncture site within 24 hours from the acupuncture session or before the next session, were examined by group. [Results] Analysis included 815 acupuncture sessions on 51 patients. There were 90 acupuncture sessions in group 1, 161 sessions in group 2, 133 sessions in group 3, and 431 sessions in group 4. No bleeding events occurred in any group. [Conclusions] With due consideration for safety, acupuncture can be performed without causing serious bleeding for patients with hematological malignancies accompanying thrombocytopenia. [Note] This study is published in the Journal of Integrative and Complementary Medicine (2023 Jul 4, doi: 10.1089/jicm.2022.0710, Online ahead of print). キーワード: acupuncture、hematological malignancies、 thrombocytopenia、bleeding 010 -Sat-P1-15:48 Antispasmodic Gastric Motility with Acupuncture. Controlled Clinical Trial 1)Department of Kampo Medicine, Aizu Medical Center, Fukushima Medical University School of Medicine, Aizuwakamatsu 2)MARU Acupuncture Clinic 3)Course of Acupuncture and Moxibustion, Faculty of Health Sciences, Tsukuba University of Technology, Kasuga, Tsukuba Suzuki Masao1)、Kayo Takumi1)、 Furuta Taiga1,2)、Ishizaki Naoto3) A prospective study was conducted in patients with early-stage gastric cancer to determine the efficacy and safety of acupuncture stimulation as an antispasmodic compared with conventional medication during the procedure of endoscopic submucosal dissection (ESD) of the upper gastrointestinal tract. This study was prospective single blinded quasi-randomized controlled trial. Seventy-three patients who were scheduled to undergo ESD for gastric cancer at Aizu Medical Center between February 19, 2016 and June 30, 2016 were assessed for eligibility for the study. Sixty out of 73 patients were included in the study and assigned into two intervention groups; medication group (MG) and acupuncture group (AG). Evaluation of the ease of the procedure in Modified NIWA classification (MNC) by endoscopist considering the frequency and amplitude of the upper gastrointestinal peristalsis. For the statistical analysis, Mann-Whitney test is used to compare the differences of MNC values (baseline and end of procedure) between two groups. The difference in the MNC found in the AG (-2.00 [-3.0 to -2.0]) was significantly greater than that in the MG (-1.00 [-2.0 to -1.0], p=0.000, Mann-Whitney test). We consider that acupuncture to the abdomen could be an alternative antispasmodic method during upper gastrointestinal endoscopic procedure.This trial was registered in the University Hospital Medical Information Network, Clinical Trials Registry (UMIN000021065). キーワード: Acupuncture、Antispasmodic、 Upper Gastrointestinal Tract、Endoscopic Submucosal Dissection 011 -Sat-P1-16:00 鍼灸治療を行った末梢性めまい患者の経過 市立砺波総合病院 林佳子、土方彩衣、武田真輝 【目的】末梢性めまいに対する鍼灸治療の影響を検討する目的で、鍼灸治療を実施した患者の経過を自記式質問票 Somatic Symptom Scale-8(以下 SSS-8)を用いて評価したので報告する。【方法】対象は末梢性めまいに対して鍼灸治療を実施した患者(期間 20XX-6年から 20XX年)。診療録に記録された SSS-8を後ろ向きに調査した。 SSS-8の点数を初診時、初診 1ヶ月後および 3ヶ月後で比較した。有意差は Wilcoxonの符号付順位検定で検定した。【結果】対象は 7名、うち 6名は女性であった。年齢中央値(範囲)は 48歳( 30-73歳)、末梢性めまいの診断はメニエール病 1名、ハント症候群 1名、突発性難聴 1名、めまい症 4名であった。鍼灸開始前に 6名は耳鼻科にて末梢性めまいに対する標準的治療を受け、 1名は診療所の内科にてベタヒスチンメシル酸塩が処方されていた。鍼灸治療は 1回/週〜 1回/2週の頻度で実施され、 5例は接触鍼のみ、 2例は灸も併用していた。鍼灸治療は個々の証に合わせて、補益心脾法を 2例、交通心腎法を 1例、補中益気法を 1例、益気補血法を 1例、滋腎平肝法を 1例、補腎益精法を 1例に実施していた。 3例は漢方薬も併用された。初診時の SSS-8平均値( 95%信頼区間)は 16.3点( 12.8 to 19.8)、初診 1ヶ月後および 3ヶ月後の SSS-8低下量はそれぞれ、 6.3点( 0.49 to 12.1)、8.0点( 3.5 to 12.5)と有意な低下を認めた (P<0.05)。【考察】末梢性めまいに対する鍼灸治療の影響を検討した。施術後の SSS-8は有意に低下しており、鍼灸治療は末梢性めまい患者の症状の軽減に好影響を与える可能性が示唆された。 キーワード:末梢性めまい、鍼灸治療、 SSS-8 012 -Sat-P1-16:12 片側内耳点のローラー鍼刺激が回転負荷後の体の揺れに及ぼす影響 1)一般社団法人反応点治療研究会 2)明治国際医療大学生理学教室 吉田和平 1)、森本賢司 1)、森川真二 1)、 家島大輔 1)、山内理恵 1)、林知也 2)、 河村廣定 1) 【目的】我々は昨年本学会におき、両側耳垂直下(以下、内耳点)のローラー鍼刺激が平衡機能の回復を促したことを報告した。本研究では、片側内耳点のローラー鍼刺激が回転負荷後の体の揺れに及ぼす影響を調べ、内耳点刺激と内耳機能の関わりを検討した。【方法】対象は健常成人 20名とした。擬似的にめまいを起こす為、アイマスクを着用し頭部 45度伸展位で回転椅子に閉眼座位、一定速度で 10回転させた。回転負荷終了後、閉眼ロンベルグ立位姿勢を取り、その際の体の揺れを前額面に装着したジャイロセンサ(WITMOTION社製 BWT901CL)で 3軸の角速度を測定した。ローラー鍼(カナケン社製)で片側内耳点へ 5分間刺激した群と、無刺激群の揺れを比較した。 2群は同一対象者とし、群間に 30分以上の休憩時間を設けて同日測定をした。 2群の測定順番は、無作為均等振分けとした。刺激側選定は、試験開始前に 3名の検者(反応点治療研究会所属)が左右内耳点を VASで表し、その平均値で求めた。【結果】試験最後まで遂行できたのは 16例であった。無刺激時に揺れが大きかった群( n=8)では、回転終了5秒後から 10秒間における角速度平均値±標準偏差(deg/s)が、無刺激時は前後軸 9.0±3.3、左右軸 15.0± 5.1、垂直軸 8.1±2.8、ローラー鍼刺激時は前後軸 4.9 ±1.5、左右軸 6.6±2.8、垂直軸 4.4±2.0であった。 3軸方向全てで、ローラー鍼刺激介入群の角速度が有意に減少した( p<0.05)。【考察】本研究では回転負荷をかけ閉眼で計測を行ったことから、平衡機能の中でも前庭感覚が乱れることで揺れが大きく誘発されたと考えられる。また、揺れの大きい被験者において、片側内耳点のみの刺激で揺れが減少した為、患側内耳点刺激が平衡機能の回復を促したと考えられる。今後、内耳点以外の刺激群と比較検討することが課題である。【結論】患側内耳点のローラー鍼刺激が、前庭機能障害を改善し、めまい治療に対し有効である可能性が示唆された。 キーワード:めまい、平衡感覚、ジャイロセンサ、ローラー鍼、反応点治療 013 -Sat-P1-16:24 突発性難聴に対する鍼治療の症例集積 埼玉医科大学東洋医学科 井畑真太朗、山口智、堀部豪、村橋昌樹、 小内愛 【背景】突発性難聴は原因不明の急性感音性難聴である。治療法では副腎皮質ステロイドホルモン薬や代謝・循環改善薬、高圧酸素療法が実施されているが、全ての治療法の効果の立証が不十分である。米国の治療ガイドラインでも薬物療法や高圧酸素治療はオプションとなっており、現在確立した治療法がない。【目的】本研究は発症後 3ヶ月以内に他科より紹介があった突発性難聴患者の鍼治療効果の実態を調査し、鍼治療の効果を明らかにする。【方法】セッテイングは大学病院、研究デザインは記述的研究、研究期間は 2010年1月〜 2022年12月、組み入れ基準は発症後 3ヶ月以内に当科で鍼治療を開始した18歳以上 80歳以下の突発性難聴患者 ,除外基準は経過を追えない患者とした。評価は聴力回復の判定基準に従っておこなった。鍼治療方針は内耳の血流改善と頸肩部筋群緊張緩和を目的とし、鍼治療部位は左右天柱( BL10)、風池( GB20)、肩井( GB21)、翳風(TE17)を基本穴とした。使用鍼はセイリン社製 40 mm16号ディスポーザブル鍼を用いて、置鍼 10分とした。本研究は埼玉医科大学病院 IRB委員会の承認を得て実施した(申請番号:病 2022-093)。【結果】対象となった患者は 11例(男性 7例、女性 4例)、年齢 Median: 49(IQR: 41.5〜53)歳、発症から鍼治療開始までの期間 44(22〜53)日であった。重症度は、 Grade2: 2例、 Grade3: 3例、 Grade4: 6例、鍼治療初診時の患側聴力は 94(53〜104)dB、鍼治療終診時は 69(44〜90)dB、聴力回復の判定基準に沿って判定すると、著名回復 3例、回復 4例、不変 4例だった。【考察・結語】今回対象となった突発性難聴患者は 40代〜 50代の難治性難聴患者が多く、また発症約 1ヶ月後より鍼治療を開始した症例が大半を占めた。このような症例に対し、標準治療に鍼治療を追加することで、聴力回復判定基準の回復以上の症例が 2/3以上に認められた。このことは突発性難聴患者に対する鍼治療は耳鼻科領域においても、有用が高い可能性が示唆された。 キーワード:突発性難聴、鍼治療、症例集積 014 -Sat-P1-16:36 耳鳴に対する鍼灸治療で耳鳴質問票(THI)のスコアが改善した1症例 関西医療大学保健医療学部 はり灸・スポーツトレーナー学科  坂口俊二 【目的】耳鳴への鍼灸治療効果を日本語版 Tinnitus Handicap Inventory(THI)を用いて評価し、そのスコアと関連諸症状の改善がみられた 1症例を報告する。【症例】 87歳女性。主訴は耳鳴(右>左)がひどく眠れない。愁訴は頸肩部のこり感、足部の冷えである。[現病歴]耳鳴は X-20年前より自覚し、 X-1年1月頃からストレスの蓄積に伴い、耳鳴音が徐々に大きくなり、それを気にするためか眠りが浅くなった。頓服としてデパス錠が処方されていた。 92歳のご主人との二人暮らしだが、まだ老人ホームには入りたくないし、デパス錠も可能な限り服用したくない、年齢的には難しいかもしれないが、鍼灸治療で耳鳴が軽減しないかとの思いで来所に至った。[所見・評価]指こすり合わせ音、 Rinne testとも聴こえない。耳鳴はモーター音、換気扇の様な音で、音色や大きさがかわることがある。耳鳴の大きさは中くらい、持続はいつも、気になり方は気になって仕事が手につかない。頸から肩甲上部の筋緊張が顕著で、東洋医学的には結代脈、舌質暗紅、辺縁に血斑、少腹硬、臍下軟である。足部の冷えおよび皮膚温低下が顕著である。身長 150cm、体重 38kgである。【治療・経過】駆血を目的とした本治法と頭頸部の圧痛への鍼灸治療を行い、初診時と以後、治療 5回毎にTHIを聴き取りで効果を評価した。 20回の治療で THI(点)は 88 66 56 48 44と軽減し、スコア減少が鈍化した 19回目以降、院内紹介にて当帰芍薬散の服用を開始し、現在も継続中である。 11回目の治療以降はデパス錠の服用を中止しても眠れるようになった。耳鳴の大きさは小さい、持続はいつも、気になり方について仕事中は忘れている。【考察】患者の耳鳴に対する考え方に寄り添いながら、駆血の治療と、頭頸部の圧痛に対する局所治療を行うことが耳鳴に関連する諸症状の改善に繋がったものと考える。【結語】適切な鍼灸治療は耳鳴患者の QOLを改善させることが示唆された。 キーワード:耳鳴、鍼灸治療、耳鳴質問票(THI)、オ血 015 -Sat-P2-11:00 コロナ禍における鍼灸施術の状況に関する調査 パンデミック下での感染対策の状況 (公社)全日本鍼灸学会臨床情報部安全性委員会 恒松美香子、菅原正秋、新原寿志、上原明仁菊池勇哉、高野道代、田口太郎、冨田賢一仲村正子、福世泰史、福田晋平、宮脇太朗森田智、古瀬暢達、山崎寿也、山下仁 【背景】今後の感染対策の基礎資料を作成することを目的に、新型コロナウイルス感染症パンデミック下での鍼灸治療院の感染対策の状況を明らかにする。【方法】(公社)全日本鍼灸マッサージ師会、(公社)日本鍼灸師会、(公社)全日本鍼灸学会の各会員に電子メールで Google formを利用したアンケートへの回答を依頼した。質問内容はパンデミックの期間中(2020年初頭から 2022年末くらいまで)の新型コロナウイルス感染対策とした。【結果】 328名から有効な回答を得た。感染対策の情報源は、厚生労働省(277名)、職能団体のガイドライン(191名)などが挙げられた。感染対策として、320名( 97.6%)は換気対策を行っていた。 320名(97.6%)は施術所内ではマスクを着用していた一方、患者へのマスク着用を求めていたのは 220名(69.8%)にとどまった。 227名(69.2%)はフェイスシールドを使用しておらず、その理由としては、必要を感じなかった(166名)、コミュニケーションの問題(58名)などが挙げられた。 284名(86.6%)は患者同士が密にならない措置をとっており、その方法としては、患者数の調整(187名)、待合室で患者同士が距離を空けて座る(82名)などが挙げられた。 141名(42.7%)は手洗いをより頻繁に行うようになり、頻度が減った者はいなかった。 214名(65.2%)は手指消毒をより頻繁に行うようになった。 216名(65.8%)は施術時にグローブを使用せず、その理由としては施術操作に影響が出る(134名)、必要を感じなかった(127名)などが挙げられた。【考察・結語】多くの鍼灸師は信頼がおける情報源を参考にして、その内容に従った必要な感染対策を行っていたことがうかがわれた。今後、感染対策に対する正しい意識を鍼灸師が共有するためのシステムも必要であると考えられる。 キーワード:新型コロナウイルス、パンデミック、感染対策、衛生操作、鍼灸施術 016 -Sat-P2-11:12 新型コロナウイルス罹患後症状の咳に対する鍼の一症例喘息日誌による評価 1)常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 2)とこは鍼灸接骨院 関 真亮 1,2)、福世泰史 1,2) 【はじめに】過去、新型コロナウイルス感染症罹患後の咳に対する鍼治療の有効性を報告したが、自然軽快の可能性も否定できなかった。そこで今回、介入期間に改善後、無治療期間に増悪した症例を得たため報告する。【症例】 20歳女性。主訴:咳嗽。[現病歴] 2023年3月 X日39℃の発熱があり、医療機関を受診したところ、新型コロナウイルス感染が確認された。その後も痰がからみ、咳発作が数分間隔で続くため、 X+30日に鍼治療を受診した。なお、医療機関での治療、自己判断での服薬はなかった。【評価】喘息日誌にておこなった。施術前 5日間の朝昼夕夜合計 20回「強い」「弱い」「なし」に記入した回数を評価した。介入:左右合谷穴の毫鍼(セイリン社製ステンレス針、 15mm×0.10mm)、孔最穴と太渓への鍼(銀)、肺兪穴から脾兪穴までの硬結に対して鋒鍼(銀)での施術を加えた。施術頻度は週 1回、 1回の施術時間は 20分程度とした。【経過】介入前は「強い」 13ポイント、「弱い」 7ポイント、「なし」 0ポイントであったが、介入 1〜3回後に「強い」は 740ポイントと漸減した。「弱い」は 13 16 4ポイント、「なし」は 0 0 0 16ポイントと改善した。そこで 4回目( X+58日)の介入後に中断した結果、 X +60日頃から咳が再び現れ始めた(夕夜で「強い」、朝昼で「弱い」)ため、 X+62日に鍼による介入を 1回実施。「強い」 4ポイント、「弱い」 16ポイントに改善した。その後に咳は消失し、現在まで再発はみられなかった。【考察】介入中断後に症状が再発したことから鍼には何らかの効果があったことが示唆される。本症例においてコロナ罹患後の咳の発症メカニズムは確定していないため、鍼がどのような機序で影響を及ぼしたか不明である。しかし、咳喘息の原因として気道の炎症が考えられているため、鍼が気道炎症に効果がある可能性も示唆される。【結語】コロナ罹患後の咳に対して鍼が有効である可能性が示唆された。 キーワード:鍼治療、新型コロナウイルス、コロナ罹患後症状、後遺症、咳 017 -Sat-P2-11:24 知的障害者家族の心身変化にあはき師が継続的に関わった一症例コロナ渦における介護負担増によるうつ症状 1)ここちめいど 2)治療院テラ 3)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 4)はりきゅう処ここちめいど 飯田通容 1,2)、金子聡一郎 1,3)、米倉まな 1,4) 【目的】近年、知的障害や精神疾患などの患者を医療費増や人権擁護の観点から地域で過ごさせる傾向にある。そのため、介護を担う家族が日中のみならず夜間や休日さらに緊急時と常に心身の負担を強いられ、疲弊してしまうケースが見られる。今回、重度自閉症の息子の見守りケアに加え感染症蔓延の影響でうつ症状を発症した患者に対し、継続的に介入することにより医療施設受診やフレイル予防などにつなげられた症例を経験したので報告する。【症例】[主訴]易疲労性・興味の消失・食欲不振・体力低下、 70歳、女性、自営業、身長 154cm。[現病歴]重度自閉症の次男( 40代)と二人暮らし。作業所への送迎や自宅での見守り介護を担っている。近所に長男家族在住。 X-18年より腰背部痛で来院。 X年8月、本人は自覚していなかったが、つらさや怒りの感情ばかりを話すようになり、興味消失なども出現したことから心療内科の受診を勧めるも拒否、当院で可能な対策の開始となった。[所見症状]脈:沈細微弱、随伴症状:下腿冷え、不安、肩背部はり感、家族歴:糖尿病。【施術】弁証:脾腎陽虚、施術:鍼灸、指圧。【経過】週に 1回程度の施術を継続、心療内科の受診は拒否されたが糖尿病の家族歴をきっかけに X年10月近医内科受診を提案し糖尿病治療を開始。易疲労、興味消失、体力低下は残存、当院にて室内運動指導を行うと同時に家族に栄養面の協力を相談、家族と相談のうえ X+1年6月に心療内科予約を行い同年 8月にうつ病と診断、加療開始。その後は、当院、内科および心療内科における加療を継続し当院イベント、孫の発表会、一泊旅行など行えるまで改善、気力体力も回復し減薬となった。【考察および結語】障害者の介護を担う家族は心身ともに大きな負担を強いられる。精神的に追い詰められた介護者に寄り添い支える手段が重要と考えられる。本症例では介護家族の心身の変化を継続的に観察介入することで専門医受診、症状の改善、体力回復への一助になったと考えられた。 キーワード:知的障害者家族、介護負担、コロナ渦、フレイル予防、うつ病 018 -Sat-P2-11:36 コロナ禍が特別支援学校理療科臨床実習受療者の実態に及ぼす影響 1)筑波大学人間系(理療科教員養成施設) 2)筑波大学附属視覚特別支援学校 工藤 滋1)、前田智洋 2)、村田 愛2) 【目的】視覚障害者を対象とする全国の理療関係学科設置校・施設では、コロナ禍による外来受療者の減少という状況下でも、臨床実習を継続していくために、学内教職員を対象とする施術を実施してきた。しかし、これまでにコロナ禍による受療者の実態の変化についての調査は行われていない。そこで生徒が体験不足となる点を明らかにすることを目的に調査を実施した。【方法】 2018〜2021年度の筑波大学附属視覚特別支援学校臨床実習室ののべ受療者 3477人を対象に、基本属性、主訴、施術方法を集計し、コロナ禍前 2年間とコロナ禍 2年間の合計数を比較した。統計分析について、 2項間の比較には正確二項検定、 2水準の比較には Fisherの正確検定を用いた。【結果】受療者数及びのべ受療者総数は、コロナ禍前が257人、 2889人、コロナ禍が 145人、 587人で、いずれもコロナ禍の人数が有意に少なかった( p=.0000,両側検定)。基本属性では、コロナ禍において外来受療者、女性、高齢者の割合が有意に低かった(p=.0000,両側検定)。また、主訴の上位 3つについて、のべ受療者総数に占める比率を比較したところ、腰痛(p=.0011,両側検定)、上肢・下肢の筋肉障害・運動障害(p=.0017,両側検定)がコロナ禍において有意に少なかったのに対して、肩こりは有意差が認められなかった(p=.5425,両側検定)。【考察】臨床実習の受療者の減少は、コロナ禍による影響と考えられた。基本属性の変化は、学内受療者の増加によるものと考えられた。また、主訴において肩こりが相対的に増加したのは、テレワークの影響が関係した可能性が示唆された。【結語】外来受療者の減少による臨床実習の体験不足を補うためには来療機会の少ない属性の受療者を、各生徒に偏りなく担当させるための予約管理が必要であると考えられた。 キーワード:視覚障害、新型コロナ、鍼灸、臨床実習、実態調査 019 -Sat-P2-11:48 教育機関のはりきゅう治療室におけるコロナ禍前後の患者の変化コロナ禍前と5類感染症移行後の比較 筑波大学理療科教員養成施設 沖中美世乃、恒松隆太郎、工藤滋、濱田淳、 徳竹忠司、和田恒彦 【目的】筑波大学理療科教員養成施設はりきゅう治療室は、教員養成課程および卒後教育の臨床実習として運営している。大学休校に伴い 2020年4〜6月臨時休診、 2020年7〜8月一部再開(休診前の予約者限定)、2020年9月新規患者受付再開(ベッドを半数に限定)、2021年4月通常のベッド利用再開、 2021年4月末〜6月末 2回目臨時休診、その後は行動記録等の感染対策下で開設という対応とし、5類感染症移行後、通常運営に復旧した。本研究ではコロナ禍直前と 5類感染症移行後を比較し患者の変化を検討する。【方法】受付会計システムの 2011-2023年の患者来療記録 2,529人59,011件から、来療件数、初診患者数、患者の来療頻度、継続日数を集計し、コロナ禍直前(2019年)と 5類感染症移行後( 2023年)の 6月〜 12月のデータを比較した。【結果】毎月の来療件数は、 2019年: 405.3±36.8件(新患14.0±2.8人) /月、 2023年: 277±53.7件(新患 8.2 ±3.1人) /月であり、来療件数、新規患者ともに 2023年は有意に少なかった( p=0.000,0.007, Wilcoxon signed rank test)。各患者の来療頻度の中央値(四分位範囲)は、 2019年: 2.2(1-3)回 /月、 2023年: 2.1(1-3)回 /月で有意に減少( p=0.017)、継続日数の中央値(四分位範囲)は、 2019年: 1,086(143-2,034)日、 2023年: 1,256日( 119-1,924)日で有意差はなかった(p=0.831, Mann-Whitney U test)。2011〜2019年は、来療件数は平均 446.2±120.1件(新患 15.0±6.7人)であったが、 1回目の臨時休診後の 2020年7月は 109件(新患 0人)、その後漸増し 2020年12月に 262件(新患 8人)、2021〜2023年は平均 279.8±48.1件(新患 8.0±2.9人)で推移している。【考察】 2020年4月〜 6月の臨時休診を機に、新規患者数の減少及び来療頻度が減少している。コロナ禍前から長期休診後も継続した患者は、継続期間の長さとの関連はなかったと考えられる。【結語】コロナ禍直前と比較し、来療患者は有意に減少した状態が定常化している。 キーワード:コロナ禍、鍼灸治療、教育機関、患者数 020 -Sat-P2-14:00 『黄帝内経素問』(水熱穴篇第六十一)における四肢の治療古典文献を臨床に活かす 1)(学)花田学園日本鍼灸理療専門学校 2)(一財)東洋医学研究所 3)天地人治療会 木戸正雄 1)、光澤 弘1,2,3)、水上祥典 1,2,3)、 東垣貴宏 1,2,3)、武藤厚子 1,2,3) 【目的】経絡系統治療システム( VAMFIT)では、四肢は三陰三陽の支配領域が明確であるため、愁訴部位を支配する経絡上に治療穴を求めることが多い。その根拠の一つと考えているのが『黄帝内経素問』(水熱穴篇第六十一)における四肢治療である。今回、この篇の記載について新たな視点から解釈を試み、興味深い結果を得たので報告する。【方法】現存書中、最善本の一つとされている日本内経医学会影印本『重廣補注黄帝内経素問(四部叢刊子部)』を底本とし、水熱穴篇についての臨床意義を明らかにするために、その記述内容を検討する。【結果】四肢治療について、「熱病を治する五十九兪を言えり……(中略)……雲門・グウ骨・委中・髄空,此の八者は,以て四支の熱を寫するなり」とある。王冰注に、グウ骨は肩グウ穴、髄空は腰兪穴のこととある。『鍼灸甲乙経』にも腰兪穴の別名に髄空を挙げている。しかし、「此の八者」とあることから、髄空も左右になければならない。それを裏付けるように、『素問』(骨空論篇)のいう髄空とは髄や骨の隙間や切れ目にあるツボを指し、張景岳の『素問』(繆刺論篇)註や『鍼灸大成』の『素問』(刺腰痛篇)解説では、腰兪を下リョウ穴のこととしている。【考察】『素問』水熱穴論篇が提示しているのは、上肢の愁訴には雲門・肩グウ、下肢の愁訴には委中・髄空を取ることである。つまり、指示された施術穴は、上肢では前面(肺経・大腸経)の愁訴、下肢では後面(腎経・膀胱経)の愁訴のみである。古典の記載はすべてを提示しているものではないとするならば、この前面を支配する陽明・太陰、後面を支配する太陽・少陰以外にも、手足の三陰三陽の領域分割から治療原則を適応することで治療システムが完成すると考えられる。【結語】『黄帝内経素問』(水熱穴篇第六十一)記載の四肢治療は三陰三陽の領域分割になっているという原則が運用されているものであると解釈できた。 キーワード:経絡系統治療システム、VAMFIT、黄帝内経素問(水熱穴篇第六十一)、髄空、腰兪 021 -Sat-P2-14:12 東洋医学と中医学の概論書記載の病証と系譜 日中教科書の伝承過程と記載内容 日本鍼灸研究会 大分医学技術専門学校鍼灸師科 木場由衣登 【目的】東洋医学概論の教科書には、中医学の臟腑病証が記載されるが、戦前から国家試験施行以前までの教科書に今の様な臓腑病証は記載されていない。また戦後も日中共に教科書毎に記載が異なる。今回の調査では、教科書の系譜を調査し、現在の病証の淵源とその変遷を明らかにする。【方法】日中の教科書と概論書を収集し、次の( 1)〜( 8)に分類し、内容を比較した。【結果】中国の( 1)教材統一の会議以前にも教科書(『中医学概論』 1958他)が幾つか存在し、日本にも影響を与えている。 1959年「編瀉中医教材計画」会議以降、(2)統一教科書(『内経講義』『中医診断学講義』 1959・1964、『中医学基礎』『中医診断学』 1974・1978、『中医基礎理論』等 1984以降)は幾度も刊行され、日本で翻訳された。(3)戦前の教科書には東洋医学概論に相当する病証は存在せず、戦後の日本には(4)漢方の概論書、(5)国家試験施行前の教科書(1958〜1967滝野憲照『東洋医学概論(鍼灸篇)』他、『漢方概論 AB全』 1966、城戸勝康『東洋医学概論』 1995、森秀太郎他『漢方概論』 1964他)、(6)国試施行後の教科書( 1992・1993『東洋医学概論』、『新版東洋医学概論』 2015)、(7)中医学の翻訳書(『中国漢方医学概論』 1965、『中医学基礎』 1977、『全訳中医基礎理論』 2000等)、(8)日本の中医学書(『中医学入門』 1981、『わかる中医学入門』 1995、『鍼灸学[基礎編]』 1991等)が存在する。【考察】南京中医学院『中医学概論』の寒熱虚実の臓腑病証は、 70年代に日本で流布するが、今の教科書に継承されていない。現在知られる中医学の臟腑病証は広州『中医診断学』 1964に原形が見られ、『中医学基礎』 1974には補完された病証が記載される。この中医学の病証が、 1992年以降、日本の教科書の主要な病証となる。【結語】東洋医学概論の病証は中医学に依拠しているが、日本鍼灸のこれまでの要素を継承し、独自の病証学を構築する必要があるのではないか。 キーワード:東洋医学概論、中医学、漢方概論、教科書、臓腑病証 022 -Sat-P2-14:24 日本の鍼灸臨床に即した十二経脈病証の確立のための調査研究経脈病証における採用症状の再検討 1)明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学講座 2)経絡研究会 3)九州看護福祉大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 和辻直1,2)、篠原昭二 2,3)、内田匠治 2,3)、 斎藤宗則 2) 【緒言】国際疾病分類第 11版第 26章の経脈病証は、 『霊枢』経脈篇の要約であり、現在の鍼灸臨床と相違があるとされている。そこで臨床に即した経脈病証を構築するために、十二経脈病証の個々の症状における出現頻度を経絡治療学会と日本伝統鍼灸学会の会員に調査した。その結果、経脈病証の症状の採用数は 476症状中 119症状(25%)で、経脈によって採用症状数が異なっていた。そこで、前回調査の結果を基に経脈病証の採用症状を再検討した。【方法】対象は本調査に同意を得た日本伝統鍼灸学会理事、評議員、賛助会員 20団体とした。調査票を用いて対象の年齢や臨床歴、鍼灸診療方式などを尋ねた。また鍼灸臨床で各経脈病証の症状の必要性について、前回調査の結果で得た出現頻度 3点以上の症状が不要か否か、 3点未満の症状が必要であるか否かを判断して、採用症状を選出した。また追加の症状も尋ねた。【結果】全回答者は 43名(平均年齢 54歳)、臨床歴は平均 26年であった。鍼灸診療方式は経絡治療 24名、中医針灸 1名、現代的鍼灸 1名、東西折衷 9名、他 7名、記載なし 1名であった。前回調査の結果で採用となった経脈病証の症状数 119症状に対して対象の過半数 22名以上が不採用とした症状はなかった。前回調査で不採用とした 357症状中、対象の過半数が採用と回答した症状は、肺経 7症状、胃経 6症状、腎経 5症状、心包経 4症状、脾経・膀胱経・胆経の各 3症状など、計 35症状であった。【考察・結語】現在の経脈病証は『霊枢』経脈篇が基となっている。前回調査の結果と同様に各経脈の採用症状数に違いがあり、平均 12.8症状、最多が胃経 21症状、最少が前回調査 0症状であった心包経が 4症状であった。採用症状が平均を超える経脈は肝経( 11症状)以外の足の経脈、逆に採用症状が平均を下回るのは肺経 (20症状)以外の手の経脈であり、経脈流注の長さが採用数に影響を与えた要因の一つと考えられる。 キーワード:国際疾病分類第11版、経脈病証、『霊枢』 経脈篇、鍼灸臨床、採用症状 023 -Sat-P2-14:36 経絡治療の創成時期について 日本鍼灸研究会 中川俊之 【目的】経絡治療は日本戦前期、岡部素道、井上恵理、本間祥白、竹山晋一郎らが構築した鍼灸治療の体系である。診察、選経選穴、施術が一貫する体系と、 80年以上の蓄積は他に類をみない。ただ、創成時期については、 1930年代から戦後まで諸説がある。戦前の雑誌資料などから創成時期の検討を行う。【方法】経絡治療誕生の場となった戦前雑誌『東邦医学』、『医道の日本』、戦前の経絡治療関連書籍を調査した。【結果】創成時期について・・ 1940年以前、岡部、井上らの治験例に〈脈診中心の経絡虚実證〉という方針は曖昧である。この方針が明確となるのは、 1940年の岡部「臨床時に於ける脈診と経絡の関係に就て」(7月講演、11月『東邦医学』収録)以降である。1941年7月の第5回東邦医学講習会では「経絡的治療」(未だ「経絡治療」の名ではない)を冠する発表が4題認められる。 1941年12月の『鍼灸論文集第一輯』(医道の日本社)では、本間により経絡虚実證(十二経を五行分類)が示される。さらに、1942年4月、『東邦医学』の「経絡治療治験」にて「肺経虚證」など陰経虚證が基本證となり、経絡治療の基本姿勢が確立した。さらに、1944年3月の『東邦医学』休刊まで、證決定法(陰陽虚実證)、本治と標治の定義、戦後の井上、本間による素質・内外因の整備(1946〜49)がなされた。治療の名称・・戦前資料では、「経絡治療」以前に「古典的治療」や「経絡的治療」の呼称がある。「経絡治療」は、1941年10月の竹山「経絡治療叢書翻刻刊行の辞」(『経絡治療叢書』・壬生書院)から正式名称となった。また、「六部定位脈診」の名称は、1942年1月の岡部「経絡治療に於ける切診による補瀉に就て(一)」(『東邦医学』第9巻第1号)を初出とする。【考察・結語】 1941年10月に「経絡治療」呼称、同年 12月に経絡虚実證(五行経虚実證)が確立。1942年4月に陰経虚證が基本證となり、経絡治療の基本姿勢が確立したと考えられる。 キーワード:経絡治療、脈診、鍼灸 024 -Sat-P2-14:48 皮膚色と五臓、五味、五志との関連についてのパイロットスタディ 東京医療福祉専門学校教員養成科 仙田昌子、間下智浩、大内晃一 【目的】東洋医学では、顔面診や尺膚(以下、腕)の色を主観的に把握(五色)し、五味や情志を問い、五臓の変化を判断する方法がある。本研究では、皮膚色を客観的に評価し、五臓・五味・情志との関係について調査した。【方法】五行色体表の学習経験者 54名に五臓スコアと五味(酸・苦・甘・辛・鹹)、情志(怒・喜・思・悲・驚)をリッカート尺度にて質問した。さらに、分光測色計 CM-700d(コニカミノルタ社製)を用い、左右の頬(耳珠と下顎を結ぶ線上の中点)と腕(前腕前面横紋と内側上顆を結ぶ線上の中点)にて、明度( L*:+白)、色度( a*:+赤・ b*:+黄)を測定し、彩度( C*)を算出した。検定はスピアマンの順位相関係数検定 (以下、rs省略)を用いた。【結果】頬と腕の皮膚色に正の相関を認めた( L*0.59 8,a*0.494,b*0.580,C*0.553)。また、脾のみに頬と腕の L*にやや正の相関(頬 0.357,腕0.369)、a*・b*・C*にやや負の相関(頬 a*-0.290, b*-0.334,C*-0.400/腕a*-0.4 02,b*-0.263 ,C*-0.380)を認めた。五味と五志については、頬と腕の双方に相関を認めるものはなかった。【考察】頬と腕に相関を認めたことは先行研究に一致し、彩度にも相関を認めたことより、望診は尺膚でも可能であることが示された。また、脾のスコアが高値な者は、赤・黄・彩度が低下し L*値が増加したことより、皮膚はくすみ、淡く血色が低下した色を示しており、脾の病理所見である顔面萎黄(やつれて血色の悪い状態)の根拠となる可能性が示唆された。一方、味覚や情志に関連性を認めなかったことは、食事内容の詳細な調査や感情を他のスケールを用いて検討する必要がある。【結論】皮膚色の客観的評価と脾の五臓スコアとに関連性を認めたが、他の五臓・五味・情志には関連がなかった。 キーワード:皮膚色、 L*a*b*、五臓スコア、望診、五行色体表 025 -Sat-P2-15:00 腎兪の穴位主治条文の検討命門・志室とともに考える 1)愛媛県立中央病院鍼灸治療室 2)松山記念病院 3)森ノ宮医療大学鍼灸情報センター 大塚素子 1)、阿部里枝子 1)、山見宝1,3)、山岡傳一郎 1,2) 【目的】医心方は著者である丹羽康頼が、情報量をあらかじめ一定限度内に制限し、明堂経の主治条文を抜粋している。そのため、主治についても重要な部分を抜粋していると考えられる。復元条文を理解するにあたって、字義と康頼の優れた見識を頼りに、字義の臨床像を想像した。今回、命門、志室とともに検討することによって腎兪の理解を試みたので報告する。【方法】医心方(半井家本)、外台秘要方(宋版)、甲乙経(明抄本)を使用して復元された穴位主治条文を用い、字義、医心方を骨子とした文章の区切りをもとに命門、腎兪、志室と比較検討を行った。【結果】命門「頭痛如破身熱如火汗不出ケイショウ【千金作頭痛】寒熱汗不出悪寒裏急腰腹相引痛。」腎兪「腰痛。熱痙。寒熱食多身羸痩両脇難引痛心下シン痛心如懸下引臍少腹急痛熱面黒目ボウボウ久喘ガイ少気溺苦赤。頭痛足寒洞洩食不化。骨寒熱便難。腎脹者。」志室「腰痛脊急脇下満少腹中堅急也。」(下線は医心方の文字)【考察】命門、志室の条文に、腰腹部の痛みとともに裏急、少腹中堅という文字がある。金匱要略・血痺虚労病脈証並治篇では「虚労裏急。悸。衂。腹中痛。夢失精。四肢酸疼。手足煩熱。咽乾口燥。小建中湯主之。」「虚労腰痛。少腹拘急。小便不利者。八味腎気丸主之。」とあり、ともに虚労があると想像した。また虚労は腎虚を含み、大病後や産後、また症状が慢性化し虚が長引いている状態であり、腎兪の腰痛も虚労と考えると、他の症状は腎虚にともない脾や心や肺といった他の臓腑へ影響をしている状態とイメージすることができるのではないかと考える。【結語】腎兪の主治条文を医心方を骨子とし、命門、志室とともに検討することで広い視野でとらえ、イメージをつかむことで臨床につながっていくのではないかと考える。 キーワード:穴位主治条文、命門、腎兪、志室 026 -Sat-P2-15:12 穴位主治条文による上部督脈の検討−神経症に対する至陽の主治- 1)愛媛県立中央病院鍼灸治療室 2)森ノ宮医療大学鍼灸情報センター 3)松山記念病院 阿部里枝子 1)、大塚素子 1)、山見宝1,2)、山岡傳一郎 1,3) 【目的】深谷伊三郎は、神経症は素質のものに発症条件が加わった時に発症すると解釈して、神経症に対する灸療の臨床的研究を行なっている。その中で、上部督脈(身柱、神道、霊台、至陽、筋縮)の有効性が報告されている。今回、医心方を骨子として復元した明堂経の穴位主治条文から上部督脈の穴位について若干の考察を行ったので報告する。【方法】医心方を骨子とし甲乙経・外台秘要方を用いて復元された穴位主治条文を用いた。医心方は半井家本、鍼灸甲乙経は明抄本、外台秘要方は宋版を使用した。【結果】霊台は記載がない為省いた。復元した条文では、身柱は錯乱・幻覚・気が狂っている等の中枢性と思える精神の症状、神道は悲愁恍惚という精神症状とともに肩や腹・背中など身体の症状、至陽は体がひどく痛み重く呼吸も浅いという身体の症状、筋縮はヒステリー発作様の精神症状について書かれていた。【考察】 4つの穴のうち至陽には精神症状の記載がなかった。しかしながら条文からは身体の重篤な状態がうかがえる。至陽は部位として、天と地を分けるといわれ、気血が滞りやすい膈に近い場所にある。そして、至陽以外の 3穴が皆精神症状を主治として持っているので、その中にある至陽も精神症状の主治を含んでいると推察される。神経症は精神症状が多いが身体症状があるものもあり、至陽も神経症の一つとして条文を読むと、神経症の中でも特に身体症状が重篤になっている状態を強調していると考えられる。また、上部督脈5穴という組み合わせが、精神症状があるものからその強いものまで、身体症状があるものからその重篤なものまで網羅されている組み合わせになっていると考えた。【結語】深谷伊三郎の神経症の治療を参考に上部督脈の穴位主治条文を考察した。文字の羅列である主治条文が、臨床で使える主治条文として理解が深まった。 キーワード:穴位主治条文、督脈、至陽 027 -Sat-P2-15:24 エビデンスに基づく少沢(SI1)の主治症の検討 1)熊本針灸小雀斎 2)つくば国際鍼灸研究所 3)天津中医薬大学針灸標準化研究所 渡邉大祐 1,2,3) 【緒言】一部の鍼灸・経穴専門書には経穴の主治症の記載が散見されるが、国内外には経穴の主治症に関する標準は存在しない。本研究では、システマティックレビューの手法を応用した EBMの考えに基づいた方法を切り口に、現有エビデンスを根拠とした少沢(SI1)の主治症を検討する。【方法】少沢(SI1)単穴使用での現代文献(臨床研究報告)や古代文献中の少沢(SI1)の単穴主治記載を収集する。現代文献は、“少沢” or“SI1”and“臨床” or“治療”などの検索式をデータベース(日・中・英語)にて検索を行う。古代文献は『中国鍼灸穴位通鑑』より、少沢( SI1)の主治病症に関する内容を検索した。評価対象の確定のため、現代文献には、単穴使用での臨床研究報告で、鍼灸あマ指の関連療法を使用していることを選択基準とし、各データベースで重複した文献を除外基準と定めた。古代文献には、単穴使用の主治症であることを選択基準とし、明らかに先人の記載を写した内容を除外基準と定めた。評価対象を『中医循証臨床実践指南 -針灸 -(中医臨床ガイドライン -鍼灸 -)』の評価基準に基づきエビデンスレベル評価を行い、推奨グレード評価基準を用いて方案(主治症)を ABCの三段階に評価し、主治症を形成する。【結果】現代文献では、検出した論文から、タイトルと全文を閲読し、選択・除外基準に従いスクリーニングを進め、最終的に 11篇の現代文献( RCT5篇、症例シリーズ 4篇、症例報告 2篇)を採用した。古代文献では、全文を閲読し、選択・除外基準に従いスクリーニングを進め、最終的に 23条の文献を採用した。評価基準に従い 1種の推奨(グレード A)主治症「乳汁分泌不全」を形成した。【考察・結語】現有エビデンスから、少沢(SI1)には乳汁分泌不全に対する治療効果を有する可能性が高いことが明らかとなったが、今後、少沢( SI1)単穴使用での臨床報告が増えることで、主治症の範囲が広がることが示唆される。 キーワード:少沢、 SI1、主治、システマティックレビュー 028 -Sat-P2-15:36 テキストマイニングによる『明堂経』主治と経脈病証分析の試み 1)九州看護福祉大学看護福祉学部 鍼灸スポーツ学科 2)経絡(月兪)穴研究会 3)明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科 内田匠治 1,2)、篠原昭二 1,2)、和辻直2,3)、 斉藤宗則 2) 【目的】『霊枢』経脈篇の経脈病証とは別に、経穴の主治を中心に編纂された『明堂経』があり、復元作業がなされいくつか出版されている。そこで今回、経穴の主治を臓腑経脈ごとに集めることによって傾向をさぐり、それらと『霊枢』経脈篇に由来する経脈病証との比較を試みた。【方法】 12経の要穴(井、榮、兪、経、合、ゲキ、絡)について(黄龍祥著『黄帝明堂経輯校』の原文)+(池田政一著『経穴主治症総覧』の現代語訳)をテキストとし、ユーザーローカル社( AIテキストマイニング)ツールを使い、テキストマイニングを行った。【結果】各経脈によって条文の文字数が違うため、各経共通の「痛」「善」を除く品詞の出現頻度上位の傾向をみると、肺経は「胸」「熱」(順位順、以下同じ)といった感冒を連想させるもの、大腸経は「喉」「歯痛」「肩」といった経脈上の症状、胃経は「腹」「熱」「足」といった経脈上の症状、脾経は「腹」「心熱」「腹中」といった経脈上と消化器症状となった。心経は「熱」「心痛」「肘臂」といった経脈上と心の症状、小腸経は「肘」「肩」「項」といった経脈上の症状、膀胱経は「頭」「汗」「寒」「腰」「足」「項」「発熱」といった経脈上の症状と感冒症状、腎経は「熱」「腹」「血」「足」「心」「下腹」「小便」といった経脈上と泌尿器症状となった。心包経は「心」「熱」「胸」「肘」といった経脈上の症状、三焦経は「肩」「汗」「肘」「発熱」「悪寒」「耳」といった経脈上と感冒症状、胆経では「胸」「腫」「膝」といった経脈上の症状、肝経では「陰」「腹」「下腹」「小便」といった経脈上の症状となった。【考察】 1)経穴の主治であるにも関わらず経脈の走行部位を示す体の単語が多くある、 2)陽経において腑の症状があまりみられないなどの経脈病証との類似性があることは、『明堂経』と『霊枢』経脈篇が共通する理論系統から作成された可能性を示すものと考えられる。 キーワード:明堂経、黄帝明堂経輯校、主治条文、テキストマイニング、経脈病証 029 -Sat-P2-15:48 PCOSに対する鍼治療の1症例 1)きむら鍼灸 2)日本生殖鍼灸標準化機関 木村雅洋 1,2) 【はじめに】多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は生殖年齢の 5〜10%に発症し、月経異常や不妊の原因の 1つとなりうる。また婦人科での治療が長期にわたる方も少なくない。鍼治療と直線偏光近赤外線治療器(スーパーライザー PX:SL)を併用して PCOSを伴う挙児希望の女性に対して行った 1症例を報告する。【症例】 36歳女性主訴:挙児希望[既往歴]子宮筋腫、左卵巣奇形腫、左卵管浮腫[現病歴] X-6年結婚。夫婦生活を行うも妊娠しないので、 X-4年婦人科受診。 PCOSと診断された。タイミング指導、人工授精 5周期行うが妊娠反応陰性。 X-1年3月より体外受精にステップアップし、 X年10月まで 4回採卵(採卵数 53個、胚盤胞数 12個)、6回の胚盤胞移植を行うも、初回の移植のみ子宮外妊娠、その後は妊娠反応陰性。 X年11月、婦人科転院と同時に当院へ来院。精液所見は異常なし。【治療】鍼治療は足三里・血海・合谷・曲池・夾脊穴に置鍼、鍼通電刺激は下腿に毎回行い、採卵・移植に合わせて腹部と腰殿部、仙骨部に行った。 SLは星状神経節と風池は毎回照射し、採卵・移植に合わせて腹部や腰部にも照射した。肩こり・腰痛に対する治療も適宜行った。治療間隔は 5〜7日に 1回である。【経過】 X+1年に鍼治療 9回後に採卵(採卵数 8個、胚盤胞数 2個)した。採卵 2周期後の移植で妊娠反応陽性、その後胎嚢確認した。胎嚢確認時の治療回数は 34回。【考察・結語】 PCOSの原因は不明であるが、一つは交感神経の過剰興奮性の関与が指摘されている。これまでに鍼通電は卵巣血流量を増加させること、鍼治療は子宮血流量を増加させる、という報告がある。本症例では治療により卵巣・子宮の血流動態が改善されたことやストレス・不安が軽減されたことなどが複合的に絡み合うことで功を奏した可能性があると考えている。 キーワード:多嚢胞性卵巣症候群、近赤外線偏光治療器、鍼通電、胚盤胞 030 -Sat-P2-16:00低AMHの難治性不妊症に対する不妊鍼灸治療の1症例 1)キュアーズ長町 2)JISRAM 小松範明 1,2) 【目的】不妊症患者に対する陰部神経鍼通電及び仙骨部刺鍼の有用性は、これまで本学会において報告してきた。今回、当院に来院した低 AMHで挙児希望の難治性不妊症患者に対しても基本治療に加え陰部神経鍼通電及び仙骨部刺鍼を実施したところ良好な結果が得られたので報告する。【症例】当院初診時 41歳女性。 X-2年39歳の時に ART専門医療機関を受診したところ AMH0.31だったため直ちに ART開始となる。鍼灸開始までに 5回の採卵、 2回胚盤胞移植を行うが陰性判定のため挙児希望で鍼灸治療を開始した。【治療方法】当院の基本治療は腹診、脈診、触診より治療穴を選穴し、肩こりや腰痛、不定愁訴等の全身調整と自律神経系の調節を図る目的で鍼灸治療を実施した。これらの基本治療に加え、陰部神経鍼通電、仙骨部刺鍼を実施した。治療には太さ 0.1-0.3mm、長さ 30-90mmディスポーザブル鍼を使用した。陰部神経鍼通電の方法は、長さ 90mm、太さ 0.3mmの鍼を用いて、左右の陰部神経刺鍼点に陰部へ響くことを確認した後に低周波鍼通電療法を 5Hzで10分間行った。仙骨部刺鍼の方法は長さ 75mm,太さ 0.3mmの鍼を用いて、仙骨部に取穴し、仙骨上の靭帯を目安に刺入を行い、左右交互に徒手的刺激を合計 10分間、深部に重い得気が得られるように行った。【結果】 X年7診後、胚盤胞 1個凍結。 X+1年13診後、胚盤胞 1個凍結。 25診後に胚盤胞 2個移植するが陰性判定。 36診後の ART受診で AMH0.03に低下。 39診、 X+2年40診、 46診後にそれぞれ初期胚凍結。 53診後に胚盤胞凍結。 59診後に初期胚凍結。 X+3年68診後の 2段階胚移植で陽性判定。 75診で妊娠 12週となったため鍼灸治療終了。【考察・結語】これまで報告されてきた不妊症患者に対する陰部神経鍼通電及び仙骨部刺鍼を当院においても実施したところ、低 AMHの難治性不妊症患者においても卵巣機能が保たれ、良好胚の採卵の結果、胚盤胞移植を行えたことが妊娠に結びついたものと考えられる。 キーワード:不妊症、不妊鍼灸治療、低AMH、陰部神経鍼通電、仙骨部刺鍼 031 -Sat-P2-16:12 妊産婦の悩み対する実態調査つわりと疼痛に着目して 1)レディース鍼灸院 HIROYULARI 2)医療法人成育会なりもとレディースホスピタル 3)健康スタジオキラリ kirari鍼灸マッサージ院 高橋靜佳 1,2)、安田進太郎 2)、高橋護3) 【目的】近年、妊産婦に対する鍼灸治療が注目をされている。治療内容としてはつわりや疼痛に対してのアプローチがされている印象がある。しかし、妊産婦のニーズは様々で不明な点がまだまだ多い。そのため、妊産婦に対して鍼灸治療するうえでどこにニーズがあるかを検討するために実態調査を行った。【方法】当院と業務提携を行っているなりもとレディースホスピタルに 2023年8月〜 12月に分娩した患者 453名に対してアンケート調査を行った。回答期間は分娩当日から 7日以内の期間で回答してもらった。対象者には調査の目的を説明して上で任意で参加を募りアンケートに回答してもらった。アンケート項目として「つわりの有無」「つわりが強い時期」「つわりによる体重の減少量」「つわりによる仕事、家事を休む頻度」「疼痛が最初に出た部位」「疼痛が生じ始めた時期」「一番疼痛が強かった部位」の 7項目でアンケートを行った。【結果】有効回答数は 113名であった。つわりは 104名があった。つわりが強かった時期は、妊娠 2ヵ月目と 3ヵ月目と答えた患者が 79.5%を占めた。つわりがあった104名のうち 56名が体重の減少が生じ、平均 3.1キロであった。つわりによる仕事、家事を休む頻度は 61.6%で経験したことがある状況であった。疼痛は 101名で生じ、疼痛が最初に出た部位は 46.9%で腰が一番多かった。疼痛が生じ始めた時期は 7ヵ月目以降から増加していくことが多かった。妊娠中に一番疼痛が強かった部位も 42.4%で腰が一番多かった。【考察】今回のアンケートの結果より、悩みが多かったつわりと疼痛の症状は女性の労働状況の悪化、 QOLの低下に繋がっていることが考えられた。そのため、つわりと疼痛の症状の改善をはかる鍼灸治療はニーズが高いことが考えられた。【結語】アンケートにて妊産婦の悩みのニーズの調査をおこなった。つわり、疼痛の発症頻度は高かった。 キーワード:妊産婦、つわり、疼痛、アンケート 032 -Sat-P2-16:24 妊産婦の麻痺性イレウスにより緊急入院を要し鍼灸が著効した一例 熊本赤十字病院総合内科  三谷直哉 【目的】妊産婦では、陽熱(胃気上逆)を主体として嘔気などの消化器症状を引き起こすことが多く、本病証の治療では和胃降逆が基本である。今回、悪阻に加えて発症した妊産婦の麻痺性イレウスに対して鍼灸が著効したので報告する。【症例】 37歳女性、主訴は嘔気、心窩部痛、下腹部痛[現病歴] X年-8日、腹痛を伴わない粘血便の症状を訴え、 X年-7日に近医を受診し、直腸炎と診断された。 X年-5日には発熱があり、当院の救急外来と近医を受診し、感冒薬を処方された。 X年-2日の午前 5時頃から心窩部痛とお腹が張る痛みが生じ、当院に緊急入院となり X年鍼灸治療を開始した。[所見]手足の冷え、腹部全体拒按、腹部の冷え、腹部膨満感、顔面蒼白、声に力がない、食欲不振、唾液が口に溢れる、便秘、舌診:舌淡江・白苔、脈診:右関上沈無力、左関上無力、右尺中無力【治療・経過】治療は以下の経穴の中から適宜選択した。温陽散寒:大椎、命門、陽池(温灸器)健脾和胃:公孫、足三里、内関(ステンレス製 40ミリ 16号鍼)脾兪、中完、太白(温灸器)疏調大腸気機:上巨虚、合谷、天枢(ステンレス製 40ミリ 16号鍼)補腎:太渓、腎兪、気海(温灸器)三巡鍼法:大横、天枢、肓兪、中完、下完、水分、陰交、石門、関元(ステンレス製 40ミリ 16号鍼)初回は温陽散寒・健脾和胃・補腎・疏調大腸気機を行い、水様便が頻回に出るとともに心窩部痛が消失し嘔気も軽減した。 3回目の治療では脾腎の陽気を鼓舞するために三巡鍼法を行い水様便は止まった。 4診目以降は脾腎陽虚に対する治療を続け、下腹部痛も消失し入院から X年+ 8日、鍼治療 6回で退院となった。【考察・結語】本症例では、素体の脾腎陽虚に寒邪が侵入し大腸の気を凝滞させたことで、麻痺性イレウスを発症したと考える。温陽散寒と疏調大腸気機により大腸の伝導がはたらき、その後、脾腎の陽気を高めたことで著効した。 キーワード:妊産婦、麻痺性イレウス、入院、鍼灸治療、悪阻 033 -Sat-P2-16:36 月経不順に対する鍼灸治療の効果 服薬しても不正出血を繰り返していた一症例 1)一般社団法人 JISRAM 2)はる鍼灸治療院 田邊美晴 1,2) 【目的】月経不順は、服薬しても効果が見られず、強い副作用で日常生活に支障をきたす場合ある。今回月経不順に対して鍼灸治療を行い効果が見られた一症例を報告する。【症例】 17歳女性。ピルの副作用による眩暈、吐き気により 2年生で高校中退。初診は x年1月末、4月より専門学校へ入学予定。入学前にピルを中止し、月経不順と体調の改善をしたいと来院。[現病歴]初潮 12歳。 2週間に 1回や 1か月に 1回など月経周期は安定せず。14歳で婦人科を受診、卵巣出血との診断を受けた。ピルを服用していても出血が始まるタイミングは安定せず、月経なのか不正出血なのか不明。出血期間は約 2週間。月経痛が強く、ジクロフェナクを出血期間服用する。[評価]基礎体温表を記入してもらい、体温が二相性となるか、月経周期に変化があるか観察した。【治療・経過】治療は週1回、鍼通電、スーパーライザー(近赤外線偏光治療器)を用いて行った。低温期:陰陵泉と三陰交、水道、志室と胞肓、中りょうで鍼通電。高温期:血海と三陰交、胞肓と中りょうで鍼通電。スーパーライザーは星状神経節、腹部、臀部に照射。ピル中止の3日後より月経開始。月経1日目より強い下腹部痛と眩暈。月経2日目に治療、晩には下腹部痛なし。出血は5日程で終了。以降眩暈や頭痛消失。月経周期は 37、27、26、35、32、30日と安定し、基礎体温も二相性となっていたため治療の間隔を 2週間にあけ、その後も 31、34、34日と安定していたため治療終了。月経痛もかなり軽減された。【考察】鍼灸治療開始後、月経周期が安定し、基礎体温も二相性となっていたため、きちんと排卵をしていると考えられた。鍼灸治療はピルを服用しても月経周期が安定しなかった患者でも効果が期待でき、また月経痛の軽減、出血期間の短縮についても効果が期待できる。【結語】月経不順、月経痛に対して鍼灸治療も治療の選択肢の一つとなる可能性があるといえる。 キーワード:月経不順、月経痛、鍼灸、近赤外線 034 -Sat-P3-11:12 陳旧性顔面神経麻痺後遺症に対する鍼治療の有用性 東京女子医科大学附属東洋医学研究所  高橋海人、蛯子慶三、木村容子 【目的】陳旧性顔面神経麻痺後遺症の評価方法として、専門医より動画撮影した画像を第三者が評価する方法が報告されている。今回、動画を用いて鍼治療の経過観察を行った症例を報告する。【症例】 51歳、男性。主訴は口動作時の右眼瞼裂狭小化と顔のこわばり。[現病歴] X年Y日、右顔面神経麻痺発症。 Y+34日、 ENoG0%のため顔面神経減荷術を施行。 Y+67日、当研究所鍼灸外来を受診。順調に回復が見られたが、口動作時の右眼瞼裂狭小化と顔のこわばりが出現した。主に表情筋上の経穴へ 15分間の置鍼を行い、治療期間中は日本顔面神経学会が推奨するリハビリテーションの指導も行った。上記主訴が発症 18か月以降に鍼治療前後で変化するか後ろ向きに調査した。【評価】発症 18か月から 24か月までの間、鍼治療前後に瞼裂比と顔面部不快感の VAS(顔のこわばり・つっぱり感)を評価した。評価は概ね 4週に 1回の頻度で計 7回行った。瞼裂比は、イー(イーと歯をみせる)、ウー (口笛)、プー(頬をふくらます)の口運動時の患側の瞼裂の上下幅と、健側の瞼裂の上下幅の比を百分率で求めた。なお、瞼裂比の評価は、術者以外の日本顔面神経学会リハビリテーション技術講習会認定試験合格者が、鍼治療前後に動画撮影した画像を静止画に変換し、ピクセル単位で計測した。【結果】鍼治療前後で瞼裂比( %)の平均値は、イー :(90.4±4.0 95.6±2.7)、ウー :(86.5±3.0 88.3±9.0)、プー :(85.4±7.8 87.0±10.6)ともに増加した。また、 VAS(mm)の平均値は、こわばり :(11.1±3.8 3.1± 3.1)、つっぱり感 :(8.6±2.6 2.4±2.3)ともに減少した。【結語】動画を用いた第三者による評価法にて、陳旧性顔面神経麻痺後遺症に対する鍼治療の有用性が示唆された。今後、前向きに本方法を用いて症例を集積していきたい。 キーワード:顔面神経麻痺、鍼治療、瞼裂比、病的共同運動、こわばり 035 -Sat-P3-11:24 末梢性顔面神経麻痺の鍼治療期間後に形成外科手術に至った 1症例 1)鍼灸サロン Zouzou 2)東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 会沢いずみ 1)、林健太朗 2) 【目的】末梢性顔面神経麻痺(麻痺)患者に発症後 157日から 366日の期間鍼治療を行い、その後形成外科手術に至った症例を経験したので報告する。【方法】 43歳、女性。主訴は麻痺側顔面部の痛み・つっぱり感。 X年-157日左麻痺発症、 X年-156日近医脳神経外科でベル麻痺と診断、柳原法 10点。 X年-155日より入院加療。 X年-149日(発症後 8日) NET値左右差 2.7mA。X年-20日(発症後 137日) T病院耳鼻科受診、柳原法 12点、 Electroneurography12.27%、NET値左右差 16.4mA。X年-17日(発症後 140日) T病院リハビリテーション科受診、病的共同運動を認め、痛みを伴う中等度麻痺と診断。 X年(発症後 157日)より顔面部痛み・つっぱり感軽減を目的に 1、2週に 1回全 14回鍼治療実施。治療は 10分間温熱療法、表情筋に 30ミリ・ 12号で 15分間置鍼、表情筋揉捏法と伸長マッサージ。セルフケアは表情筋伸長マッサージ・開瞼運動・バイオフィードバック療法を指導。評価は柳原法、 Sunnybrook法病的共同運動点(病的共同運動点)、Facial Clinimetric Evaluation Scale(FS)を発症約 5・7・9・12ヶ月の治療前、顔面部不快感は Visual Analog Scale(VAS)を5・ 7・9ヶ月の治療前後に実施。【結果】柳原法(点) 12、16、20、18、非治癒。病的共同運動点(点) 7、11、11、13、FS(点) 28、26、 24、29、VAS(mm)こわばり 79→42、83→12、86 →3、つっぱり感・痛み 60→33、84→6、54→4、疲れ 4 1→38、82→7、47→3。【考察・結語】セルフケア指導を含めた鍼治療で治療直後を中心に顔面部不快感の軽減は認められたが、形成外科手術に至った。要因は麻痺残存、病的共同運動増強などによる患者の QOL低下が考えられた。 キーワード:顔面神経麻痺、ベル麻痺、後遺症、鍼治療、形成外科手術 036 -Sat-P3-11:36末梢性顔面神経麻痺に対し鍼治療併用で QOL向上に寄与できた1症例 1)鍼灸サロンハリシア 2)東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 遠藤伸代 1)、林健太朗 2) 【目的】末梢性顔面神経麻痺(麻痺)の後遺症は、患者の QOLを低下させる。今回、麻痺患者に対して発症後約 3週目より鍼治療を開始し、 QOLの向上に寄与できた症例を経験したので報告する。【症例】 57歳、女性、主訴は左顔面部の動きの少なさ。[現病歴] X年-20日、左麻痺発症。近医耳鼻科にて Bell麻痺と診断。入院でのステロイド点滴加療。 X年Y月 Z日(発症後 20日)より鍼治療開始。鍼治療初診時所見、柳原法 10点。 X年+ 2日(発症後 22日)、近医耳鼻科にてElectoroneurography値8%。【鍼治療】鍼治療は、 1〜2週に 1回の頻度を基本とし、後遺症、特に顔面拘縮の予防・軽減を目的に行った。座位にて麻痺側にホットパックを 10分間当て温め、仰臥位にて両側の側頭筋、麻痺側の前頭筋、皺眉筋、上唇挙筋、車軸点、口角下制筋、咬筋、大頬骨筋、小頬骨筋上に位置する経穴部に 15分間の置鍼、表情筋のマッサージ、ストレッチを行った。セルフケアは、筋伸張マッサージおよびストレッチ、開瞼運動、ミラーバイオフィードバック療法、触覚を用いたフィードバック、日常生活上の注意点を指導した。鍼治療は、 11か月間継続し、全 29回行った。【評価・経過】評価は、柳原法、病的共同運動、 Facial Clinimetric Evaluation Scale(以下 FS)を用いて、発症後 3週、 2・4・6・7・9・11か月時点に行った。経過は、柳原法(点) 10、30、34、36、38、40、40、病的共同運動は( -)、(-)、(+)、(+)、(++)、(++)、(++)、FS(点)は合計点 48、63、61、64、57、59、67、顔面の感覚分野 13、15、10、9、7、11、13、社会参加分野 13、18、19、19、14、14、20であった。【考察・結語】予後不良と考えられる麻痺患者に対して、定期的な鍼治療とセルフケア指導を他治療法と併用した。その結果、病的共同運動は中等度で推移したが、 FSの顔面の感覚分野や社会参加分野においては維持改善を認め、患者の QOLの向上に寄与できた可能性が示唆された。 キーワード:末梢性顔面神経麻痺、後遺症、鍼治療、セルフケア、QOL 037 -Sat-P3-11:48 Emotricsで表情筋麻痺を評価した末梢性顔面神経麻痺患者の1症例 1)埼玉医科大学東洋医学科 2)埼玉医科大学かわごえクリニック東洋医学はり外来 堀部豪1,2)、山口智1,2)、小内愛1,2)、 井畑真太朗 1,2)、村橋昌樹 1,2) 【目的】末梢性顔面神経麻痺(PFP)患者に対する評価法は柳原法や Sunnybrook Facial Grading System(SFG)が頻用されているが、検者間の評価のばらつきが指摘され課題が残ってる。今回、末梢性顔面神経麻痺患者に鍼治療の効果測定に、機械学習により作成された顔面神経麻痺評価ソフトウェアである Emotrics (Guarin et al, 2018)を活用したので報告する。【症例】 43歳女性。[主訴]右顔面神経麻痺。身長 158 cm、体重 47kg。X-8月に右眼瞼の痙攣を自覚、 X-7月に麻痺発症に気がついた。帯状疱疹や内耳神経症状は出現しなかった。同月下旬頃に近医脳神経外科受診し、頭部 MRIで異常を認めず漢方薬を処方された。 X-5月に近医耳鼻科受診しビタミン B12製剤を処方された。 X-3月中旬まで通院し、以降は通院しなかった。鍼治療を希望し X月に来院した。[既往歴]特記事項なし。 [所見]顔面神経以外の脳神経および上下肢の神経学的所見は異常なし。陳旧性 PFPであると考え、拘縮予防を目的に各表情筋に対して40ミリ16号単回使用鍼を用いた鍼治療および表情筋マッサージ指導を実施。[治療頻度]週 1回から 2週1回。【評価】柳原法(治療毎)、SFG複合点、 Emotrics瞼裂幅(原則 4週に1回)。【経過】初診時は柳原法 24点、 SFG複合点 83点、瞼裂幅は患側 11.4mm、健側 9.9mm、13診目には柳原法 26点、 SFG複合点 74点、瞼裂幅は患側 10.2mm、健側 9.8 mmだった。【考察】柳原法や SFGは間隔尺度である。陳旧性 PFP患者では麻痺の回復や後遺症が緩やかに進行するため、スコアの反応性が低いと考えられる。一方、 Emotricsは客観的かつ量的に経過を捉えることが可能であることから、鍼治療の効果判定に有用である可能性が示唆された。本研究は令和 5年度本学会関東支部学術集会で発表したものである。 キーワード:末梢性顔面神経麻痺、鍼治療、 Emotrics 038 -Sat-P3-14:00 訪問鍼灸が運動機能及びADLにおよぼす影響 1)つじい鍼灸整骨院 2)市橋クリニック 3)履正社医療スポーツ専門学校 4)健康スポーツ医科学研究所 塩田誠也 1)、武村政徳 2)、古田高征 3)、 辻田純三 4) 【背景】歩行困難や要介護者は訪問リハやデイサービスなどを利用し運動機能や ADLの維持・改善を図れるが、痛みを有することでこれらリハビリテーション (以下リハビリ)に積極的に取り組めない高齢者も数多くいる。鍼灸治療の痛みに対する効果はある程度認知されつつあり、歩行困難や要介護者も訪問鍼灸という制度を利用し痛みに対する治療を積極的に行うことでリハビリにも積極的に取り組めると考えられるが、訪問鍼灸の利用は進んでいない。【目的】通院が困難な高齢者に対して、医師の指示の下で行われる訪問鍼灸を行い、痛み・運動機能・ ADLへの影響について明らかにし、訪問鍼灸の利用促進に向けての情報を提示する。【方法】対象はインフォームドコンセントを行い同意が得られた訪問鍼灸利用者 12名( 81.7±4.9歳)とし、 6ヶ月の訪問鍼灸治療による痛み・運動機能・ ADLへの影響を評価した。主訴の痛みに関しては VASを用い、運動機能(開眼片足立ち、握力、 5回立ち上がりテスト)評価と共に 1ヶ月毎に測定した。また ADL(FIMおよび Lawton)の評価は 3ヶ月毎に測定し、それぞれ繰り返しのある分散分析を用い比較した。【結果】痛み( VAS)は介入前 67.5±26.3、介入 6ヶ月後 24.5±28.5と有意に減少した( F=9.29, p<0.01, ES f=0.919)5回立ち上がりテストは介入前 17.5±7.0秒、介入 6ヶ月後 12.2± 4.9秒と有意に改善した(F=2.45, p<0.05, ES f=0.472)開眼片足立ち、握力、 FIM、Lawtonには変化が認められなかった。【結語】鍼灸施術で痛みが減少することは本調査でも確認できた。握力に代表される筋力の向上がみられたわけではなく、また ADLの変化までは得られなかったが、立ち上がりのような単純な運動機能は改善がみられた。この結果は痛みによる運動制限が緩和されたためと考えられ、痛みでリハビリに積極的に取り組めない高齢者に訪問鍼灸を利用してもらうことはリハビリを進める上で有効な方法の一つとして推奨したい。 キーワード:訪問鍼灸、運動機能、 ADL、リハビリテーション、介護 039 -Sat-P3-14:12 舌痛症に鍼灸、漢方併用が有効だったと思われた一症例 北里大学北里研究所病院漢方鍼灸治療センター 伊東秀憲、伊藤剛、星野卓之 【目的】難治性の舌痛症と思われた諸症状に漢方・鍼灸治療が有効だった一症例を報告する。【方法】[症例] 57歳女性。[現病歴] X-6年、左下臼歯部のブリッジ治療後から舌痛を自覚した。内科、耳鼻科を受診したが異常を指摘されなかった。 X-4年に歯科医院を受診し舌痛症および舌神経障害性疼痛と診断され、三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬などの内服で舌痛は軽減傾向を示したものの副作用が心配になり内服を中止後、元の痛みに戻った。また、 X-2年頃から首こり、肩こりを右側優位に自覚した。 X年12月鍼灸および漢方治療を希望し当センターを受診した。[現症]身長 159.3cm、体重 47.1kg、BMI 18.6、血圧 128/86mmHg、脈拍 93bpm。 VAS(visual analogue scale, mm)は舌痛 80、首こり・肩こり 64だった。[漢方医学的所見]脈診は脈状診は沈・虚、脈差診は左尺脈の弱、腹診は腹力中等度以外特記すべき所見を認めなかった。[経過]緊張しやすくイライラ、不眠があり性急と考え抑肝散を処方し、首・肩こりが軽減し、夕方の神経の高ぶりが落ち着いてきた。心窩部違和感およびアイ気あり、抑肝散加陳皮半夏に転方し、不眠に竜骨・牡蛎を加味後、眠れるようになった。鍼灸は本治法の治療および標治法として承漿・キョウ承漿・外金津玉液・天突などの局所や内庭・旁谷・足三里・解渓などの遠隔部に置鍼を行った。 26週後、 VAS舌痛 7、首こり・肩こり 15になり、 49週後、 VAS舌痛 9、首こり・肩こり 6と自制内になったため終診となった。【考察・結論】舌痛症に漢方・鍼灸治療が有効だった一症例を経験した。緊張・イライラ感などメンタル面の不調と不眠に対する漢方治療と舌痛・肩こり・首こりに対する鍼灸治療を併用することでより効果を高めることができたものと思われる。 キーワード:舌痛、鍼灸、漢方 040 -Sat-P3-14:24 頭部の帯状疱疹後神経痛に対して鍼灸治療が奏功した1症例枇杷葉温圧灸療法による累積効果の検討 1)東京医療福祉専門学校教員養成科臨床専攻課程 2)東京医療福祉専門学校教員養成科教員養成課程 大内晃一 1,2)、平木小百合 2)、米山礼香 1)、 間下智浩 1,2)、仙田昌子 1,2)、橋本厳1,2) 【目的】帯状疱疹後神経痛( Postherpetic Neuralgia: PHN)に対し、低周波鍼通電療法( Electroacupuncture: EA)の後、枇杷葉温圧灸療法(枇杷灸)に切り替えたところ、著しい自覚症状の改善が見られたので報告する。[症例] 90歳、女性、 158cm/57kg[主訴]顔面部、頭部の PHN。[現病歴]初診時 X月-14ヶ月頃、帯状疱疹を発症し、医療機関で PHNと診断され、右側の後頭部、頭頂部、下顎部に神経痛が残った。プレガバリンの投薬及び星状神経節ブロック療法を数回行なったが改善が見られなかった為、症状部位に EAを実施し、その後の経過観察の後、枇杷灸を施術した。[評価]疼痛生活障害評価尺度(Pain Disability Assessment Scale: PDAS)及び、 EAの際は、 Numerical Rating Scale(NRS)と圧痛を、枇杷灸の際は、 Visual Analogue Scale(VAS)と圧痛の他、日本語版 Short-From McGill Pain Questionnaire2(SF-MPQ-2)で評価した。【結果】 PDASは0であり、周波数 10〜100Hz、15分間のEAを計 13回実施したところ毎回、施術直後に NRSは軽減傾向にあったが効果の持続性は認められなかった。その後、枇杷灸を計 8回治療後、圧痛の範囲は狭くなり、 VASは52mmから 5mmに減少傾向を示した。 SF-MPQ-2は20から 8(感情的表現スコアは 0)に軽減し、神経痛の範囲も狭まった。【考察】疼痛は SF-MPQ-2において感情的表現のスコアより心因性の可能性は低く、神経障害性疼痛と考えられる。本症例の高齢且つ三叉神経領域の症状は帯状疱疹による痛みの遷延因子である。 EAでは認められなかった自覚症状の改善における累積効果が枇杷灸では得られた為、 PHN由来の慢性痛に対する枇杷灸による改善効果が推察された。また、温熱刺激と押圧刺激を併用した枇杷灸は、圧痛のある PHNの症状に対する治療法としての有用性が示唆された。【結語】 PHN由来の慢性痛に対して枇杷灸は著しい症状改善を示した。今後、症例数を増やし更なる検討が必要である。 キーワード:帯状疱疹後神経痛( PHN)、神経障害性疼痛、枇杷葉温圧灸療法、低周波鍼通電療法、 SF-MPQ-2 041 -Sat-P3-14:36 鍼灸治療と傾聴で関節リウマチの症状改善をサポートした一症例若年性リウマチ患者に対して鍼灸が出来る事 1)ここちめいど 2)はり灸サロン月花 3)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 4)はりきゅう処ここちめいど 屋由美 1)、金子聡一郎 1,3)、米倉まな 1,4) 【はじめに】若年性リウマチ患者において治療薬マッチング、治療と仕事の両立は重要である。薬物治療と仕事の両立を図る事が困難な症例に対して鍼灸施術を継続した事で症状改善と適切な標準治療の選択に協力できたため報告する。【症例】 28歳女性、会社員[主訴]左右手関節、手指の痛み、足背関節の痛み[現病歴] X年:関節の疼痛、腫れ、熱感が出た際、整形外科にて関節リウマチと診断、サラゾスルファピリジンを処方されたが副反応のため、メトトレキサートに変更したがその後も関節痛・腫脹、易疲労等のため仕事にも支障が出ていたことから同年 +2月当院にて鍼灸治療の開始となった【治療・経過】[治療]反応点治療、[経過]初回鍼灸施術前後の痛み NRS10から 4へ改善、 9診目まで痛みは安定していた。 10診目:腎盂腎炎に罹患し 7日間服薬を中止したため痛みが 8-9までに悪化したが施術後 4に改善。 X+2年:転居ためリウマチ専門クリニックに転院。主治医から新治療の提案と障害者手帳の取得を勧められた。新治療を諦めようとしていた患者に対し傾聴を実施し、考えを整理する事により障害者手帳取得および新治療の開始となった【考察】継続的な施術により施術後のみだけではなく施術前の痛みも改善することができていた。また、感染等で服薬中止となった時の痛みの増加も施術後には改善している事から、鍼灸治療が関節リウマチの標準治療の補助療法として有用である可能性が示唆された。また、信頼関係を築いた鍼灸師が傾聴を行う事で、患者の悩み・不安・希望などの考えの整理を助け、患者自身が納得する標準治療の選択が出来たと考えられた【結語】若年性リウマチ患者にとって鍼灸治療を継続的に行う事で痛みの軽減を通じて信頼関係を構築する事ができた。信頼関係を構築した鍼灸師が介在する事により新治療選択に協力できた。 キーワード:若年性リウマチ、 RA、リウマチ 042 -Sat-P3-14:48 鍼治療は慢性痛の電流知覚閾値に影響する 1)昭和大学医学部麻酔科学講座 2)昭和大学医学部リハビリテーション医学講座 3)病鍼連携連絡協議会 4)Cubic Lab 松本美由季 1,2,3)、糸井信人 3,4) 【目的】慢性痛外来患者における鍼治療前後に計測した知覚痛覚定量分析装置ペインビジョン(以下 PV、ニプロ社製、大阪)や VASを後ろ向きに解析し、鍼鎮痛の有用性と知覚閾値の変化を観察した。【方法】慢性痛患者 32名(平均年齢 59.8歳、男 13名、女19名)の、初診または 2診目に評価した VASとPVを分析した。鍼治療は毫鍼と円皮鍼にて約 30-60分施行し、施術法は個々の症状に応じた。 PVは左前腕内側より測定し、電流知覚閾値( MPC)と痛み対応電流値( PEC)から痛み度( PD)を算出した。統計学的解析は Wilcoxon符号順位和検定を用いた。【結果】鍼後、 VASは60(30.5-76.5) 26.5(13-50.25) mm(p<.0001)に、 PDも4.2(1.8-7)1.7(1.2-2.4)と有意に低下した( p<0.001)。 MPCは10.65(8.13- 13.7)11.55(8.5-15.5)μ Aに増加した( p=0.055)。【考察】 VASやPDが有意に軽減し、 MPCは増幅し知覚閾値を鈍化したことから、鍼は慢性痛の緩和や不快な情動の軽減に寄与した可能性がある。さらに、非刺鍼側の知覚が鈍化傾向にあることから、鍼の鎮痛効果は中枢を介し全身性に影響すると示唆された。これらは下行性疼痛調整系の賦活や神経伝達物質の放出による効果と考えられた。痛みに鋭敏な慢性痛患者は不快感の強弱にて脳活動に違いが生じるため、臨床検査にてストレスの添加は避けたい。 MPCは最小感知電流を測定しており、測定時の痛みが発生しにくく主観的要素が入りにくいが治療の疼痛軽減効果を鋭敏に反映しうる。よって、 MPCを慢性痛の治療効果の判定に用いることが可能となれば、 MPCは患者の心身により負担の少ない客観的な評価となり得ると考えられる。【結語】鍼治療は慢性痛の緩和が可能で、中枢を介し全身性に影響を及ぼす。 キーワード:慢性痛、知覚閾値、ペインビジョン 043 -Sat-P3-15:00 顎関節症の痛みに対する鍼治療の効果の一症例 圧痛刺激による皺眉筋活動を指標とした評価 1)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 鍼灸学分野 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)東京有明医療大学附属鍼灸センター 4)University of Illinois Chicago 山田隆寛 1)、矢嶌裕義 1,2,3)、高山美歩 1,2,3)、奈須守洋 1)、今西好海 2)、Schlaeger, Judith M2,4)、高倉伸有 1,2) 【目的】鍼灸師は触診に際して特定部位の圧痛を指標とするが、圧刺激が一定だったとしても、痛みの評価は患者の主観に頼らざるを得ない。一方、圧痛刺激時に表面筋電図で測定される皺眉筋活動量は主観的な痛み強度と相関し、再現性も高く、より安定的に痛みの評価が可能であることがわかっている。そこで、顎関節症患者の咬筋に一定の圧痛刺激を与えた時の主観的な痛み強度と皺眉筋活動を指標とし、鍼治療の効果について検討した。【症例】 23歳男性。主訴は右顎痛。[現病歴]特に誘因なく 2ヶ月前から右顎関節部痛が生じる。痛みは徐々に悪化し、食事や会話で更に増強して開口に不自由さを感じるため、本学附属鍼灸センターに来院した。[所見]右側頭筋、咬筋、僧帽筋、頭板状筋部に圧痛がある。軽く噛む動作時の右顎痛の強度(visual analogue scale:VAS)は 58.2mmだった。また、ガイドラインに基づく右咬筋部へのアルゴメータ(Algometer typeII、 SBMEDIC Electronics)を用いた 100kPaでの 2秒間押圧による圧痛誘発時の皺眉筋活動(左右積分値の平均)は、安静時筋活動の 247.1%(18.7 μ V)であった。筋活動は表面筋電計(Neuropack X1: MEB-2306、日本光電)を用いて測定した。【治療・評価】経過や所見等から、顎関節症の中でも咀嚼筋障害による症状である可能性が高く、鍼治療の適応であると判断し、右頬車、下関、上関、曲髪(咬筋・側頭筋部)、左右天柱、完骨、風池、肩井(僧帽筋・頭板状筋部)に、 40mm16号鍼を用い、刺入深度 5mmで15分間置鍼した。鍼治療直後の右顎痛 VASは 6.4mm、圧痛誘発時の皺眉筋活動は安静時の 100.5%(3.7μV)に減少した。【考察・結語】顎関節症による顎の痛みに対し、 1回の鍼治療により、自覚的な痛みとともに、咬筋部への圧痛刺激に伴う皺眉筋活動も著明に減少した。圧痛刺激時の皺眉筋活動を指標とした痛みの評価により、鍼治療による主観的な痛みの軽減効果を、客観的に示すことができたと考える。 キーワード:顎関節症、皺眉筋、疼痛評価、表面筋電図、鍼 044 -Sat-P3-15:12 抗がん剤副作用における味覚異常・手足の痺れへの鍼灸の効果膵臓がん患者への鍼灸治療 柳谷素霊記念東洋鍼灸治療院 毛塚巳恵 【目的】抗がん剤の副作用による痺れおよび味覚異常に対して鍼灸治療が奏功した症例を経験したので報告する。【症例】 76歳女性。主訴:手足の痺れ、味覚異常[現病歴] X-3年に膵臓癌の診断を受け、抗がん剤を用いた化学療法が開始された。その後主訴が発症し、ビタミン B12の治療を受けるものの効果を認めず、 X年鍼灸治療開始となった。[評価]初診時の痺れを 10としたNRS【治療・経過】初回の治療は、手足の指間穴に 20分間の置鍼。足底全体の痺れが治療後踵と指の痺れだけになり痺れの度合いも足は 10→3、手が 7→1に改善。翌週2回目の治療後、手の痺れは 0.5、足の痺れは指先のみになり 2。痺れが改善すると、就寝中に口を濯がないと耐えられない苦みがあるなどの味覚異常を主に訴える。耳門穴に 20分間の置鍼とパイオネックスを貼って帰す。その晩苦みが薄まり甘みと混ざった味になった。前より改善したが、まだ不快感が残る。翌週 3回目の来院時の問診では口内の苦みなし。甘さも消えた。ここから毎週耳門穴に置鍼。その間、苦みなし。 1ヶ月後、耳門穴に鍼をしないでみたが、翌週も苦みなし。以後、 1週おきに耳門穴への置鍼を続け、その 1ヶ月後からは 3週に 1度、その 3ヶ月後からは月 1へと減らしたが、苦みはなし。現在は月 1回、耳門穴への置鍼。食欲も戻り顔色も改善、表情も明るくなった。手の痺れは0か1程度。足底は鍼をしないと踵と指先が痺れてくるので週 1回指間穴に置鍼を継続。【考察・結語】手足の痺れは主に四肢末梢の血流不全に起因する。指間穴の置鍼が末梢血流を促し痺れの改善に繋がったと考える。がん患者の味覚異常の改善は耳門穴への置鍼で唾液分泌を促進したことで、口内環境に変化が生じ、苦味成分が口内に分泌されなくなる、もしくは脳が苦いと認識しなくなった可能性を考える。今後の臨床や研究でその有用性がさらに検証されることが期待される。 キーワード:手足の痺れ、味覚障害、抗がん剤の副作用、鍼治療、耳門穴 045 -Sat-P3-15:24 市販加工灸の特性について(1) −日中韓の市販加工灸の燃焼温度の比較- 1)千葉大学柏の葉鍼灸院 2)千葉大学医学部附属病院 3)洞峰パーク鍼灸院 4)つくば国際鍼灸研究所 後藤唯1,2)、松本毅1,2,3)、形井秀一 3,4) 【目的】セルフケア灸の関心が高まり、灸具の国際標準化が進む中、今後、国際間の相互流通が促進し、中韓の灸製品販売が日本国内で拡大する可能性がある。そこで、市販加工灸の燃焼温度特性を知り、灸を安全に使用する事は重要であると考え、日中韓の市販加工灸の燃焼温度の比較を行った。【方法】対象は、日中韓の市販加工灸( 3種類ずつ)とした。実験は、温度 25℃±1℃、湿度 50%±5%の恒温恒湿を保った部屋で行った。素焼タイル上で加工灸を燃焼させ、設置した K型熱電対を用いて加工灸底面中央部の温度変化を各製品毎に 3回計測し、その平均値の燃焼温度曲線(以下温度曲線)を比較した。測定は、最高温度、最高温度到達時間、最高温度継続時間、 30℃以上温度継続時間などとした。また、台座がドーム状のもの(ドーム型)、燃焼物が加工されているもの(燃焼物加工型)、モグサの量が 0.9g以上のもの(モグサ大型)、モグサの量が 0.2g以下のもの(モグサ小型)の 4つに分類して、検討した。【結果】型別の最高温度、 30℃以上継続時間は、ドーム型は 37℃、 388秒。燃焼物加工型は 46℃±4℃、 486秒± 38秒。モグサ大型は 48℃±6℃、 1,623秒± 97秒。モグサ小型は 49℃±8℃、 302秒± 130秒であった。温度曲線は、日本は最高温度が 42℃±1℃と安定しており、漸増漸減の曲線を示し、中国は最高温度の到達時間と継続時間、 30℃以上の温度継続時間が長く、傾きが緩やかな曲線を示し、韓国は曲線が漸増し、 2種類の加工灸が最高温度 50℃を超える曲線を示した。【考察】日中韓の温度曲線を比較すると、日本は透熱灸と似た漸増漸減の曲線を、中国は一定の温度が持続する曲線を示し、韓国は最高温度が高く、最高温度到達までの時間は日中の中間を示した。これは、各国での直接灸や間接灸を治療に用いてきた異なる歴史的背景が反映されたものと考えられる。【結語】日中韓の市販加工灸の燃焼温度の比較し、その燃焼温度特性を検討した。 キーワード:日中韓、加工灸、燃焼温度曲線、燃焼特性 046 -Sat-P3-15:36 市販加工灸の特性について(2)−中国、韓国の煙の安全性- 1)千葉大学医学部附属病院 2)千葉大学柏の葉鍼灸院 3)つくば国際鍼灸研究所 4)洞峰パーク鍼灸院 松本毅1,2,3)、形井秀一 3,4) 【目的】鍼灸の国際標準化が進む中、治療院のみならず一般でも需要が伸びている加工灸の煙の安全性を明らかにすることは、国内外の加工灸製品の日本における流通においても重要になる。そこで、昨年行った日本の製品に続き、本年は、中国、韓国で一般市販される加工灸の煙の安全性を検討した。【対象と方法】対象は、中国、韓国で一般市販されている 3種類ずつの加工灸(計 6種類)とした。実験は試料を燃焼させ、発生した煙を捕集し、人体に影響があると指摘される 11物質( VOC、無機成分、ホルムアルデヒド類)について定量分析を行い、 6帖間と仮定した室内濃度値を算出した。濃度基準値には、米国の暴露評価基準値(以下、基準値)を用いた。【結果】定量分析の結果、中国 3種類、韓国 3種類とも加工灸の煙は全ての物質で基準値以下であった。特に発癌性が懸念される 1,3-ブタジエンやベンゼンの値は、 1,3-ブタジエンの場合は、基準値(= 2.2mg/m3)に対して、一番数値が高い(以下、最高値)中国製品でも 0.0058 mg/m3、韓国製品での最高値は 0.0046mg/m3、また、ベンゼンでは、基準値(= 0.32mg/m3)に対して、中国製品最高値は 0.0082mg/m3、韓国製品最高値は0.0042mg/m3と、非常に低かった。【考察】燃焼したすべての物は必ず有害物質を発生する。これは灸具においても同様で、人体に影響が発生する量であるか否かが、問題である。今回、研究対象とした中国、韓国の加工灸の煙の発生量は、通常の利用の仕方であれば、人体に対する有害性は極めて低いことが明らかになった。灸の世界的な普及や国際標準化を視野に入れて、これまで煙の安全性を検討してきた。今回の研究で、昨年の日本に加え、中国、韓国の加工灸についての安全性を検討し、 3カ国の製品は安全基準値内であることが分かった。今後は、一回の加工灸の使用量が多い場合の安全性の検討などが必要であると考える。 キーワード:市販加工灸、煙、安全性、中国、韓国 047 -Sat-P3-15:48 電気灸と温灸による脳内機能的結合の変化 1)明治国際医療大学大学院 2)冨田治療院 3)明治国際医療大学基礎教養講座 永田宏子 1,2)、梅田雅宏 3)、村瀬智一 3) 【目的】鍼灸の治効機序に関して中枢を介したメカニズムが考えられているが、灸が施術直後に脳内にどのような変化をもたらすのかは明らかにされていない。また、透熱灸と温灸では温度特性ともたらす体性感覚刺激が異なり、脳機能に影響を与えていることが想定される。安静時機能的磁気共鳴画像法(rs-fMRI)は、特定の脳機能にかかわる複数の脳領域の連動した変化を機能的結合(FC)としてとらえる方法で、脳機能研究の中心的存在となっている。本研究は、 rs-fMRIを用いて、透熱灸と温灸がもたらす FCの変化を明らかにすることを目的とした。【方法】 22名の健康な男女を対象に、右側の足三里(ST36)に、クロスオーバーデザインを用いて、透熱灸を模した電気灸と、温灸として台座灸による介入を実施し、介入前後に rs-fMRI撮像を行った。介入前後のrs-fMRI画像について、感覚系、痛み関連のネットワークを関心領域( ROI)のシードに設定して Seed-to-voxels法を用いて解析し、 FCの変化を比較検討した。【結果】灸刺激後は電気灸の方が温灸よりも FCが増加した。電気灸ではサリエンスネットワーク、前頭頭頂ネットワーク、感覚運動ネットワークと複数の部位とで FCの増加が観察された。温灸ではデフォルトモードネットワークとカルカリン内皮質とで FCの増加が観察されたが、電気灸よりも多くの部位とで FCの減少が観察された。【結論】電気灸と温灸刺激後の FCの変化には違いがあることが明らかになった。温灸よりも電気灸の方が、侵害刺激に対する反応による脳結合性のネットワークレベルの再編成を引き起こし、先行研究で報告された鍼に似た反応が生じた可能性が示唆された。透熱灸に関しても同様の反応が想定され、臨床における透熱灸と温灸の直後効果の違いは、灸刺激後の脳内変化の違いによると考えられた。 キーワード:灸、 fMRI、安静時 fMRI、機能的結合 048 -Sat-P3-16:00 施灸面の角度が燃焼する台座灸およびその周囲の温度に与える影響 九州医療科学大学社会福祉学部 スポーツ健康福祉学科 冨田賢一、渡邊一平 【目的】台座灸は台座底面に接着面があるため、どのよう角度でも皮膚面に固定することができるが施灸面の角度によって熱感が異なることを経験する。施灸面の角度が台座灸の施灸温度に与える影響を調査した。【方法】べニア板上に温度センサを 1cm間隔で一直線上に 5か所設置した。設置した 5か所の中心にあたるセンサ上で台座灸(セネファ社製せんねん灸レギュラーオフ伊吹)を 1壮施灸し、台座底面とその周囲 4か所の温度を経時的に測定した。測定間隔は 1秒とし、点火から 10分間の温度測定を行った。施灸面の角度はべニア板の角度で調整し、水平(0°)、垂直(90°)、逆さ(180°)の 3つを設定した。垂直では一直線上のセンサが縦一列になるよう配置した。すべての角度においてべニア板の周囲をカバーで覆い、室内の気流が影響を与えないよう測定した。【結果】台座灸底面の最高温度(平均± SD)は、水平51±3℃(n=7)、垂直 57±3℃(n=7)、逆さ 71±3℃(n=7)となり、水平と比べ垂直、逆さでは有意に最高温度が高くなった(一元配置分散分析 :p<0.05, Tukey法:水平 vs垂直 :p<0.001、水平 vs逆さ :p<0.05、垂直 vs逆さ :p<0.001)。最高温度到達時間(平均± SD)は水平 203±28秒、垂直 231±29秒、逆さ 228±29℃となり有意差は認められなかった。また、垂直では施灸点より上方 1cm、上方 2cmの2か所で温度上昇を確認した(最高温度: 48±4℃、 44±2℃)。逆さでは、施灸点から 1cm両側で温度上昇を確認した(最高温度: 48±4℃、 41±2℃)。【考察・結語】施灸面の角度によって燃焼温度に差が生じた。今回の調査では逆さ施灸が最も燃焼温度が高くなることが観察された。また、燃焼によって生じた煙が台座灸周囲のセンサに当たることが目視で確認され、施灸周囲における温度上昇の要因となることが示唆された。 キーワード:台座灸、施灸角度、温度特性 049 -Sat-P3-16:12 灸刺激による脾臓サイトカイン産生誘導への神経系の関わりの検討 1)明治国際医療大学大学院 2)明治国際医療大学基礎医学講座 免疫・微生物学ユニット 大下紘平 1)、糸井マナミ 2) 【目的】灸刺激は皮膚への微小な侵害刺激として免疫系を賦活すると考えられている。これまでに我々は、マウスの単純ヘルペス脳炎モデルを用い、足三里相当部位への施灸が致死率を下げることを示した。施灸により施灸部位の皮膚だけでなく脾臓においても種々のサイトカイン産生の誘導や増強が見られたことから、皮膚局所への灸刺激が全身免疫系に影響し、その結果ウイルス感染防御効果を示したと考えられた。しかし、皮膚局所への灸刺激が全身免疫系に伝達される機序については明らかでない。一方、免疫系の組織・器官には自律神経が分布し、免疫機能が神経系の調節を受けることが知られている。そこで本研究では、灸刺激領域を支配する末梢神経を遮断することにより、灸刺激による脾臓サイトカイン産生誘導における神経系の関与について検討した。【方法】実験には C57BL/6マウス(雄性、6〜9週齢)を用いた。神経遮断には坐骨神経の外科的切除(約5mm、片足のみ)を行った。除神経側の足三里相当部位に半米粒大透熱灸(0.5mg×5壮、麻酔下)を行い、皮膚及び脾臓におけるサイトカイン mRNA発現量について、灸刺激を行わない対照群と比較した( n=8〜12)。施灸後 24時間に皮膚および脾臓を採取し、 qPCRにより組織中サイトカイン( IL-1β ,TNF-α ,MIP-1α) mRNA発現量を測定した。なお、本研究は明治国際医療大学動物実験委員会の承認(2022-006)をうけ動物実験規定に従い行った。【結果】灸刺激群における皮膚 IL-1β, MIP-1αmRNA発現量および脾臓 IL-1β, TNF-αmRNA発現量は、灸刺激を行わない対照群に対し有意に高かった(p<0.05, Welch's T test)。【考察・結語】本研究で用いた外科的除神経マウスモデルにおいては、灸刺激領域を支配する末梢神経が遮断された状態でも脾臓におけるサイトカイン産生の誘導が起こることが示された。 キーワード:灸刺激、免疫系、神経系、サイトカイン 050 -Sat-P3-16:24 台座灸の製造安定性について第1報 構造特性および熱分布特性から鑑みた検討 1)Cubic Lab. 2)病鍼連携連絡協議会 3)国際メディカル専門学校 4)東北大学大学院医学系研究科 地域総合診療医育成寄附講座 5)ときわ会病院リハビリテーション科 6)昭和大学医学部リハビリテーション医学講座 糸井信人 1)、谷口美保子 2,3)、石井祐三 2,4)、 三戸敦雄 2,5)、松本美由季 2,6) 【目的】台座灸を一種の刺激装置として捉え、構造および熱分布特性から製造安定性を有するか評価した。【方法】試料はセネファ株式会社製の台座灸(竹生島)を選定した。試料は、製品のばらつきを調査するため工業的基礎調査法を、温度分布の均一性を調査するため開放空間熱分布測定法および熱伝導調査法を実施した。工業的基礎調査法では重量をポータブルコンパクト精密電子スケールにて、寸法をステンレス製デジタルノギスにて A艾しゅ直径、 B艾しゅ高さ+台座高さ(以下全体高さ)、C台座高さ、 D台座直径、 E空気孔直径を計測した。開放空間熱分布測定法では熱電対温度計を用いて、直径 3mmPETチューブに固定した試料に、マスキングテープで熱電対 Type K型を固定し、 0.5秒間隔で 1200秒測定した。測定場所として、 CH1は台座孔部にある艾の燃焼温度、 CH2は台座が人体に接地する部分の発熱温度、 CH3は台座側面部の発熱温度、 CH4は表面から目視可能な艾の燃焼温度を測定した。なお解析中は、外気温の影響を排除するために測定開始時の外気温を 20°Cに補正した上での各測定場所の経時的変化を評価した。また、熱伝導調査法は開放空間熱分布測定法同様に設置した際に底面部よりサーモグラフィーにて熱拡散の様相を観察した。このとき、燃焼時の影響を排除するため、空気孔にマスキングテープを貼付した。【結果】重量は平均値に対して 1.4%以下、寸法は 5%以下(変動係数)で生産されていた。なお、温度曲線は漸増的に温度上昇後、頂点付近は弧を描きなだらかに温度下降する様相をとり、熱の拡がり方は形状に依存する画像が確認された。【考察・結語】本研究より、台座灸は構造および熱分布特性から鑑みるに、製造安定性に富んだ一種の熱刺激装置であることが示唆された。今後は他の製品において類似の傾向を示すか調査したい。 キーワード:台座灸、構造特性、熱分布特性、製造安定性 051 -Sat-P3-16:36 台座灸の製造安定性について第2報 製造安定性と最高温度の構造学的因子の検討 1)国際メディカル専門学校 2)病鍼連携連絡協議会 3)Cubic Lab. 4)東北大学大学院医学系研究科 地域総合診療医育成寄附講座 5)ときわ会病院リハビリテーション科 6)昭和大学医学部リハビリテーション医学講座 谷口美保子 1)、糸井信人 2,3)、石井祐三 2,4)、 三戸敦雄 2,5)、松本美由季 2,6) 【目的】本研究では台座灸の製造安定性を調査するとともに、最高到達温度の差異がどこから生じるのか構造学的に推測することを目的とした。【方法】試料として、セネファ株式会社製の台座灸(竹生島・伊吹・近江)を各 6個選定した。試料は、製品のばらつきを調査するため工業的基礎調査法を、温度分布の均一性を調査するため開放空間熱分布測定法を実施した。工業的基礎調査法では重量をポータブルコンパクト精密電子スケールにて、寸法をステンレス製デジタルノギスにて A艾柱直径、 B艾柱高さ+台座高さ(以下全体高さ)、C台座高さ、 D台座直径、 E空気孔直径を計測、 Bより Cを引いた C1艾柱高さを推定した。開放空間熱分布測定法では熱電対温度計を用いて、直径 3mmPETチューブに固定した試料に、マスキングテープで熱電対 Type K型を固定し、 0.5秒間隔で測定した。測定場所として、 CH1は台座が人体に接地する部分の発熱温度、 CH2は台座側面部の発熱温度、 CH3は室内温度を測定した。なお解析中は、外気温の影響を排除するために測定開始時の外気温を 20°Cに補正した上での各測定場所の最高到達温度を比較した。統計学的解析は ANOVAを用いた(有意水準 5%以下)。【結果】重量、寸法は平均値に対して 6%以下(変動係数)で生産されていた。 3種の台座灸を比較した場合、重量・ B全体高さ・ C台座高さで有意な差が認められた( p<0.001)。さらに人体接地面温度も同様の傾向を認めた( p<0.001)。【考察・結語】今回用いた試料は製品のばらつきは少なく、温度の均一性を認めたことから、台座灸は製造安定性に富んだ製品であることが示唆された。また、重量・ B全体高さ・ C台座高さが 3群間で有意な差を認めていることから、構造学・材料学的に鑑みるに到達温度の差異は台座によって調整されていることが示唆された。 キーワード:台座灸、製造安定性、構造学的因子 052 -Sat-P4-11:00 女子陸上長距離選手における大腿骨疲労骨折の1症例鍼灸治療初診時に疲労骨折が疑われた事例 1)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 2)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 3)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 村越祐介 1,2)、木村啓作 1)、石井輝2)、藤本英樹 2,3)、粕谷大智 1) 【目的】初診時に疲労骨折が疑われた症例を報告する。【症例】19歳女性。陸上長距離選手。主訴は左大腿部痛。[現病歴] X年-3月に右大腿骨の疲労骨折と診断された。診断時点で骨折部の癒合が確認できたため、その後の受診はなく経過観察となった。競技復帰後の X年-1月に 5000mの大会に出場し、その 1週間後に左大腿部の痛みを自覚した。その痛みは練習後に自覚し、歩行時の違和感や jogでも痛みが生じる。[所見]左内転筋群の圧痛や筋緊張あり、左片脚立ち可、左足ジャンプ不可、左大腿内側部のストレッチ痛、股関節屈曲、内転動作時痛なし。歩行時の違和感、 jog時の痛みあり。[推定病態]左内転筋の筋損傷と推察した。しかし、女性陸上長距離選手、疲労骨折の既往、片足ジャンプ不可であることから疲労骨折も疑われた。筋損傷と疲労骨折の両病態を踏まえ治療を開始した。なお、初診時にコーチと 2人で来院されたため、症状の改善が得られない場合は病院を受診するように説明した。【治療】左内転筋の筋損傷を疑い、圧痛や硬結部に対し鍼通電療法を 15分間実施した。【経過】鍼灸治療は計 2回施行した。 1回目の治療後に歩行時の違和感が軽減されたことから、翌日に 2回目の治療を行った。しかし、 jogや片足ジャンプは痛みのため困難であり症状は改善しなかった。そのため病院受診を勧めた結果、左大腿骨疲労骨折と診断された。その後、コーチから「選手の希望もあり継続して治療をお願いしたい」と連絡があり、現在はリハビリの補助として鍼灸治療も継続している。【考察・結語】競技特性や性別、既往歴などの問診情報や運動時痛などから疲労骨折を推察した。この症例からスポーツ選手に携わる鍼灸師は骨折などの医学的知識を有することも重要であると考えた。また、適切な対応が選手及びコーチとの信頼関係の構築にも繋がったものと考える。 キーワード:スポーツ、鍼灸、陸上競技、女性、疲労骨折 053 -Sat-P4-11:12 灸セルフケアが認知反応時間に与える影響―第2報― 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科  宮武大貴、松熊秀明、鍋田智之 【目的】睡眠の改善を目的とした灸セルフケアが認知反応時間に与える影響について検討した。【方法】研究内容について同意が得られたスポーツ競技歴のある大学生 26名をエントリーし、研究開始時にピッツバーグ睡眠質問票(以下 PSQI)6点以上の 14名(Mox=11 Cont=3)を分析対象とした。被験者はエントリー順に灸介入群(Mox)と対照群(Cont)にランダムに割り付けた。介入は週 3回以上 4週間継続して入床30分前までに無煙台座灸を上下肢の 10か所(左右、太衝穴、太渓穴、足三里穴、内関穴、神門穴)に実施するよう指示した。介入期間前後に PSQIおよび日本語版エプワース眠気尺度(以下 JESS)の記録、およびランダムに点滅する光源方向に移動するプロアジリティテスト( PAT 2方向)と、 4方向全身反応計測を実施した。本研究は森ノ宮医療大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(2022-014)。【結果】介入群において PSQI(Mox 7.9±2.0 7.2±2.1改善 6/11例) JESS(12.2±3.8 11.7±3.5改善 5/11例)と改善傾向を示し、 PAT(-0.01±0.03sec)4方向(-0.03 ±0.05)と反応時間の短縮が認められた。 Contでは PSQI,JESS、反応時間ともに改善傾向は示さなかった。 PSQIとJESSは正の相関( r=0.62)を示し、 4方向反応時間の改善と PSQI(r=0.45)、JESS(r=0.39)の改善も正の相関を示した。【考察・結語】 Mox群で反応時間の改善が認められ、反応時間と PSQI、JESSの改善に相関が認められることから、睡眠改善を目的とした灸セルフケアはアスリートのパフォーマンス改善に有用である可能性が考えられた。今後、主に Contのサンプル数を増加させて分析を進める。 キーワード:灸セルフケア、認知反応時間、睡眠、運動パフォーマンス、プロアジリティテスト 054 -Sat-P4-11:24 アメリカンフットボールチームにおける鍼治療の試み 2年間のスポーツ外傷・障害を対象として 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 3)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 藤本英樹 1,2)、石井輝2)、村越祐介 2,3)、 南雲世以子 1) 【背景及び目的】スポーツ外傷・障害に対する鍼治療の効果についての報告はあるが、スポーツチームにおける鍼治療の試みや有用性に関する報告は少ない。本報告では、社会人アメリカンフットボールチームで生じたスポーツ外傷・障害に対して 2シーズンを通して鍼治療を行い、有用性を検討することを目的とした。【方法】対象は、 2016年、 2018年に社会人アメリカンフットボールチーム Aに所属していた 92名( 27.6±5.1歳)とした。鍼治療は、 2年間の春シーズン( 2月から 6月)、秋シーズン( 7月から 12月)に生じたスポーツ外傷・障害を対象に行った。シーズン中の練習は、 3回/週、 3時間 /日行っていた。練習、試合で生じたスポーツ外傷・障害はトレーナーもしくはチームドクターが評価、診断を行い、その中から必要と判断した場合に鍼治療を行った。鍼治療は選手の状態に合わせて、低周波鍼通電療法、置鍼、単刺、運動鍼、散鍼を行った。集計は、鍼治療を行ったスポーツ外傷・障害数・種類、部位などとした。【結果】スポーツ外傷・障害に対する鍼治療は、総治療回数: 248回、総選手数 87名であった。鍼治療が対象となったスポーツ外傷・障害数は 137件であった。スポーツ外傷・障害の種類は、その他のスポーツ外傷・障害: 67件( 27.0%)、肉離れ /筋断裂: 57件( 23.0%)、関節炎: 54件( 21.8%)、関節捻挫 /靭帯損傷: 40件(16.1%)の順であった。スポーツ外傷・障害の部位は、大腿: 66件( 26.6%)、腰 ‐仙椎 ‐殿部: 59件(23.8%)、下腿・アキレス腱: 41件( 16.5%)、足関節: 27件( 10.9%)の順であった。鍼治療を行うタイミングは、練習・試合前: 35回( 14.1%)、練習・試合後: 213回( 85.9%)であった。【考察及び結語】社会人アメリカンフットボールチームの選手に対して、 2シーズンを通して鍼治療を行った結果、その他スポーツ外傷・障害や肉離れが多く、部位としては大腿部、腰‐仙椎‐殿部が多かった。これらの症状に対して鍼治療は有用である可能性が示唆された。 キーワード:鍼治療、スポーツ外傷・障害、アメリカンフットボール 055 -Sat-P4-11:36 スポーツ外傷・障害に対する鍼治療の疫学調査 アメリカンフットボール選手を対象として 1)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 鍼灸学分野 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 石井輝1)、藤本英樹 1,2)、村越祐介 1,3) 【背景および目的】スポーツ分野における鍼治療は治療的側面からの報告が多いが、疫学調査に基づく報告はない。本研究の目的は、社会人アメリカンフットボール選手を対象に、スポーツ外傷・障害の疫学特性と鍼治療の効果を疫学的に検討する。【方法】対象は、社会人アメリカンフットボールチームAに2016年2月~11月まで所属していた選手 63名(年齢27.8±5.6歳)とした。活動(スポーツ外傷・障害、鍼治療、活動状況)の集計は、トレーナーおよび鍼灸師が活動時に記録し、スポーツ外傷・障害の Incidence(injuries/1000Athlete-Hour)および Injury Burden(Incidence×severity)などを算出した。スポーツ外傷・障害の種類は。スポーツ外傷・障害および疾病調査に関する提言書に準じて分類した。鍼治療(置鍼、鍼通電、運動鍼、単刺、散鍼)はチーム Dr.もしくはトレーナーの評価を受けたのち、選手の状態に応じて行った。【結果】 Athlete-Hourは13,547時間(練習 :11,090時間、試合 :2,457時間)であり、スポーツ外傷・障害の発生件数は 115件(練習 :87件、試合 :28件)であった。スポーツ外傷・障害の Incidenceは8.49件/AH(練習 :7.84件/AH、試合 :11.40件/AH)で、 Injury Burdenは174.87(練習 :154.64、試合 :264.96)であり、練習時に比べて試合時の方が高かった。最も多く発生した疾患は大腿の肉ばなれ /筋断裂 15件( 13.0%)で、 Incidenceは1.11件/AH、Injury Burdenは37.20であった。鍼治療の介入回数は 117件で、多く介入した部位は腰 -仙椎・殿部 41件( 35.0%)、大腿 38件( 32.5%)であった。鍼治療を介入した Time-loss injuryの中で、最も多く施術した疾患は大腿肉ばなれ /筋断裂 8件( 25.0%)で、 Incidenceは0.07件/AH、Injury Burdenは17.60であった。【考察および結語】鍼治療を介入した大腿肉ばなれ /筋断裂の Incidenceおよび Injury Burdenの値が低くなっていることから、鍼治療はスポーツ外傷・障害の発生件数や競技離脱期間短縮への影響がある可能性が示唆された。 キーワード:スポーツ外傷・障害、鍼治療、アメリカンフットボール、疫学調査、 Incidence 056 -Sat-P4-11:48 中学生へのスポーツを通した東洋医学的観点からの健康教育の試み 明治国際医療大学鍼灸学部  吉田行宏 【目的】スポーツとケガの関係は日常生活における健康と病気の関係に近いため、中学生に対して健康教育を行うためには、スポーツを通して行うのが近道であると考えられる。さらに、我々はそこに東洋医学的(未病・養生)な視点を加えた健康教育を実践している。今回、中学生に対して熱中症とケガ予防をテーマに健康教育を行ったので報告する。【方法】京都府下の中学校 5校で、熱中症に関する講義( 5校: 1年生 509名)とケガ予防に関する講義( 2校: 2年生 273名)を行った。熱中症の講義は「熱中症ってなに?」、「熱中症の対処法」、「熱中症を予防する」とし、身体の冷却や熱中症を予防するための生活習慣、ツボ押し等を行った。ケガ予防の講義は「ケガ予防の理解」、「中学生の健康に影響を及ぼす内容の理解」、「自分の身体を知り身体に変化を起こす方法を学ぶ」とし、身体のセルフチェックやストレッチ、食事や睡眠の日常生活に関する内容とした。どちらの講義も行ったA中学校で発行された「ほけんだより」から生徒の感想を抽出した。【結果】熱中症の講義では「こまめに水分をとりたい」、「のどが乾く前に飲む」、「これからは暑さになれていけるように努力したい」、「朝食をしっかりとる」、「足三里を押そうと思った」といった予防に関するコメントがあった。ケガ予防の講義では「気づき・学び・継続が大切だということを知りました」、「健康というのは心と身体の両方が元気なことだとわかった」、「自分をコントロールすることが必要ということがわかりました」といった自己管理やセルフコンディショニングに関するコメントがあった。【考察及び結語】東洋医学的観点を含めた健康教育により、熱中症やケガをしてしまってから対処を考えるのではなく、そうならないためにはどうしたらいいのかを考えるきっかけを与えることができたと考えられた。今後は全生徒に対する調査を行い、教育効果を明らかにしていきたい。 キーワード:中学生、健康教育、スポーツ、未病、養生 057 -Sat-P4-14:00 安全性・再現性の高い坐骨神経鍼通電療法の電気生理学的検討坐骨結節−大腿骨間での通電ガイド下刺鍼法 1)筑波技術大学保健科学部保健学科鍼灸学専攻 2)銀の森治療院 3)筑波技術大学 保健科学部附属東西医学統合医療センター 渡邊健1,2)、鮎澤聡1,3) 【目的】坐骨神経鍼通電療法に用いられる各刺鍼部について、著者らは造影 CTを用いて画像解剖学的検討を行い、安全性に加え再現性の高い刺鍼点として坐骨結節 ―大腿骨間陥凹部刺鍼点( dimple between the ischial tuberosity and the femur、以下 DIF点と略記)を提案した(全日鍼灸会誌 .71(1).2021、72(2).2022)。本研究では、さらなる安全性を得るため、 DIF点から刺入された鍼を坐骨神経への接触を回避させつつ確実に同神経近傍に位置させるための通電ガイド下刺鍼法の開発を目的として電気生理学的検討を行った。【方法】坐骨神経痛患者を対象とし、 a.超音波画像を用いて DIF点直下を走行する坐骨神経の深度を計測、その結果をもとに DIFから同神経の手前 5mmの深さまで鍼を刺入し、同位置で支配筋収縮に要する最小刺激電流値(運動閾値)を計測した。 b.超音波画像から得られた坐骨神経深度の範囲内において、上記より検討された運動閾値による通電下で同神経の検索を実施し、通電ガイド下刺鍼法の有効性について検討した。 a、bともに電気刺激は 2 Hz/150μsecで行い、不関電極は同側の腎兪に設置した。【結果】 a.超音波画像では全 11例で DIF点直下に坐骨神経が同定され、その深度は 57.3±12.1mmであった。筋収縮が得られた 10例における運動閾値は 3.4± 1.6mA(0.9-5.1mA)であった。 b.上記より 3-4mA程度の通電で支配筋の収縮が得られれば鍼が坐骨神経近傍にあると考えられたため、 4.0mAによる通電下で坐骨神経の検索を実施したところ、全 11例で坐骨神経の深度以下で支配筋の収縮が得られ、その際の鍼と神経間距離は 3.4±3.5mmと推定された。【考察】通電ガイド下による刺鍼法では、坐骨神経に接触する以前に同神経刺激が可能であるため、鍼による神経損傷を回避できる可能性が高い。【結語】 DIF点における 4.0mAでの通電ガイド下刺鍼法は、より安全性・再現性の高い鍼通電療法であることが示唆された。 キーワード:坐骨神経鍼通電、神経損傷、安全性、再現性、通電ガイド下刺鍼法 058 -Sat-P4-14:12 超音波診断装置を用いた呼吸による腎臓深度の検討【第2報】 鈴鹿医療科学大学大学院医療科学研究科 大森祐輝、浦田繁 【目的】我々は、超音波診断装置を用いて 16名の左肓門穴、左志室穴、右三焦兪穴、右志室穴の呼吸による腎臓深度の比較を行い、有意差が認められなかったことを報告した。しかし我々は呼息時と吸息時の深度に差はないが、安全深度が異なるため、さらに調査が必要であると考えた。そこで本研究では被験者を 30名にし、超音波診断装置を用いて呼息時と吸息時の腎臓を撮像し、その深度の比較および安全深度を検討した。【方法】対象は健常成人男性 30名で年齢 20.4±0.9歳であった。測定部位は後正中線から 1.5寸、 3寸、 4.5寸の左右 6つのラインと、第 11胸椎から第 3腰椎棘突起下縁までの高さと交差する左右 30点とした。また、安静呼息終了時と安静吸息終了時の 2通りの合計 60通りで撮像し、腎臓出現率および腎臓深度を求めた。出現率60%以上の部位については、呼息時と吸息時の腎臓深度を student t-testで比較し、安全深度を検討した。本研究は、鈴鹿医療科学大学臨床研究倫理審査委員会の承認を得ている。【結果】呼息時と吸息時ともに出現率 60%以上を示した部位は、左肓門穴、左志室穴、右三焦兪穴、右肓門穴、右志室穴であった。腎臓深度は、左肓門穴は呼息時39.8mm±6.2(最小値 26.8mm)、吸息時 40.7mm±6.2 (最小値 27.3mm)、左志室穴は呼息時 45.1mm±10.5(最小値 29.5mm)、吸息時 44.2mm±9.3(最小値 30.1mm)、右三焦兪穴は呼息時 51.8±6.6mm(最小値 38.9m m)、吸息時 53.1mm±6.7(最小値 41.3mm)、右肓門穴は呼息時 40.8mm±7.7(最小値 28.2mm)、吸息時 41.4m m±7.7(最小値 28.9mm)、右志室穴は呼息時46.3mm ±10.1(最小値 31.5mm)、吸息時 46.7mm±9.1(最小値30.7mm)であった。【考察・結語】標準型男性の安全深度は、三焦兪穴は右38.9mm、肓門穴は左 26.8mm右28.2mm、志室穴は左29.5mm右30.7mmが指標であると考える。呼息時および吸息時の腎臓深度を比較したが有意差は認められなかったため、深度に影響を及ぼさないことが示唆された。 キーワード:超音波診断装置、腎臓深度、呼息、吸息、出現率 059 -Sat-P4-14:24 超音波画像診断装置を用いた後頭下筋群への安全刺入深度の検討 1)名古屋トリガーポイント鍼灸院 2)さいとう整形外科リウマチ科 高橋健太 1)、前田寛樹 1)、斉藤究2) 【目的】 2020年に改変された鍼灸安全対策ガイドラインでは、後頸部への鍼の刺入は中枢神経や椎骨動脈を含む血管に損傷を与えるリスクがあるため、「注意すべき部位」に挙げられている。しかしながら、後頭下筋群周囲の安全刺入深度( Safety penetration depth,以下: SPD)を調べた研究はほとんどない。本研究では超音波画像診断装置(以下:エコー)を用いて後頭下筋群周囲の SPDを調べたため報告する。【方法】対象は健常成人 10名(男性 3名、女性 7名)とした。基本被験者情報(年齢、身長、体重)を聴取し、 BMIを算出した。腹臥位にて( 1)から( 3)の部位にエコープローブを当て、取得した画像より SPDを計測した。( 1)大、小後頭直筋の最大膨隆部、(2)下頭斜筋の最大膨隆部、(3)後頭下三角。各被験者における上位頚椎の可動域は Flexion rotation test(以下: FRT)を用いて計測した。基本被験者情報および FRTとSPDよりピアソンの積率相関係数を算出した。 【結果】各部位における SPDは、(1) 31.0±3.7mm(皮膚から筋最深部までの距離)、(2) 33.4±4.3mm(皮膚から筋最深部までの距離)、(3) 24.6±3.8mm(皮膚から椎骨動脈までの距離)であった。また、上記の3部位における SPDは年齢と負の相関を示したが、 BMIやFRTとはほとんど相関を示さなかった。【考察】加齢による運動量の低下や姿勢変化に伴う抗重力筋の筋力低下および筋厚変化が SPDに関与している可能性がある。【結語】本研究では、エコーを用いて後頭下筋群周囲のSPDを計測したことで後頸部への安全な刺入距離を算出した。 キーワード:エコー、超音波画像、安全刺入深度、後頭下筋群、椎骨動脈 060 -Sat-P4-14:36 エコーを用いた小殿筋・関節包靱帯の安全深度と範囲の検討 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 母袋信太郎、林健太朗、永野響子、小糸康治 【目的】股関節前外側面(上前腸骨棘‐大転子間)は主として腰下肢痛患者に鍼灸治療をおこなう対象となる部位であり、この領域には深層に小殿筋や関節包靭帯が存在する。特に関節包靱帯は粗大な鍼刺激により損傷する危険性が高いと考えられ、治療する際には細心の注意が必要である。本研究では、超音波画像診断装置(以下、エコー)を用いて、股関節前外側面における小殿筋と関節包靱帯の安全刺鍼深度、および関節包靭帯の付着部について検討した。【方法】臨床で股関節前外側面の領域に鍼治療をおこない、かつ本研究の主旨に同意の得られた患者 7名 (男性 1名、女性 6名) 10肢を対象とした。測定には、エコー(富士フィルムヘルスケア株式会社製 ARIETTA65コンベックス型プローブ 5.0MHz)を用い、側臥位にて上前腸骨棘と大転子を結ぶ線上で矢状方向にプローブをあてた。測定部位は、関節裂隙部(以下、裂隙部)が画面上に描出された画像を使用し、裂隙部から垂直線上の小殿筋・関節包靱帯の体表からの深度・筋厚を測定した。また裂隙部が描出された位置に体表上からマーキングし、その地点と大転子までの距離と、画像上の裂隙部から臼蓋の関節包靱帯付着部までの距離を合算することで、関節包靱帯が付着する範囲を検討した。画像測定には ImageJを用いた。【結果】深度:小殿筋 26.2mm(± 15.0mm)関節包靭帯 37.3mm(± 13.5mm)筋厚:小殿筋 11.6mm(± 2.5mm)関節包靭帯 10.5mm(± 7.5mm)関節包靱帯付着部:大転子 -裂隙部間 35.2mm(± 24mm)裂隙部 -臼蓋付着部間 32.0mm(± 3.9mm)尚、重度股関節症の患者は裂隙部の確認が困難であり、測定不能であった。【結語】今回使用したエコーにて、大転子 -上前腸骨棘間における裂隙部の小殿筋・関節包靱帯の深度・筋厚、及び関節包靱帯の付着範囲は測定可能であることが示唆された。しかし、股関節変形が進行している患者は正確な描出は困難であると考えられた。 キーワード:超音波画像診断装置、エコー、小殿筋、関節包靱帯、深度 061 -Sat-P4-14:48 超音波画像装置を用いた女性の腸骨筋刺鍼点の検討 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科 小田木悟1)、竹谷真悠 1)、谷口授1,2)、谷口博志 1,2)、福田翔3)、片岡裕恵 3)、田中滋城 2)、小山浩司 3)、坂井友実 1,2) 【目的】我々は第 72回(公社)全日本鍼灸学会学術大会にて、男性の上前腸骨棘からの腸骨筋刺鍼点を示した。腹膜は右上前腸骨棘から 2cm地点、左上前腸骨棘からは 3cm地点で撮像された。左右ともに正確に腸腰筋へのアプローチができ、腹膜を避ける形での刺鍼点を提唱した。しかし、一般的には性差により骨盤の形態が変化することから上前腸骨棘をランドマークとした本法において、男性とは刺鍼部位、刺入深度など異なる可能性がある。そこで、本研究では女性への腸骨筋刺鍼点について確認することを目的とし、検討を行なった。【方法】健常成人女性 30例を対象とした(年齢: 26.9 ±11.3歳、 BMI:21.5±2.2)。なお、測定時は女性スタッフのみの環境で行なった。測定は仰臥位にて、超音波画像(リニアプローブ,周波数 8.0MHz、深度 4.5 cm、焦点 1.5cm)は上前腸骨棘から正中に向け 2cm、3 cm、4cmで撮像した。撮像された像を元に刺鍼し、低周波鍼通電刺激により筋収縮の有無を確認し、筋収縮がえられた場合、上前腸骨棘をランドマークとし、刺鍼点と刺入角度および深度を測定した。【結果】前例で、左右の上前腸骨棘から 2cm地点で腸骨筋が撮像された。また、多くの例では左右の上前腸骨棘から 3cm地点で腹膜が撮像された。右上前腸骨棘から 1.9±0.2cm内方に、深度 2.4±0.6cm、角度 75.1±1 1.3°で外側に向けて鍼を刺入し、通電を行うことで右側の腸骨筋の収縮像を超音波画像上で確認することができた。また、左上前腸骨棘から 1.9±0.2cm内方に、深度 2.3±0.5cm、角度 75.1±10.5°で外側にむけて刺入し、通電により左側の腸骨筋においても同様の反応が確認できた。【考察・結語】以上のことから、刺鍼点、刺入深度、刺入角度での左右差は認められなかった。本法は女性においても安全性の高い方法であり、鍼灸臨床で応用できるものと示唆された。 キーワード:超音波画像装置、腸骨筋 062 -Sat-P4-15:00 超音波画像診断装置を用いた低周波鍼通電時の筋収縮動体評価 1)早稲田大学スポーツ科学学術院 2)東洋大学ライフイノベーション研究所 3)九州看護福祉大学 前道俊宏 1,2)、古庄敦也 3)、熊井司1) 【背景】低周波鍼通電実施時に骨格筋は収縮する。しかし、その筋収縮動体を評価した報告は限られている。【目的】低周波鍼通電を実施している際の筋内部動態を、超音波画像診断装置を用いて撮像し、 Motion trackingソフトを用いて評価することを目的とする。【方法】対象は無作為に選ばれた健常な一般成人 7名であった。対象筋は腓腹筋内側頭とし、 fat、 gastrocnemius(shallow)、gastrocnemius(deep)、soleusの4点に関心領域を設定し、各 4点の横方向の移動距離を算出した。また、 fatとgastrocnemius(shallow)間、 gastrocnemius(deep)と soleus間の横方向の移動距離の差を求め、本研究ではその値を deep fascia(DF)及びdeep intermuscular fascia(DIF)の滑走距離と定義し、算出した。【結果】 Kruskal-Wallis検定の結果、 4点における横方向の移動距離に有意な差が見られた。事後検定として Dunn-Bonferroni法を行いペアごとの比較を行った所、 fatと比較し、 gastrocnemius(shallow)、 gastrocnemius(deep)、soleusで有意に移動距離が長かった。また、 gastrocnemius(shallow)、 soleusと比較し、 gastrocnemius(deep)で有意に移動距離が長かった。 Fatとgastrocnemius(shallow)の移動距離の差と gastro cnemius(deep)と soleusの移動距離の差から算出した、 DFとDIFの滑走距離は、 DFと比較し、 DIFにおける滑走距離の方が大きかった。【考察】低周波鍼通電による筋収縮動体は浅部から深部にかけて横方向の移動量が大きく、 DIFの滑走距離が大きいことが明らかとなった。刺入深度によって効果の差異が生じる可能性があることから、目的とした刺入深度への鍼刺が重要であり、また、深層部位へのアプローチの際に、低周波鍼通電は有効である可能性が示唆された。 キーワード:超音波画像診断装置、筋収縮、動体、滑走、 fascia 063 -Sat-P4-15:12 後頚部痛に対し1回のエコー下鍼治療により著効した症例 1)一鍼灸院 2)日本臨床リカレント教育研究センター 瀧本一1)、銭田良博 2) 【目的】後頚部痛に対して、エコー下触診を活用した評価の結果肩甲挙筋付着部である肩甲骨上角が発痛源と考え、 1回のエコー下鍼治療にて著効した1症例を報告する。【症例】 54歳女性看護師。主訴は左後頚部痛。[現病歴]夜勤終了後、長時間パチンコをし、仮眠後起床したら頚部痛を発症した。発症 4日後に当院へ受診した。[所見]頚部の痛みは強く(NRS9)、運動による症状の増悪あり。僧帽筋の盛り上がりを認める。円背で頭部前方偏位姿勢、自動運動による頚部前屈・後屈・両側屈・両回旋のいずれの動きも左後頚部の痛みがあり、特に左側屈、後屈で痛みが著明であった。頭の後ろで両手を組む動作(結髪動作)では、優位に疼痛減弱と可動域の向上が認められ肩甲挙筋の関与が疑われた。圧痛点は、完骨、風池、肩外兪、天宗、肩貞、 C7からTh4棘突起外側、胸鎖乳突筋などに認められ、肩外兪の圧痛が著明であった。肩甲骨上角へエコー評価を実施し、肩甲骨上角内側縁深度 10mmの肩甲挙筋付着部、僧帽筋と肩甲骨上角肩甲挙筋の筋間に高エコー像(ファシアの重積像)を認め治療ポイントと確定し、エコー下で刺鍼を行った。【治療・経過】刺鍼は肩甲骨上角から短軸像で肩甲挙筋を描写し、長さ 50mm、直径 0.25mmのディスポーザブル鍼を使用し、肩外兪穴よりやや上方斜刺 10mm、僧帽筋、肩甲挙筋間の高エコー像部に鍼先を当て、ゆっくりと約 10回雀啄のあと、抜鍼をした。頚部左屈 15 22度、後屈 20 40度、肩甲骨上角部圧痛が半分以下に減少し、 NRS9 2と有意な変化があった。【考察】肩甲挙筋付着部である肩甲骨上角の痛みに対し、エコーを使用することで、刺鍼ポイントの確定と治療対象部位への刺鍼が容易となり、刺鍼危険部位とされる箇所へも安全で効果的な施術を行うことができたことが、著効した理由であると考える。【結語】後頚部痛を訴える患者の肩甲骨上角肩甲挙筋へエコー下鍼治療を行い1度の施術で著効が得られた。 キーワード:後頚部痛、エコー下鍼治療、肩甲挙筋、超音波画像診断装置、ファシア 064 -Sat-P4-15:24 超音波画像診断装置を利用した腰部の可動域変化に対する鍼治療 1)BODYREMAKER鍼灸治療院 2)立命館大学 種市敢太 1)、宮本成生 2) 【はじめに】腰痛に随伴してみられる可動域制限に対して「志室」が多く使われている。そこで、超音波画像診断装置(エコー)を用いて鍼を観察しながら施術し、志室の深部にある結合組織が肥厚した部位である "LIFT"(lumbar interfascial triangle)に対して雀啄刺激を加えることで、腰部可動域の改善に有効だった症例を 3例報告する。症例報告にあたり対象者より同意書への署名にて同意を得ている。【症例】腰部の可動域制限がみられた男性 3名; 20代(A)、30代( B)、50代( C)。三者とも整形外科学テストは陰性であり、器質的疾患はなし。指床間距離(FFD)テストでは、 A: 17cm、B: 11cm、C: 0cm(指先接地)であった。 Aのみ、痛みに関する NRS(Numerical Rating Scale)は 7であり、来院時の朝より寝返りでの痛みと前屈時の疼痛があった。 B,Cには疼痛はなく前屈時にも硬さを感じるのみであった。【治療】腸肋筋と腹横筋をつなぐ特に輝度の高い部位をLIFTとし、エコーで筋膜組織を観察した。左右の LIFTを筋膜を貫かない位置で 60秒間、 1Hzで鍼(0.20 ×50 mm,軟鍼 ,セイリン社)を用いて雀啄刺激を行った。左右の LIFTへの圧痛は Aのみ強く感じ、 BとCは弱く生じていた。【結果】FFDの改善結果は Aは17から 14cm、Bは11から4cm、Cは0から0cmであった。疼痛を感じていた AのNRSは7から 0となり、完全に疼痛が消失した。【考察・結語】 3症例の全てで、 LIFTに対し雀啄することで腰部可動域が改善した。腹部と腰部の間に位置する結合組織の緊張が刺鍼刺激により弛緩したことが要因と考えられる。腰部に痛みを感じていなくても FFDの変化が生じたことから、腰部の可動域制限に伴う腰痛の予防に対する鍼治療の手法として有効であるといえる。 キーワード:志室、エコー、結合組織、雀啄、腰痛 065 -Sat-P4-15:36 超音波画像診断装置を利用した腰痛に対する皮下組織への介入 1)鍼灸院 My+ 2)立命館大学 近藤海斗 1)、宮本成生 2) 【はじめに】炎症などによる筋膜の滑走性の低下は、牽引ストレスによって筋膜に密に存在する侵害受容器を興奮させ、疼痛を生じる。これが筋・筋膜性疼痛の要因の一つと考えられている。そこで、鍼を超音波画像診断装置(エコー)の観察下で皮下組織と筋膜の間に入れ、筋膜の滑走性を向上させることを目的として治療し、主訴である腰痛が改善した症例を報告する。【症例】20代女性、介護士。主訴は筋・筋膜性腰痛。初診日より 7ヶ月前に腰痛が発症。整形外科での受診結果、画像所見による異常はなし。立位腰部伸展時で不安感がある。特に仕事で利用者を抱える動作や中腰、送迎車の乗り降りに疼痛が出現。理学検査における陽性反応はなく、家族歴、既往歴もなし。 NRS(Numerical Rating Scale)で疼痛の程度を評価し、立位腰部伸展時の不安感を聴取した。【治療】鍼はセイリン製( 0.20×50mm)を使用した。腰部の圧痛部位をエコーを用いて観察し、最長筋と腸肋筋の筋膜部に対して、鍼が筋膜を貫かないように刺入し鍼通電を行った。鍼通電の後、筋膜を貫かないように雀啄(上下 1cm, 1Hz)を30秒間行った。その後、温熱療法を行った。【結果】すべての施術で鍼刺激による即時的な筋膜の滑走性の向上をエコーによって確認できた。初診時の NRSは4点、3回目(初診から3週)では NRSは1点であった。3回目の治療後は仕事への支障は減少し、慢性痛に対して有効であった。しかし、1日にかかる負荷量次第では痛みが増悪する傾向が見られた。腰部可動域に治療前後で著しい変化はなかったが、立位腰部伸展時の不安感は消失した。【考察・結語】本症例では、鍼治療後に温熱療法を併用したが、鍼が筋膜を貫かない刺激によって、即時的に筋膜の滑走性の向上が見られた。エコーによって即時的に効果を確認することができ、過度な刺鍼を防げるという点で安全性が高く、腰痛に対する介入として有効と言える。 キーワード:腰痛、超音波画像診断装置、筋・筋膜性腰痛、鍼治療、皮下組織 066 -Sat-P4-15:48 経絡内部のエコー装置による血管の可視化(第2報)ドップラ画像による陥凹感内部の構造の検討 1)日本鍼灸理療専門学校 2)(財)東洋医学研究所 3)岩手県立大学 橘綾子 1)、小川一1,2)、吉田麻衣子 1,2)、 土井章男 3) 【目的】 PC上の仮想空間での刺鍼トレーニングシステムの構築に向け、経脈内部の解剖学的構造の立体的な可視化を行ってきた。前回はエコー装置を用いて肺経内部を観察したが、今回は被験者を増やし、橈骨動脈および深部にある橈骨骨縁との関連性を確認することとした。【方法】 1.同意を得た男性 5名、女性 3名を対象に、仰臥位、前腕中間位にて前腕前面外側の肺経上の肘関節から手関節までを、示指指腹にて軽く擦下し、縦溝状に陥凹感を得た部位を肺経とし、肘関節から手関節間を 12等分した位置に印をつけた。 2.印をつけた 13か所にエコー装置(キヤノン社製 Xario100)のリニアプローブを肺経の面に垂直となるように置き、 Bモード画像とドップラ画像を取得し JPEGファイルに出力した。 3. 1〜2の工程を、仰臥位、前腕回外位でも行った。尚 1の工程については、回外位にて印を再度付加した。 4.中間位と回外位にて得た画像により、前腕の肺経に対するドップラ画像中央から 5ミリの幅内の橈骨動脈と橈骨骨縁の位置を確認した。 5.前腕肺経上の陥凹感に対する橈骨動脈、橈骨骨縁の一致率の比較を t検定で行った。【結果】手関節から肘関節の陥凹感に対しての一致率(% ,mean±S.E.)は、橈骨動脈は中間位左で 9.6±6.7、右で 19.7±4.4、回外位左で 35.2±6.0、右で 16.8±2.8、橈骨骨縁は中間位左で 80.7±6.7、右で 79.6±4.4、回外位左で 76.0±4.5、右で 83.6±3.0だった。橈骨動脈と橈骨骨縁の一致率を比較したところ、全てに有意差が認められた。【考察】前腕肺経走行上の陥凹感に対し橈骨動脈と橈骨骨縁を確認したところ、骨縁との一致率が有意に高かった。なお、陥凹感内部には橈骨骨縁が 79.9%一致しており、骨縁を陥凹感として触知している可能性が示唆された。【結語】ドップラ画像により陥凹感内部の橈骨動脈と橈骨骨縁の関係を比較したところ、橈骨動脈よりも橈骨骨縁との一致率が高いことが示された。 キーワード:エコー装置、超音波、肺経 067 -Sat-P4-16:00 深部トリガーポイントに対しエコー下鍼治療が有効であった 1症例 1)名古屋トリガーポイント鍼灸院 2)さいとう整形外科リウマチ科 前田寛樹 1)、高橋健太 1)、斉藤究2) 【目的】索状硬結の触知はトリガーポイント(以下: TrP)における重要な所見の一つである。しかし、筋厚が大きい領域では深部に位置する TrPを触知することが難しい。今回、深部の触知困難な TrPに対する鍼治療に超音波画像診断装置(以下:エコー)による刺入位置の確認が有効であった 1症例を示す。【症例】 48歳、男性、会社員(営業)。主訴は常時の腰背部痛と 10分以上の座位にて生じる大腿後面部痛であった。[現病歴] X-3年に腰背部痛を自覚し、整形外科を受診したが特異的な所見は得られなかった。 X年2月から当院にて治療を開始。各 TrPに対する鍼治療により腰背部痛は改善したが、座位にて生じる大腿後面部痛が改善しないため、 X年9月よりエコーガイド下にて中殿筋に対する TrP鍼治療を開始した。[所見] Oberテスト陽性、 Freibergテストは陰性であった。また、股関節外転で収縮時痛を認めた。触診にて中殿筋と近位ハムストリングスに圧痛を認めたが、 TrP由来の索状硬結や関連痛などは確認できなかった。【治療・経過】エコーガイド下にて中殿筋深層部に刺鍼した際、 TrPに特徴的な局所単収縮反応や大腿後面への関連痛、再現痛を確認した。同部位に約 10分間の鍼通電を行ったところ近位ハムストリングスの圧痛が改善した。刺鍼部位を画像保存し、同部位に 2回目以降も刺鍼した。計 4回の治療により、座位に伴う大腿後面部痛が出現するまでの時間が 10分から 60分に改善した。【考察】一般的に TrPの触知・触察は徒手にて行うが、本症例における中殿筋 TrPは深部に位置していたことから、索状硬結や局所単収縮反応を触診することが困難であった。今回、エコーガイド下にて鍼の刺入位置を確認したことで、正確な治療再現が可能となり、症状の改善に繋がったと考える。【結語】深層に位置する TrPに対して、エコーガイド下での鍼治療が有用であることが示唆された。 キーワード:トリガーポイント、エコー、中殿筋、大腿後面痛、治療再現 068 -Sat-P4-16:12 左殿部および鼠径部痛へ超音波ガイド下鍼通電療法が奏功した 1例 合同会社青山かがやき鍼灸整骨院西村健作 【目的】鍼灸整骨院に来院する症例は、医師からの情報がなく診断名もない事が多い。臨床では的確に病態を判断し、適切な治療が求められる。今回、理学所見とエコー所見を基に判断的治療として、超音波ガイド下鍼通電療法を実施し、症状が改善した 1例を報告する。【症例】主訴は、寝返り時と靴下着脱時の左殿部および鼠径部痛である。某日、就寝時の寝返りの際に左殿部痛を発症した。痛みが増悪したため 2週後に当院来院した。整形外科の受診歴はない。[所見]主な疼痛部位は左殿部であり NRS8と訴え、 One finger testにて、左上後腸骨棘周辺を 1本指で示した。左殿部の再現痛として Patric test、Gaenslen test、股関節屈曲時に認め、骨盤固定下にて同 testを行うと疼痛は軽減した。エコー所見では、仙腸関節中部から下部にかけて後仙腸靭帯の不整像を認めた。【治療・経過】超音波ガイド下にて、仙腸関節中部および下部の後仙腸靭帯と、同高位レベルで仙骨後面上の多裂筋に鍼を刺入した。鍼通電開始時に多裂筋の筋収縮をエコー画面にて確認し 1Hz、15分間実施した。治療開始 7回( 21日後)に Patric test、Gaenslen testは陰性化し、治療開始 10回( 39日後)に疼痛は消失した。【考察】仙腸関節は L5〜S2神経、上殿神経に支配さるとされ、これらの神経が仙腸関節周囲の靭帯内や腹側を走行するとされている。仙腸関節性疼痛の主な発痛源は、仙腸関節腔外の後方靭帯組織とされている。所見から、本症例は仙腸関節性疼痛であったと判断した。超音波ガイド下にて鍼先を可視化をし、標的組織に刺入することができ、治療の再現性が可能であった。鍼通電により後仙腸靭帯への鎮痛効果、後仙腸靭帯に付着する多裂筋の末梢循環が促進により、後仙腸靭帯への緊張が軽減された結果、左殿部痛および鼠径部痛が改善したと考えられる。【結語】理学所見およびエコー所見を基に判断的治療を目的とした、超音波ガイド下鍼通電療法は有効であった。 キーワード:超音波ガイド下鍼通電療法、仙腸関節、エコー 069 -Sat-P4-16:24 非接触型3Dカラースキャナーを用いた美容鍼灸の効果検証(第一報) 1)一般財団法人日本美容鍼灸マッサージ協会 2)美容鍼灸・不妊・自律神経治療専門鍼灸院ブレア銀座・元町 3)宝塚医療大学保健医療学部鍼灸学科 4)一般社団法人京都科学捜査研究会 上田隆勇 1,2)、矢山和宏 3,4)、細島光洋 1,2)、 大井優紀 3)、平田耕一 3)、張建華 3) 【目的】現代社会では美容鍼灸に興味をもつ方、施術をする鍼灸師が増えている。しかし美容鍼灸の施術効果の研究は客観的評価に乏しく、多くの課題を残している。そこで、我々は評価面での課題を克服するため、非接触ハンディタイプ 3Dカラースキャナーを用いて施術前後の鼻唇溝部などの皮膚凹凸変化を数値的なデータをもって検討する。【方法】研究に同意を得られた 30〜60代女性 11人を対象者とした。 11名の美容鍼の施術内容と施術手順:顔面部の刺鍼、置鍼 10分。刺鍼部位:攅竹、絲竹空、魚腰、陽白、風池、懸釐、天容、下地倉、巨、觀、頬車、迎香、ほうれい線への水平鍼とする。使用鍼は 1番(直径 0.16mm)、2番(直径 0.18mm)鍼を用いた。評価方法: 3Dキャナーによる顔面部皮膚表面の凹凸を測定し、一回の実験につき鍼施術前( 5分間隔で2回)と施術直後、施術後 30分後、 1時間後に測定する。初回の鍼刺激前と第 10回の鍼刺激前の鍼刺激経穴部位の形態変化を測定比較した。【結果】今回の研究対象 11名全てに変化が見られた。30代では巨が0.25mm〜1.04mm、觀が0.27m〜1.03 mmの隆起の変化が多く見られた。 40〜60代では巨が-0.68mm〜0.25mm、觀が-0.80mm〜0.40mmの陥凹の変化が多く見られた。 11人中 5名が慢性腰痛で、 3名が花粉症であった。【考察】美容鍼灸による顔面部の変化の評価には 2次元写真評価と 3次元評価では異なり、 3次元画像解析を用いる評価には客観的、信憑性があると考えられた。今回の報告では、いくつかの問題点が見つかった。対象者の人数が少なく、事前に持病の聴収と弁証などが不十分であり、持病と顔面部の変化に影響があったのか判断出来なかった。今後、身体の評価との関連性も含めた検討が必要であると考えられた。さらに手技の改善に応用できる可能性も示唆された。 キーワード:鍼、美容鍼、3次元画像、画像解析 070 -Sat-P4-16:36 八卦頭鍼法による顔面・頸部の皮膚粘弾性への肌美容の検討 関西医療大学東洋医学研究センター  池藤仁美、吉野亮子、王財源 【目的】鍼による肌美容の科学的な検証については「美容」業界が注目するところである。とくに「シワの形成」は皮膚の粘弾度の低下が関与すると考えられている。そこで本研究は Cutometerを使用して頭皮に生じる肌の緊張を用い、顔面、頸部の皮膚粘弾性の変化による、顔面左右の「シワ」や「弛み」の改善について、頭皮鍼が及ぼす顔面左右の皮膚粘弾性への影響を検討した。【方法】パイロット研究段階のため、対象は本研究の趣旨に同意が得られた被験者 2名(女性)とした。刺鍼は、百会を中点とした八卦陣形頭皮鍼法を行い 20分置鍼した。評価は Cutometer MPA580(Courage Khaz aka社製, Germany)および、測定開口部 2mm径のプローブを用い、左右の顔面部(太陽)、頸部(扶突)の皮膚粘弾性を測定した。評価項目は、 R2(総弾力性)、R5(正味の弾性)、R7(回復弾性)とし、治療前、置鍼中 10分、抜鍼直後、抜鍼後 10分までの経時的変化を測定した。【結果】刺鍼前後には各項目別に変化があるものの、計測データをみると施術10分後から、施術直前に測定した顔面表皮の粘弾性や柔軟性に左右差の改善が認められた。【考察】美容関係のデータを調査すると、顔面左右の対称性は大きく「美容」と影響することや、顔面表皮の左右差による「顔の歪み」に悩んでいる人が多いことが報告されている。伝統的な中国医学には、鍼による左右陰陽の調整効果が、正中部位を中心とした八卦頭皮鍼という施術により、顔面左右の肌の粘弾バランスを調整し、頭皮の緊張が肌の弾性変化に対する有効性が示唆された。【結語】今後、鍼灸美容における顔面左右の皮膚粘弾性の肌変化の可視化により、肌の「シワ」や「弛み」その他の随伴所見に対する頭皮鍼の客観的な指標による有効性について、その評価が期待できる。 キーワード:八卦頭鍼法、皮膚粘弾性、美容 071 -Sat-P4-16:48 カラースケールガムを使用した鍼治療による咀嚼機能評価モデル 1)湘南慶育病院 2)永遠の小顔 3)東京医療福祉専門学校教員養成科 4)株式会社メディケア鍼灸マッサージセンター 青木奈美江 1,2)、仙田昌子 3)、間下智浩 3)、 鳥海春樹 1)、鈴木眞理 1)、三輪くみ子 1)、 加倉井和美 1)、大高ちがや 1)、小川修平 1,4)、 大内晃一 3) 【目的】良好な咀嚼機能の維持は、栄養摂取のみならず、美容や会話を主としたコミュニケーション能力維持の観点から、アンチエイジングの重要なカギとなる。鍼灸は咀嚼機能維持に重要な咀嚼筋群に対する非常に有用な治療ツールであるが、治療効果を簡便に評価する方法は確立されていない。本研究では取扱が非常に簡便な咀嚼力判定用ガムを使用し、咀嚼筋群への鍼刺激が咀嚼力に及ぼす影響を調査した。【方法】実験内容を十分に説明し同意を得た東京医療福祉専門学校に在籍する健常学生 13名(男性 1名、女性12名)を鍼介入群および対照群に分け、検証を行った。「咀嚼筋」の客観的指標としては、キシリトール咀嚼力判定力カラースケールガム(ロッテ社製)および色差計( TES -3250)を用いて咀嚼力を計測し、筋硬度計及び圧痛計( NEUTONE)を用いて咀嚼筋群の状態を計測した。結果はマン・ホイットニー検定、クリスカル・ワーリス検定により統計処理を行った。(有意水準は 5%とした)【結果】咀嚼力および側頭筋の筋硬度は、鍼介入群で有意な増加傾向を示した( p=0.034)【考察・結語】咀嚼筋群の状態維持・改善は美容やアンチエイジングに重要であり、咀嚼筋群への治療効果を簡便に評価する方法の普及は非常に重要と考える。本研究は元々咀嚼機能の低下を認めない健常学生を対象としたにも関わらず、鍼刺激後の有意な咀嚼力向上を検出できた。簡便な咀嚼力判定により鍼灸治療効果の評価をすることは、美容やアンチエイジングに対する鍼灸臨床において意義がある評価モデルと考えられる。 キーワード:咀嚼機能、咀嚼力、アンチエイジング、美容、評価 072 -Sun-P1-9:00 慢性腰痛者に対するトリガーポイントへの鍼刺激時間の検討 関西医療大学保健医療学部 はり灸・スポーツトレーナー学科 北川洋志、増田研一 【目的】本研究は慢性腰痛者を対象に、症状再現が生じるトリガーポイント部への鍼刺激が刺激時間ごとに局所痛覚感受性に対して及ぼす影響について検討した。【方法】対象は腰部に手術の既往がなく、下肢症状を有さずに 3か月以上腰痛を自覚している腰痛者で、第 4腰椎棘突起の高さで後正中線から外方約 2〜2.5cmの部位(腰部多裂筋)を圧迫した時に腰痛症状の再現を認めた 60例(平均年齢 22.1±2.1歳)とした。すべての対象者に対して、測定を実施する 1週間以上前に圧迫により腰痛症状の再現が認められた部位にエコーガイド下で鍼刺激を行い、症状再現が生じる組織の深度の調査を行った。また、刺激時間を 6群(単刺群、 1分置鍼群、 5分置鍼群、 10分置鍼群、 20分置鍼群、 30分置鍼群)に分け、各群 10名ずつになるように対象者を無作為に振り分けた。なお、本研究は関西医療大学研究倫理審査委員会の承認のもとで実施した(承認番号 :2 3-08)。すべて群において鍼刺激はステンレス鍼( 60ミリ・ 24号鍼)を用いて、圧迫により症状再現が生じた体表面上の部位で行い、目的の深度まで刺入した後、割り当てられた刺激時間だけ留置した。評価として末梢性感作の指標とされる圧痛閾値(以下、 PPT)を鍼刺激部位において刺激前後で測定した。測定機器は NEUTONE TAM-Z2 BT10(TRY-ALL社製)を使用し、プローブはφ 10半球タイプとした。【結果】鍼刺激前後の PPTにおいて 5分置鍼群、 10分置鍼群、 20分置鍼群、 30分置鍼群では有意な上昇を認めた( p<0.05)。また各群の鍼刺激前後の変化量を比較したところ、単刺群と 10分置鍼群、 20分置鍼群、 30分置鍼群の間に、 1分置鍼群と 10分置鍼群、 20分置鍼群、 30分置鍼群の間にそれぞれ有意な差を認めた (p<0.05)。【考察・結語】慢性腰痛者の症状再現が生じるトリガーポイント部への単回の鍼刺激における圧痛閾値上昇効果を得るには 5分以上の置鍼が必要であり、 10分以降は横ばいになることが示唆された。 キーワード:トリガーポイント、慢性腰痛、 PPT、圧痛閾値、刺激時間 073 -Sun-P1-9:12 腰痛の背景に心理状態が存在する可能性に関する多面的探索 1)中央大学理工学部 2)鍼灸新潟 3)ICM国際メデイカル専門学校 4)海沼鍼灸院 5)新潟医療福祉大学 渡邉真弓 1,2,3)、角田洋平 2)、浦邉茂郎 2)、 小川哲央 2,5)、中村吉伸 2)、岩村英明 3)、 大槻健吾 3)、立川諒3)、角田朋之 3)、 谷口美保子 3)、海沼英祐 4) 【目的】鍼灸治療の現場においてよくある主訴に腰痛がある。近年、器質的以外にメンタルヘルスも重要という報告があるが施術には腰痛の原因の探索が必要である。腰痛は主観的主訴であるのでアンケート調査が可能であり鍼灸に興味がある女性を対象に調査を行った。【方法】 20-60歳の女性を対象に全国横断地域性別年齢層化無作為抽出法による web調査を行い( n=1000)腰痛( -)(n=646)vs腰痛( +)( n=354)に二分して SPSSを用いて解析した。 1.腰痛の関連因子を抽出 (Chi squared test、Multivariate logistic regression) 2.腋窩、額、手、足の体温との関連( Student's t test)【結果】 Chi squared testにおいて 21因子を、 Multivariate logistic regressionでは、 8因子を抽出した(年齢、貧血との関連、消炎鎮痛剤の使用、ダイエット、夜間頻尿、サウナの使用、「冷え」、疲労感)。さらに、腰痛( +)の体温(腋窩 /額)は、腰痛( -)に比し有意に低かった( 36.18±0.36 vs 36.13±0.42, p<0.001)。さらに伝統医学的質問において、「冷え」に関する質問に YESの人が、腰痛を訴える率が高かった。【考察】腰痛も「冷え」も主観的症状である点が共通しており、患者の精神状態が影響する可能性は否定できない。心理的ストレスが、アドレナリン作動性のα受容体を刺激し血流低下を引き起こすことで身体症状としての腰痛が悪化させる可能性もある。心と体を一体に考える伝統医学的質問を有する鍼灸は患者のメンタルヘルスも重視し現代医学を補完できる可能性が高い。 キーワード:体温、ストレス、「冷え」、腰痛 074 -Sun-P1-9:24 非特異的腰痛患者の鍼治療効果に影響を及ぼす因子の探索 Keele STarT Back screening toolに着目 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 南雲世以子 1)、藤本英樹 1,2)、木村友昭 1,2)、 松浦悠人 1)、谷口博志 1,2)、安野富美子 1,2)、 古賀義久 1,2)、坂井友実 1,2) 【背景および目的】本研究は、非特異的腰痛患者を対象に鍼治療の効果に影響を及ぼす因子の探索を目的とした。本報告では Keele STarT Back screening tool(以下、SBST)に着目した検討を行った。【方法】研究デザインは、症例対照研究とした。対象は、過去 10年間に東京有明医療大学附属鍼灸センターを受診し、体幹動作時痛が再現できる非特異的腰痛患者28例とした。主要評価は、体幹動作で生じる痛みの Visual Analogue Scale(以下、 VAS)を鍼治療の前後で評価した。副次的評価は、鍼治療前の SBST、患者情報(性別、年齢、身長、体重など)とした。治療効果の判定は、 VAS差が 30mm以上の減少で Responder(R群)、29mm以下を non-Responder(NR群)とし、鍼治療は最大圧痛部への刺鍼を必須として、その他の治療を適宜加えた。統計解析は、治療前後 VASおよび SBS Tの正規性検定( Shapiro-Wilk)後、対応のある 2群間比較に Wilcoxon符号付順位検定、独立した 2群の比較には Mann-Whitney U検定を用いた。各検定統計量(Z)から、それぞれの効果量(r)を求めた。患者情報や S BSTの各質問項目と各群との関連性については、χ 2独立性の検定と連関係数(Φ)を求めた。有意水準は 5%とした。【結果】 28例の患者(男性 12名、女性 16名、年齢は、 48.4±14.1歳、身長 164.6±9.4cm、体重 59.2±10.7kg)のVASは治療前 41.6±21.4mm、治療後 18.9±17.3mmで有意差を認めた(p<0.01、効果量: r=0.61)。鍼治療前の SBSTは、 low risk 21例、 medium risk 6例、 high risk 1例であった。また、 R群(7例) 2.9±1.3点、 NR群(21例) 2.0±1.9点であり、有意な差は認められなかった(p<0.16、効果量: r=0.27)。SBSTの各質問項目と各群との関連性では、問 6、9に有意な差が認められた(p<0.05)。【考察および結語】非特異的腰痛患者の鍼治療の直後効果において、 SBSTの問 6または問 9を選択した患者は鍼治療の効果に影響を与える可能性が示唆された。この結果は、施術者・患者の双方に有用な情報であると考えた。 キーワード:非特異的腰痛、鍼治療、 Keele STarT Back screening tool、症例対照研究 075 -Sun-P1-9:36 慢性の腰下肢痛に対する鍼治療 ―施術方法の違いによる疼痛軽減の検討― 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 小糸康治、林健太朗、母袋信太郎、永野響子 【目的】当科では腰部脊柱管狭窄症(以下LSCS)に対し鍼治療を行っているが、罹病期間が長く質問紙の評価で心理社会的要因の修飾が疑われる症例は、下肢の末梢神経を対象とした鍼施術方法では疼痛評価 (VAS)の軽減が不十分な場合を経験する。今回、罹病期間が長く痛みの破局的思考評価(PCS)が高値であった患者を対象に、慢性疼痛に対して有用とされる鍼施術方法を加えた症例と従来の施術方法のみで行っていた症例をカルテより抽出し介入後の疼痛評価の変化を比較したので報告する。【症例】LSCS神経根型と診断され、腰下肢痛が10年以上継続しているPCSが35点以上の手術歴のない患者で、初診時より慢性疼痛患者に行う治療法を加えていた3名(前処置群:年齢64.0±7.0歳、VAS 65.3±27.3、 PCS 37.0±2.0(平均±SD)。比較する症例はLSCS神経根型で罹病期間3年以上、PCSが35点以上の手術歴がない従来の治療法で行っていた患者3名(比較対象群:年齢73.3±14.0歳、VAS 53.7±33.1、PCS 40.0±6.1(平均±SD)。【鍼施術方法】前処置群は初めに足三里-合谷への2Hz 15分の低周波鍼通電と三陰交、太衝、手三里の置鍼を行い、続けて自覚症状や病態に基づき選択した下肢末梢神経近傍への2Hz15分の低周波鍼通電を週1回の頻度で行った。比較対象群は下肢末梢神経近傍への低周波鍼通電を主に行っていた。評価は初診時と5回施術後のVAS、SF-MPQ、PCSを比較した。【結果】5回の施術後、VASとPCSの変化量は前処置群の方が大きい傾向であった。SF-MPQに著明な差は認められなかった。【考察及び結語】LSCS神経根型は比較的予後が良く自然経過で症状が軽快する例も少なくないが症状が遷延するケースもある。引き続き症例を増やして検討する必要があるが、そういった症例に対し下肢の神経血流改善を期待する施術方法の前に上脊髄性の鎮痛を期待する施術方法を行うことで、よりVASとPCSが改善する可能性が示唆された。 キーワード:鍼治療、腰部脊柱管狭窄症、慢性疼痛、 PCS、低周波鍼通電療法 076 -Sun-P1-9:48 腰部脊柱管狭窄症が北里方式経絡治療で改善した一症例 1)北里研究所病院漢方鍼灸センター鍼灸科 2)北里研究所病院漢方鍼灸センター漢方科 富澤麻美1)、近藤亜沙1)、伊藤雄一1)、井門奈々子1)、井田剛人1)、桂井隆明1,2)、伊東秀憲1,2)、伊藤剛1,2)、星野卓之1,2) 【目的】今回、腰部脊柱管狭窄症患者に北里方式経絡治療を行い、良好な効果が得られたので報告する。【症例】59歳、男性[主訴]右膝痛、腰痛、右腰から殿部・大腿後側痛[現症]身長:173.5cm、体重:61.2 kg、BMI:20.3、血圧:137/69mmHg、[既往歴]尿路結石(30歳)、高脂血症(56歳)、正常眼圧緑内障(56歳)[現病歴]X-1年トイレで座る時、両膝上部から大腿前面下部に膝関節屈曲時違和感を自覚。X年Y-10月、長時間の座位時に右腰から殿部の痺れを自覚し、 Y-8月に階段を降りる際、右大腿から膝上部に痛みを自覚したため、近医整形外科を受診したが、CR検査では異常を指摘されなかった。しかしX年Y-2月に1時間程度の座位で同部位の疼痛を自覚し、1km程度の歩行時に間欠性跛行が出現し、改善しないためX年Y月に当科を受診した。なお初診3日後に近医でMRI検査により右L3/4から4/5間の腰部脊柱管狭窄症と診断された。初診時のVAS(Visual Analog Scale;mm)は、右膝痛82、腰痛65、右腰から殿部大腿後側痛は82だったが、SLR、ケンプ、Kボンネットテスト、ケンプ徴候は全て陰性だった。【治療・経過】北里方式経絡治療に基づき脈診により主に腎虚証の本治法を行い、標治法として居・殷門・風市・委陽などに置鍼、志室に灸頭鍼を行った。3診目に懸鍾・秩辺に置鍼後、腰痛、右腰から臀部後側痛の痛みが軽減。5診目に右曲泉・承山に追加したところ、4km歩けるようになった。7診目、VASは右膝痛 36、腰痛4、右腰から臀部後側痛40と改善し、さらに右期門・日月に追加したところ間欠性跛行が消失したため、13診目に終診となった。【考察・結語】本症例は神経根型の腰部脊柱管狭窄症と考えられるが、鍼通電を用いなくても北里方式経絡治療にて標治を活用する事により、全体治療と腰下肢への刺鍼が末梢や脊髄の循環を改善させ、間欠性跛行などの症状にも有効である事が示唆された。 キーワード:北里方式経絡治療、腰部脊柱管狭窄症、腰痛、間欠性跛行 077 -Sun-P1-10:00 初診時車椅子で来院した腰部脊柱管狭窄症の鍼治療の一症例 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 判治由弘 1)、松浦悠人 1,2)、小田木悟1)、加持綾子 1)、坂井友実 1,2) 【目的】医療機関にて X-P検査で異常なしと判断され、薬物療法での効果がみられず、症状が増悪し車椅子で来院した症例に対し鍼治療を行うとともに、本学附属のクリニックを通して行った MRI検査で腰部脊柱管狭窄症と診断された 1例を報告する。【症例】 88歳女性。[主訴]左臀部から左下肢の痛みと左下腿の痺れ。[現病歴] X-1か月前から誘因なく主訴が現れ、近医整形外科を受診。処方されたロキソプロフェン等を服用したが効果は得られなかった。来院1週間前から増悪し、自立歩行不可となり日常生活での支障が強くなったため家族に付き添われ車椅子で来院した。[所見]身長 150cm、体重 55kg。体幹動作:痛みの為不可。下肢神経学的所見:正常。 SLR(-/-)、 FNS(-/-)、Newton(-/-)。足背動脈触知可。【鍼灸治療】初診時、 L5神経根症状を疑い、疼痛緩和を目的とし左最長筋、左臀部圧痛部位、左前脛骨筋への刺鍼を行った。 4診目以降、鍼通電療法を行った。【経過】初診時の鍼治療直後に疼痛が軽減した。初診治療後に圧迫骨折や腹部疾患等の精査が必要と考え、本学附属クリニックを紹介したところ A病院へ精査依頼となり、腰部脊柱管狭窄症と診断された。その後、トラマドール塩酸塩、エチゾラムと鍼治療を併用し経過観察となった。初診、 2診目、 7診目の Numerical Rating Scaleは安静時痛 560、寝返り時痛 10 7 0、動作開始時痛 10 5 0と推移した。 2診目以降、徐々に症状は軽快し、施術間隔を 1回/月にした。約 8か月後まで経過観察したが再燃することはなかった。【考察結語】薬物療法の影響も否定できないが、鍼治療は治療直後に体幹動作時痛が軽減したことから本症例の症状の軽快に寄与した可能性は大きいと考える。初診時クリニックへご高診を依頼した事は、より詳細な病態を捉える上で適切であったと考える。本症例の疼痛軽減に鍼治療が有効であると共に、病態を適切に捉えるために医療機関との連携の重要さが示唆される。 キーワード:腰部脊柱管狭窄症、医療連携、腰痛、下肢痛 078 -Sun-P1-10:12 下肢神経痛に対し漢方治療と鍼灸施術の併用で効果を示した一例 1)東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座 2)東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 3)はり処愈鍼 小泉直照 1,3)、高山真1,2) 【目的】西洋医学的治療の効果が限定的な腰椎椎間板ヘルニアに起因する下肢神経痛に対し、漢方治療と鍼灸施術の併用で効果を示した一例を経験したので報告する。【症例】 44歳、女性。[主訴]左足首外側から腓腹中央までの疼痛。[現病歴] X-3年の秋、突然左足の大腿部付近に痛みが出現。立位・歩行時に最も痛みが増強し、座位で緩和される。近医にて腰椎椎間板ヘルニアによる第 1仙骨神経根症状と診断された。鎮痛薬や神経ブロックなどの保存療法を行ったが、一時的な治療効果しか得られず、疼痛改善を目的に東北大学病院漢方内科を受診。[所見]身長 157.5cm、体重 77.6kg、 BMI 31.3 kg/m2、血圧 123/75mmHg、脈拍 91bpm。立位・歩行時の痛みは VAS 86mmであり、松葉杖を使用して歩行していた。脈診は沈でやや 。【経過】漢方薬処方(疎経活血湯・五苓散)開始と同時期に鍼灸施術を開始。症状は漢方医学的には血・痰湿、西洋医学的には腰椎椎間板ヘルニアと仙腸関節障害の併存と考え、活血・去痰、仙腸関節障害の緩和を目的に、両三陰交・足三里、左解渓・丘墟・陽陵泉・仙腸関節に刺鍼した。漢方治療に併用して鍼灸施術を 2回施行後、歩行時の痛みが減少し、減量を目的としたエアロバイクを行うことができるようになった。 3カ月間、計 5回の鍼灸施術後には松葉杖無しで歩行ができ、疼痛 VAS 10mmに減少、体重が 5kg減少した。【考察】漢方専門医とカルテ情報の共有など緊密な連携を取ることにより、活血・去痰などを目的とした漢方薬処方と、下肢神経痛と仙腸関節障害の緩和を目的とした鍼灸施術を行い、疼痛の軽減ができたと考えられた。また、これにより運動が行えるようになり、疼痛悪化要因である肥満への対処もできた。結果として相乗的に疼痛改善につながったと考えられた。【結語】西洋医学的治療の効果が限定的な下肢神経痛に対し、漢方治療と鍼灸施術の併用が有効である可能性が示唆された。 キーワード:漢方、下肢神経痛、病鍼連携、減量 079 -Sun-P1-10:24 上・中位腰椎の神経根障害と推測された腰下肢痛の一症例 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)東京有明医療大学保健医療学研究科鍼灸学分野 山口紗和 1)、高梨知揚 1,2,3) 【目的】身体診察を重ねる中で、上・中位腰椎の神経根障害による腰下肢痛と推測し鍼灸治療を継続した結果、良好な経過を得た症例を経験したので報告する。【症例】 64歳男性。主訴は左腰殿部、左大腿前面の痛み[現病歴] X-5日、長時間の車の運転と長時間の川釣りをした後から、左腰殿部・左大腿前面に立位が保持できないほどの痛みが出現した。数日経っても痛みが治まらず、 X-1日にマッサージを受けるも症状の改善がみられなかったため、当院を受診。[症状・所見]痛みのため杖歩行。間欠跛行( +)。胸腰部の前・後屈、自動での下肢伸展挙上、 L3棘突起およびその左外方 3cm押圧で主訴が再現、また、側臥位にて股関節伸展・内転位を取ると主訴が強く再現される。他動での左下肢伸展挙上テスト( -)、左大腿神経伸展テスト(-)。股関節可動域制限および痛み(-)。膀胱直腸障害(-)。痛みの程度は Visual Analogue Scale(VAS)にて79mmであった。【治療・経過】初診の段階で他科診療を促したものの、明確な診断病名は告げられなかった。当院では腸腰筋由来と上・中位腰椎神経根由来の両者の病態を考慮し、腰殿部、股関節前面、大腿前面の疼痛部位局所への置鍼、症状部位に流注する経絡上への温筒灸を行い、 2診目には大腿神経への低周波鍼通電療法を加えた。 3診目には、大腿前面筋の筋力低下、大腿前面の知覚異常が認められ始めたことから、改めて上・中位腰椎の神経根障害と推測した。また大腿外側部の痛みが新たに出現したため、外側大腿皮神経への低周波鍼通電療法を加えた。 5診目(治療開始後 5週)で痛みの VASが 6mmまで減少し、その後痛みは違和感程度となり、 9診目(治療開始後 15週)で完全に消失した。【考察・結語】本症例からは、明確な診断病名が告げられていない中でも、経時的に変化する患者の症状に対して細かな身体診察を繰り返すことで、治療効果に繋がる適切な病態把握が鍼灸臨床においても可能であると考えられた。 キーワード:腰下肢痛、鍼灸、身体診察、病態把握 080 -Sun-P1-10:36 痺れを伴う慢性腰痛に鍼通電療法が有効であった1症例 PDASとRDQ日本語版を指標として 筑波技術大学大学院技術科学研究科保健科学専攻鍼灸学コース Bolot kyzy Shirin、近藤宏 【目的】慢性腰痛は ADLに支障をきたし、腰痛患者のQOLに悪影響をもたらすことが知られている。今回、鍼施術が慢性腰痛患者に対して疼痛や痺れと共に ADL制限や QOLの改善が観察された症例について報告する。【症例】 64歳女性、主婦。主訴 :腰痛、右下腿部の痺れ感診断名 :変形性腰椎症[現病歴] X年8月にコンサート鑑賞後より帰宅時に突然、腰痛が出現した。翌日から右臀部から下肢にかけて強い痛みとしびれ感が発症し、数日間は夜間痛もみられた。市販の鎮痛剤を内服し様子をみたが症状に変化がないため、 11月本学附属医療センターを受診し鍼施術開始した。[所見]腰部両側及び右臀部の鈍痛と右下腿前面及び外側面部の痺れ感が常時ある。 X線画像で、 L2/L3及び L4/L5 DSN+、ケンプテスト+ /−、体幹後屈制限+【治療・評価】痛み及び痺れについては毎回鍼施術前にVASを用いて評価した( 100mmを想像できる最も激しい痛みまたは痺れとした)。また QOLについては RDQ日本語版、 ADL制限については PDAS日本語版を用いて、 4週間毎に評価した。【治療・経過】左右 L3/4、L4/5椎間関節部及び右総腓骨神経部に対して、鍼通電療法( 1Hz、15分間)を行った。右梨状筋下孔部・大殿筋部及び左右腰部脊柱起立筋部の圧痛点部に対して置鍼術( 15分間)を行った。初療時の腰痛 VASは25mm、右下腿の痺れ VASは30 mmであった。鍼施術毎に症状は改善し 6療目には腰痛VAS 5mm、7療目には右下腿の痺れ VAS 0mmとなった。なお、 RDQは初療時 8点が 4週後( 4療目)には 6点、 PDASは初療時 36点が 4週後( 4療目)には 19点となり、改善した。【考察・結語】本症例に対する鍼施術は疼痛や痺れの改善とともに QOLやADL制限の改善に役立つ可能性が示された。 キーワード:慢性腰痛、しびれ、鍼通電療法、 PDAS、 RDQ 081 -Sun-P1-10:48 医療機関における鍼灸治療の実態と養成校への要望に関する調査 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 松熊秀明、鍋田智之 【目的】鍼灸治療を導入していると考えられる医療機関を対象として「鍼灸治療の実施状況」、「求められる人材の条件」、「養成校での教育に求める事柄」などについて調査した。【方法】医療機関検索サイト「病院なび」を用いて「鍼灸」のキーワードで検索した関西 2府4県の医療機関116件を対象とした。調査は質問紙郵送法で実施した。調査期間は 2023年10月〜 11月とした。調査内容は 1)鍼灸治療の導入状況、 2)担当者、 3)導入場所、 4)診療科、 5)治療費、 6)開設日、 7)導入理由、 8)導入継続における必要事項、 9)採用条件、 10)求める知識・技術、 11)養成校への要望とした。本調査は森ノ宮医療大学学術研究委員会の承認を得て実施した(2023-062)。【結果】回収数は 30件(回収率 25.9%)であった。鍼灸治療の導入状況は 26施設( 86.7%)であり、 8施設は医師が治療を行っていた。 23施設が施設内で治療を行っており、主な診療科・部門は漢方外来、リハビリテーション科、整形外科であった。治療費は 22施設で徴収しており、 10施設で毎日治療が行われていた。鍼灸治療を導入する理由は 21施設が効果があるからとしたが、医療機関内での混合診療を可能とする必要を半数以上が訴えた。鍼灸師の採用形態は 17施設が経験者を必要とした。一方、採用する人材には鍼灸に関する高い技術と知識だけでなく、多職種連携の出来ることが求められており、養成校に対する要望でも西洋医学の幅広い基本的知識以外に電子カルテの操作や医療事務能力も求めた。【考察・結語】鍼灸治療を導入し、鍼灸師を採用している医療機関は少なからず存在している。その採用条件は経験者重視に現れるように、確かな知識・技術以外に多職種連携の能力や医療機関で働く基礎力であった。鍼灸師のフィールドを広げるためには養成校においてこれらの能力を持つ人材を育成するカリキュラムを検討する必要があると考える。 キーワード:実態調査、質問紙法、専門教育、病院、鍼灸療法 082 -Sun-P1-11:00 eスポーツプレイヤーが抱える身体愁訴に関するアンケート調査 1)大阪府鍼灸マッサージ師会 2)履正社国際医療スポーツ専門学校 3)森ノ宮医療大学 佐藤想一朗 1)、古田高征 1,2)、松熊秀明 3)、 鍋田智之 3) 【目的】近年、 eスポーツ競技人口が増加している。 eスポーツが身体にどのような影響を与えるのかを調べた報告は少なく不明な点が多いが、長時間の同一姿勢やモニター画面の凝視、身体操作が何らかの身体症状を引き起こすことが推測される。そこで、 eスポーツ教育を行う専門学校において学生が抱える身体愁訴を調査し、鍼灸マッサージ治療が eスポーツ領域へ活用できる可能性を検討した。【方法】対象は eスポーツ選手育成を行う専門学校に在籍する学生とした。調査内容は、競技歴、身体愁訴の有無とその内容、鍼灸マッサージ治療に対する期待とイメージ、鍼灸マッサージ治療の経験の有無などとし、 Googleフォームを用いて回答を得た。【結果】回答数は 57名であった。平均競技年数は 3.48 ±2.91年であった。競技歴は 1年以内の者から 10年以上の者まで様々であった。競技年齢を1年以内、 3年未満、 3年以上と区分し有愁訴率を比較した。 1年以内は「愁訴なし」約 50%、「時々ある」約 38%、「ある」約13%、 3年未満は「愁訴なし」 25%、「時々ある」約 50%、「ある」約 25%、 3年以上は「愁訴なし」約 31%、「時々ある」約 54%、「ある」約 17%であった。競技年数1年を超えると何らかの愁訴を抱えるものが増加していた。愁訴で多いものは、目が疲れている、首や肩がこっている、腰が痛いなどで、長時間の同一姿勢やモニター画面の凝視の影響と考えられた。受療経験の有無から治療のイメージを比較すると、経験者の方が「痛みを減らす」などポジティブな施術効果について高い回答であった。【考察・結語】愁訴の中で多く訴えられた首・肩・腰の症状は臨床で多く経験する愁訴であり、鍼灸マッサージ治療が eスポーツプレイヤーへの治療として活用できることが示唆された。治療のイメージは経験者でポジティブな回答が多いものの、「あやしい・効果がない」との意見もあり、個々の状況に合わせた施術や説明が必要と考えられた。 キーワード: eスポーツ、アンケート調査、意識調査 083 -Sun-P1-11:12 東京医療専門学校教員養成科附属施術所の患者動態調査 1)東京医療専門学校教員養成科 2)呉竹学園東洋医学臨床研究所 栗林晃大 1)、金子泰久 2)、上原明仁 2)、 小川裕雄 1) 【目的】東京医療専門学校教員養成科附属施術所は、過去 4回、動態調査が行われている。 2024年8月に代々木(東京都渋谷区)から四谷(新宿区)に移転するため、移転前の最終年度の患者動態の把握を目的に調査した。【方法】 2022年10月31日から 1年間の来所患者を対象に、総患者数、新規患者数、年間治療日数、総治療回数、月別と曜日別の患者数、男女比、年齢、居住地、通院年数、主訴、治療種別の割合を調査した。【結果】総患者数は 270人、新規患者数は 73人、年間治療日数は 200日、総治療回数は 7286回、月別患者数は、 6月が最も多く 798人、 8月が最も少なく 319人、曜日別の平均患者数は、水曜日が最も多く 39.9人、平均は36.4±2.2人であった。男女比は 30:70、平均年齢は67.1±14.5歳、年代は 70代(30.0%)、60代(21.1%)、 80代(19.6%)の順に多く、居住地は 85.2%が東京都で、市区町村では渋谷区(18.3%)、世田谷区(12.6%)、練馬区(11.3%)の順であり、 10年以上通院している患者は 73人(28.5%)、主訴は頚肩の凝り・痛み(32.6 %)、腰痛(20.4%)、下肢の痛み・痺れ(10.4%)、膝関節痛(9.6%)であった。治療種別は現代鍼灸(38.9 %)、経絡治療(25.2%)、中医鍼灸(24.4%)、手技(11.5%)であった。【考察・結語】本調査を通じて、当施術所の現状と動態を把握することができた。最も多い患者像は運動器系の主訴をもつ高齢者であることが明らかとなった。また、過去4回の調査と比較すると、第1回から本調査までの患者の平均年齢が上昇しており、長期通院している患者が多いことが推察された。施術所移転後にはこれらの患者層の中に、継続通院が困難となる者が出ることが推察される。 キーワード:実態調査、患者動態、専門学校附属施術所、調査報告、 ICD-11 084 -Sun-P1-11:24 はりきゅう・あん摩・柔道整復利用者のがん検診の受診状況 国民生活基礎調査を用いた反復横断研究 1)岡山大学医学部疫学・衛生学分野 2)鍼灸治療院簡松堂 松木宣嘉 1,2) 【目的】補完代替医療の利用者の医療機関への受診行動は、適切な医療を受ける機会の喪失を防ぐ意味で重要であり、補完医療の利用者はがん検診の受診率が高くなり、代替医療の利用者はがん検診の受診率が低くなることが報告されている。しかしながら日本ではこのような報告は乏しい。そのため日本で一般的な補完代替医療である、はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧・柔道整復の利用者のがん検診および健康診断の受診状況を調査し、補完代替医療利用者の医療機関受診行動について検討することとした。【方法】 2001年から 2013年に実施された国民生活基礎調査データに含まれる83,827人のうち、がん検診データのない20歳未満の15,610を除外した68,217人を研究対象とした。曝露ははり・きゅう・あん摩マッサージ指圧・柔道整復の利用、アウトカムは胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんの検診と健康診断の受診とした。統計解析はパラメーターをマルコフ連鎖モンテカルロ法にて推定したクロス分類マルチレベルロジスティック回帰モデルを用い、Age-Period-Cohort分析にてがん検診と健康診断のオッズ比と95%信用区間(credible interval: CI)を推定した。【結果】はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧・柔道整復利用者の胃がん検診、肺がん検診、大腸がん検診、子宮がん検診、乳がん検診受診の調整オッズ比はそれぞれ1.40(95%CI:1.35-1.44)、1.37(95%CI:1.34-1.40)、1.52(95%CI:1.49-1.54)、1.29(1.26-1.38)、1.37(1.33-1.41)、健康診断受診の調整オッズ比は1.29(1.27-1.31)であった。【考察・結語】はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧・柔道整復利用者は、すべてのがん検診、健康診断を受診する傾向にあることが示唆された。 キーワード:がん検診、健康診断、 Age-period-cohort分析、マルコフ連鎖モンテカルロ法、クロス分類マルチレベルロジスティック回帰モデル 085 -Sun-P1-11:36 大学附属鍼灸施術所におけるインシデント・アクシデントの分析 -落下鍼と鍼の抜き忘れを中心として - 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)東京有明医療大学附属鍼灸センター 菅原正秋 1,2)、木村友昭 1,2)、水出靖1,2)、 古賀義久 1,2)、高梨知揚 1,2)、高山美歩 1,2)、 谷口授1,2)、谷口博志 1,2)、藤本英樹 1,2)、 松浦悠人 1,2)、矢嶌裕義 1,2)、安野富美子 1,2)、 坂井友実 1,2) 【目的】東京有明医療大学附属鍼灸センター(以下、鍼灸センター)では、 2011年の開設当初からインシデント・アクシデントレポートシステムを導入している。今回は、2020〜2022年度の 3年間の報告を集計し、事象として比較的多くみられた落下鍼および鍼の抜き忘れについて詳細な分析を行った。【方法】調査対象は、鍼灸センターにおいて作成・保管されていたインシデント・アクシデント報告で、2020年4月から2023年3月までの3年間の192件とした。インシデント・アクシデントの種類と件数を集計し、「通常でない場所での鍼の発見(以下、落下鍼)」および「鍼の抜き忘れ」の項目にチェックが入っているものについては、さらに詳細な分析を行った。【結果】報告件数の上位は、落下鍼 106件(55.2%)、鍼の抜き忘れ 21件(10.9%)、出血・内出血 13件 (6.8%)であった。落下鍼の詳細では、発見場所は施術室の床が多く(71件)、鍼の種類は40mm・14号(25件)と40mm・16号(24件)が多かった。また、鍼の抜き忘れの詳細では、発見場所は施術室(9件)、患者の自宅(8件)が多く、施術部位は頭部・殿部(各4件)が多かった。鍼の種類は 40mm・16号(8件)、60mm・20号(5件)が多かった。患者被害としては、疼痛の残存が1件あった。抜き忘れた要因としては、多くの報告でダブルチェックまたはクロスチェックが不十分であったことが挙げられていた。【考察・結語】落下鍼の上位を占めた鍼は、鍼灸センターの年間使用本数の上位を占める鍼であった。また、鍼の抜き忘れについては、患者が自宅で発見した事例が8件あり、さらなる有害事象を引き起こす可能性をはらんでいた。しかし、今回は折鍼や臓器損傷などの事例は発生していなかった。落下鍼と鍼の抜き忘れの両事象は、使用鍼のカウントを怠っていることが発生要因と推測できるため、今後は施術者に対し、ダブルチェックおよびクロスチェックの徹底を促す必要があると考えられた。 キーワード:インシデント、アクシデント、有害事象、落下鍼、鍼の抜き忘れ 086 -Sun-P1-11:48 埼玉医科大学病院における鍼治療受診患者の実態調査院内外の診療科より依頼があった患者の分析 埼玉医科大学病院東洋医学科 田口知子、井畑真太朗、皆方英樹、村橋昌樹、中原崇、浅香隆、堀部豪、小内愛、山口智 【目的】本邦では鍼治療受診可能な大学病院は少なく、医療連携に関する実態調査報告はほとんど見当たらない。埼玉医科大学病院における鍼治療受診患者は、当院内診療科、及び、当院外医療機関からの紹介が多い。そこで今回は当科への受診経緯や診療依頼のあった疾患について分析した。【方法】調査期間は 2008年4月〜 2020年12月、対象は当科の鍼治療初診患者、調査項目は性別、年齢、受診経緯、診断名とし、当院電子カルテから情報を抽出した。【結果】初診患者総数は2939名、男性1210名(41.2%)、女性1729名(58.8%)、年齢は多い順に60歳代713名(24.3%)、70歳代 589名(20.0%)、50歳代 495名 (16.8%)であった。医師からの紹介は 2328名(79.2%)、そのうち当院他診療科からの紹介が 2028名(69.0%)、紹介元診療科は脳神経内科731名(36.0%)、当科漢方診405名(20.0%)、神経耳科 329名(16.2%)、整形外科133名( 6.6%)が多かった。診断名はベル麻痺 605名(29.8%)、緊張型頭痛 150名(7.4%)、ラムゼイハント症候群 114名(5.6%)、腰部脊柱管狭窄症 83名 (4.1%)が多かった。外部医療機関からの紹介は 299名(10.2%)、診断名はベル麻痺 48名(16.0%)、腰部脊柱管狭窄症31名(10.3%)、緊張型頭痛 12名(4.0%)が多かった。また、診断名のない機能性疾患の紹介も 504名(21.6%)と多かった。【考察・結語】当科における鍼治療受診患者の大半は医師からの紹介であり、医療連携が推進されていることが示された。今回の結果から、院内外共に医師から鍼治療に期待される疾患は、末梢性顔面神経麻痺、緊張型頭痛、腰部脊柱管狭窄症が上位であることが示唆された。一方、診断名のない機能性疾患で紹介される患者も散見された。 キーワード:大学病院、鍼治療、実態調査、医療連携 087 -Sun-P1-14:00世界マスターズ水泳選手権 2023九州大会ボディケア報告〜日本人と外国人選手の意識調査〜 1)東雲鍼灸治療院 2)(公社)福岡県鍼灸マッサージ師会福岡スポーツ鍼トレーナー部会 3)(公社)全日本鍼灸マッサージ師会スポーツケア委員会 4)関西医療大学東洋医学研究センター 仲嶋隆史 1,2,3)、吉野亮子 4) 【目的】令和5年8月4日〜11日開催された、世界マスターズ水泳選手権2023九州大会に出場する日本人を含む世界各国の参加選手約1500名に対するはり、マッサージ、ストレッチなどのボディケアを行った。予診カルテから日本人選手と外国人選手の違いについて検討することを目的とした。【方法】ボディケアを受ける際にカルテを作成し、その中の項目で現在どこが気になり、日頃どこかでボディケアを受診しているか受けているかどうかを聞く項目に記載してもらった。予診カルテのデータを入力し、調査項目ごとの記述統計量を算出した。次に利用者の特性、実施内容について各項目間の関連を調べるためにクロス集計、χ二乗検定を行った。データは名前を除いたエクセルデータであり、個人が特定できないものである。分析には SPSS Statisticas23を使用し、有意水準は0.05とした。【結果】利用者のうち日本人選手は983人(67.4%)、外国人選手は473人(32.4%)で、年代別では30歳台、40歳台、50歳台がそれぞれ約 20%であった。日本人選手は腰部と臀部、外国人選手は足の甲、裏の訴えが多かった。また外国人選手の方が日ごろから病院、鍼灸院、整骨院の他の様々なところでボディケアを行っている人の割合が多かった。【考察】日本人選手と外国人選手において訴える部位に違いが見られた。外国人選手は病院、鍼灸院、整骨院ではなくそれ以外の施術を受けていることから、カイロプラクティック、パーソナルな施術を日ごろから行っているのか、海外には鍼灸や整骨院といった類の施術所がメジャーではないことも考えられ、体型や教育の他、文化的、社会的背景の違いが示唆された。また日本人選手は整骨院が圧倒的多かったことはまだ鍼灸、マッサージの受療率がかなり低いことがここでも露呈した。 キーワード:ボディケア、鍼・マッサージ・ストレッチ、日本人と外国人 088 -Sun-P1-14:12 強化クラブ女性アスリートに対する健康状態や鍼灸に関する調査 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 鍼灸健康学科 高野道代、粕谷大智 【目的】新潟医療福祉大学では、女性アスリートの支援の一環とし女性が気になる美容面と女性特有の身体問題にセルフケアを通し、競技力の向上だけでなく心身問題を解決につなげることを目的に、女性アスリートを対象としたセミナーを実施した。そこでアスリートが考える身体の悩み、捉え方、鍼灸に対する認知について調査したので報告する。【方法】対象はセミナーに参加した女性アスリートや各監督・コーチなど35名、実施期間は2023年6月22日昼休み(対面)に開催した。セミナー内容は「女性が気になる美容面と女性特有の身体問題に対するセルフケア(35分)」とし、美容についての講座、耳ツボの体験、女性特有の身体問題に対するセルフケア実践に加えGoogleフォームで無記名によるアンケートを実施した。【結果】回答は 18名/35名(回答率 51.4%)。『年齢』は「18歳」「21歳」27.8%、「20歳」22.2%、『ここ半年で感じる悩み』では「生理痛」38.9%、「貧血」「頭痛」 27.8%、「PMS」「精神的な緊張」「冷え性」「悩みはない」16.7%、「生理不順」「競技に対する不安」 「摂食障害」11.1%であった。『悩みについての対応』は「特に相談したいと思わない」44.4%、「悩みはない」38.9%、「どこかに相談したい」16.7%、「現在通院中」5.6%であった。『鍼灸について』は「鍼灸という言葉は聴いたことがあった」66.7%、「鍼灸治療を受けたことがある」 33.3%であった。【考察・結語】本調査では回答した半数以上の者が悩みを抱えつつも多くの者が悩みについての対応は相談したいと思わないという結果であった。女性アスリートが抱える身体の問題は主にエネルギー不足、月経不順や無月経、骨粗鬆症などがあるがこれまで知識が浸透せずに対策が遅れていることが指摘されている。本結果からも自身の身体に対して目を向けることが十分でないことが明らかとなり、今後更なるフェムケアを含めた支援が必要と考えられた。 キーワード:女性アスリート、身体の悩み、鍼灸、実態調査、今後の課題 089 -Sun-P1-14:24 開業鍼灸院における鍼灸施術を離脱する要因のアンケート調査過去に鍼灸の受療歴がある患者を対象として 1)ここちめいど 2)らしんどう 3)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 4)はりきゅう処ここちめいど 5)玉川大学工学部ソフトウェアサイエンス学科 6)理化学研究所革新知能統合研究センター 分散型ビッグデータチーム 岩澤拓也 1,2)、松浦悠人 3)、米倉まな 1,4)、 柴田健一 5,6) 【目的】鍼灸院では突然、患者の来院が中断することがある。今回、過去に鍼灸の受療歴があり、らしんどう(以下、当院)に通院中の患者を対象に鍼灸施術の離脱理由、再受診動機と懸念点を調査した。【方法】当院に2023年12月1~27日に来院し、過去に鍼灸の受療歴がある患者を対象に Google formによる匿名のアンケートを実施した。アンケートの研究利用について全例から同意を得た。【結果】22例中18例(男性4例,女性14例)から回答を得た(回答率82%)。年齢は30代、40代が全体の83.3%であった。前回受けた鍼灸治療の満足度は、悪い6例(33.3%)、良い 5例(27.8%)、普通 4例(22.2%)、とても良い3例(16.7%)だった。離脱理由は、施術効果が感じられなかった・鍼灸が痛いまたは不快だった5例(27%)、引っ越しにより通院が困難になった 4例(22.2%)、施術内容に不安を感じた・施術費用が高く続けられなかった3例( 16.7%)であった。鍼灸再受診動機は、症状が再発または悪化した8例(44.4%)、過去に受けていた鍼灸に効果があった・新しい鍼灸師や施設を見つけ再度試した・家族や友人からのアドバイス・新たな健康問題が発生し鍼灸が効果的と考えた5例(27.8%)であった。鍼灸治療を再開する際の懸念点は、治療効果が得られないかもしれない 11例(61.1%)、施術費用が高く継続できるかの不安 7例(38.9%)、施術者との相性やコミュニケーションの問題5例(27.8%)であった。【考察および結語】過去に受療した鍼灸治療の満足度が高かった人は鍼灸自体に関係のない理由で継続が困難との回答傾向があった。一度鍼灸治療を中断しても症状が再発または悪化した際には鍼灸を再受診していた。しかし、費用対効果が重要視されるため、初回施術時の効果を実感できるかがリピートにつながると考える。 キーワード:開業鍼灸院、離脱理由、再受診動機、アンケート調査 090 -Sun-P1-14:36 統合医療施設の卒後研修修了者を対象としたアンケート調査 1)筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター 2)筑波技術大学保健科学部保健学科鍼灸学専攻 櫻庭陽1)、吉川一樹 1)、成島朋美 1)、 鮎澤聡1,2) 【目的】筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター(以下、当センター)は、医師をはじめとする多職種の医療スタッフと鍼灸あん摩マッサージ指圧(以下、あはき)師が協働する統合医療の臨床施設であり、特長を生かした卒後研修を行っている。今回、当センターの研修修了者を対象に、統合医療施設における鍼灸あん摩マッサージ指圧の卒後研修に関するアンケート調査を行った。【方法】当センター研修修了者79名にインターネットフォームによるアンケートを依頼し、 25名から回答を得た(回答率31.6%)。期間は2022年1月25日から17日間とした。アンケート項目は、性別、保有資格と就労状況、入所時の年代や経験、研修時の参加日数と患者数および満足度、卒後研修の必要性と学ぶべきこと、当センターの研修プログラムに対する興味等である。【結果】性別は男女各12、13名だった。全員が鍼灸師で、あん摩マッサージ指圧師は10名だった。4名(16.0%)が資格と関係の無い仕事をしていた。研修開始時の年齢は 20歳代(13名、52.0%)が最多で、 19名(76.0%)が資格取得直後に入所していた。平均外来参加日数は、 1年目が4.2日、2年目が3.0日、平均患者数は3.8名/日だった。研修の満足度は、 "満足(15名) "と"どちらかというと満足(9名) "をあわせて96.0%に達した。卒後研修の必要性は "個人に応じて必要 "が17名(68.0%)、最も学ぶべきことは "症状を改善できるあはきの施術技術 "が11名(44.0%)と最多だった。当センターのプログラムで最も興味が得られたのは、 "充実した患者数 "と"様々な症状を経験 "だった。【考察】当センターの卒後研修の満足度は高かったが、統合医療施設の特長を生かしたプログラムが最大の魅力になってはいなかった。卒後研修のニーズは、多くの患者や様々な症状を経験して、効果的な施術技術を身につけることが優先されると考えた。 キーワード:統合医療、卒後研修、鍼灸あん摩マッサージ指圧 091 -Sun-P1-14:48 湘南慶育病院鍼灸科における受診動機の解析 1)湘南慶育病院 2)株式会社メディケア鍼灸マッサージセンター 3)永遠の小顔 小川修平 1,2)、鈴木眞理 1)、青木奈美江 1)、三輪くみ子 1)、加倉井和美 1)、大高ちがや 1)、仙田昌子 1)、大内晃一 1)、鳥海春樹 1) 【目的】超高齢化社会では、医療ニーズが多様かつ複雑化している。このような状況において鍼灸は多角的な対応が可能な治療法であるが、受療者の鍼灸受診ハードルは高く、十分な活用はなされていない。本研究では地域に密着した総合病院である湘南慶育病院鍼灸科の現状から受診動機を解析した結果を報告する。【方法】当院が開設された2017年11月から2021年10月末までに当院鍼灸科を受診した691人の初診時の情報と医療機関の紹介情報を院内の電子カルテから抽出し、年齢、性別、受診動機、主訴などの項目により分類し、傾向を考察した。【結果】年齢は最低が5歳、最高が95歳、平均年齢は65歳であった。性別は男性が240人、女性が451人、受診動機は、動機不明の164人を除いた 527人のうち、知人や家族の紹介(口伝え)が41%、医師の紹介が25%、市の助成券が 10%、お灸教室などの普及活動が10%、病院の広報活動が 3%、ホームページ等のインターネット情報が2%、テレビが 1%であった。初診時の主訴は痛みが51%、こりが13%であった。【考察】先行研究の矢野らは鍼灸療法を知るきっかけは主に口伝えであったと報告している。当院の受診動機においても最も多かったのは口伝えであった。当院の特徴としては、鍼灸科が病院内にあることによって医師・医療機関からの紹介が多いこと、当院所在地の藤沢市には無料で数回鍼灸療法が受けられる助成券があるため、それが受診動機になった件数が多いことが明らかになった。さらに当院では自宅でやって頂くことを目的としたお灸講座などの鍼灸体験イベントを多く行っており、これらも受診動機となった可能性が高い。【結語】先行研究と同様に最も受診動機として多いのは口伝えであったが、医療機関内に鍼灸外来が設置されていること、医療機関を「場」とした鍼灸体験イベントによる普及活動を介在させることなどが当院において特徴的な鍼灸受診ハードルを下げる要因となっていると考える。 キーワード:地域医療、受療率、医師連携、鍼灸、セルフケア 092 -Sun-P1-15:00 オンラインを活用した開業鍼灸師による共同研究の実施(第 2報)多施設での症例集積研究を題材として 1)ここちめいど 2)針灸かいしん堂 3)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 4)玉川大学工学部ソフトウェアサイエンス学科 5)理化学研究所革新知能統合研究センター分散型ビッグデータチーム 6)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 7)田中はり灸療院 8)はりきゅう処ここちめいど 加藤久仁明 1,2)、松浦悠人 3)、柴田健一 4,5)、金子聡一郎 1,6)、小坂知世 1,7)、米倉まな 1,8) 【目的】開業鍼灸院と研究機関が協力することで症例数確保の課題を克服できる可能性があり、今後も多施設で実施されることが望ましい。そこでメンタル疾患に興味を持つ鍼灸師のグループが研究機関と共同で行った研究発表について、どのように遂行されたかを分析した。【方法】第71回全日本鍼灸学会学術大会(2022年,東京大会)にて発表された「鍼灸院におけるうつと不安症状を有する患者の実態調査(第1報)多施設での電子システムを用いた集積の試み」の発表に関わる当時利用したSNSの記録などから分析した。【結果】当該の研究に対してグループ内では25名が関心を示し、うち11名が研究分担者であった。外部の協力者は7名で内4名はグループと同じ SNSを共有した。データ集積には10施設が参加し、各居住地は愛知県が3か所、神奈川県が2か所、三重県、宮城県、広島県、新潟県、東京都が各1か所であった。SNSの利用期間は2021年2月3日〜 2022年7月24日で、書込み回数は合計3146回、最多は筆頭著者の 1160回であり、次いで研究指導役の374回、3位がマネジメント・データ解析役の337回であった。当研究に関するミーティングはWeb会議システムにて合計 45回実施された。グループ内における役割はリーダー、症例・調査報告、マネジメント、データ集積と解析、議事録作成、抄録作成、発表資料の作成、発表に分けられた。また大学教員と情報学博士、電子システムの専門家の協力のもと遂行された。【考察および結語】オンラインを活用した結果、物理的な距離は障害とはならなかった。ログからは電子システムの導入について理解度の差や問診票のカスタマイズの相談など専門家のフォローは必須であったことが示唆された。また書き込み回数の結果から、約1/3を占めるリーダーの牽引力は大きいが、研究指導役やマネジメント・データ集積の担当者の書き込みが次いで多いことから、その役割の重要性が示唆された。 キーワード:開業鍼灸院、多施設、オンライン、共同研究、データ集積 093 -Sun-P1-15:12 無料温灸器配布によるレディース鍼灸認知への影響 1)森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 2)森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科 仲村正子 1)、金本明梨 2) 【目的】「生理の貧困」は経済的な貧困だけでなく、適切なケアや知識にアクセスできないことや、機会を失うことなども含まれる。鍼灸治療は月経痛や PMSの予防に有用である可能性が示されているのにも関わらず、受療者は少ない。そこで本研究では、鍼灸啓発を目的として温灸器を無料配布し、使用感や意識変化について調査した。【方法】理学療法学科と鍼灸学科の女子学生210名を対象とし、無料で使用できる温灸器と生理用品を女子トイレに設置した。設置期間5ヶ月を経た後、アンケート調査を実施した。調査項目は、温灸器配布に関する項目とレディース鍼灸の認知度に関する項目とした。レディース鍼灸認知度の無料温灸器設置前後での比較にはウィルコクソン符号順位検定を行った。【結果】5ヶ月間で配布した温灸器は 2156個であった。回答者は 160名(回答率76.2%、19.4±1.1歳)であった。無料配布されていた温灸器は、使用しなかった61.9%、使用した38.1%であった。使用した理由は、生理痛以外の身体症状があった47.5%、身体症状はないが温灸器に興味があった 45.9%、生理痛があった26.2%で、使用しなかった理由は、在庫がなく使用できなかった32.3%、設置されていることを知らなかった29.3%、生理痛や身体症状がなかった28.3%であった。無料温灸器設置前後で月経関連症状に対する鍼灸の有効性に関する認識を比較すると、設置前より設置後で有効であるという認識の者の割合が有意に上昇した(P<0.01)。【考察】レディース鍼灸の認知は設置前後で比較し28.8%上昇した。トイレで温灸器を配布するという方法はレディース鍼灸の啓発に対して有効であると考えられる。【結語】今後は無料生理用品や温灸器の設置を大学の全棟に拡大し、女子学生の生理の貧困に関する問題を解決できるよう検討を進めていく。 キーワード:温灸器、レディース鍼灸、アンケート調査、無料配布、太陽 094 -Sun-P1-15:24 地域鍼灸院と漢方診療を行う医師との医療連携の取り組み 東京女子医科大学附属東洋医学研究所 水野公恵、蛯子慶三、木村容子、高田久実子、辻恭子、母袋信太郎、溝口香絵、高橋海人 【目的】当鍼灸臨床施設では、漢方診療を行う医師から地域の鍼灸院に関する情報提供の要望があり、2017年2月より「紹介できる鍼灸師リスト」(以下、リスト)を作成している。今回、リストの改良と運用の見直しを図るにあたり、漢方診療を行う医師と鍼灸師の医療連携の現状を探るため、リストの利用状況等についてアンケート調査を実施した。【方法】リスト配布対象者である当研究所クリニックで漢方診療を行う医師22名に対して、当研究所クリニック以外の医療機関における使用状況、意見や要望などについて選択式と自由記載にて2023年12月にアンケートを実施した。【結果】22名中21名の回答が得られた。リストの使用状況については、「使用したことがある」4名(19.0%)、「使用したことがない」13名(61.9%)、「リストを知らなかった」4名(19.0%)であった。使用した理由(複数回答可)として 4名中 4名が「患者からの要望」と回答した。使用しなかった理由(複数回答可)として 13名中 6名が「当研究所の鍼灸臨床施設を紹介しているから」、13名中5名が「紹介したい地域がリストに載っていないから」と回答した。リストを知らなかった4名中3名は「今後リストを使用したいと思う」と回答した。自由記載では、掲載地域の拡充、詳細な料金と鍼灸師のプロフィールの掲載などの内容に関することから、リストの電子化の希望といった使用方法に関すること、鍼灸師の掲載条件を知りたいなどの意見や要望がみられた。【考察・結語】リストを使用する医師が約 20%いたことなどから、紹介リストがあるということで患者さんにすすめやすくなったと考えられた。また、鍼灸師との連携に前向きな医師が多く、ニーズの再確認ができた。医師からの意見や要望を取り入れたリストの作成ならびに継続的な情報提供が必要と思われた。 キーワード:医療連携、アンケート、鍼灸院、漢方診療を行う医師 095 -Sun-P1-15:36 鍼灸院におけるうつと不安症状を有する患者の実態調査(第3報)電子システムを用いた集積 1)ここちめいど 2)はりきゅう処ここちめいど 3)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 4)玉川大学工学部ソフトウェアサイエンス学科 5)理化学研究所革新知能統合研究センター 分散型ビッグデータチーム 6)市ヶ谷ひもろぎクリニック 米倉まな1,2)、松浦悠人3)、柴田健一4,5)、 金子聡一郎1)、赤石頌伍1)、岩澤拓也1)、 内田ちひろ1)、大杉美奈1)、加藤久仁明1)、 小坂知世1)、近藤美貴1)、杉山英照1)、 本郷誠司6)、木村友昭3)、坂井友実3) 【目的】鍼灸院に来院するうつと不安症状を有する患者の実態を明らかにする事を目的に、多施設開業鍼灸院で電子システムによるデータ測定を行った。【方法】2021年11月1日〜2023年3月31日の期間、オンラインサロン「ここちめいど」に所属する開業鍼灸院10施設に来院した初診および再診患者を対象とした。患者情報の調査には電子カルテシステム(リピクル,株式会社 Carecle)の問診票を用い、予診機能にて事前送付または来院時に収集した。うつと不安症状の評価はひもろぎ自己記入式うつ尺度(HSDS)とひもろぎ自己記入式不安尺度(HSAS)を指標とし、電子評価システム(アンサポ,株式会社ブレーン)を用いて来院時に測定した。アンサポの測定情報は電子カルテに紐づき、電子カルテ上に保存された。なお、院内にポスターを掲示するとともに予診票に研究の説明を添付し、同意撤回の自由を説明した上で同意の有無を確認したうえで実施した。【結果】470例が解析対象となった。対象の平均年齢は 43.9(13.5)(mean(S.D.)歳、男性157例、女性312例、その他1例。HSDSは13(7-18)中央値(四分位範囲))点、 HSASは12(6-17)点。自覚症状上位3つは眼精疲労158例(34%)、全身倦怠感86例(18%)、不安感82例(17%)。現在通院中の医療機関は、なし121例(26%)、内科116例(25%)、精神科/心療内科が60例(13%)であった。精神科/心療内科に受診歴がある患者の内、診断病名はうつ病が17例(28%)、罹病期間10年以上が15例(25%)、精神科/心療内科での治療内容は投薬が52例(86%)、治療満足度は「どちらでもない」が26例(43%)、受診動機は知人・家族に薦められた為が24例(40%)でそれぞれ最多であった。【考察および結語】セッティング施設の特徴から限界付きの結果ではあるが、鍼灸院への来院患者のうち、13%が精神科/心療内科に受診していた。病歴の長いうつ状態の患者が薬物以外の治療法として鍼灸に期待し、来院していることが示唆された。 キーワード:多施設、開業鍼灸院、うつ症状、不安症状、電子システム 096 -Sun-P1-15:48 看護介護職員が有する自覚症状に対する自己対処法アンケート調査 1)公益財団法人積善会曽我病院 2)ここちめいど 3)鍼灸マッサージ蕾 4)はりきゅう処ここちめいど 5)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 足立恵子1)、足立修2,3)、米倉まな2,4)、 金子聡一郎2,5) 【はじめに】看護師・介護職員は病院、介護施設、訪問看護ステーションなどに勤務し、食事介助、入浴介助、移乗動作、医師の診療介助などさまざまな業務を行っており精神的、身体的に過酷な状況にある。その影響から腰・背部痛などの身体症状や夜間勤務による睡眠障害、食欲不振や胃腸障害などを有していることが明らかになっている。本研究では看護師・介護職員の自覚症状およびその自己対処法を調査すると同時に鍼灸治療の利用状況の調査を行った。【方法】調査対象:公益財団法人積善会曽我病院看護部(看護師、介護福祉士、看護助手)177名、調査方法:アンケートフォーム(Googleフォーム)、調査内容:年齢、臨床年数、自覚症状および対処法等、データ収集期間:2023年10月16日〜2023年12月10日。【結果】24名(女性17名、男性7名)の回答を得た (回答率13.6%)。臨床年数の中央値は12.5年(範囲0-33)、職種は看護師が21名(87.5%)、21名(87.5%)が夜勤のある勤務態勢であった。16名(66.7%)が業務を阻害しうる症状を有しており、一番困っている症状は疲労(5名)、腰痛(5名)、睡眠障害・肩こり(3名)であった。19名(79.2%)が症状改善のための対処法を実行しており、9名(37.5%)が睡眠対処法としては最も多かった。鍼灸治療を対処法としていたのは2名(8.3%)であり、「行ったことがない」「分からないから」などが鍼灸を受けない理由として多かった。【考察および結語】今回の調査では、看護師および介護職員の約4割は睡眠によって業務を阻害している症状に対応していた。しかし、睡眠障害を有しているケースもあり、その場合は自己対処が困難であると推測される。現状として看護師・看護職員の鍼灸の利用率は低いが、今後、それらの症状に対し鍼灸を利用してもらうためには、看護師・介護職員にまずは鍼灸について知ってもらうことが必要であると考えられた。 キーワード:看護師、介護職員、自覚症状、自己対処法、鍼灸利用状況 097 -Sun-P1-16:00 冷え症とバター摂取頻度との関連:横断研究 1)慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学 2)大阪国際大学短期大学部栄養学科 3)平成医療学園専門学校 4)平成クリニック 宮嵜潤二 1,2,3)、久木久美子 2)、久保益秀 3,4)、 坂井孝2) 【目的】バターは飽和脂肪酸を含み心血管系への悪影響が報告されている。乳製品の冷え症に対する影響は東洋医学的な観点から議論がある。バターの摂取頻度と自覚的冷え症との関連について明らかとするため横断的に検討した。【方法】対象は2014-2023年の調査に同意した18-70歳の男女583名を解析対象とした。欠損データ処理は連鎖方程式による多重代入法を用いて50セットの完全データセット、各代入プロセスのイテレーション数20回で欠損値を推定した。調査参加者には生活習慣関連の質問票を回答させた。バター摂取は自己記入式の回答で、摂取頻度を「ほとんど食べない」「1-2回/月」「1-2回/週」「3-4回/週以上」でカテゴリー化した。冷え症は「寒がりである」「手足が冷える」の両方を回答した者とした。解析は「ほとんど食べない」を基準とした各摂取頻度カテゴリーによる冷え症のリスクを、年齢、性別、 BMI、飲酒、喫煙、睡眠時間、運動、婚姻、ストレス、食事摂取頻度(乳製品、肉、フライ、野菜、鮮魚)で共変量調整した modified Poisson回帰モデルにより発生率比( Incidence Rate Ratios;IRRs)と95%信頼区間( Confidence Intervals;CIs)で推定した。解析ソフトは R version 4.3.2を使用した。【結果】本研究で冷え症だった者の欠損補完後の中央値は109名( 18.7%)であった。バターを「ほとんど食べない」を基準にした「 1-2回/週」「3-4回/週以上」摂取頻度の冷え症の多変量調整 IRR(95%CI)はそれぞれ 1.62(1.01-2.58)、2.12(1.26-3.59)、傾向性の p=0.017、男性で 7.32(1.39-38.60)、7.08(1.63-30.9)、傾向性の p=0.040であった。また 30歳未満の「 3-4回/週以上」で 3.79(1.34-10.80)、傾向性の p=0.035であった。女性および 30歳以上は関連を示さなかった。この結果は欠損データを除外した感度解析でも同様であった。【考察・結語】冷え症はバター摂取頻度との間で正に関連し、男性、若年で顕著であった。 キーワード:冷え症、バター摂取、生活習慣、多重代入、横断研究 098 -Sun-P2-9:00 鍼灸臨床における HADスケールを用いた不安・抑うつ調査 1)鈴鹿医療科学大学鍼灸治療センター 2)鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 光野諒亮 1)、浦田繁2) 【目的】「疼痛」は、不安や抑うつを増加させるが、 「疼痛」患者が多い鍼灸治療院において、それら精神状態を調べたものは少ない。また一般人との比較を行った研究は、我々の知りうる限りみられない。本研究では、鍼灸患者と一般人を対象に HAD(Hospital Anxiety and Depression)スケールを用いて「不安度」と「抑うつ度」を調査し比較検討した。【方法】対象は、鈴鹿医療科学大学附属鍼灸治療センター患者67名(センター群)年齢53.3±19.4歳(平均値±標準偏差、以下同様)、鈴鹿市主催救急健康フェア参加者 78名(フェア参加群)年齢54.7±17.5歳とした。調査において HADスケールは自己記入式とし、年齢・性別・症状を聴取した。解析は、 student t-testを用いて群間比較した。【結果】「不安度」は、全体にてセンター群 7.5±2.2点(中央値7、以下同様)・フェア参加群5.2±3.9点 (4)、男性にてセンター群7.7±2.4点(7)・フェア参加群 4.3±3.0点(4)、女性にてセンター群7.4±2.0点(7)・フェア参加群 5.5±4.1点(4.5)となり、いずれもセンター群が有意に高い点数となった(p<0.01)。「抑うつ度」は、全体にてセンター群10.6±2.0点(11)・フェア参加群5.8±3.1点( 5)、男性にてセンター群10.6±1.9点(11)・フェア参加群 6.7±3.3点(7)、女性にてセンター群 10.6±2.0点(11)・フェア参加群 5.5±3.0点(5)となり、いずれもセンター群が有意に高い点数となった(p<0.01)。【考察および結語】「不安度」「抑うつ度」ともにセンター患者では、フェア参加者より有意に高い点数を示したことから、症状をもつ一般人よりも鍼灸患者は、不安や抑うつが強いことが示唆された。抑うつ度について中央値が11点を示した。11点以上は、うつ病等の可能性を示唆している。したがって鍼灸師は、患者の精神的な背景に常に留意しなければならないことが示唆された。 キーワード:不安、抑うつ、 HAD、鍼灸、患者 099 -Sun-P2-9:12 ミラーニューロンに着目した自閉症スペクトラム障害の鍼灸治療法 ―難治性てんかんの併存する症例 ― 1)一般財団法人ファジィシステム研究所 2)ヤマック鍼灸アカデミー 3)九州工業大学 山川烈1,2,3) 【目的】自閉症スペクトラム障害はミラーニューロンの脆弱化によるという仮説に基づき、ミラーニューロンの活性化方法を、また、てんかん発作抑制のための効果的鍼灸施術法を求める。【症例・現病歴・所見】52歳。男性。3歳のころに自閉症と診断。以来、自閉症スペクトラム障害。48歳の時、最初のてんかん発作(全身が硬直、救急車で病院へ搬送)。その後4カ月の間に8回のてんかん発作。脳神経内科で抗てんかん薬(レベチラセタム錠、ビムパット錠)が処方されてはいるが、自閉症スペクトラム障害に対する治療は全く無し。【治療・経過】西洋医学によるてんかん治療と並行して、鍼灸の介入により、「自閉症スペクトラム障害の改善」と「てんかん発作の抑制」の同時治療を試みた。刺鍼部位は、耳介の三角窩に一穴、耳甲介舟に三穴、耳甲介腔に一穴、そのほか耳門、聴宮、聴会、合谷、手三里。毫鍼(0.16mmΦ)を適切な深さに置鍼(20分間)した後、各穴に電子温灸(メンシン BS-15)を 10壮ずつ施し、最後にそれら全てに円皮鍼(パイオネックス 1。5mm)を貼付。三か月程度でコミュニケーション能力が上がり、てんかん発作も、鍼灸介入後 20カ月の間に 4回に抑制できた。【考察・結語】 Mirella Daprettoらは、高機能自閉症児の前頭葉下部のミラーニューロンが活動していないことを fMRIで示した(2006)。Masatoshi ITOHらは、合谷の TENS刺激により前頭葉眼窩回が賦活化されることを報告した(2001)。一方、迷走神経刺激はてんかん発作の抑制と同時に、やる気の亢進にも有効であることが知られている。これらのことを踏まえ、本論文では、耳介迷走神経、耳介側頭神経(耳門、聴宮、聴会)および合谷、手三里の鍼灸刺激が、自閉症スペクトラム障害の改善とてんかん発作の抑制に有効であることを示した。今後の課題は、その機序を明らかにすることである。 キーワード:ミラーニューロン、自閉症スペクトラム障害、難治性てんかん、うつ症状、耳介迷走神経 100 -Sun-P2-9:24 パニック症患者に対する治療に重要と感じたこと 鍼灸治療と目標設定を用いた 1症例 1)ここちめいど 2)女性専門治療院はり灸さくら堂 3)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼 灸健康学科 4)はりきゅう処ここちめいど 外松恵三子 1,2)、金子聡一郎 1,3)、米倉まな 1,4) 【はじめに】患者が「良くなってほしい」と願うことは施術者にとって切実な感情である。しかし、施術者が改善に注目しすぎると、患者本人が焦りを感じたり、自身を否定してしまうケースがある。今回、 1人で外出が困難なパニック症の患者に対して鍼灸治療と平行して改善を押しつけない態度と目標達成を共有することにより通学が可能となった症例を経験したので報告する。【症例】[主訴]外出困難、 31歳、女性、身長 159cm、体重 48kg。X-1年7月、仕事のストレスから外出が困難となり近医精神科にてパニック症と診断、標準治療にて改善した。新型コロナワクチン接種後の翌朝にパニック発作が再燃し、その後回復するも再燃を繰り返していたため、 X年11月鍼灸治療の開始となった。[随伴症状]胸腹部不快感、悪夢、早朝覚醒、手足冷え、月経痛。【治療】[治療方針]鍼灸治療、目標設定を行い、対話により施術者の価値観を押しつけない姿勢で望む。[鍼灸治療] Kiiko Style(腹部圧痛の消失を目標に取穴)、灸頭鍼。[薬物療法]半夏厚朴湯、桂枝加竜骨牡蠣湯、ロフラゼプ酸エチル。[目標設定]大(職業訓練校に通う)・中(駅まで一人で往復)・小(郵便局・眼科・美容院まで往復)目標を設定。【経過】「改善させたい」という施術者側の思いは極力表出させず、傾聴を交えて施術に臨んだ。[初診]一人で寝る、診察室に入れない。[7診目]母親同伴にて外出が可能。[20診目]学校に通うという目標を設定、中目標に困難を感じ、小目標を段階的に設定。 [22診目]「よくなる」ことについて患者の思いを傾聴する。[23診目]単独で中目標をクリア。[32診目]通学が可能となり開始となる。【考察および結語】施術者の「良くなってほしい」という思いは、ときとして病を抱える本人の否定につながることがあると考えられた。本症例では、患者との対話により価値観を押しつけない姿勢で望み、かつ目標達成を共有することで、患者の改善を促したと推測された症例であった。 キーワード:パニック症、価値観を押しつけない、目標設定、鍼灸治療、傾聴 101 -Sun-P2-9:36 うつ病患者に対する鍼療法と認知行動療法の併用を試みた一症例 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京池袋鍼灸院・鍼灸臨床センター 脇英彰 1,2)、鈴木卓也 1,2) 【目的】うつ病患者の治療には薬物療法、認知行動療法(CBT)が推奨されている。近年、国外において推奨治療に鍼治療を併用した症例についての報告が散見されるようになったが、国内において「はり師」が鍼治療にCBTを併用した例は報告されていない。【症例】30代、男性、事務職。[主訴]抑うつ、不安、倦怠感、入眠困難および中途覚醒。[既往歴]アトピー性皮膚炎。[現病歴] X-5年、職場のストレスにより転職、 X-2年4月に心療内科を受診し、うつ病と診断され、薬物療法(抗うつ・抗不安薬)を開始する。 X年4月、倦怠感がさらに強くなり、午後勤務のみとなる。 X年9月、週 1回の休日午後勤務となり、症状の改善を求めて鍼治療とCBTを開始することとなった。【方法】鍼治療は Yin Xらの研究をもとに、内関、神門、三陰交、安眠、風池に置鍼、神庭と百会、左右の四神聡に100Hzの鍼通電を10分間実施し、各身体症状に応じて単刺を行った。治療頻度は 1回/週を基本とした。CBTは「睡眠日誌」のアプリを用いて、睡眠衛生指導などを 5週間行い、その後、セルフヘルプとして自記式の書籍を用いて認知再構成法などを 5週間行った。効果判定は、不眠重症度尺度(ISI)、抑うつ尺度(PHQ-9)および不安尺度(GAD-7)とした。【経過】初日では ISIが15点(中等度)、PHQ-9が16点(中等度〜重度)、GAD-7が12点(中等度)であったが、6週後でISIが9点(軽度)、PHQ-9が13点(中等度)、 GAD-7が4点(正常値)となり、精神科医との相談の上で減薬を開始した。 7週後では通常勤務の復帰までは至らず退職となった。12週後ではISIが2点(正常値)、PHQ-9が9点(軽度)、GAD-7が3点(正常値)となり、復職に向けて活動できるまでに回復した。【考察・結語】本症例は、薬物療法に加え、はり師による鍼治療と CBTの併用により、概ね良好な経過をたどることができた。今後は鍼治療のみの場合と CBTを併用した場合との比較検討に発展させたい。 キーワード:抑うつ、不眠、認知行動療法 102 -Sun-P2-9:48 鍼灸と湯液による治療が奏効した難治性身体表現性障害の1症例 北里大学北里研究所病院漢方鍼灸治療センター 伊藤剛、富澤麻美、近藤亜沙、伊藤雄一、井門奈々子、井田剛人、桂井隆明、伊東秀憲、星野卓之 【目的】原因不明の難治性身体表現性障害に対して、東洋医学的治療の有効性を示す症例を経験したので報告する。【症例】16歳女性、主訴は不眠、全身倦怠感、食欲不振。[現病歴]X-2年、足の転倒骨折後に全身痛と食欲不振が起こり体重5kg減少。その後、原因不明の嘔気や食後の呼吸苦と失声を生じ、救急を頻回受診後大学病院に入院。退院後COVID-19に感染し、回復後に原因不明の腹痛と体重減少があり、大学病院で低血圧と起立性調節障害として治療されたが、不眠、全身倦怠感、食欲不振などの症状が改善しないため、 X年、当漢方鍼灸治療センターを受診。[所見]BMI17.5、血圧118/68mmHg、脈拍90bpm。リアルタイム心拍変動検査では交感神経反射低下と副交感神経過剰反応。 CMI、POMS、TEG、GHQなどの精神心理検査では、準神経症、攻撃性、心理的混乱、軽度のうつ傾向などを認めた。【治療・経過】不眠、全身倦怠感、抑うつ、腹痛、食欲不振、肩背部の強い凝りなどに対し、漢方では煎じ薬の加味帰脾湯合桂枝加葛根湯を処方。また鍼灸では、北里式経絡経筋治療として肺虚証の脈診に基づく本治穴と共通基本穴に加え、四神聡、肩井、天、膏肓、太衝と足陽明経筋の陥谷、旁谷、侠渓などに刺穴し、督脈上の身柱から至陽に温筒灸を行ったところ、治療直後から症状の改善が診られ、4ヶ月後(5診目)には、 VAS(mm)でも食欲不振は96 61、不眠は89 0、全身倦怠感は 80 4まで改善を認めた。なお使用鍼は灸頭鍼以外、基本的に40ミリ・20号鍼で 15分間の置鍼を行った。【考察】本症例は、現代医学的には原因不明で難治であったが、鍼灸医学的には慢性的な肩背部の過度な筋と緊張に伴う経絡や交感神経の過緊張により生じた肺虚と脾虚などによる内臓の機能異常が原因と捉えることで治療が奏効した。【結語】鍼灸と湯液を合わせた東洋医学的治療は、現代医学において原因不明で難治な症状に対しても有効であることが示唆された。 キーワード:北里式経絡経筋治療、身体表現性障害、鍼灸治療、湯液治療、難治性 103 -Sun-P2-10:00 うつ症状に対する現代医学的考察による鍼刺激の評価法呼吸と循環を用いた心身連関テストについて 大阪公立大学都市健康・スポーツ研究センター 山下和彦 【目的】本研究は、現代医学的考察による鍼刺激が睡眠障害に対する有効性について、心電図および呼吸測定による心臓自律神経機能から評価することを目的とした症例報告である。【症例】症例は62歳、女性。[経過・所見] 56歳の時に一人息子が自分の思いと異なる大学に入学し、一人暮らしとなってから不眠症状が発症した。61歳に良性の卵巣嚢腫が発見されてからは将来の不安から入眠障害、中途覚醒が継続するようになる。近隣医科に「うつ病」と診断されて薬物治療を継続したが症状不変にて転院し、他院にて「適応障害」と診断されて薬物治療を変更したが症状不変のため、整体、鍼灸、気功を継続したが症状不変のため当院に来院した。主訴は入眠障害、中途覚醒。[治療目的と評価法]鍼刺激は心臓自律神経機能の亢進を目的とし、他覚的評価法は臥位、座位ならびに両姿勢での深呼吸による心拍変動および呼吸性洞性不整脈から心臓自律神経機能を評価した。【方法】刺鍼法は左右の合谷―孔最、足三里―三陰交へ長径40ミリ直径0.18ミリを 1Hzの鍼通電療法を行うと共に、腹部置鍼を巨闕、中 \kan\、水分、盲兪、天枢、梁門、巨骨へ長径40ミリ直径0.14ミリに25分間である。この刺鍼法は心電図および呼吸測定、脈波等による測定によって心臓自律神経機能の亢進が報告されている手法である。【治療・経過】今回、昼寝をしたことの無い入眠障害、中途覚醒の症例が本刺鍼法で入眠し、心臓副交感神経機能の亢進が認められた。【考察】現代医学的考察による鍼手法による睡眠障害に対して主観的評価だけでなく、客観的評価として心臓自律神経機能の評価が可能であることが示唆された。また、今後ますます増加が推定される開業鍼灸師の慢性症状の鍼灸治療に関して、患者にわかる客観的心臓自律神経機能評価の有効性についても示唆された。本臨床報告は症例本人の同意を得て、ヘルシンキ宣言に基づく倫理規範に準拠しておこなった。 キーワード:睡眠障害、現代医学的思考による鍼刺激、自律神経、心拍変動、呼吸性洞性不整脈 104 -Sun-P2-10:12 睡眠障害に対する灸セルフケアの血圧に与える影響−第2報- 1)森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 2)関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科 鍋田智之 1)、松熊秀明 1)、堀川奈央 1)、 鍋田理恵 2)、宮武大貴 1)、高橋秀郎 1) 【目的】入床前の灸セルフケアが睡眠障害を改善し、同時に血圧の改善にも有用かを検証する。2023年度の第1報に引き続き現況を報告する。【方法】ピッツバーグ睡眠調査票(PSQI)が6点以上で収縮期血圧が140mmHg未満かつ拡張期血圧が90mm Hg未満である者を対象とし、無作為に対照群と灸治療群に割り付けた。期間は介入前2週間、介入4週間、介入後2週間とした。介入は被験者自身が入床30分前までに週3回以上太衝穴、太渓穴、足三里穴、内関穴、神門穴に台座灸を実施した。睡眠は PSQIを2、6、8週目に記録した。血圧は朝晩各 3回測定した中央値を用いた。本研究は森ノ宮医療大学学術研究委員会の承認を得て実施した(承認番号 2022-025)。利益相反は無い。【結果】2023年12月時点で12例を収集し、介入開始前にPSQI6点以上の基準を満たした 8例を解析対象とした。PSQIは介入群( n=5 59.6±7.1歳)で 10.0±2.5 6.2±2.3と低下し、対照群(n=3 55.7±4.6歳)では9.0±1.0 9.7±3.5で変動しなかった。起床時の収縮期血圧は対照群で 130.8±7.9 130.3±11.4と変化しなかった。介入群では 131.1±9.2 129.4±12.2となり、5例中3例で低下傾向を示した。起床時の収縮期血圧が顕著な低下傾向を示し、夜間頻尿が認められた 1例において分割表分析を行った結果、介入群で140mmHg未満の記録が多く(p<0.01)、排尿回数に有意差が認められた(介入群1.1±0.9回対照群2.3±0.9回 p<0.01)。【考察・結語】継続した灸セルフケアは睡眠障害を改善する傾向を示し、起床時の収縮期血圧の改善にも影響を与える可能性が考えられた。また、収縮期血圧 140mmHg未満に改善することで夜間頻尿の改善に繋がる可能性が考えられた。 キーワード:睡眠、血圧、灸、セルフケア 105 -Sun-P2-10:24 中途覚醒を訴える患者に対する鍼灸治療と灸セルフケア実施の1例 森ノ宮医療大学医療技術学部鍼灸学科 堀川奈央、松熊秀明、鍋田智之 【目的】附属臨床センターに睡眠障害(中途覚醒)を主訴として来院した患者に対して、鍼灸治療と自宅での灸セルフケアを併用して実施し、中途覚醒の改善を認めたので報告する。【症例・現病歴】47歳女性。中途覚醒を主訴として X年5月中旬に来院した。症状は業務多忙となった3月中旬から出現し、入眠に 30分以上を必要とし、ほぼ毎日午前4時ごろに中途覚醒、自覚的睡眠時間は 4時間で日中の眠気に苦痛を自覚した。医療機関は受診しておらず、服薬ない。[初診時所見]胸脇苦満、少腹急結、紅舌、痩舌、少苔、剥落苔、脈浮細数、ピッツバーグ睡眠質問票(以下 PSQI)12点。【治療・経過】治療は 8月上旬まで週に1回の頻度で全13回実施した。鍼灸治療は百会・手三里・三陰交・太渓を基本穴とし、治療ごとに適宜経穴を減増した。やや陰虚所見が多いが自覚的な症状として熱の所見がなかったため灸セルフケアを指導した(神門・内関・三陰交への台座灸を入床 30分前に実施)。PSQIを初診、7,12診時に記録した。スリープスキャンによる客観的睡眠評価を 5月下旬、6月下旬、8月初旬に各1週間実施した。【結果】患者は2日に1回以上の頻度で施灸を実施した。 PSQIは初診12点から7診目で7点、12診目で6点と改善した。スリープスキャンの記録で実睡眠時間が初診時期270.2±28.2分から 1ヵ月後に 297.2±69.53分に延長し、入眠潜時は18.6±8.6分から15.6±5.6分に短縮、中途覚醒 6.6±6.3分→ 1.5±0.7分に短縮した。8月初旬では実睡眠時間が310.3±49.3分に延長したが、感冒に罹患していたため他の値では悪化が認められた。【考察・結語】週1回の鍼灸治療に加えて継続的に灸セルフケアを実施することで睡眠障害の改善が確認できた。患者は現在も灸セルフケアを実施しており、治療後 6か月の評価を実施する予定である。 キーワード:睡眠障害、不眠、中途覚醒、セルフケア 106 -Sun-P2-10:36 挙児希望患者が有していた睡眠障害に対する鍼通電療法の効果睡眠障害の改善に対する治療の展望 1)ここちめいど 2)はりきゅう院さくら 3)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康科 4)はりきゅう処ここちめいど 田中隆一 1,2)、金子聡一郎 1,3)、米倉まな 1,4) 【はじめに】挙児希望で鍼灸院を受診する患者の多くは頭痛や肩こり、腰痛、不眠などの症状を抱えている。今回、長期に睡眠障害を有していた挙児希望患者に通常の治療に頭皮への鍼通電治療を追加した結果良好な経過を得たので報告する。【症例】41歳、女性、身長156cm、体重70kg。[主訴]睡眠障害(入眠障害、中途覚醒)。X-5年10月友人より足がむずむずして眠れないという話を聞いた後から足のムズムズを感じ睡眠障害を発症し入眠に2時間、中途覚醒も 3回あったが医療機関には未受診であった。X年5月、挙児希望に対して鍼灸治療を開始。当初、患者は睡眠障害を挙児希望とは無関係と考えていたが、 X年7月(8診目)患者より相談があり睡眠障害に対する鍼灸治療が開始となった。【治療】挙児希望患者に対する基本経穴、腹部と下肢、腰部と中りょう穴への鍼通電、頸部、腹部と臀部へのスーパーライザー。鍼は28mm20号ステンレス鍼。8診目以降に睡眠障害に対して百会、神庭に鍼通電を追加した。【経過】 9診目:施術後1日だけ入眠までの時間が2時間から30分に改善。13診目:頭皮鍼を行わず経過を見る。14診目:入眠までの時間が再度延長した為、頭皮鍼を再開。19診目:入眠までの時間が再度改善。22診目:入眠が改善する日が 1日から3日、中途覚醒は3回から1回に改善、その後も治療の継続により改善を維持している。【考察および結語】本症例の患者は数年前から睡眠に不満を感じていたが医療機関の受診もなく服薬も行われていない状態であった。挙児希望に対する鍼灸の標準治療を行うと共に三叉神経領域の鍼通電療法を追加したことにより入眠までの時間が短くなり、中途覚醒の回数も減少したと考えられる。挙児希望する患者は、経済的・社会的・身体的な苦痛の影響でさまざまな症状を有し、その症状が挙児希望治療を阻害している可能性がある。頭皮への鍼通電療法は挙児希望患者の睡眠障害に有効である可能性が示唆された症例であった。 キーワード:睡眠障害、入眠困難、中途覚醒、頭皮鍼、三叉神経領域 107 -Sun-P2-10:48 かかりつけ鍼灸師として患者の命と生活の質を守る 左右同時血圧測定実施の提唱 1)中村整骨院 2)新潟医療福祉大学 3)鍼灸新潟 4)中央大学 中村吉伸 1,2,3)、渡邉真弓 3,4) 【目的】古来、鍼灸・あまし施術では脈診など「脈」を重視してきた。また、簡易な方法であるが血圧測定は重要であり、医療機関も患者さん自身も血圧測定を行う。当院では、長年、左右の拡張期血圧・収縮期・そして左右の血圧の差の値(バランス)に着目・分析を継続してきた。そして、自律神経機能に偏りがある場合、この差の値に特徴が見られることこれまで報告してきた。今回、耐えがたい症状を訴え、複数の医療機関を訪ねながらも適切な診断を得るまでに時間を要した患者おいて特徴的な症例が示されたので、施術の経過とともに報告する。【症例】女性67歳。身長143.0cm、体重57.0kg、BMI(27.87)、近隣在住。頭痛、かたこり、眩暈、吐気、不眠、不安で体調悪く退職。降圧剤・抗不安剤など服用薬 7種。近隣複数の医療機関にかかったがいっこうに不調は改善しなかった。【経過・結果】大椎、背部兪穴を中心に指圧、単刺。悩みも丁寧に傾聴し、適度の運動など生活指導を行った。以下、は左右血圧の差を示す:(右拡張期 /収縮期、左拡張期 /収縮期、単位はmmHg)。1診施術前(200以上 /155、137/110)、施術後(193/109、147/98)であった。11診施術前(施術開始6か月後)には(118/72、116/68)となった。【結果・考察】通常、血圧は、左右いずれかの一側上腕のみで測定する。このことが、仕事を継続することができないほどの主訴を訴え複数の医療機関を訪れながらも、診断の確定に時間を要した理由と考えられる。実際、変動制血圧の診断や、精神科入院を勧められたものの眩暈、吐気、不眠、不安の症状はなかなか緩解しなかったという。かかりつけ治療家として、非侵襲的で簡易な左右両側上腕の血圧測定や脈診を用いて得た情報をもとに患者に適切な医療機関受診を促すことが、かかりつけ鍼灸師として患者の命と生活の質を守るため大事であると考える。 キーワード:左右同時血圧測定、かかりつけ 108 -Sun-P2-11:00 パーキンソン病患者の自律神経症状が経絡治療で軽快した一例 1)鍼灸アキュミット 2)北里研究所病院漢方鍼灸治療センター 大谷倫恵 1)、伊藤剛2) 【目的】パーキンソン病(以下 PD)患者の自律神経症状に対し、経絡治療を基本とした鍼灸治療により改善した症例を経験したので報告する。【症例】患者は 7X歳女性。主訴は歩行障害と体調不良。 X-14年に PDと診断を受け治療していたが、夕方以降に歩行困難と同時に発汗発作、悪寒、動悸、血圧上昇(収縮期圧 190mmHg前後)などの自律神経障害や自律神経症状による体調不良が 4〜5時間出現、特に発汗は就寝後に着替えと清拭を2回行う状態であった。 X年、これら症状の改善目的で治療を希望された。【治療】治療はディスポーザブルの寸3、2番鍼を用い、脈診に基づき主として肝虚の治療を原則週 2回、往診で行った。標治として膀胱経への追加鍼や督脈および膀胱兪の台座灸を行った。【経過】治療開始3か月(20診目)に、自律神経症状の体調不良感は、全体的に治療前 VAS64mmから治療後29mmと改善。特に初診時 10割だった発汗発作と悪寒の症状は、5〜7割まで改善した。そこで3か月目以降は治療を週1に減らし治療時間を症状発生時間帯に合わせた結果、7か月目以降では、発汗発作や悪寒が5割前後で推移するだけでなく、自律神経症状による体調不良感の出現は週1〜2回程度に減り、発現時間も1時間以下に短縮した。なお歩行に関しては大きな変化はなかったが転倒回数は減少した。【考察】PDにおける便秘、排尿障害、便秘、起立性低血圧、流涎や発汗障害などの自律神経障害は、患者のQOLを低下させる一因として治療上問題となっている。本症例のように発症 14年という経過の長いPDの患者においても、鍼灸治療を症状発生時間に実施するなど工夫を含め、発汗発作などの自律神経障害に加え、悪寒、動悸、血圧上昇などの自律神経症状の改善が診られたことは、経絡治療などの鍼灸治療が、患者QOL向上に寄与する可能性が示唆された。【結語】経過の長い PDに伴う自律神経症状においても、経絡治療を基本とした鍼灸治療は有効であると考えられた。 キーワード:パーキンソン病、発汗発作、自律神経症状、経絡治療 109 -Sun-P2-11:12 鍼刺激が呼吸数に及ぼす影響と HRV解析との関係 5事例についての途中報告 1)帝京平成大学健康科学研究科 2)帝京平成大学ヒューマンケア学部 3)高崎健康福祉大学看護学科 4)スポーツ健康医療専門学校鍼灸科 廣井寿美 1,3)、篠崎波輝 1)、篠原大侑 1,4)、長嶺澄佳 1)、玉井秀明 1,2)、今井賢治 1,2) 【目的】鍼刺入時の痛みや緊張に伴う呼吸の乱れが、心拍変動(heart rate variability: HRV)解析に影響を及ぼす可能性がある。呼吸統制を行った実験もあるが、 HRV解析における呼吸の詳細な影響や留意点に一定した見解は得られていない。鍼刺激による呼吸パターンの変動を心電図と同時に測定し、 HRV解析の影響を評価することで、鍼灸における今後の自律神経機能評価の検討に役立てる。【方法】18歳〜30歳の健康な男性を対象者とし、対照群と鍼刺激群のクロスーバーデザインで行った。ディスポ―ザブルステンレス鍼(長さ 40mm、太さ 0.20mm)を用いて、合谷穴(LI4)に体表面から直刺で15mm刺入し、雀琢術(1Hz)を90秒間行った。前後の安静データを含め呼吸と心電図を同時に継続的に記録した。【結果】現時点で 5名のデータを採取した。呼吸変動に合わせて瞬時心拍が変動する位相の一致が視覚的にとらえられた。測定中に嚥下により呼吸が止まると、20秒程度瞬時心拍数の増加がみられた。鍼刺激時の疼痛を訴え、呼吸パターンが変化したケースで、鍼刺激中の心拍減少が見られた。一方、同一被験者でも2群間で心拍数が平均5回/分異なるケースが見られた。【考察】呼吸パターンの変化と瞬時心拍の位相の一致が見られた。 High-Frequency power:HFはおおむね呼吸サイクルに起因するが、嚥下などによって呼吸パターンが変化すると、結果的に HRVの帯域に影響が生じる可能性がある。また、鍼刺激により呼吸パターンが変化しても、先行研究で示された心拍の減少反応の再現性が確認されたと考えられる。しかし、日々体調は変化するため、クロスオーバーデザインでも条件が異なってしまうことがある。【結語】心拍変動解析を行う場合は、原波形を吟味し、オートマチックな取り扱いとならないよう、慎重に評価する必要がある。 キーワード:心拍変動解析、呼吸、鍼刺激、クロスオーバーデザイン 110 -Sun-P2-11:24 局所治療に遠隔部刺激を加えた時の心拍数・血圧への影響の検討 1)履正社国際医療スポーツ専門学校 2)健康スポーツ医科研究所 古田高征 1)、辻田純三 2) 【目的】一般に本治は、手足など遠隔への刺激を行うことが多いが、局所治療と局所治療に遠隔刺激を加えた場合の心拍数・血圧の変化を検討した報告は少ない。そこで、肩凝りのある症例に対し、愁訴部位の局所治療のみと局所治療に遠隔刺激を行った場合の影響の違いを検討した。【方法】研究は、実験についてインフォームドコンセントを行い、同意が得られた成人8名(のべ24回の施術)を対象にとした。実験は、施術前後に肩凝りの症状の程度を VASにて記録した。また施術前後に血圧計により血圧と心拍数を測定した。比較は、局所のみ群、局所遠隔群とした。鍼施術は、ディスポーザブル鍼18号40mmを使用し、被験者を腹臥位として局所治療を、背臥位として遠隔部への刺鍼を行った。局所治療では、愁訴部位あたりの圧痛部へ刺鍼した。遠隔部の刺鍼部位は、東洋医学的な問診スコアにて変調をしている五臓を定め、関係する経絡の原穴と絡穴へ刺鍼した。【結果】施術前後の変化について、 VAS値は局所のみ群-58.6±11.8、局所遠隔群 -62.4±12.7、平均血圧では局所のみ群は -1.7±5.8mmHg、局所遠隔群 1.2±6.5mm Hg、心拍数は -4.1±5.7拍/分、局所遠隔群 -5.5±5.1拍/分であったが、いずれも有意差はみられなかった。 VAS値との相関について、心拍数は局所のみ群 r=-0.04、局所遠隔群 r=-0.25、平均血圧では局所のみ群 r=-0.08、局所遠隔群 r=-0.11であった。【考察】一般に鍼灸施術は副交感神経活動を高め、自然治癒力を高めると言われることが多い。今回、 VAS値と心拍数に弱い相関関係が伺われ、症状が軽減されるほど心拍数の低下が伺われた。遠隔部への刺激がより副交感神経活動の増大が症状の軽減に関与していると推測された。【結語】局所治療に遠隔刺激を行った鍼施術では、肩凝り VAS値の変化と心拍数に弱い相関が伺われた。 キーワード:肩凝り、心拍数、血圧 111 -Sun-P2-14:00 あはき教員養成機関の学生への生成 AIの認識や活用状況等の検討 1)明治国際医療大学基礎教養講座 2)明治国際医療大学鍼灸学講座 3)明治東洋医学院専門学校教員養成学科 河井正隆 1)、角谷英治 2,3) 【目的】現在、生成AIの影響は広範囲に及び、学校教育においてもその活用についてさまざまな議論が行われている。今後の生成AIの活用について考える際、将来のあはき界の担い手である、あはき教員養成機関に在籍する学生はどのように理解等しているのか、その点を把握することは今後の議論を推し進める一助となり得る。そこで本研究の目的は、あはき教員養成機関の学生に対してアンケート調査を実施し、生成AIの認識や活用経験等の実態を明らかにすることである。【方法】全国4校の学生103名にアンケート調査を実施した。調査は Google formを活用し無記名で令和5年10〜11月に実施した。設問項目は、回答者属性、生成AIの認識度、活用状況、情緒的・認知的側面、学習スキルに与える影響、自由記述の6項目である。なお、本学ヒト研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2023-042)。【結果】回収率は55.3%(57名)であった。結果の一部を次に述べる。 1.生成 AIの活用(Chat GPTなど):4件法で回答比率の高い2つは「活用していない」 56.1%、「あまり活用していない」 22.8%であった。 2.生成AIを教育現場で活用する是非:5件法で回答比率の高い 2つは「まあ賛成する」 47.4%、「賛成する」と「わからない」は 21.2%であった。 3.生成AIを教材として活用する有用性: 5件法で回答比率の高い 2つは「まあ有用と思う」 45.6%、「わからない」 24.6%であった。【考察】学生は生成AIをほとんど活用していないことが分かった。そして、意見が分かれるものの、生成AIを教育現場で活用する是非については半数以上の学生が肯定的に捉え、その活用への期待が示唆された。また、生成AIの教材としての有用性は、やや有用と考えていることが判明した。ただし、これらの解釈は、生成AIの活用度に依存していることを念頭に置く必要がある。【結語】今回の調査から、学生の生成AIへの認識や活用経験などの実態が明らかとなった。 キーワード:生成 AI、あはき教員養成機関、学生、アンケート調査 112 -Sun-P2-14:12 鍼灸教育において教材の特性が及ぼす学習に及ぼす影響について−電子媒体と紙媒体の差異から- 1)明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科 2)明治国際医療大学基礎教養講座 宮城凌央 1)、河井正隆 2) 【目的】近年、新型コロナウイルスの影響により、タブレットやパソコンなどのデバイスが広く活用され、同時に電子媒体を使った資料共有が増加した。学校教育においてもノートパソコンやタブレットなどを用いたオンライン授業が増加し、これに伴い紙媒体の教材が電子媒体に変化している。そこで本研究の目的は、学生アンケートを通して電子媒体と紙媒体が学習に及ぼす影響を明らかにし、今後の鍼灸教育に有益な知見を得ることである。【方法】 X大学鍼灸学部 1年生を対象に、Google formsにて意識調査を実施した。また、Google formsには本調査は無記名方式で、回答により本調査に了承したと判断する旨などを明記した。調査は令和4年7月とした。アンケート内容では、紙媒体を「教科書」、電子媒体を「タブレット」「ノートパソコン」として、それらが学習に及ぼす影響を問うた。本研究は明治国際医療大学ヒト研究倫理審査委員会(No.2023-021)の承認を受け実施した。【結果】学生41名から回答を得た(回収率100%)。回答結果を上位の順に一部述べる。 1.見やすいと感じる媒体:「タブレット」 39.0%(16名)、「教科書」 36.6%(15名)、「ノートパソコン」 24.4%(10名)であった。 2.読みやすいと感じる媒体:「教科書」 53.7%(22名)、「タブレット」 29.3%(12名)、「ノートパソコン」 17.1%(7名)であった。 3.記憶に残りやすい媒体:「教科書」 73.2%(30名)、「タブレット」19.5%(8名)、「ノートパソコン」 7.3%( 3名)であった。【考察】これらの結果から、「教科書」が最も好まれる媒体で、読みやすさや記憶の残りやすさで高い評価を示した。一方、「タブレット」は見やすい媒体と考えられる。紙媒体と電子媒体を組み合わせるなど、多様な媒体の活用が学生の学習効果を向上させる可能性があると考えられる。【結語】今回、紙媒体と電子媒体のそれぞれが学生の学習に及ぼす影響が明らかとなった。 キーワード:紙媒体、電子媒体、学生アンケート、鍼灸教育 113 -Sun-P2-14:24 統合医療講義を受けて医学生は何に対し興味や関心を示したか? -テキストマイニングによる解析 1)東北大学病院総合地域医療教育支援部 2)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 村上慶泰 1)、金子聡一郎 1,2)、石井祐三 1)、 高山真1) 【目的】東北大学医学部では3年次に9時間の漢方医学系統講義を行っており、その中には鍼灸を主とする統合医療の講義がある。西洋医学中心のカリキュラムの中で鍼灸講義は特殊なものであると考えられ、受講した医学生が鍼灸に対してどのような印象を受けるかは定かでない。これを明らかにすることを目的に、本研究では講義後アンケートを解析した。【方法】 X年度医学部第 3学年 119名が、鍼灸講義後に「講義で学んだこと」を自由記述式アンケートに記載した。7時間以上欠席した学生の回答は除外した。集計した文章データをテキストマイニングの手法で分析した。具体的には、文章データを単語や文節に区切った後、単語頻度解析、係り受け頻度解析(単語と単語の結びつき)、注目解析(ある単語に関係する単語を見つけ出す)等を実施した。【結果】有効回答は 112名で、この文章データを解析対象とした。単語頻度解析では「補完代替医療」 32回、「鍼灸」 26回、「統合医療」 18回と多かった。形容詞+副詞だけに限定した単語頻度解析結果では「面白い」が8回と最も多くみられ、その回答内容は鍼灸に関する内容だった。係り受け頻度解析では、頻度の高い回答結果が得られなかった。【考察】漢方医学系統講義後アンケート解析により、「補完代替医療」「統合医療」等が単語頻度上位にあり、教員が伝えたかった内容が学生にわっていたと考えられた。また「面白い」という単語が 8回出ており、鍼灸学生ではない医学生の中にも鍼灸に興味、関心を抱く人がいることが示された。係り受け頻度解析では低頻度の回答しか得られなかったため、今後の課題としてテキストマイニングに適したアンケートの取り方を工夫する必要があると考えた。【結論】テキストマイニングにより医学生の鍼灸に対する興味や関心を見出すことができた。 キーワード:テキストマイニング、統合医療、鍼灸、卒前教育 114 -Sun-P2-14:36 解剖学学習アプリの月次ダウンロード変化とユーザー特徴の分析 App Storeデータからの知見 1)関西医療大学大学院 2)和歌山県立医科大学医学部衛生学教室 戸村多郎 1,2) 【目的】医療系の国家資格取得試験において出題される解剖学は、人体の構造を理解する上で重要な領域である。医学教育においてデジタルツールやアプリが果たす役割に期待が寄せられている。本研究は、これまでに開発した 7つの解剖学学習アプリのダウンロード傾向を調査し、医療系の学生や専門家がどのようにアプリを活用しているか分析することを目的とする。【方法】2018年1月から2023年12月までの6年間にApp Storeでダウンロードされた iPhone向け解剖学学習アプリを対象にする。これらのアプリは日本語で提供され、主に「練習問題」と「資料集」の二つのアプリに大別され、国内外で利用可能である。【結果】解剖学アプリの無料版と有料版の総ダウンロード数は103,574件であり、月ごとの6年平均数(標準偏差)は以下の通りである: 1月1210.0(442.9)、2月922.9(366.4)、3月755.3(380.8)、4月1385.4(724.6)、 5月1649.3(682.3)、 6月1952.7(858.1)、 7月2037.3(726.0)、8月1181.6(514.3)、9月951.9(368.7)、10月 941.6(390.8)、11月978.9(347.4)、12月829.6(336.0)。これらのデータから二峰性が確認できた。有料版では、「練習問題」が50.2%、「資料集」が49.8%とほぼ均等に利用されていた。国別では、日本が92.8%で最も多く、次いで中国、台湾、ベトナム、オーストラリア、大韓民国、香港、その他が続いた。【考察】ダウンロード数が最も多い月は7月であり、最も少ないのは3月であった。4月から7月にかけての増加傾向は前期試験が主体であり、次いで1月が後期試験と国家試験に向けた需要が高まっていることが考えられる。ただし、研究の限界として、医療分野の詳細な特定が難しい点、iPhoneのみのデータであることが挙げられる。また、国によって年度の区切りが異なるが、主に日本でのダウンロードが多いため、結果への影響は限定的であると考えられる。 キーワード:解剖学、アプリケーションソフト、ダウンロード、月ごとの変化、ユーザーの特徴 115 -Sun-P2-14:48 呉竹学園東洋医学臨床研究所での臨床実習における学びの検討テキストマイニングを用いた質的調査 1)呉竹学園東洋医学臨床研究所 2)東京医療専門学校鍼灸・鍼灸マッサージ科 紀平晃功 1)、上原明仁 1)、藤田洋輔 2)、 金子泰久 1) 【目的】呉竹学園東洋医学臨床研究所は臨床で鍼灸施術と運動療法を行っている。臨床実習は、鍼灸科学生に鍼灸施術を、柔整科学生に運動療法を教員指導の下、患者の呼び入れからクロージングまで学生1人に行わせる参加型臨床実習とした。本研究の目的は、学生の学びを検討し、次年度の実習指導に役立てることとした。【方法】2023年4月から10月に行った 14回の臨床実習に参加した2年次学生(鍼灸科49人、柔整科48人)が実習後に提出したデイリーノート(日報)の「実習の学びと考察」を対象文章とし、質的研究で検討した。各科の平均文字数±標準偏差を求めた。また、テキストマイニングソフト KH Coder3を用いて各学科の上位10の頻出語と回数、単語同士の繋がりを表す共起関係を10回以上出現した単語で解析した。共起関係の強さはPearsonの相関係数を用い、絶対値の大きい上位 3位を抽出した。係数は -1に近いほど単語同士が近接して出現することを意味する。【結果】文字数は鍼灸科 203.2±51.0(字)、柔整科 137.6±48.3だった。鍼灸科の頻出語と回数は患者 69(回)、思う 51、施術 37、検査 34、治療 33、聞く 32、学ぶ30、問診 30、自分 26、行う 25だった。柔整科は患者 51、問診 38、思う 31、良い 24、ストレッチ 22、実習 20、聞く 18、行う 16、エクササイズ 15、治療 13だった。共起関係は、鍼灸科は患者・思う -0.58、患者・治療 0.49、患者・施術 -0.46、柔整科はストレッチ・エクササイズ-0.61、患者・問診 -0.43、実習・思う 0.41の順だった。【考察】両学科とも患者が最頻出語であり、学生は実習後に患者中心に内省したと考えられた。とくに鍼灸科では、共起関係の強い単語全てに患者を含んでおり、より患者中心の振り返りを行ったと考えられた。鍼灸科では本実習までに患者志向や患者中心の思考が涵養されていた可能性がある。 キーワード:臨床実習、参加型臨床実習、質的研究、テキストマイニング、共起関係 116 -Sun-P2-15:00 鍼灸の歴史教育に現代の視点を取り入れた教育効果 Chat GPT-4を用いた学生レポートの分析 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 谷口博志、谷口授 【目的】鍼灸の歴史教育は国家試験の出題内容と直接的な関係が薄いことから学習者の興味の対象外になりやすく、教員が求める教育効果が得にくい科目の 1つである。今回、「鍼灸の歴史」の科目における1つのテーマの4年間の学生レポートから年毎の講義内容の違いによる教育効果について検討する。【方法】分析対象は2020年から2023年の間、2年生の前期に「鍼灸の歴史」で実施した1講義「鍼灸をどのような英単語で表すか」に参加しレポートを提出した学生170名とした。レポートは講義を実施後4日以内に google formで提出させた。課題の項目は鍼灸の英単語として「 acupuncture」「Japanese style acupuncture」「Shinkyu」のいずれが適しているかについて自らの意見で選択させ、その理由を自由記述で回答させた。レポートは単純集計ののちに、 Chat GPT-4により自由記述内容を要約し、年毎の変化に関する教育効果について分析した。なお、 Chat GPT-4の結果は 2名の教員で誤りがないことを精査した。講義は2020年と2021年は管鍼法が定着するまでの変遷を、2022年と 2023年にはそれらにドライニードル等の現在の話題を含めた内容を実施した。【結果】2020年に「 acupuncture」「Japanese style acup uncture」「Shinkyu」を選んだ学生の割合は18%、44%、38%であったのに対して、 2023年には7%、47%、47%となった。自由記述の分析から、2020年に対して 2023年は「日本独自の技法の強調」「文化的アイデンティティの重視」「教育の影響と知識の深化」「国際的な認識と表現の重要性」が教育効果として高まったことが抽出された。【考察】問題解決型学習( PBL)のように現在の話題や問題点を組み込むことで鍼灸の歴史教育における教育効果を向上させられることが示唆された。 キーワード:鍼灸の歴史、 acupuncture、Japanese style acupuncture、Shinkyu、教育効果 117 -Sun-P2-15:12 脳卒中生活期患者への鍼灸施術を実現する職員研修に関する調査 1)脳梗塞リハビリセンター 2)東京有明医療大学 石上邦男 1)、宮澤勇希 1)、鶴埜益巳 1,2) 【目的】当施設は関連法規を順守して医療・介護保険外で脳卒中生活期患者に、リハビリテーション専門職とともに外来サービスを提供する。利用者の多彩な要望や特有の症状に対応可能な鍼灸師育成のため、2018年12月に研修センターを開設して一元管理する。今回、研修経過を後方視的に観察し、その特徴を調査した。【方法】2019年4月から2023年1月までの入職者43名を対象とし、データの取り扱いは紙面にて同意を得た。研修カリキュラムは習得すべき内容から4つのステージに分類し、同時進行しつつ実践的に研修を行う。主な内容はステージ1が顧客対応の心得と基礎理論の整理、2が施術の組み立て、3が未病者への実践、4が脳卒中患者への実践である。抽出したデータは性別、年齢、職歴、各ステージ修了日数とした。各データの相関はSpearmanの順位相関係数で、職歴による各ステージ修了日数の差はt検定で統計解析し、有意水準を 5%未満とした。【結果】研修修了者は 38名で、それら性別は男性 24、女性 14名、平均年齢は 32.5±7.3歳、職歴は新卒者 10名、他は既卒者だった。各ステージ修了日数は 1の平均が 25.0±25.6日(中央値 16.5)、 2が 43.2±40.6日(40.0)、3に64.5±49.6日( 56.5)、 4に98.2±61.0日(97.5)だった。有意な相関は職歴とステージ 2〜4(r=-0.50~-0.61)で、また全ステージ間(r=0.63~0.97)に認めた。有意差はステージ 2〜4で認め、既卒で修了日数が少なかった。【考察】修了日数の相関から,各ステージの修了要件や内容は現行で妥当と考えられた.しかし職歴で2〜4に差を認めたため,新卒者の指導方法に見直しが必要である。今後個人の特徴についてもデータ解析を進め、効率性の高いカリキュラムに更新することで,研修修了期間の短縮を図りたい。 キーワード:脳卒中、職員研修、カリキュラム 118 -Sun-P2-15:24 鍼灸養成課程における多職種連携教育の必要性 実習アンケート調査から 1)筑波技術大学 保健科学部附属東西医学統合医療センター 2)筑波大学人間総合科学学術院 3)筑波技術大学保健科学部 成島朋美 1)、松田えりか 2,3)、櫻庭陽1)、 鮎澤聡1,3) 【目的】本邦が推進する地域包括ケアシステムにおいて多職種連携は重要であり、医療専門職養成課程では多職種連携教育(Interprofessional Education:以下、IPE)が行われている。しかし、はり師、きゅう師、あん摩・マッサージ・指圧師(以下、あはき師)の養成校では IPEの機会は殆どない。本研究では、多職種連携施設で実習を受けたあはき師養成校の学生を対象に、多職種連携に関する興味や学習意欲等について調査した。【方法】あはき師が他職種と連携する医療機関である「筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター(以下、医療センター)」で実習を受けたあはき師養成校の学生(3校、 1〜3年生、計233名)を対象に、インターネットフォームを用いてアンケート調査を行い、その結果を解析した。本研究は、医療センター医の倫理審査委員会の承認を得ている(202303)。【結果】回収率は59.2%で、多職種連携を学んだ経験のある者は30.4%であった。在学中に多職種連携の実際を知ることが必要と回答した者は81.9%で、実習を通じて多職種連携への興味を高めた者は58.0%、学習意欲を高めた者は52.2%であった。「多職種連携を実践するあはき師の講義の受講」「当該施設の見学」「あはき師と他職種によるカンファレンスの見学」が多職種連携を知る有効な方法と回答した者は、各々回答していない者よりも、実習を通して多職種連携への興味が有意に高まっていた(各々 P<0.01、P<0.05、P<0.05)。【考察】あはき師養成校における IPEの機会は少ないが、学生は必要性を感じていた。実践者の話、施設やカンファレンスの見学による教育機会を得ることが、多職種連携への興味を高めるには有効だと考える。【結語】学生は、 IPEが必要だと考えており、多職種連携を実践する施設の見学によって、興味や学習意欲が高まった。 キーワード:多職種連携教育、アンケート調査、実習 119 -Sun-P2-15:36 伝統医療従事者に必要なコンピテンシー インタビュー調査より得られた結果 1)仙台赤門医療専門学校 2)黄進閣鍼灸院 3)産業医科大学産業保健学部基礎看護学 安齋昌弘 1,2)、松田静香 2)、立石和子 3) 【目的】伝統医療従事者の職務上必要なコンピテンシー*を抽出し、伝統医療従事者の職種の特徴を明らかにすることを目的とする。 *コンピテンシー:ある基準に対して効果的なあるいは優れた行動を引き起こす個人の中に潜む特性とする。【方法】期間:2023年9〜12月、対象者:鍼灸師の資格保有者で現在も施術を行っている方、研究方法:半構造化インタビュー調査、内容:必要なコンピテンシー(CHEERS研究を基本として看護師向けに作成した37項目(立石、2008)を参考)について等、分析方法:インタビュー内容を録音し逐語録を作成し質的帰納的に分析する。倫理的配慮:産業医科大学倫理委員会(ER23-024)より承認を得て実施している。【結果】対象者背景:17名、年齢:20〜70歳代、性別:男14名/女3名、現職 :専門学校等の教員 13名、開業のみ3名、大学院生1名。鍼灸師に必要なコンピテンシーについて知識・技術・能力の3つに分けた。語られたものは、知識:「専門分野及び幅広い知識」、開業時「コスト感覚、法律の知識」、今後「コンピュータ関連」、技術:「問題解決、分析力、客観的評価、創造性、プレシャー下で仕事ができる精神力、時間管理、体や手先をつかう技能」、能力:「誠実さ、自主性、融通性、集中力、批判的視点、コミュニケーション、責任下での決定、予測力」であった。意見が分かれたもの「チームの中で仕事をする能力」であった。【考察】最も多く語られたのが「誠実さ」であり、看護師へ実施したものと同じ結果であり、全体的に同じ結果となった。反対に「チームの中で仕事をする能力」は意見が分かれた。これは、他医療職では必ず語られた項目であり、鍼灸師の場合、どのような立ち位置で変わる可能性があると考えた。【結語】鍼灸師に求められる能力は、「誠実さ、からだや手先をつかう技能」であり、他の医療関係と同じであった。反対に「チームの中で仕事をする能力」に対しては今後検討が必要である。 キーワード:鍼灸師、コンピテンシー、質的研究 120 -Sun-P2-15:48 グラフ文書を用いた鍼灸師向けオンライン学習支援に関する検討鍼灸師同士の学び合い促進に向けて 1)玉川大学工学部 2)理化学研究所 AIP 3)ここちめいど 4)はりきゅう処ここちめいど 柴田健一 1,2)、米倉まな 3,4) 【目的】 COVIT-19を契機に、オンラインで多様な人同士が学び合う場が広がってきた。社会人の学び直しとも言われるリカレント教育では、年齢や立場を超えた多様な属性の学習者同士による協調学習が活発化しており、鍼灸師を対象としたオンライン学習支援の場が広がりつつある.本研究では他者と自身の理解や考えの違いを可視化および共有することに適した、マインドマップに代表されるグラフ文書に着目した。グラフ文書を用いることで鍼灸師同士の学びが促進されるか、オンライングループワーク評価実験によって明らかにする。【方法】研究協力同意が得られた鍼灸師向けオンラインサロンここちめいどに属する鍼灸師6名を対象にオンライングループワークを行い、その後アンケートを実施した。オンライングループワークは、単独でテーマに沿った文書(グラフ文書あるいはテキスト文書)を作成した後、ワーク参加者全員でそれぞれ作成した文書を用いてディスカッションする形式とした。被験者6名を実験群 3名と統制群3名に分け、それぞれ個別に実施した。実験群はグラフ文書の作成および議事録のリアルタイム提示、統制群はテキスト文書の作成および議事録をリアルタイムで提示した。グラフ文書議事録の提示には発表者らが開発するツールを用い、テキスト文書議事録の提示には Google Docsを用いた。ワーク後に実施したアンケートはGoogleFormsで作成した。【結果】設問「あなたは他の人が作成した文書をどの程度理解できましたか?」に対する 5段階評価「 1(理解できた)〜 5(理解できなかった)」の結果として、実験群の平均は 1.34、統制群の平均は 2.34であった。【考察および結語】アンケート結果より、他の人が作成した文書の内容を理解しやすかったのはテキスト文書よりもグラフ文書であった。鍼灸師同士の学びを促すツールとしてグラフ文書が有効である可能性が示唆された。 キーワード:協調学習支援、オンライングループワーク、リカレント教育 121 -Sun-P2-16:00脈診訓練法の開発(第 25報)脈診習得法( MAM)による脈診習得の実際 1)日本鍼灸理療専門学校 2)一般財団法人東洋医学研究所 光澤弘1,2)、木戸正雄 1,2)、水上祥典 1,2)、武藤厚子 1,2)、東垣貴宏 1,2) 【目的】私たちは、誰もが訓練次第で安定性、再現性、客観性のある精確な脈診ができるようなステップアップ方式の「脈診習得法(MAM)」を提唱している。今回、「脈診習得法(MAM)」の実践が1年目と2年目の者で習得の程度を比較し、興味ある結果が得られたので報告する。【方法】「脈診習得法( MAM)」に基づき学習した本校1年生24名と、2年生11名(平均年齢34.4±10.6歳)を被験者とした。脈診習得法を学んだ臨床経験10年以上の者2名を検者(A、B)とした。被験者は検者Aに六部定位脈診を行い、脈診評価表(MAT)に記入した。検者Aが直接脈診を受けて評価する11項目、検者Bが第3者として評価する 8項目の計19項目について達成、概ね達成、未達成、の3段階で評価し、結果を危険率 5%で統計処理し検討した。【結果】達成者の平均は 1年生が検者 Aで14.7±11.3%、検者 Bで49.5±15.6%、2年生は検者 Aで57.8±17.8%、検者 Bで73.8±18.9%であった。1年生では検者Aと検者B間に、また、1年生と2年生では検者 A、検者 Bそれぞれの結果に有意な差(p<0.05)がみられた。脈診評価表(MAT)への記入は1年生に比べ、 2年生は詳細に記入していた。【考察】検者 AとBの評価結果から ,見かけ上の脈診動作が問題なくても実際に受けた時には脈診の安定性が出来ていないこともあることが明らかとなった。特に 1年生には指の圧の加え方など習得が難しい項目があり、そのため、脈診に要した時間も1年生は2年生よりも長かった。これらは習熟度の差でもあるが正しい脈診を身につけるための指導の問題点として明確となった。以上のことにより、脈診習得を指導するうえで、検者 Aによる受診評価 ,Bによる観察評価の両面から習得具合を把握することが重要であると考えられる。【結語】今回、脈診学習1年目と2年目の者で脈診習得レベルに差異があることや、脈診には習得しやすい項目,難しい項目があることが確認できた。この結果を踏まえ、さらに有用な脈診習得法の構築を目指していきたい。 キーワード:脈診、脈診習得法(MAM)、脈診評価表(MAT)、六部定位脈診 122 -Sun-P2-16:12 山崎良齋著『最新鍼灸医学教科書』における「鍼灸学」について−鍼灸教育と鍼灸研究への姿勢- 1)明治東洋医学院専門学校鍼灸学科 2)明治東洋医学院専門学校教員養成学科 3)明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科鍼灸学講座 4)明治国際医療大学国際交流推進センター 5)明治国際医療大学基礎医学講座免疫・微生物学 矢島道子 1,5)、角谷英治 2,3)、川喜田健司 3,4)、矢野忠3) 【緒言】昭和初期、明治鍼灸学校(明治東洋医学院専門学校の前身)の初代校長であった山崎良齋(直文)は、自著『最新鍼灸医学教科書』(全3巻)を用いて鍼灸教育を行った。内容は解剖学・生理学・病理学・経穴学等の他、現在の鍼灸理論にあたる「鍼灸学」が含まれ、昭和4年の初版から改定・増補を行い、版を重ねた。本発表では『最新鍼灸医学教科書』の検討を通して当時の鍼灸教育と研究の基本的な姿勢について考察する。【方法】『最新鍼灸医学教科書』第2巻の「鍼灸学」について、第1版から第5版の全5種類を分析し、昭和初期の基礎研究を概観した。第1・第3版は国立国会図書館デジタルコレクション、第2・第4・第5版は書籍を用いた。なお明治期から戦前の鍼灸教育と研究の動向について関係資料を参照した。【結果・考察】明治期から第二次大戦前までの鍼灸教育と研究は、西洋医学の観点により行われた。山崎の教科書も概ねそれに倣う内容で、そのような当時の社会情勢を明確に示しているのが「鍼灸学」であった。これは西洋医学的機序の科目として現在の鍼灸理論に通じている。山崎の教科書の「鍼灸学」は、第2版で基礎研究の項目が増え、第3版以降は修正が続けられている。研究項目では血清免疫学的研究の例が列挙され、当時論じられた蛋白体療法などが示され、記述量は鍼より灸に関するものが多い。発表直後の研究成果の詳述は、鍼灸研究について常に最新の知見を学ぶ必要性を伝えるものであり、その重要性は現代にも通ずる。山崎は西洋医学の観点から鍼灸教育と研究を行うことにより鍼灸医学の体系化を図ろうとしたことが伺える。【結論】山崎良齋著『最新鍼灸医学教科書』の底流を成す視点は、日本の鍼灸教育と研究を西洋医学の観点により行うことであり、それにより鍼灸医学の体系化を図ろうとしたことが示唆された。現在の鍼灸は、当時のこのような姿勢を基盤として発展したと考えられる。 キーワード:山崎良齋、鍼灸理論、鍼灸教育、教科書 123 -Sun-P2-16:24 オンライン授業と対面授業での習熟度比較 1)明治東洋医学院専門学校 2)新潟医療福祉大学鍼灸健康学科 中村沙樹 1)、高野道代 2)、福田文彦 1) 【目的】あはき教育においてもコロナ禍以降で ICTを活用した教育が導入されている。オンライン授業と対面授業における習熟度を知ることは、今後より良い教育を提供するために重要である。しかし、あはき養成施設におけるオンライン授業と対面授業との習熟度を比較した研究はない。そこで今回、オンライン授業だった年度と対面授業だった年度との学生の習熟度(試験結果)について検討を行った。【方法】対象は2020-2023年度の 4年間における鍼灸学科の 2年生136名、対象科目は臨床医学各論(循環器・血液造血器疾患)とした。オンライン授業は授業担当者が作成した録画授業の視聴及び、視聴後の課題で構成した。習熟度は対象科目の期末試験(四者択一50問)結果(100点満点)とし、2020・2021年度をオンライン授業群、2022・2023年度を対面授業群とした。統計解析は対応のないt検定を使用し比較検討を行った。【結果】オンライン授業群の平均点は75.8±16.5点、対面授業群の平均点は74.5±16.5点で両群間に有意差は認められなかった(p=0.67)。年齢により層別解析した結果、高校新卒者(p=0.47)および、新卒者を除く30歳以下(p=0.5)では対面授業群の方が高い傾向を示したが、両群間で有意差は認められなかった。しかし、 31歳以上ではオンライン授業群で有意に高かった(p=0.03)【考察】オンライン授業では、授業時間外でもコンテンツを繰り返し視聴できることから、能動的に学習に取り組める 31歳以上で習熟度が高かったと考えた。また、通学時間が必要ないため、それらを学習時間にあてることができるなど学習環境の影響も考えられた。本発表に際してご協力いただきました丸茂栄士郎先生に感謝いたします。 キーワード:鍼灸、学校教育、オンライン授業、対面授業 124 -Sun-P3-9:00 がん性疼痛患者の便秘症に対する鍼灸治療の1症例 1)香川大学医学部公衆衛生学 2)香川大学医学部附属病院緩和ケア科 神田かなえ 1)、村上あきつ 2)、Ngatu Nlandu Roger1)、平尾智広 1) 【目的】オピオイド誘発性便秘症(Opioid-Induced Constipation: OIC)はオピオイド鎮痛薬を使用中の多くの患者で生じ、緩下剤の使用が不可欠となる。今回OICが出現している患者に灸治療を行い有効だった症例を報告する。【方法】36歳男性。主訴は便秘、硬便、腹部膨満感。現病歴は頭頚部がんにより化学療法開始。がん性疼痛に対するオピオイドの導入後から便秘症状となり緩下剤を併用していたものの、便秘、硬便を繰り返していたため補助療法として灸治療の介入を行った。治療は週2回・3週間(全6回)とした。腹部(天枢、中、関元、腹結)・手部(合谷、神門)・足部(足三里、三陰交、太衝)の経穴に対し、セイリンセラミック電気温灸器を用いて温熱刺激を与えた。主要評価項目は、日本語版便秘評価尺度( CAS:8項目 0〜2点の3段階、高得点であるほど便秘傾向)とし、鍼灸治療前後の変化を比較した。副次評価項目として、緩下剤の投与量、ブリストル便形状スケ−ル( BSFS)、エドモントン症状評価システム改訂版日本語版(ESAS-r-J)を用いた。【結果】治療前後で CASは9から4と改善を認め、治療終了4週後のフォローアップ時には0まで改善した。治療期間中は排便回数が増えたため、緩下剤の使用量は1日2剤から1剤に減らすことができた。 BSFSは3〜4(普通便)が出る回数が増え、毎日1回以上の排便が得られた一方で、少量の排便で残便感を訴える日もあった。ESAS-r-Jは23から12と改善を認め、便秘以外の身体症状も落ち着いていた。【結論】今回 OICに対する鍼灸治療の補助的介入により治療期間中の便秘症状の改善が認められ、緩下剤の使用も減らすことができた。しかしながら、便量が少量であることや硬便と軟便が混在している点で課題も残る。今後実践例の集積が必要である。 キーワード:鍼灸、がん性疼痛、オピオイド誘発性便秘症、症例、緩和ケア 125 -Sun-P3-9:12 質問紙による若年女性の便秘の要因分析 関西医療学園専門学校 中井一彦 【目的】便秘の訴えは男性より女性に多い。特に若年女性は、体型を意識した過度の食事制限や羞恥心からくる便意我慢など特有の要因が考えられる。一方東洋医学の古典には、便秘の鑑別について様々な見解が見られる。今回は質問紙をもとに若年女性の排便状況の実態および東洋医学的病証を調査し、便秘の要因を東洋医学的な視点から検討した。【方法】対象は、同意を得た本学の女子学生71名(平均年齢21.0±3.2歳)。収集データは、基本情報、排便状況( 1週間の排便回数、1回の排便量)、生活習慣(睡眠、運動、食事、排便)、東洋医学病証スコア(気虚、血虚、陽虚、陰虚、気滞)を、4件法により独自で質問項目を作成してグーグルフォームにて回答させた。分析は、排便回数および排便量の結果をもとに被験者を便秘群と正常群の2群に分け、各群の病証スコアおよび生活習慣項目をマンホイットニーの U検定により群間比較した。また、便秘の重要因子を抽出するため、2群を目的変数としてロジスティック回帰分析を行った。【結果】正常群(N=37)と便秘群(N=34)の2群間を比較した結果、各病証スコアでは有意差は認められなかったが、各スコア質問項目の、「声が小さい」「寝汗」「腹の張り感」で有意差が認められ、生活習慣項目では「運動」「線維食」「水分」「排便意識」で有意差が認められた。また有意差のあった項目を3項目ずつ説明変数として組合せてロジスティック回帰分析を行った結果「声が小さい」「線維食」「排便意識」が最も良い組合せとして抽出された。【考察】「声が小さい」に有意な差が観察されたことは、若年女性の排便には呼吸の力が関連していることを示唆している。また、食生活では線維食の摂取不足、排便習慣では普段の排便意識の低下が影響していることがわかった。【結語】若年女性の排便は、声の大小、線維食の摂取、排便意識が影響するようだ。 キーワード:若年女性、便秘、病証スコア、質問紙、ロジスティック回帰分析 126 -Sun-P3-9:24 胃切除後の嘔吐に鍼治療が奏功したことで退院が可能となった 1例 1)福島県立医科大学会津医療センター鍼灸研修 2)福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室 山田雄介 1)、加用拓己 2)、宮田紫緒里 1)、 津田恭輔 2)、鈴木雅雄 2) 【目的】胃切除後の胃食道逆流症に伴う嘔吐に加え誤嚥性肺炎により食事提供ができないことで、退院困難に至った症例に対して鍼治療が有効であったため報告する。【症例】80歳代女性。[主訴]嘔吐、発熱。[現病歴]X年5月に胃癌の診断にて腹腔鏡下幽門側胃切除術が施行された。術後4日目に食事が開始され重湯から3分粥まで食上げしたが、術後の胃食道逆流症に伴う嘔吐に加え誤嚥性肺炎を繰り返したため絶食および退院延期となった。X年8月に繰り返す嘔吐に対して再手術が行われた。術後に薬剤調整が行われ、食事を再開したところ嘔吐と誤嚥性肺炎が認められたため再度絶食となった。そのためX年9月に主治医から主訴に対して当科に紹介となり鍼治療が開始された。[現症]腹部蠕動音の減弱が認められた。術後の上部消化管内視鏡検査では食道炎および食道裂孔ヘルニアを認め、吻合部に狭窄は認めなかった。東洋医学所見では舌質淡白・舌苔白滑、脈遅・細・虚、食後の嘔気嘔吐、倦怠感、四肢厥冷を認めた。治療は脾胃虚寒証に基づき、梁門穴、足三里穴、太渓穴、太白穴を基本とした鍼治療および鍼通電療法を行い、治療は1日1回、週に5回実施した。評価は食事形態と提供日数、嘔吐および誤嚥性肺炎発生の有無を評価した。【経過】胃切除術から鍼治療開始までの114日間のうち、嘔吐5回、誤嚥性肺炎7回、食事提供の合計日数は12日間であったが、鍼治療開始から退院までの84日間では嘔吐1回、誤嚥性肺炎1回、食事提供の合計日数は71日へ改善した。食事は鍼治療開始2日目から再開し、78日目にはきざみ食へと食上げが進んだことで84日目に自宅への退院が可能となった。【考察・結語】本症例は術後に繰り返す嘔吐と誤嚥性肺炎のため食事提供ができず、退院困難であったが、鍼治療を開始したところ症状の軽減が得られたことで、自宅への退院が可能となった。本症例に対して鍼治療が有効であったと考えられた。 キーワード:胃食道逆流症、胃癌術後 127 -Sun-P3-9:36 鍼灸治療が著効した機能性ディスペプシア患者の 1症例 -GSRSを指標として - 1)ここちめいど 2)フルミチ鍼灸院 3)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 4)はりきゅう処ここちめいど 杉山英照 1,2)、松浦悠人 3)、米倉まな 1,4) 【目的】機能性ディスペプシア(functional dyspepsia: FD)患者に鍼灸治療を行い、 Gastrointestinal Symptom Rating Scale(GSRS)を指標に経過観察したところ良好な経過が得られたため報告する。【症例】37歳、女性、主婦。[初診日]X年11月。主訴:腹部膨満感、曖気、胃痛。[現病歴]X-4年東京へ転勤した頃から胃痛発症。X-3年コロナ禍で外出できない事や子育てのストレスにより腹部膨満感、曖気が出現し、胃痛憎悪。X-2年内科の内視鏡検査は異常なく、オメプラゾール、六君子湯服用も著変なし。X-1年、引越し後、環境のストレスは軽減したが主訴に変化なし。X年1月、内科にて胃カメラと X線検査を行うも異常なくFDの診断。[初診時所見]ほぼ毎日の心窩部痛・灼熱感、食後のもたれ・早期膨満感(+)、触診:心窩部圧痛(+)、脊柱起立筋( Th7〜Th12)筋緊張(+)、東洋医学的所見:胸脇苦満、心窩痞硬、GSRS全体スコア47点、酸逆流6点、腹痛8点、消化不良14点、下痢8点、便秘7点。[鍼灸治療]腹部、背部の所見の緩和と消化機能の向上を期待し、整動鍼の理論で施術した。使用経穴は、足三里、築賓、心兪、条口、四涜、合谷、菱形筋硬結部とし、単刺や置鍼、腹部への箱灸を行った。【経過】2診目(8日後) 3診目( 19日後)4診目(42日後)5診目(55日後)の GSRSの変化は、 GSRS全体スコア 36 19 16 15点、酸逆流 5332点、腹痛 643 3点、消化不良 13 6 4 4点、下痢 6333点、便秘 633 3点と推移した。日常生活の面では FD症状の寛解とともに食べることができるようになった。家族や友人と外食に行けるようになり、対人関係が回復したことで精神的にも前向きになった。【考察・結語】鍼灸の介入直後から GSRSスコアの全体スコア、下位尺度ともに減少し、 FDの症状の軽減が示された。慢性的な FDであっても短期的な鍼灸治療で著効が得られた 1例であった。 キーワード:鍼灸、機能性ディスペプシア、機能性消化器疾患、腹部膨満感、 Gastrointestinal Symptom Rating Scale 128 -Sun-P3-9:48 鍼灸研究を視野に入れた胃音と胃電図の同時記録 −1事例における検討- 1)帝京平成大学健康科学研究科 2)スポーツ健康医療専門学校鍼灸科 3)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 4)帝京平成大学東洋医学研究所 5)東京有明医療大学鍼灸学科 6)明治国際医療大学 長嶺澄佳 1)、篠原大侑 2)、廣井寿美 1)、 皆川陽一 1,3,4)、岡田岬6)、谷口博志 5)、 今井賢治 1,3,4) 【目的】胃音と胃電図を同時に記録することは、鍼灸刺激に対する胃運動の作用をさらに解析することができる。そこで、簡便で非侵襲的な記録方法はないか鍼灸研究を視野に入れ、胃音と胃電図を同時に記録し、データの比較を行いつつ機械操作およびデータ解析の習得を行った。今回は取得したデータの関連性について報告する。【方法】対象1名(28歳,女性)。6時間の絶食の後、胃電図測定用の電極と胃音測定用の高感度マイクを腹部に装着し、90分間の記録を行った。胃電図の測定は、専用のポータブル型胃電計 EGS2(ニプロ社製)を用いた。胃音の測定は、高感度ピエゾセンサーマイク(GOKSENS)を対象者の心窩部に固定し、音響アンプ(audio-technic社製 , AT-HA2)で増幅させて記録した。解析は A/Dコンバーター(power lab 8sp)を介しPCに取り込み、胃音と胃電図の原波形を比較した。【結果】胃音および胃電図の位相の一致が見られた。さらに、胃音および胃電図から空腹期強収縮を確認することが出来た。その際には胃音と胃電図の振幅が同時期に大きくなった。【考察・結語】 1事例ではあるが胃音と胃電図の関連性を見ることができ、さらに空腹時の胃の運動パターン(いわゆる phase1および phase3)も確認できた。このことから、ヒトにおいて胃音と胃電図の同時記録を応用すれば、簡便で非侵襲的にヒト胃運動とそれを調律する電気活動に対して鍼灸刺激の作用を捉えられることが期待できる。今後は、本実験を計画し、倫理申請の認可を経て、再現性の確認をするとともに鍼灸刺激をした際の変化を評価していく。 キーワード:胃運動、胃音、胃電図 129 -Sun-P3-10:00 標準治療に奏功しなかった上部消化管愁訴に対する鍼灸治療の症例 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)東京有明医療大学附属鍼灸センター 谷口授1,2)、谷口博志 1,2)、小田木悟2)、竹谷真悠 2)、坂井友実 1,2) 【目的】逆流性食道炎および胃潰瘍と診断され、標準治療を開始したが奏功しなかった患者に対する鍼灸治療を経験したので報告する。【症例】18歳、女性、大学生。X-4ヶ月より、新しい環境や友人関係のストレスから、次第に胃痛、嘔気、嘔吐が強くなり、X-2ヶ月にかかりつけ医を受診。ランソプラゾール、グーフィスなどを処方されるも改善しなかったため他院へ紹介となり、胃内視鏡検査の結果、逆流性食道炎と胃潰瘍と診断された。レバミピドとドンペリドンを処方され服用したが症状は改善されなかった。最近では、これらの症状に加え通学中の電車内での急な冷や汗と嘔気に困っており、途中下車を余儀なくされていた。学業にも支障が出始めており、症状改善を目的に当院の来療に至った。[現病歴]胃痛や嘔気は程度の差はあるが毎日感じている。症状が最も強いのは朝であり朝食は食べられない。嘔吐は毎日ではないが食後吐くことがある。食前や食後に特徴的な胃の痛みは無い。ピロリ菌感染なし。[所見]脈診:数弦、舌診:淡紅〜絳舌、白黄苔、剥落(中心部)、舌尖紅、紅点、腹診:心窩痞硬、胸脇苦満、症状:嘔気、嘔吐(酸苦味)、呑酸、目の充血、多弁、熟眠感なし。左背部に痛みが出ることがある。性格は快活で友好的であるが、人間関係に悩むことが多い。【治療・経過】肝胃不和(肝鬱化火犯胃)証として治療を開始。初診時の GSRS全体スコアは 3.82であったが、5診目には 1.82まで低下した。鍼灸治療を開始してからも増悪と緩解を繰り返していたが、治療後 2〜3日は症状が落ち着くというコメントが得られた。また 4診目には毎日感じていた症状が、週2〜3回感じる程度まで減少していた。【考察・結語】標準治療が奏功しなかった症例に対して鍼灸治療を行ったところ、症状の改善が得られた。本症例を通して患者が抱えるストレスと付き合いながら、鍼灸治療を通してサポートを行うことが重要であると考えた。 キーワード:上部消化管愁訴、ストレス、鍼灸治療 130 -Sun-P3-10:12 脳卒中急性期に生じた持続性吃逆に対する鍼治療の効果 立砺波総合病院 武田真輝、土方彩衣、林佳子 【はじめに】持続性吃逆に対する鍼治療については、有効性が示唆されているが、本邦における臨床報告は乏しい。今回、脳卒中急性期に生じた持続性吃逆に対して鍼治療を行った症例を後方視的に調査し、鍼治療の影響と安全性を検討したので報告する。【方法】対象は脳卒中急性期に生じた吃逆に対して鍼治療を行った入院患者(期間 X−7年4月から X年12月)。調査は診療録から後方視的に実施した。鍼治療は 1〜2回/日の頻度で行い、全例に中府と中への接触鍼および腹部の打鍼を実施。個々の証(胃気上逆4例、肝脾不和4例、肺腎陰虚 2例、肺脾両虚 1例)に合わせて接触鍼を実施した。吃逆持続時間は6時間毎の看護記録で評価し、1つの時間帯で「吃逆あり」と記載されていれば吃逆持続時間は6時間、2つの時間帯なら12時間、3つの時間帯なら18時間、4つの時間帯全てなら24時間と定義した。吃逆が48時間以上停止した場合を「消失」と定義した。鍼治療前後の吃逆持続時間を Wil coxon signed-rank testで比較した。【結果】対象は 11名(全て男性)、年齢中央値(範囲) 68歳( 46-79歳)、脳卒中の内訳は脳出血 2例、脳梗塞 9例、鍼開始時の Japan Coma Scaleは1桁9例、 2桁1例、 3桁1例であった。鍼治療前に行われた治療は柿蔕 10例、メトクロプラミド7例、クロルプロマジン1例、芍薬甘草湯1例であった。吃逆の出現から鍼開始まで平均 8日(範囲 4-33日)であった。鍼治療前の吃逆持続時間の平均値(95%信頼区間)は 17.3時間 /日(18.6 to 15.8)、治療後は 4.8時間 /日(6.0 to 3.5)と有意に低下した(P<0.01)。また、吃逆が消失するまで平均8.6日(範囲2-37日)であった。全 96回の鍼治療で有害事象は認めなかった。【考察】様々な治療に抵抗性であった脳卒中急性期の吃逆に対して鍼治療を行った。後方視的調査であるが、施術後は吃逆の持続時間が有意に低下していた。持続性吃逆に鍼治療は試みる価値がある方法の一つと考えられる。 キーワード:吃逆、脳卒中、鍼治療、打鍼、有害事象 131 -Sun-P3-10:24 脳卒中患者の評価ツール「鍼灸ケアシート」の特徴(第一報) 1)脳梗塞リハビリセンター 2)東京有明医療大学 宮澤勇希 1)、石上邦男 1)、鶴埜益巳 1,2) 【目的】当施設は関連法規を順守して医療・介護保険外で脳卒中生活期患者に、リハビリテーション専門職とともに外来サービスを提供する。開業の2014年から患者の希望に基づく施術データを蓄積し、2019年に「鍼灸ケアシート」という評価ツールを開発した。今回、その運用開始時データの特徴をまとめたため報告する、【方法】鍼灸ケアシートは15の大項目(睡眠、冷え、ほてり、硬さ、痛み、しびれ、浮腫み、便、小水、聞こえ、食べること、飲むこと、発汗、その他、女性特有の症状)と、それぞれに状況や身体部位別の複数の中項目を設定する。施術する項目を開始時に中項目でマークし、主観的変化を 4週間毎に 3段階(改善・不変・増悪)で評価する。さらにカウンセリングで症状の自己管理を促すのに活用する、対象者は2020年1月〜2022年1月に当施設を利用し、鍼灸ケアシートで評価した脳卒中生活期患者 56名で、説明と同意は書面にて実施した。方法は鍼灸統括が後方視的に鍼灸ケアシートから個人情報を排除してデータ集計した後、研究担当がその特徴について概観した。主観的変化における改善の比率を算出して、その分布について確認した。【結果】開始時のマークは629で、大項目での上位3つは硬さ 195(31%)、冷え 110(18%)、浮腫み 79(13%)だった。変化は改善 349、非改善 356で、76項目で継続的なアプローチが確認された。改善が得られ易かった大項目は睡眠、冷え、ほてり、浮腫み、食べることで、逆に得られ難かったのは硬さ、痛み、しびれ、便、小水、聞こえ、飲むこと、発汗だった。【考察】これまで脳卒中への鍼灸施術の有効性に関する多数例での報告は乏しい。脳卒中患者の医学的な評価ツールは多数あるが、鍼灸施術の患者の要望を包括的に網羅したものはない。今後,さらにデータを蓄積し,また改善と患者属性や施術内容の関係性を明らかにすることで、有効性の高い脳卒中の鍼灸を確立したい。 キーワード:脳卒中、評価ツール、鍼灸ケアシート 132 -Sun-P3-10:36 痙縮に伴う腹部絞扼感に対する鍼灸治療の一症例 1)筑波技術大学 保健科学部附属東西医学統合医療センター 2)筑波技術大学保健科学部保健学科鍼灸学専攻 陣内哲志 1)、鮎澤聡1,2)、櫻庭陽1)、 成島朋美 1) 【目的】脊髄病変による痙縮を背景とした腹部絞扼感は、臨床でよく見かける症状だが、鍼灸治療の報告はほとんど無い。今回我々は、体幹部の痙縮に伴う腹部絞扼感を訴える症例を経験したので報告する。【症例】86歳、男性[現病歴]X-2年11月、誘因なく突然の背部痛を訴え救急搬送され、発症の状況や症状などから脊髄梗塞と診断を受けた。下肢の弛緩性麻痺が残存し、車椅子による生活となった。以後、常に腹部に縄で縛られたような絞扼感を感じていた。症状は、臥位から体幹を起こす際に増悪し、症状による食欲低下もみられた。 X-1年1月から筋弛緩薬で症状が軽減していたが、咳や痰の増加に伴い肺サルコイドーシスが悪化したため服薬を中断した。そのため、症状の程度は発生当初に戻り、症状の改善は見られなかった。 X年7月、鍼灸治療を希望して来所し、治療を開始した。[既往歴]肺サルコイドーシス(65歳)、心臓サルコイドーシスで CRT-D(80歳)[所見]第 6胸椎以下の痛覚と温度覚が消失、触覚や深部感覚は異常なし。触診では、腹部の腹直筋や腹横筋に部分的な緊張が触知できた。【治療・経過】治療は、ステンレス鍼 1寸6分3番鍼(50mm20号)を用いて、腹直筋、腹横筋の緊張部を中心に置鍼を 15分間行った。評価は、想像し得る最大のつらさを10とする NRSで聴取した。経過は、 NRSが初診時 7から 2診目に2と大幅に軽減され、食欲の改善も見られた。3診目以降は 1と低値で維持し、10診目には症状出現範囲の縮小がみられた。【考察】本症例は、症状が脊髄病変後に見られたこと、座位で増悪し仰臥位で軽減すること、筋弛緩薬により軽減したことから体幹部の痙縮により腹部絞扼感が出現したと考えた。鍼治療により、腹部の筋緊張が緩和することによって絞扼感が改善されたと考えた。【結語】痙縮に伴う腹部絞扼感に対して鍼灸治療を行い、症状が改善した。 キーワード:腹部絞扼感、痙縮、脊髄梗塞 133 -Sun-P3-10:48 片麻痺の上肢痙縮に対して鍼治療を行い関節可動域が改善した一例 1)東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 2)広胖堂はりきゅう治療院 MATAHARI 神谷哲治 1,2)、高山真1) 【目的】脳梗塞によって麻痺が残存するケースは多く、拘縮予防はその後の生活に大きな影響を与える。今回、脳梗塞後左片麻痺の上肢痙縮に対して1回の鍼治療で関節可動域(ROM)の改善を認めたので報告する。【症例】63歳、男性。[主訴]左上肢のこわばりと麻痺。[現病歴]X-2年5月、右放線冠ラクナ梗塞を発症。急性期に投薬とリハビリテーションを受けた後に回復期リハビリテーション病院に転院となった。下肢装具着用による杖歩行が可能となり退院した。リハビリテーション継続のため、同病院に週2日通院していたが発症から6カ月後に終了となった。以降は、週2日デイケアに通い下肢の筋力増強訓練と上肢の ROM訓練を行っていた。さらなる上肢の機能改善を目的に X年10月に当治療院へ来院した。[所見]痙縮によって肘関節、手関節、手指の伸展が困難であった。各関節の ROMは肘関節伸展 -90度、手指伸展測定不可で爪が手掌に食い込んでいる状態であった。 YNSA診断点の反応は合谷診断点は左、上腕診断点は左頸椎点、左脳幹点であった。【治療・経過】治療は YNSAを行った。左A点、左脳幹点、左C点、左 Kソマトトープの肩・肘・手・足、左Iソマトトープの肘・手に刺鍼。 YNSAのみでは上肢の痙縮変化が乏しかった為、合谷、尺沢への単刺を加えた。初診鍼治療後は肘関節伸展 -30度、手指伸展はMP関節で 0度、 PIP関節で -30度、 DIP関節で -30度と各関節が軽度屈曲位まで伸展が可能となった。【考察】痙縮が強いために関節可動域訓練のみの介入では ROMの変化が乏しかった。痙縮に対して 1回の鍼治療でも ROMの改善がみられた。今回、局所へ置鍼しない YNSAを選択することで ROMの変化を確認しながら刺鍼出来た。鍼治療で痙縮を緩和させることで今後の関節可動域訓練を行うことが容易になるのではと考える。【結語】脳梗塞後左片麻痺の上肢痙縮に対して鍼治療を行う事で ROMの改善に寄与する可能性が示唆された。 キーワード:鍼灸、痙縮、関節可動域 134 -Sun-P3-11:00 意識障害軽減と呼吸安定に鍼治療が有用であった重症頭部外傷例 1)岐阜大学医学部附属病院第二内科 2)中部脳リハビリテーション病院・中部療護センター 松本淳1,2) 【緒言】重症頭部外傷後の意識障害と呼吸状態の改善目的にて鍼治療を併用した 1例について報告する。【症例】年齢20代、男性[病歴]交通事故にて頭部外傷(外傷性くも膜下出血、脳挫傷、びまん性軸索損傷)や顔面骨骨折、肺挫傷、大腿骨骨折等を含む多発外傷を受傷し、当院高度救命救急センターに入院となった。入院加療が進み鎮静を終了した後にも意識障害が遷延し、人工呼吸器からの離脱にも難渋した。入院21日目より意識障害の軽減と呼吸状態の安定目的にて鍼治療を開始した。[現症] Glasgow coma scale: E4VtM5。時に自発的な開眼を認めるが、追視や注視は認めず、指示動作も認めなかった。人工呼吸器の設定は CPAPモード、 FIO2 0.3、 PEEP 5mmHg、PS 7mmHgであったが、離脱訓練を試みると呼吸状態悪化のため 1時間未満で中止する状態であり、夜間は無呼吸のため SIMVモードで管理される状態であった。【主な投薬】プロチレリン、抗痙攣薬、抗菌薬【鍼治療】水溝、内関、足三里、百会、印堂、上星、合谷等を用いた鍼治療を週3〜4日の頻度で行った。【経過】鍼治療開始翌日(開始2日目)には呼吸状態の増悪なく終日人工呼吸の離脱が可能となった。鍼治療2診目(鍼治療開始後3日目)の時点では、鍼治療時以外には明確な指示動作を認めなかったが、鍼治療中には指示動作を認めた。7診目(12日目)には開閉眼と頷き動作による YES/NOの応答や歯ブラシや櫛の使用法を示すことが可能となった。10診目(18日目)には気切カニューレが抜去され会話が可能となったが見当識や記憶の障害を認め、 GCSはE4V4M6であった。13診目( 23日目)に施行した長谷川式簡易知能スケールは 17点であった。鍼開始後 28日目に転院となった。【結語】鍼治療開始後に呼吸状態の安定と意識障害の軽減傾向を認め、鍼治療中に指示に対する応答反応の向上傾向を認めた。本症例に対して鍼治療が有用であったと考えられた。 キーワード:重症頭部外傷、意識障害、人工呼吸器、鍼治療 135 -Sun-P3-11:12 座位保持が困難な頸部ジストニア患者に対しての鍼治療 1)スピカ鍼灸・マッサージ院 2)健康スタジオキラリ・ Kirari鍼灸マッサージ院 3)関西医療大学附属鍼灸治療所研修員 4)医療法人寿山会喜馬病院 5)関西医療大学大学院保健医療学研究科 高橋護1,2,3)、井尻朋人 4)、谷万喜子 5)、鈴木俊明 5) 【目的】座位保持が困難なジストニア患者に対して鍼治療を行い症状の改善に至ったので報告する。【症例および現病歴】40代男性。X-1年に抑うつ症状で入院中に内服薬の変更を機に頸部伸展の不随意運動が生じ、K病院にて遅発性頸部ジストニアと診断された。ボトックス治療を3回受け症状は改善したがさらなる改善を求め治療開始となった。[所見]座位姿勢は頸部伸展、頸部左側屈・右回旋、胸腰椎移行部伸展位、股関節屈曲 70°で骨盤中間位であった。本症例は座位保持開始後に頸部伸展の不随意運動が生じ、しばらくしてから上部体幹伸展の不随意運動が生じた。その後、胸鎖乳突筋の収縮が増大し、頭部伸展が加わり最終的に頸部伸展 30°〜 60°の範囲の不随意運動となった。端座位保持は 1分未満であった。Tsuiスコアは16点であった。両側板状筋、両側胸鎖乳突筋(特に左)、両側多裂筋、両側最長筋に筋緊張亢進と筋短縮、両側腹直筋の筋緊張低下が認められた。胸腰椎部と後頸部の皮膚短縮も認められた。【治療】不随意運動抑制目的に百会へ置鍼を行った。胸腰椎部、後頸部の皮膚短縮改善目的に集毛鍼刺激を行った。所見の筋緊張抑制と筋伸張目的にダイレクトストレッチングを行った。循経取穴法に基づき両側腹直筋の筋緊張促通目的に両側衝陽へ置鍼を行い、また不随意な収縮のある両側板状筋に対して両側外関、両側最長筋に対して両側崑崙に筋緊張抑制目的に置鍼を行った。【経過】7ヵ月後に頸部伸展の不随意運動は0〜15°の範囲となり、上部体幹伸展の不随意運動は消失した。端座位保持は15分以上可能になった。Tsuiスコアは 10点となった。【考察】頸部伸展の不随意運動が生じていたが、体幹伸展の不随意運動が加わることで頸部伸展の不随意運動の範囲が増大していた。そのため、体幹部への鍼治療をしたことが頸部症状の改善に影響したと考えられた。【結語】頸部と体幹の両方へ治療を行い、端座位保持の延長につながった。 キーワード:ジストニア、集毛鍼、不随意運動、座位保持困難 136 -Sun-P3-11:24 上肢の震えが著明でADLに支障をきたした上肢ジストニアの一症例−書字困難に着目した鍼治療- 1)関西医療大学神経病研究センター 2)関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学 3)関西医療大学大学院保健医療学研究科 東内あすか 1,2,3)、谷万喜子 1,2,3)、鈴木俊明 1,3) 【目的】上肢の震えが著明でADLに支障をきたした上肢ジストニア患者に対して、書字動作に着目して鍼治療をおこない、効果を得たので報告する。【症例】 23歳女性。左利き。X-1年、左上肢全体が震えて ADLが困難となり、字が書けなくなった。A病院脳神経内科でジストニアと診断された。内服薬の服用では自覚的な効果なく、X年Y月鍼治療開始。発表に際し症例には同意を得た。【治療・経過】書字動作に着目して評価と治療をおこなった。書字時、骨盤左下制に伴う脊柱の左傾斜と上部体幹左側屈を呈し、左肩関節外転・内旋位で前腕回内が著明であった。左中殿筋の筋緊張低下による左股関節外転・骨盤左下制で生じた体幹左傾斜と、Th7の高位での左多裂筋の筋緊張低下による体幹左側屈により、相対的に生じる左肩の下制を制動するため、左僧帽筋上部線維の筋緊張亢進がみられた。左前鋸筋の筋緊張低下を認め、その代償として左上肢挙上時に肩甲帯を安定させるため左三角筋中部線維・左大胸筋・左小胸筋の筋緊張が亢進し、三角筋前部線維は働きにくい状況と考えた。書字時に増強した前腕回内位を制動しようと上腕二頭筋・腕橈骨筋の筋緊張亢進が見られた。鍼治療は 30ミリ 20号のステンレス製ディスポーザブル鍼を用いた。両側上肢区への置鍼および罹患筋に対する循経取穴として、筋緊張促通目的で左中殿筋・左前鋸筋には左丘墟、左多裂筋には左崑崙、左三角筋前部線維には左合谷、筋緊張抑制目的で左大胸筋・左小胸筋には左衝陽、左僧帽筋上部線維には左外関に置鍼した。手指の巧緻動作獲得を目的で左八邪(第 2-3指間)に置鍼した。筋緊張亢進筋、筋緊張低下筋で筋短縮を伴う筋にはダイレクトストレッチングも実施した。書字動作が改善し、鍼治療開始 29ヵ月後、 80分× 2コマの塾講師の就業が可能になった。【考察・結語】上肢の震えが著明な上肢ジストニア患者に、書字動作に着目して罹患筋を同定した鍼治療が有効であった。 キーワード:上肢ジストニア、書痙、震え、鍼治療 137 -Sun-P3-14:00 頚部経穴の内部の可視化及び 3Dモデルの製作(第2報)後頸部経穴と筋・椎骨動脈の立体的認識 1)日本鍼灸理療専門学校 2)(一財)東洋医学研究所 3)東京クリニック脳神経内科 4)埼玉医科大学東洋医学科 5)岩手県立大学 小川一1,2)、菊池友和 1,2)、五十嵐久佳 3)、 山口智4)、土井章男 5) 【目的】後頸部経穴の刺鍼は、解剖学的知識が実践的な内部構造の認知に結びつかず、刺鍼時の不安とリスクは大きい。令和 5年は頸部 MRI画像から椎骨動脈を主とし経穴内部の 3Dデータ化を行い、刺鍼による椎骨動脈に接触する角度と深さを立体的に示した。今回は経穴内部の構造を椎骨動脈に加えて頸椎や深部の筋の可視化を行った。【方法】同意を得た男性 1名の頸部の MRI画像( GEシグナ 1.5T、撮像方法 T2、撮像間隔 1.2mm)をポリゴン化した。 DICOMデータは画像解析ソフト(OsirX)を使用し、皮膚面・頸椎(C1、C2)・後頸部浅層と深層の筋群・動脈(椎骨動脈・内頸動脈)及び画像上でマッピングした後頚部の経穴(天柱・風池)を抽出した。抽出データは OBJデータで出力し、モデリングソフト(Zbrush)で統合した。【結果】 3D画像で皮膚面の経穴と透過した内部の筋・動脈の立体的な配置を示した。天柱穴の水平方向の刺 鍼は板状筋(10.6)・半棘筋(16.7)・下頭斜筋(43.8)を貫き椎骨動脈(66.9)に達し、風池穴では板状筋(8.9)を貫き半棘筋外縁(20.5)から上頭斜筋と大後頭直筋の間を抜けて椎骨動脈( 43.2)に達した(接触までの深さ、単位 mm)。3D画像により刺鍼と深部構造が立体的に認識された。【考察】皮膚面には見えない内部構造に鍼は多方向から刺入される。 3D画像化により天柱穴や風池穴からは角度によって板状筋・半棘筋と後頭下三角への刺鍼となり、深刺による椎骨動脈への接触だけでなく、後頭下神経や大後頭神経の損傷リスクも考えられる。内部の構造や深さに対する総合的で立体的な認識を得た刺鍼訓練に向け、実物大の透過型 3Dモデルの製作が必要と考える。【結語】 3D画像により後頸部経穴から内部の筋と椎骨動脈までの関係を多方向から可視化したことで、後頸部の経穴内部の筋と動脈の関係を立体的かつ実践的に認識可能とした。 キーワード:後頸部経穴、椎骨動脈、後頭下三角、3Dデータ化、可視化 138 -Sun-P3-14:12 運動負荷による筋硬度変化と鍼通電が筋硬度に与える影響について 関西医療大学大学院保健医療学研究科 山下勝大、木村研一 【目的】一般に鍼治療後に筋緊張が緩むとされているが、客観的な指標を用いて検討した報告は少ない。近年、非侵襲的に組織の硬さを画像化して評価する超音波エラストグラフィ(real time tissue elastography: RTE)が開発された。RTEを用いた研究で運動負荷後に筋硬度が増加したことやストレッチによって筋硬度が低下することが報告されている。鍼灸臨床では鍼通電がスポーツ後の筋疲労改善や筋緊張緩和を目的に用いられている。本研究ではRTEを用いて運動負荷による筋硬度変化に鍼通電が及ぼす影響について検討した。【方法】実験1は健常成人男性11名(23.4±5.9歳)、実験2は健常成人男性 10名(22.1±5.0歳)を対象とした。実験 1は腹臥位にて5分間安静後、腓腹筋内側頭の RTE測定および自覚的な筋疲労感を VASで測定した。測定後、非利き足の片脚カーフレイズ運動を行い、運動後、15分後、30分後にRTEとVASの測定を行った。実験2は5分間安静後、片脚カーフレイズ運動を行った。運動後に RTEとVASを測定した後、腓腹筋の承筋穴と承山穴に鍼通電を15分間行い、通電直後、通電 15分後に測定を行った。統計解析はフリードマン検定を行い、ボンフェローニ補正による多重比較検定を行った。【結果】実験1でひずみ比(Strain Ratio:SR)は安静時に比べ、運動後に有意に増加した。運動後に比べ、15分後、30分後で有意差はみられなかった。実験2ではSRは運動後で有意に増加した。運動後に比べ、鍼通電後に有意に低下し、通電15分後も低下した。 VASは実験 1、2ともに運動後に有意に増加し、運動後は有意に低下した。【考察・結語】腓腹筋の経穴への鍼通電は片脚カーフレイズ運動により誘発される腓腹筋の筋硬度の増加を有意に低下させたことより、筋硬度の回復を促進する可能性が示唆された。 キーワード:超音波エラストグラフィ、筋硬度、カーフレイズ運動、鍼通電 139 -Sun-P3-14:24 慢性肩こり患者における鍼治療の効果の意味に関する質的研究 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)東京有明医療大学保健医療学研究科鍼灸学分野 3)University of Illinois Chicago 高梨知揚 1)、梶原優花 2)、矢嶌裕義 1,2)、 高山美歩 1,2)、Schlaeger, Judith M.1,3)、 Patil, Crystal L.3)、高倉伸有 1,2) 【目的】肩こりに対する鍼治療の効果に関する研究は、数量的に検証されたものが大半であり、検証期間も短期間のものがほとんどである。しかし実際の臨床においては、長期間継続的に鍼治療を受ける慢性肩こり患者も少なくない。そこで本研究では、慢性肩こりに対する鍼治療の効果の意味について明らかにすることを目的とし、鍼治療を継続して受けている慢性肩こり患者へのインタビューを通じて、鍼治療の経験とそれに対する認識について質的に検討した。【方法】6ヶ月以上定期的に鍼治療を受けている慢性肩こり患者14名を対象に、インタビューガイドに基づいて1対1の半構造化インタビューを行った。インタビュー内容はICレコーダーにて録音し逐語録を作成した後、 Grounded Theory Approach(GTA)の手法に基づき質的に分析した。【結果】GTAによる分析の結果、7つのカテゴリーが得られた。そのうち、鍼治療の効果の意味に関する中心的なカテゴリーは、[こりの緩和]、[効果の累積]、[体調が整う]、[生活の助け]であった。鍼治療により即時的に得られる[こりの緩和]は、継続的な治療により[効果の累積]とともに、[整う体調]という効果の意味をももたらしていた。さらに、[こりの緩和]、[効果の累積]、[整う体調]という効果の意味は、対象者らの[生活の助け]という意味の認識にも繋がっていた。これらの効果の意味が認識される過程には、患者個々が抱く[鍼治療の作用イメージ]と、[治療を通じた身体認識]が影響していた。また、鍼治療の効果の意味に関する中心的な4つのカテゴリーの背景には、対象者の大半が実感していた[肩こりの治らなさ]が存在していた。【考察・結語】本研究の結果は、慢性肩こりに対する継続的な鍼治療が、根本的な「治癒」をめざす「キュア」以上に、こりを「緩和」し、体調を整え、生活を支える「ケア」としての意味を持つことを示唆している。 キーワード:肩こり、鍼、効果、意味、質的研究 140 -Sun-P3-14:36 肩こりに対する鍼治療の影響 触診と超音波エラストグラフィを指標として 1)東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部 2)新潟医療福祉大学鍼灸健康学科 林健太朗 1)、小糸康治 1)、粕谷大智 2) 【目的】本研究の目的は、肩こり自覚部位として多い僧帽筋上部(UT)への鍼治療の影響を自覚および客観的所見から明らかにすること。【方法】対象は、本研究の趣旨の理解と書面による同意が得られた、当院に通院し肩こりの訴えに対して鍼治療を受ける者14名(男2名、女12名、64.2±17.2歳)。鍼治療は、伏臥位、50ミリ、20号のディスポ鍼を用い、左右の UTに各 1本、筋内に達する深さまで刺入し、特別な手技は加えずに 15分間の置鍼をした。評価は、肩こりの程度(VAS)、触診、超音波エラストグラフィ(RTE)とした。肩こりの程度は、治療前後に評価し、治療前には過去 1か月と治療前の程度を評価した。触診とRTEは、座位良姿勢で上肢下垂位、座位良姿勢で上肢90度屈曲位、座位安楽姿勢で上肢90度屈曲位で、第7頸椎棘突起と肩峰外縁中央を結ぶ線上の中点を測定した。触診は、3種類の触診圧で硬さを4段階で評価した。 RTEは、音響カプラーを用いて測定し、僧帽筋上部と音響カプラーの歪み値の比(SR)を評価とした。各 3回計測した中央値または平均値を用いた。なお、鍼治療、各測定は異なる者が行った。対象者は、基本調査、5分間の安静座位、触診、RTE、鍼治療、鍼治療直後調査、RTE、触診の順序で行った。統計解析は、SPSSを用い、鍼治療前後の差の検定は、肩こりの程度、触診は Wilcoxonの符号付順位検定、SRは対応のある t検定を用いた。統計学的有意水準は 5%未満とした。【結果】肩こりの程度は、過去 1ヶ月と鍼治療後、鍼治療前と鍼治療後で有意差を認めた(p<0.05)。その他の項目に有意差は認められなかった。【考察】鍼治療は、肩こりの程度を有意に改善したが、その他の項目では変化は認められなかった。本研究には二次性肩こりが含まれている可能性があるが、自覚症状の改善という観点からは医師の管理下での鍼治療は有益であることが推測される。一方で、触診や RTEによる評価は困難である可能性が示唆された。 キーワード:鍼治療、肩こり、僧帽筋上部、超音波エラストグラフィ、触診 141 -Sun-P3-14:48 東洋医学的な視点で治療した下肢痛の1例 市立砺波総合病院 土方彩衣、林佳子、武田真輝 【はじめに】現代医学的な病態評価に加え、歩き方や肌肉の状態など東洋医学的な視点も併用し、下肢痛が軽快した症例を経験したので報告する。【症例】[患者]70代、女性[主訴]左大腿後面から下腿後面の痛み[既往歴]乳癌( 70代)[現病歴] X-7日、左下肢痛のため近医整形外科を受診。MRI検査などを受けたが器質的な異常は指摘されなかった。 X-3日、痛みのため左下肢に加重がかけられず、趣味の太極拳もできなくなった。 X日から鍼灸開始となった。[初診時所見]身長 152cm、体重 44kg。痛み Numerical Rating Scale(以下 NRS)4、歩行への支障 NRS4、歩行は不安定。下肢伸展挙上テスト 90°/90°、アキレス腱反射 +/+、膝関節可動域制限なし、膝関節の伸展・屈曲の徒手筋力テスト 5/5(痛みは誘発されない)、膝関節の熱感・腫脹なし。[東洋医学的所見]望診:不安定な歩行、不安そうな表情。問診:重い鈍痛、温めで軽減、筋肉の引きつり、食欲・睡眠良好。切診:脈やや浮、実渋。左大都膨隆、左委中膨隆、左束骨圧痛。下肢の肌肉は軟弱で痩、冷えなし。【経過】脾の病(本治)と足太陽経脈病証(標治)と捉え、大都・脾兪・束骨・腎兪・肝兪・大腸兪・委中・殷門・委陽・承筋などに接触鍼、疼痛部位に棒灸を実施した。 1回/週の頻度で施術した。 X+7日(2診)、痛みが軽減し、加重をかけずに太極拳を再開。 X+20日(4診)、痛み NRS3、歩行は安定してきたが、太極拳の時は不安のため加重をさけていた。 X+35日(6診)、階段昇降時の痛みが改善し、太極拳でも加重可能となった。 X+42日(7診)、痛み NRS1、歩行 NRS0、太極拳の発表会に出られるようになり、終診となった。【考察・結語】「素問:臓気法時論篇」の「脾病者、身重、善飢、肉痿、足不收行。」を参考に、肌肉軟弱で痛みによって歩行が不安定な患者に、脾の治療を加え良好な経過だった症例を経験した。局所の痛みに対しても本治を行うことが重要と思われた。 キーワード:本治、接触鍼、棒灸、素問 142 -Sun-P3-15:00 太白穴への円皮鍼刺激がヒラメ筋の筋緊張に与える変化の検討 1)健康スタジオキラリ Kirari鍼灸・マッサージ院 2)関西医療大学附属鍼灸治療所研修員 3)医療法人寿山会喜馬病院 4)関西医療大学大学院保健医療学研究科 山崎正史 1,2)、高橋護1,2)、井尻朋人 3)、 鈴木俊明 4) 【目的】我々は毫鍼を用いた置鍼術や集毛鍼刺激が脊髄神経機能の興奮性に変化を与え、筋緊張に変化を及ぼすことを報告してきた。今回は足太陰脾経に属する太白穴への円皮鍼が同経絡の走行するヒラメ筋の筋緊張に与える影響について、筋緊張の指標の一つと言われている誘発筋電図の H波を導出し検討した。【方法】本研究に同意を得た健常成人15名(平均年齢27.6±5.4歳)の左下肢を対象とし、円皮鍼(セイリン社製パイオネックス鍼体長0.6mm)は太白穴へ5分間の貼付とした。測定条件として被検者は腹臥位とし、安静時、円皮鍼貼付直後、貼付開始5分後、抜鍼直後、抜鍼5分後、抜鍼10分後に脛骨神経刺激によるヒラメ筋のH波を導出した。記録電極は脛骨結節と内果の中間の高さで脛骨内側すぐのヒラメ筋上に配置し、得られた波形から振幅 H/M比を算出し、安静時と他の試行をそれぞれ比較した。統計学的検定には多重比較検定 (Dunnett法)を用いた。本研究は医療法人寿山会倫理審査委員会の承認を得た( No.2023108)。【結果】ヒラメ筋振幅 H/M比は、安静時と比較して全ての試行で統計学的有意差を認めなかった。【考察】変化を認めなかった要因の一つとして、太白穴が属する足太陰脾経はヒラメ筋内側の一部のみを通る経絡であることが考えられる。そのため、ヒラメ筋全体の筋緊張に及ばす影響が少なかったと考えられた。また、刺入深度の影響も考えられる。本研究と同じくヒラメ筋から H波を導出した先行研究では、脳血管障害後遺症により筋緊張亢進を認める対象に対し、陽陵泉に毫鍼を2cm刺入した置鍼術は1cm刺入した場合と比較して振幅 H/M比の変化量の増大が報告されている。今回使用した円皮鍼の刺入深度は0.6mmであり、先行研究と比較して刺入深度が浅いため、変化を認めなかった可能性がある。【結語】太白穴への円皮鍼刺激がヒラメ筋に対応する脊髄神経機能の興奮性に与える変化を検討したが、統計学的有意差は認めなかった。 キーワード:円皮鍼、循経取穴、誘発筋電図、 H波、筋緊張 143 -Sun-P3-15:12 太白穴への置鍼刺激がヒラメ筋の筋緊張に与える変化 1)健康スタジオキラリ Kirari鍼灸・マッサージ院 2)関西医療大学附属鍼灸治療所研修員 3)医療法人寿山会喜馬病院 4)関西医療大学大学院保健医療学研究科 吹野将大 1)、高橋護1,2)、井尻朋人 3)、 鈴木俊明 4) 【目的】太白穴への鍼刺激により膝関節伸展保持時の筋活動が刺激15分後に減少したという報告はあるが、神経機能に及ぼす変化を調べた報告は少ない。今回、神経機能のなかでもヒラメ筋の筋緊張に影響を及ぼす脊髄神経機能の興奮性に対して、太白穴への鍼刺激が与える影響について誘発筋電図H波を用いて検討した。【方法】対象は本研究に同意を得た健常成人15名(平均年齢27.6±5.4歳)の左下肢とした。測定条件として被検者は腹臥位とし、安静時、鍼刺入直後、置鍼5分後、抜鍼直後、抜鍼5分後、抜鍼10分後に脛骨神経刺激によりヒラメ筋 H波を脛骨結節と内果の中間の高さで脛骨内側すぐのヒラメ筋上から導出した。鍼刺激は太白穴に5mm刺入し5分間置鍼した。得られた波形から振幅 H/M比を算出し、安静時と各試行の変化を比較した。統計学的検定には Dunnett検定を用いた。本研究は医療法人寿山会倫理審査委員会の承認を得た (No.2023109)。【結果】振幅 H/M比は、安静時と比較して全ての時期で統計学的有意差を認めなかった。【考察】今回置鍼を行った太白穴が属する足太陰脾経はヒラメ筋の内側を通る経絡である。しかし、ヒラメ筋は下腿後面を広く覆う筋肉であり太白穴への鍼刺激ではヒラメ筋への影響が軽微であったため、有意差がなかったと考える。また、太白穴への鍼刺激により膝関節伸展保持時の筋活動が置鍼 15分後に減少したと報告されている。加えて、陽陵泉穴への鍼刺激がヒラメ筋H波に与える変化の検討では置鍼時間の違いにより脊髄神経機能の変化量が変わったと報告されている。先行研究では置鍼時間が 15分だが本研究は置鍼時間が 5分と短い刺激時間であったため、変化を認めなかった可能性がある。【結語】今回太白穴への置鍼刺激がヒラメ筋の筋緊張に及ぼす変化について誘発筋電図H波を用いて検討したが、安静時と比較して統計学的有意差は認めなかった。 キーワード:循経取穴、置鍼、誘発筋電図、 H波、筋緊張 144 -Sun-P3-15:24 足関節可動域に対する鍼治療効果のレビュー 1)九州看護福祉大学看護福祉学部 鍼灸スポーツ学科 2)早稲田大学スポーツ科学研究科 3)早稲田大学スポーツ科学学術院 古庄敦也 1,2)、前道俊宏 3)、広瀬統一 3) 【目的】鍼、ドライニードリングを用いた介入が足関節可動域に与える影響について文献調査によって明らかにする。【方法】2023年12月1日に文献調査を行なった。検索媒体は PubMed、Scopus、MedLine、SportDiscuss、Web of Science、医中誌webを用いた。キーワードは英語論文では "Acupuncture(AC)" or "Dry needling(DN)" and "Range of motion" or "ROM" or "Flexibility" or "Mobility" or "Stiffness"、日本語論文では "鍼" or "ドライニードリング " and "関節可動域 " or "柔軟性 " or "弾性 " or "たわみ性 " or "剛性 "とした。選定基準としては( 1)AC、DN、鍼、ドライニードリングを用いた研究であること、(2)ヒトを対象とした研究であること、(3)運動器を対象とした研究であること、(4)RCTであること、(5)英語もしくは日本語論文であることとした。除外基準としては( 1)タイトルに AC、DN、鍼、ドライニードリングが含まれていない、(2)中枢神経性の可動域制限が起こっている、(3)毫鍼以外を用いている、(4)可動域の評価を行っていないこととした。【結果】データベース検索で Pubmed 1739件、 Scopus 2216件、 MedLine 1450件、 Sport Discuss 273件、Web of Science 1261件、医中誌 web 1093件が抽出され、採択条件を満たす論文は 7件であった。可動域の評価方法としては、非荷重位での自動運動による測定、荷重位での他動的測定、等速性筋力装置による測定が含まれていた。対象としては健常者 6件、足関節骨折患者1件であった。【考察】鍼・ドライニードリング治療の効果を表す指標として関節可動域は多く用いられており、様々な手法によって評価されてきた。一方で鍼・ドライニードリング治療が関節可動域に与える影響、そのメカニズムに関しては一定の見解が得られておらず、メカニズム解明のためのさらなる研究の必要性が示唆された。 キーワード:文献調査、関節可動域、足関節 145 -Sun-P3-15:36 膀胱痛症候群に鍼灸治療が有効であった1症例 北里研究所病院漢方鍼灸治療センター鍼灸科 井田剛人、富澤麻美、近藤亜沙、伊藤雄一井門奈々子、桂井隆明、伊東秀憲、伊藤剛、星野卓之 【目的】膀胱痛症候群に対し鍼灸治療を行い、良好な経過が得られた症例を経験したので報告する。【症例】41歳、女性[主訴]下腹部の不快感(ムズムズ感)[現症]身長: 170.8cm、体重: 61.3kg、BMI:21.0、血圧:123/79mmHg、腋窩温:36.4℃[既往歴]チョコレート嚢腫(X-4年)[現病歴] X-1年膀胱炎を発症し、抗菌薬内服で治癒したが X年2月に再発し、抗菌薬を 6週間服薬し一時的に軽快したが、同年 4月下旬に症状の再増悪がみられた。再度泌尿器科で検査したところ膀胱痛症候群と診断された。夜間尿、下腹部の不快感はあるが西洋医学的には治療法がないと言われ、 X年6月に当鍼灸外来を受診した。【治療・経過】六部定位脈診で腎虚証と診断し、北里方式経絡治療による本治法として陰谷、復溜の他、共通基本穴として腹部、背部の経穴に置鍼し、標治法として中極、次、下に灸頭鍼を行った。各治療前にVAS(Visual Analogue Scale)にて下腹部不快感の程度を評価し、初診時の VASは40mmだった。 1週間後のVASは29mmに軽減し、夜間尿が消失した。以後下腹部不快感の強弱はあるが比較的落ち着いた状態を維持し、 2ヵ月後の 9診時には VASが12mmとなり、午前中のみの不快感が残存した。 2ヵ月半後の 10診時で VASは5mmとなり下腹部の不快感は生活上、気にならない程度に改善した。【考察・結語】膀胱痛症候群の症状は心身の緊張と相関することが報告されており、本症例においてもストレスの関与が考えられた。圧痛や硬結など各所の筋緊張に対する、中極や中および下への温熱刺激は、膀胱を支配する交感神経の過緊張を緩め、下腹部不快感の改善に繋がった可能性が考えられた。西洋医学的に難治である膀胱痛症候群に対し鍼灸治療が有用である可能性が示唆された。 キーワード:膀胱痛症候群、灸頭鍼、北里式経絡治療 146 -Sun-P3-15:48 夜間頻尿に対するへの鍼治療の 1症例(第 2報) 中穴への長期施術の経過観察 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 加持綾子 1)、谷口博志 1,2)、松浦悠人 1,2)、 淺田麻希 1)、坂井友実 1,2) 【目的】我々は第72回全日本鍼灸学会学術大会にて、中穴への徒手的刺激の効果が減弱した夜間頻尿の症例に対して、同位部への鍼通電療法(以下EAT)に切り替えたところ良好な経過が得られたことを報告した。今回は同一症例にその後も EATを継続し、 2年2か月にわたり経過を観察した。【症例】 64歳男性主訴:夜間頻尿(頸肩こり)[現病歴] 10年前から夜間頻尿を自覚し始め、増悪傾向(4〜5回/夜、尿意により覚醒)にあったため夜間頻尿の改善を目的に鍼治療の開始となった。[所見と推定病態]頻尿に関する基礎疾患は有さず、夜間尿量が320〜550mlで多尿ではなく、夜間排尿回数が 5回であることから、過活動膀胱による夜間頻尿と推定し治療を開始した。鍼治療は 2年10か月(128診)まで中穴への徒手的刺激、129診以降は EAT(100Hz・間欠波15分)とした。使用鍼:60mm・30号鍼ステンレス製ディスポーザブル鍼(セイリン製)。【経過】治療開始後、夜間排尿回数は 1〜2回に減少しその後同治療を継続したが、2年10か月後の126診目に誘因なく夜間排尿回数が増加した。刺激時間を延長したが著効なく、129診の刺激法の変更に伴い夜間排尿回数は0〜1回に減少、夜間に覚醒しない日も出現した。それ以降2年2か月間同状態を持続できた。【考察及びまとめ】鍼灸治療は慢性疾患を対象とすることから治療期間は自ずと長期に渡る。過活動膀胱はその顕著な例となる。中穴への徒手的刺激での改善効果が減弱した同じ期間の EATを行っておらず有意性を示すことはできないが、刺激方法を変更するのみで2年以上の有効性が示されていることは、慣れが生じた際の選択肢の一つとしてEATに変更することも検討に値すると考えられる。刺激方法を検討することで過活動膀胱などの慢性疾患患者の生活の質向上に鍼灸治療が寄与していけるものと示唆される。 キーワード:夜間頻尿、過活動膀胱、中穴、徒手的刺激、鍼通電療法 147 -Sun-P4-9:00 鍼刺激のイメージは脊髄前角細胞の興奮性を増加させる(予備的調査) 北海道鍼灸専門学校 二本松明、川浪勝弘、工藤匡、塩崎郁哉、 志田貴広、笠井正晴 【目的】これまでに我々は合谷穴への鍼刺激により刺激部位直下の第一背側骨間筋の誘発筋電図F波の出現頻度や振幅を増加させることを報告してきた。その際、鍼刺激部位への意識集中が交絡因子として関与する可能性が想定された。そこで本研究では合谷穴への鍼刺激による第一背側骨間筋の誘発筋電図F波の変化と、同部位に鍼が刺入されているイメージ(以後鍼イメージ)による変化を検討した。【対象及び方法】対象は神経障害の認められない健康成人(16例、30.3±6.2歳)とし、鍼刺激を行いF波を測定した実験、鍼刺激をイメージした状態でF波を測定した実験(10例)を行った。鍼は長さ50mm、直径0.18mmのステンレス鍼を合谷穴に10mm刺入した。鍼刺激のイメージは合谷穴に鍼が実際に刺入されているイメージをさせた。誘発筋電図F波は右手関節部尺骨神経に運動神経を順行性に伝導した際に出現する波形であるM波の出現する最大上刺激を持続時間0.2msec、頻度1Hzで32回加えた。導出電極は表面電極を用い、関電極を第一背側骨間筋筋腹上に、不関電極を第2指基節骨上に貼付しF波を導出した。F波の解析パラメータはF波出現回数とした。【結果及び考察】鍼刺激によりF波出現回数は増加し、鍼刺激をイメージすることによりF波出現回数は増加した。このことから鍼刺激による脊髄前角細胞の興奮は、刺激部位への注意や集中による促通により補われる可能性があると考えられた。 キーワード:鍼刺激、鍼イメージ、第一背側骨間筋、誘発筋電図F波 148 -Sun-P4-9:12 変形性膝関節症モデルラットに対する鍼通電の効果 −使用する経穴の差異についての検討- 昭和大学大学院医学研究科生体制御学分野 チュロウンバトオユンチメグ、池本英志、 奥茂敬恭、久光正、砂川正隆 【目的】変形性膝関節症(knee osteoarthritis:以下 OA)の発症には、健常な関節軟骨に不可欠なアグリカンを分解するアグリカナーゼ(ADAMTS5)が関与する。本研究では、OAモデルラットを用いて、異なる経穴への鍼通電(Electroacupuncture:EA)が膝関節滑膜におけるADAMTS5の発現に与える影響の違いを検討した。【方法】12週令の雄性Wistarラットを5群に分けた:対照群、シャム手術群、OA群、OA誘発後に足三里と曲泉にEA処置を行う(OA+曲泉)群、OA誘発後に足三里と膝頂にEA処置を行う(OA+膝頂)群。OAモデルは、ラットの右膝内側脛骨半月靭帯を切離し、内側半月板の不安定化を行うことで作製した。 EA(矩形波パルス電流、1.5mA、2Hz)は、週3回、毎回 30分間、OA誘発後から4週間実施した。運動調整機能の喪失を評価するロータロッドテストは、術前と術後 28日目に実施した。その後、右膝関節滑膜を採取し、ウエスタンブロット法にてADAMTS5の発現を調べた。【結果】28日目のロータロッドテストでは、対照群(28.8±0.6s)と比較してOA群のロッド上に滞在した時間が顕著に減少した(19.7±0.9s, p<0.01)。しかしその減少は、OA+曲泉群(24.8±1.5s, p<0.05)およびOA+膝頂群(26.9±1.2s, p<0.01)で有意に抑制された。滑膜におけるADAMTS5の発現は、OA群で有意に増加した(3.0±0.3, p<0.01(vs対照群:1.0)。この増加はOA+膝頂群(1.4±0.4, p<0.05)では有意に抑制されたが、OA+曲泉群(2.1±0.3)では有意な変化は見られなかった。【結語】これらの結果から、EAの膝関節滑膜におけるADAMTS5の発現抑制効果は、膝周囲の経穴でも異なることが示唆された。 キーワード:変形性膝関節症、鍼通電、ADAMTS5、曲泉、膝頂 149 -Sun-P4-9:24 鍼刺激による膝前十字靭帯損傷予防の可能性について 1)関西医療大学はり灸・スポーツトレーナー学科 2)関西医療大学スポーツ医科学研究センター 山口由美子 1,2)、久保結菜 1)、白川雄大 1)、 武井陽星 1)、西川陽菜 1)、馬場遥大 1)、 伊藤俊治 1) 【目的】これまで雌マウスの三陰交穴への鍼刺激において、血中エストロゲン濃度が増加することを確かめた。膝前十字靭帯(ACL)損傷の発生には男女差があるとの報告があり、ACLについて検討するため動物種をラットに変更した。ペレットにてエストロゲンを投与した雌ラットにおいて、非投与群と比べ有意にACLの強度増加が認められた。そこで我々はエストロゲンの影響を受けにくい雄のラットに対して、性ホルモンの分泌に影響する可能性が示唆された三陰交穴に鍼刺激を加えた場合の ACL強度変化を検討することにした。またエストロゲン濃度の影響を引き続き検討するため卵巣切除(OVE)雌ラットを作成し、 ACL強度を測定した。【方法】Wistar系雄ラット14匹を無作為に鍼刺激群(A群)7匹、コントロール群(C群)7匹に分け、週2回の鍼刺激を 5週間継続したのち、採血し屠殺後 ACLのみ残した大腿骨―脛骨( ACL標本)を調製し、引っ張り試験機を用い強度の測定をおこなった。次に、雌ラット 10匹を無作為にOVE群(O群)5匹、コントロール群(C群)5匹に分け、麻酔下で両側の卵巣切除術をした。5週間後に採血し屠殺ののちACL標本の強度測定をおこなった。統計学的解析はラットの試験力最大値(N)を2群間で比較し検定した。【結果】 ACL強度は雄ラット A群( 4膝) 43.91±5.34N(平均±SE)、C群(3膝)53.51±9.10Nで有意差は確認できなかった(P=0.40)。雌ラットは O群(6膝)37.89±3.03N、C群(5膝) 32.08±3.03Nで有意差は確認できなかった( P=0.22)。【考察・結語】雄ラットへの鍼刺激ならびに雌の卵巣切除ラットにおいてACL強度の変化は確認できなかった。雌ラットにエストロゲンを投与した先行研究と合わせて、エストロゲン濃度が低い場合には強度に影響を与えないが、高い場合には ACL強度が増す可能性が示唆された。今後はエストロゲン濃度を高める経穴の検討に取り組みたい。 キーワード:エストロゲン、ホルモン、鍼、膝前十字靭帯損傷 150 -Sun-P4-9:36 四肢と体幹を模した生体モデルへの鍼通電状況のシミュレーション 1)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 2)東京有明医療大学大学院保健医療学研究科 3)ICM国際メディカル専門学校鍼灸学科 4)つくば国際鍼灸研究所 木村友昭 1,2)、立川諒3)、形井秀一 4) 【目的】低周波鍼通電時の電流の生体への分布状況に関する知見を得ることを目的として、頭部を除く四肢と体幹を模した生体モデルへの鍼通電状況のシミュレーションを試みたので報告する。【方法】シミュレータ環境(Femtet、ムラタソフトウェア製)上で上下肢を円柱、体幹部を直方体で模したオブジェクトを作成し、このオブジェクト全体が体液あるいは筋に相当する導電・誘電パラメータをもつ生体モデルを作成した。これらのモデルに対し、一対の鍼モデルを、(1)一方の上肢内、(2)左右の上肢間、(3)左右の側胸部間、(4)一方の下肢内、(5)左右の下肢間、(6)上下肢間、となるように配置し、鍼モデル間に 10Vの電圧を印加した際の生体モデル内における電流密度分布を有限要素法により算出した。【結果】電極配置が左右の上肢間、側胸部間、下肢間、あるいは上下肢間の場合、電流はモデル内を比較的広範に分布し、その傾向は上下肢間の場合により顕著であった。一方の上肢および下肢内での電極配置の場合、電流分布はそれぞれの肢内にほぼ限局していた。体液モデルにおける電流密度は筋モデルに比して約 4.5倍の強度となっていた。体幹モデル中央部における電流密度推定値は、左右側胸部間の電極配置条件において最も高値となり(例:筋モデルで0.14mA/cm2)、一方の上肢、下肢内への電極配置条件では電流分布はほぼ認められなかった。【考察および結語】モデル内における電流密度は鍼電極の位置により大きく異なり、特に四肢に通電を行う場合、それぞれの肢内で通電を行った場合はそうでない場合に比して体幹部への電流分布が少ない可能性が示された。本研究で作成した生体モデルは心臓等の重要臓器への影響を考慮した鍼通電手法の検討のためのファントムとして一定の示唆を与えうるものであると考えた。 キーワード:低周波鍼通電、鍼電極、シミュレーション、有限要素法、電流密度 151 -Sun-P4-9:48 施術所における災害対策の調査報告 受講者アンケートから見る災害対策の現状 1)公益社団法人日本鍼灸師会研修委員会 2)公益社団法人日本鍼灸師会危機管理委員会 3)長野県臨床鍼灸学会 4)東京医療専門学校鍼灸・鍼灸マッサージ科 5)セイリン株式会社国内営業部医療・企画推進課 6)公益社団法人全日本鍼灸学会臨床情報部安全性委員会 今村頌平 1,3)、是元佑太 2)、荒木善行 1)、大木島さや香 3)、藤田洋輔 4)、西村直也 5)、菅原正秋 6) 【目的】2023年10月、(公社)日本鍼灸師会にて、施術中に地震や大規模停電に遭遇した場合のオンラインリスクマネジメント研修会を実施した。近年、地震や台風、記録的な豪雨が続いていることから本研修会において終了後に参加者へ施術所における災害対策について調査を実施したので報告する。【方法】調査方法は、研修会終了後に参加者に対して Google formを用いて 22項目の意識調査を実施した。なお、項目の内容は選択方式として「施術所では災害対策マニュアルを策定しているか」「施術所の災害に対する備えは十分だと思うか」等を設問とした。【結果】262名が参加し、うち107名より回答を得た (回収40.8%)。施術所の災害対策マニュアルを策定していると回答した者は 11%、施術所の災害に対する備えが十分だと回答した者は 11%、施術所の災害に対する備えが不十分だと回答した者は84%、施術所の免震対策をしている者は 36%、落下物、備品の転倒対策をしている者は39%、非常電源を準備している者は 20%という結果であった。【考察】今回の調査結果から施術所では災害に対する備えが不十分と認識している者が多く、災害対策マニュアルの策定と落下物や備品の転倒対策等が急務となっていることが分かった。今回の調査は研修会に参加した災害への意識がある者が対象であったと事を考えると、国内の施術所全体では更にその割合は少ないものとも推測できる。今後は職能団体と学会とが協力し、より広く施術所の実態調査に努めると共に、いかに来たるべき災害の対策意識を高めるかが課題であると考える。【結語】近年多発している自然災害に対し、施術所における災害リスクマネジメント研修会を行い、アンケート調査を行った結果、施術所の災害に対する備えが不十分との回答は 8割を超えていた。今後は職能団体と学会とが協調し、広い実態調査やガイドラインの策定を行い、安心安全な社会資源としての鍼灸医療の確立に寄与したいと考える。 キーワード:リスクマネジメント、災害対策、意識調査 152 -Sun-P4-10:00 衛生的刺鍼のための鍼管のアイデア−片窓鍼管- 常葉大学健康プロデュース学部健康鍼灸学科 新原寿志、福世泰史 【背景】感染防止の観点から衛生的刺鍼法の実践が求められている。米国式クリーン・ニードル・テクニックは、鍼体に接触しないことから衛生的刺鍼法として推奨されているが、押手を行わないため、鍼体が撓まない鍼体径の太い鍼を選択する必要があること、索状硬結といった目的の組織へ正確に素早く施入することが容易でないこと、抜管時に左右の手で鍼柄を持ち替える必要があるなどの問題があり、国内では浸透していない。【目的】本研究は、散鍼用片窓鍼管をヒントに、押手を残し挿管したままの状態で鍼を刺入可能な鍼管を作製し、その機能性について検討した。【方法】プラスチック鍼柄の毫鍼( JSP type、鍼体径 0.16、0.18、0.20mm、鍼体長 30、40、50mm、セイリン社製)を用いた。鍼管は上端から 5mmの部分に窓(4mm×20mm)を開けた。本鍼管の機能性は、鍼を挿管した状態で円滑に刺入が可能か否か、その際の最大刺入深度(切皮を含む)、抜管時に押手なしで鍼が倒れるか否か、目標物に鍼尖を当てることができるかの4点で評価した。刺鍼の手順は以下である。異なる硬さのゲル(6mm/枚)を軟らかい順に重ねた刺鍼練習台(ユニコ社製)の上に押手をつくり鍼管をたて切皮する。刺手の母指の指腹を鍼柄の側面に当て、鍼を鍼管内で滑らせるように押し込み刺入する。押手を離し抜管する。なお、目標物(直径3mm×長径12mm、円柱状の金属)は、深さ15mmのゲル層内に挿入した。【結果】いずれのサイズの鍼も、刺入時に鍼管内で鍼体が撓むものの、挿管したままの状態で比較的容易に30mm以上・37mm未満の深さに刺入でき、抜管後も鍼が倒れることはなかった。また、鍼尖を目標物に容易に当てることができた。【結論】本鍼管は、比較的細い鍼を衛生的に刺鍼できる有用なツールであることが示唆された。また、比較的浅層であれば、目的の組織へ素早く正確に刺鍼することが可能であり、美容鍼をはじめとした臨床応用が期待できる。 キーワード:衛生的刺鍼、片窓鍼管、押手 153 -Sun-P4-10:12 上肢の肢位の違いが背部経穴の鍼の安全刺入深度に影響を与えるか 1)平成医療学園専門学校鍼灸師科 2)平成医療学園専門学校東洋療法教員養成学科 佐原俊作 1)、上野暁生 1)、内野容子 2)、 北野吉廣 2) 【目的】背部経穴への刺鍼は気胸を発生させる恐れがあり、鍼の安全な刺入深度についてはこれまで報告がされている。過去の生体による報告では計測する際の肢位において差異がみられる。一方で、鍼灸臨床では様々な肢位で鍼施術が行われている。そこで今回は、上肢の肢位の違いが各経穴の体表から胸膜までの距離に影響を与えるかについて検討を行った。【方法】対象は同意を得た健康成人8名(男性4名、女性4名)、平均年齢23.9(4.7)歳とした。撮像は伏臥位にて、超音波画像装置(日立メディコ社製 HI VISION Avius)を用い、体表から胸膜までの距離を測定した。撮像肢位は肩関節外転 0°、肩関節外転 90°、肩関節外転 135°とし、測定部位は胸郭上にある膀胱経第 2線上で Th1-Th7間の経穴(7穴:14ヵ所)とした。各肢位間における体表と胸膜までの距離は T検定を用いて比較検討を行った。【結果】各経穴の体表と胸膜までの平均距離は肩関節外転 0°、肩関節外転 90°、肩関節外転 135°の順に mean(SD)で示す。肩外兪は 33.0(8.7) mm・35.0(6.2)mm・38.6(5.5)mm附分は 31.2(7.8)mm・34.9(6.0)mm・38.3(4.5)mm魄戸は 29.0(5.4)mm・32.1(5.5)mm・34.8(4.7)mm、膏肓は 28.1(4.5)mm・29.6(4.2) mm・31.2(3.7) mm、神堂は 25.8(4.0) mm・26.9(3.8) mm・27.5(3.5) mm、は23.5(3.8)mm・24.1(3.9)mm・24.8(3.5)mm、膈関は 23.0(5.5)mm・22.6(4.1)mm・23.8(4.2)mmであった。肢位間で有意差は外転 0°-外転 135°で肩外兪、附分、魄戸、膏肓、神堂、、外転 90°-外転 135°で肩外兪、附分でみられた(p<0.05)。【考察】体表と胸膜までの距離には肩関節の角度が影響を与える可能性が示唆された。Th1-Th3間の高さにある肩外兪、附分、魄戸は外転 0°-外転 135°で変化が大きくなった。よって臨床においては、患者の上肢の肢位を考慮して刺鍼の深さを調整する必要があると考えられる。 キーワード:超音波画像、刺入深度、気胸、背部経穴 154 -Sun-P4-10:24 安全性を配慮し電気ていしんコードで横隔神経刺激を行った1症例 1)東北大学大学院医学系研究科地域総合診療医育成寄附講座 2)東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座 3)東北大学病院総合地域医療教育支援部・漢方内科 4)新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 石井祐三 1,3)、金子聡一郎 1,3,4)、高山真2,3) 【目的】横隔神経付近には血管、神経が分布し刺鍼にはリスクを伴う。そこで安全面を配慮し、経皮的刺激である電気ていしんコード( Electric tei acupuncture以下 ETA:全医療器製)を使用したところ、症状の軽減を認めた症例を経験したので報告する。【症例】50歳女性、主訴:喉頭部違和感・咳現病歴:X年1月交通事故後より、喉の違和感と軽い咳が出現。他院にて気管支喘息と診断され加療を受けたが改善には至らなかった。X年9月、下痢や身体の痺れも出現し、漢方薬を処方された。また同時期に整骨院にて星状神経節のレーザー治療を受けたが改善に至らず、当院漢方内科を受診し、鍼灸施術の併療となった。所見:身長155cm、体重51kg、血圧150/101mmHg、脈拍82bpm脈候:沈、細、弦、滑、舌候:淡紅色、舌尖紅、薄白苔、胖大、歯痕、オ斑。腹候:腹力中等度、臍上悸、心下痞硬、左胸脇苦満、左右臍傍圧痛、小腹不仁、右頸部深部のこり感あり。気血津液弁証:気滞、水滞、血虚。【治療・経過】漢方薬は加味逍遙散、当帰芍薬散が処方され、鍼灸は中焦の去湿、呼吸補助筋の筋緊張緩和を目的に行った。喉頭部の違和感と右頸部深部のこり感が残存したため、扶突穴に切皮程度の刺鍼を行ったが症状は軽減せず。さらに深部刺激として横隔神経を刺激することを検討したが、同部は血管や神経に富んでおり、刺鍼ではリスクが高いことから、 ETAにて経皮的刺激を施行した。方法は、下位頸椎の高さにて前斜角筋前際または胸鎖乳突筋内側より横隔膜収縮を確認後に、 1Hzで3〜5分程度の刺激を行った。治療によりVASは53 21mmに軽減し、同治療を 3ヶ月継続することでこり感は軽減、喉頭部の違和感は消失した。【考察・結語】交通事故による喉頭部違和感・こり感に対し、横隔神経に ETAによる経皮的刺激を行ったところ症状の消失が認められた。刺鍼のリスクが高い部位における安全性に配慮した治療法の 1つとして、有用であると考える。 キーワード:横隔神経、電気ていしんコード、安全性 155 -Sun-P4-10:36 衛生的で安全性の高いクリーンニードルテクニックの特許開発 1)全国出張はりきゅう院 2)北海道鍼灸専門学校 3)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 平岡光一 1)、川浪勝弘 2)、二本松明2)、今井賢治 3) 【目的】現在の日本の鍼手技において衛生面では限界があり感染や鍼体に直接触れる押手問題、安全面では曖昧な刺鍼深度での気胸や神経損傷等がある。そこで本研究では鍼体に触れずに鍼操作が行うことができ且つ刺鍼深度が一定に保つことのできるクリーンニードルテクニックを開発した。(特許 7307256号)【方法】3Dプリンターを使用し鍼管の形を上部鍼管、下部鍼管のセパレート型にした。上部鍼管の穴は鍼柄が通過でき下部鍼管の穴の内径は鍼柄より小さくして通過できなくしてある。長さ60mmの鍼に対し下部鍼管の長さを20mmとする。鍼柄は下部鍼管の上部で止まる設計で20mm差し引くと余り40mmが皮膚以下の刺鍼深度になりそれ以上刺入しない設計とする。そのように下部鍼管の長さを30mm40mmと設計変更をすることにより皮膚以下の刺鍼深度は正確な距離となる。【結果】刺鍼深度を検証するため20mm30mm40mmの刺入深度の下部鍼管を製作し、50mmの厚さのあるスポンジに60mmの鍼を垂直方向に刺鍼した。刺入深度の計測は刺入面から鍼柄下部の長さを鍼体長から引いて求めた。結果下部鍼管を差し引いた以上の刺入は認められなかった。【考察】このクリーンニードルの安全性は刺鍼深度が決まり設計以上の刺入ができない。今までの曖昧な刺鍼深度ではないのでカルテに記載や写真を撮れば刺入深度によるデメリットが発生しても釈明しやすい。下部鍼管が目立つので抜き忘れ防止になる。また下部鍼管を設ける利点を生かし押手で鍼体に触れる感染リスクのある押手問題も解決できる。【結語】近年コロナ禍で感染症問題が浮上し鍼灸業界でも衛生面に気をつける風潮になりつつある。医療と同等の標準予防策(スタンダードプリコーション)のように、クリーンニードルテクニックが鍼灸師の標準予防策化する時代がきている。 キーワード:クリーンニードルテクニック、安全性、衛生面、感染、特許 156 -Sun-P4-10:48 高額訴訟事例から後頸部刺鍼のトラブル回避についての考察 森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科 尾崎朋文、辻丸泰永、仲村正子、辻涼太、松熊秀明 【目的】クモ膜下出血の発症原因を天柱・風池穴への刺鍼とする損害賠償1億円の裁判例から当事者の同意を得て後頸部刺鍼のトラベル回避について考察する。【症例】発症日: 2017年3月13日 52歳男、身長 177 cm、体重 74.3kg、BMI23.7、主訴:肩こり、頭痛、腰痛【病歴と経過】普段から腰痛や肩こりに対する鍼治療の往療で症状の軽減あり。 3月13日に鍼治療。天柱、風池に 40mm・50mm鍼の 20・22号を用い刺入深度約 30mmで雀啄し、患者は「響き」を気持ち良いと言う。術後 30分後に頭痛、嘔吐で救急車要請。所見: GCSは E3V5M6、眼球運動障害、両側外転神経麻痺、軽度構音障害、頭部 CTで後頭蓋窩クモ膜下出血を認める。翌日、右片麻痺出現し、 MRIで延髄左腹側に急性期脳梗塞を認めた。当初、右上下肢の MMT1/5が4月25日には 4/5に改善。同日にリハビリ病院に転院、同年 9月 20日退院。ある程度症状改善したが、軽度の複視と右下肢に後遺症が残存。 2016年6月の健康診断で頭部 MRI/MRAで大脳・小脳・脳血管に異常なし。病名:特発性クモ膜下出血、ラクナ梗塞【既往歴】高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群、頸動脈血栓、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁閉鎖不全症。【損害賠償請求事件訴状提出】 2020年3月【裁判のポイント】刺鍼による椎骨動脈・クモ膜下損傷を争う。原告側は過去頭部に異常を認めないこと、刺鍼後に症状が出現した等から刺鍼が原因と主張。被告側は BMI23.7の肥満に近い標準型で 50mm鍼を使用し、押手幅 20mmを除いての約 30mm刺入では椎骨動脈損傷は不可能と主張。【考察・結論】患者とのトラブルの回避には、同穴の危険深度は 30mm以上であることから、鍼体 30mm以下の鍼を基本とする。 50mm鍼以上の鍼は禁忌。 40mm鍼では押手の幅を必ず保持する。カルテは必須。賠償保険に加入すること。平常から医師、放射線技師等と協力関係を築くこと。以上が重要と考える。 キーワード:天柱、クモ膜下出血、椎骨動脈、危険深度、高額訴訟 157 -Sun-P4-11:00 プレゼンティーズムに対する鍼灸治療その1 −モニタリング調査からみた鍼灸の可能性- 1)株式会社はあとふるあたご はあとふる鍼灸マッサージ治療院 2)新潟医療福祉大学鍼灸健康学科 高田光俊 1)、粕谷大智 2) 【緒言】近年、健康経営が重視される中で、企業の現場ではプレゼンティーズム対策がより一層求められている。しかし、経産省の健康経営ガイドブックの対策欄には鍼灸は記載されていない。今回、肩こり、腰痛といったプレゼンティーズム症状を訴える勤労者に対して鍼灸治療を行い、自覚症状の変化をモニタリングし、プレゼンティーズム対策としての鍼灸の有用性を検討した。【方法】新潟市の健康経営優良法人の役員 2名、従業員18名に対して、 1名当り 30分の鍼灸治療を行なった。評価法として自覚症しらべ(日本産業衛生学会産業疲労研究会、2002)を用い、被験者には治療の直前直後と1週間後に症状の変化を入力してもらった。【結果】被験者20名の自覚症状の度合( 5点評価)の上位 5つについて、その合計点の治療前後の変化については、「肩がこる」 74点→40点(改善度 34点)、「目が疲れる」69点→ 44点(改善度 25点)、「腰が痛い」 65点→35点(改善度30点)、「目がしょぼつく」 60点→42点(改善度 18点)、「頭が重い」 56点→ 31点(改善度 25点)であった。また施術直後で自覚症状の改善を感じた人数は 20名全員に認め、施術 1週間後では 20名中 9名(45%)に認めた。【考察】今回の結果から、プレゼンティーズム症状に対して鍼灸は即効性があり、一定の効果が期待できると考える。また、鍼灸治療の 1週間後も被験者の 45%が症状の改善を自覚しており、持続効果も示唆される結果となった。【結語】プレゼンティーズム対策の一つとして鍼灸は有望な候補になり得ると考える。企業が福利厚生ヘルスケアとして鍼灸を導入するようになれば、鍼灸の受療率アップにもつながることが期待される。 158 -Sun-P4-11:12 中国における江南地域の中医鍼灸について 特に江蘇省の人材の足跡を調査して 大阪医療技術学園専門学校 奈良上眞 【はじめに】江蘇省は悠久の歴史を持ち、BC514年に呉城を築城した蘇州、 BC202年に無錫県を設置した無錫、AC25年に孟城を築城した孟河、 AC117年に謝陽県を設置した淮安、AC212年に石頭城を築城した南京がある。それらには呉門医派(蘇州)、龍砂医派(無錫)、孟河医派、山陽医派(淮安)、金陵医派(南京)には多くの医家が活躍し継承している。今回、特に鍼灸学派に着目して人材に関して調査した。【研究方法】現存する江南地域医学流派の資料を対象に鍼灸の動向を調査した。対象文献は『話説国医(江蘇巻)』、『江蘇中医』、『百年金陵中医』、『鍼灸流派概論』等とした。【結果】対象文献から、経穴考訂派の滑寿(元代)は江蘇儀真に生まれ、江蘇鎮江の王居中を師事。貼穴派の徐大椿(清代)は江蘇呉江。急症針灸派の葛洪(東晋)は江蘇句容。外科鍼灸派の劉涓子(東晋)は江蘇徐州、薛己(明代)は江蘇蘇州、陳実功(明代)は江蘇南通。婦科鍼灸派の王肯堂は江蘇常州。喉眼科鍼灸派の夏雲(清末)は江蘇揚州、張路(清代)は江蘇蘇州。中西匯派の承淡安(近代)は江蘇江陰、朱連は江蘇漂陽の出身であった。また地域別流派では龍砂医派 (無錫)は承淡安。金陵医派(南京)は邱茂良、楊長森。山陽医派(淮安)は程幸農であった。さらに承淡安は中西医学の融合的現代鍼灸学術の特徴の澄江鍼灸学派から多くの人材を輩出した。邱茂良(南京中医)、楊長森(南京中医)、楊甲三(北京中医)、程幸農(北京中医)等であった。さらに近代上海で黄鴻舫(江蘇無錫)、陸痩燕(江蘇昆山)も活躍していた。【考察、結語】江蘇地域における中医学流派は地域的要素が強いと考えられ、鍼灸医学は近代の承淡安の澄江鍼灸学派による学院伝承の影響は大きいと考える。また承淡安、朱連は現代科学研究から鍼灸医学の貢献に尽力した。今後、人材の足跡とともに各流派の学説等の伝承および影響を文献整理しなければならないと考える。 キーワード:プレゼンティーズム キーワード:中医鍼灸、江南地域、江蘇省、流派伝承、文献調査 159 -Sun-P4-11:24 GHQによる「鍼灸禁止令」の歴史的意義 「三重軍政部月例活動報告書」から読み解く 呉竹鍼灸柔整専門学校 奥津貴子 【目的】第2次世界大戦後、日本を占領統治していたGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は、 1947年(昭和22)9月23日、厚生省(現厚生労働省)に対し、視覚障害者による鍼灸治療の禁止に言及し、鍼灸の改革を勧告している。この出来事を GHQによる「鍼灸禁止令」と解釈した鍼灸業界は一致団結し、鍼灸存続運動を展開している。折しも「鍼灸禁止令」前の7月、 GHQの地方組織である三重軍政部が鍼灸実態調査を行い、その問題点を「月例活動報告書」にまとめ、東海北陸軍政部に提出している。「鍼灸禁止令」の発端である三重軍政部による鍼灸実態調査を分析することで、「鍼灸禁止令」の歴史的意義がわかるのではないかと考え、本研究を行った。【方法】三重軍政部による「三重軍政部月例活動報告書」(アメリカ国立公文書館・国立国会図書館所蔵)を調査した。【結果】三重軍政部は鍼灸実態調査を行った理由として「多くの日本人が生涯にわたり病気の治療に灸を用いている。その行為が胃癌の治療の遅れの一因にもなっている」ことを挙げ、「鍼灸への傾倒が適格な治療を受ける機会を遅らせている」と指摘している。また鍼灸には「安全性」、「有効性と科学的根拠」、「視覚障害者による治療」についての問題点があり、「鍼灸は医師の処方箋に基づいて行い、医師の指示の下でのみ許可されるべきである」と結論付けている。【考察・結語】当時、日本の伝統医療である鍼灸の実態は、現代医学の主流である西洋医学からかけ離れており、 GHQに問題視されることは必至であった。三重軍政部が指摘した問題点は「鍼灸禁止令」の発端となり、未曾有の混乱を招いたが、鍼灸業界を改革へと導き、現代でも鍼灸の発展に繋がる課題として追究されていることに歴史的意義がある。過去の歴史から学んだことは教訓となり、現在・未来に活かすことができれば発展に繋がる。「鍼灸禁止令」を歴史の教訓とし、今後も検証する必要がある。 キーワード:鍼灸禁止令、 GHQ、三重軍政部、鍼灸実態調査、三重軍政部月例活動報告書 160 -Sun-P4-11:36 令和6年能登半島地震における鍼灸マッサージ施術導入までの報告後方支援活動を経験して 1)常葉大学浜松キャンパス健康プロデュース学部健康鍼灸学科 2)災害支援鍼灸マッサージ師合同委員会 3)全日本鍼灸マッサージ師会 村上高康 1,2)、是元佑太 2)、矢津田善仁 2)、仲嶋隆史 2)、古田高征 2)、清水洋二 2)、杉若晃紀 2)、松浦浩市 2)、榎本恭子 2,3)、朝日山一男 2,3) 【背景】(公社)日本鍼灸師会及び全日本鍼灸マッサージ師会が合同運営する災害支援鍼灸マッサージ師合同委員会(DSAM)は、発災時に行政や関係医療団体等に対する業界の窓口となることを目的に設立されている。近年、発災後の災害関連死予防や支援者支援のための鍼灸・マッサージ施術が注目されている。今回、令和6年1月1日に発生した能登半島地震において DSAMに所属し発災直後から各関係機関等へ情報収集を行い、現地へ鍼灸マッサージ師を募集・派遣を行うための後方支援を経験したので報告する。【活動経過】1月1日の発災より情報収集に努め、オンラインで活動について協議した。1月8日、3人の調整員は現地鍼灸師会及び鍼灸マッサージ師会との調整後、災害派遣医療チーム( DMAT)調整本部に赴き、活動拠点を設置した。1月9日、石川県庁内にて、鍼灸マッサージ施術による支援者支援を開始。1月14日及び1月21日、いしかわ総合スポーツセンターにて、同様の被災者支援を行った。施術者派遣のため、日程調整・施術道具の準備・受け入れ施設と施術者の調整など後方支援を担当した。所在が分散している構成員との情報共有ツールとして、 DSAM内においては、SNS(グループLINE)を用い、外部の鍼灸支援活動を行う団体とは日本災害鍼灸マッサージ連絡協議会(JLCDAM)のHPを使用した。また、クロノロジーとして情報を Googleスプレッドシートに時系列で整理し、書類や写真は Googleドライブにて共有した。また施術者の募集にはGoogleフォームを活用した。【活動の総括】派遣された施術者は現地での需要に対応し活動を円滑に行う事が出来た。これは平時から支援活動や講習会への参加、自治体との災害協定締結などの努力の成果と思われた。インターネット活用による情報共有も重要であった。今後は初動を早くすること、被災地では対応出来ていない需要が多くあり、被災地への健康支援活動ネットワークを拡大する必要があると考える。 キーワード:令和6年能登半島地震、被災者支援、支援者支援、鍼灸、マッサージ 161 -Sun-P4-11:48 災害支援活動からみえた鍼灸マッサージ師の資質 1)DSAM 2)日本鍼灸師会 3)大阪府鍼灸師会 4)堀口針灸室 堀口正剛 1,2,3,4) 【背景】(公社)日本鍼灸師会では、東日本大震災を契機として平成26年に「災害医療対策委員会」を発足させ、(公社)全日本鍼灸マッサージ師会とともに災害支援鍼灸マッサージ師合同委員会(DSAM)を立ち上げた。DSAMでは平成 30年より、災害支援鍼灸マッサージ師合同育成講習会を開催している。今回、令和 6年能登半島地震における支援活動において、参加した鍼灸師の「支援者としての資質」に対する課題を抽出したので報告する。【方法】期間は令和 6年1月14日から2月25日間の計7回とした。DSAM支援活動において生じた課題をコーディネータが列挙した。【結果】支援活動の参加者はのべ40名、平均年齢 43.22歳、所属先は日本鍼灸師会24名、全日本鍼灸マッサージ師会9名、その他 7名であった。コーディネータが列挙した支援者の資質として生じた課題は、(1)責任賠償保険無加入での施術希望、(2)治療時間の大幅な延長、(3)持参の施術器具を許可なく使用、(4)独自の治療理論や健康観を押し付けるなどが抽出された。【考察と結語】これらの課題に共通しているのは、申し込みの段階等で確認を取っている事項(ルール)でありながら順守されていないということである。参加者に求めるこれらの事項は、基本的に被災地・被災者に迷惑を掛けないという理念のもとで設定したものである。順守されない背景として、ボランティアという無償活動における考えの甘さや、協調性の無さが考えられる。鍼灸師は、その多くが個人で開業しており、その点では鍼灸師の多様性は肯定的な要素と考えられる。しかしながら、ボランティア活動を組織の一員として行うためには、多様性よりも協調性が重要であるため、その点については、教育や意識改革が必要であると考える。協調性は、他(多)職種連携においても重要な要素であるため、学校教育や DSAMの研修会においても重視されるべき点であることが認識された。 キーワード:災害支援活動、 DSAM、多様性、大道団結、基礎教育 162 -Sun-P4-14:00 頭痛により不登校となった中学生男児への小児はり灸治療の 1症例 1)どんぐり鍼灸室 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 山口あやこ 1)、松浦悠人 2) 【目的】薬物療法により改善せず、不登校となった中学生の頭痛に対して小児はり灸治療を行い、良好な経過が得られた1例を報告する。【症例】男児、 14才[主訴]頭痛、不登校[初診日]X年[現病歴]X年-4月前から頭痛を自覚。学校を度々休むようになり、小児科を受診。MRI、脳波検査で異常なく緊張型頭痛と診断され、アセトアミノフェンを処方されるが改善なし。 X年-1月前より毎朝頭全体を締め付けられるような頭痛に増悪したため不登校となった。[所見]身長 160cm、体重 52kg。痛みは両側性、頭全体の締め付け感、軽度から中等度の強さで日常生活に支障はあるが寝込むことはない。頭痛出現は、平日の朝から昼前の2時間程度で休日は気にならない。頭痛のNumerical Rating Scale(NRS)は10、望診:つり目で力なし。聞診:早口でおしゃべり、吃音。問診:食欲・便通・睡眠は正常、悪夢をみる、クラスが騒がしく人間関係が面倒、緊張しやすく疲れやすい。切診:足先の冷え。脈診:浮・数・弦。尺膚診:突っ張っている。腹診:胸脇苦満。季節:五季の春、六気の初之気。【治療方法及び経過】四診法により肝病とした。初診時、銅のてい鍼を使用して曲泉に本治法、反応穴に標治法を行った。下腿の肝経、胆経、肺経の要穴付近を摩擦刺激で経絡を流し、太敦付近への棒灸を行った。2診目以降のNRSは635と推移した。 5診目で NRSが8と増加、この時いじめの告白があり、心理カウンセラーと不登校の子を持つママの会へと繋いだ。7・8診目の NRSは0となった。不登校状態に変化はなく、フリースクールを検討のため一旦終了となった。【考察と結語】今回の頭痛は学校内でのいじめが誘因となり出現した緊張型頭痛と考えられる。小児はり灸治療による頭痛の軽減と、いじめ告白を施術者だけで抱え込まずに専門家に繋ぎ、連携が取れたことの相乗効果が大きかったと考えられる。 キーワード:小児はり、緊張型頭痛、不登校、思春期、いじめ 163 -Sun-P4-14:12 小児のアトピー性皮膚炎のそう痒感にてい鍼治療が著効した1症例両親のQOL向上も示した1例 1)こうたの森のはり灸院 2)東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 3)三河漢方鍼医会 森野弘高 1,3)、松浦悠人 2) 【目的】アトピー性皮膚炎の子を持つ保護者の精神状態の悪化が問題視されている。今回、てい鍼による小児はり治療によりアトピー性皮膚炎による小児のそう痒感を軽減させ、両親の Quality of life(QOL)が向上した1症例を報告する。【症例】生後11か月女児、主訴:全身のそう痒感[現病歴]生後6か月頃から全身にそう痒感が出現し、特に頬部、下顎部の痒みが強く掻破がみられた。複数の皮膚科を受診しアトピー性皮膚炎の診断を受けヒドロコルチゾン酪酸エステル等処方されるも寛解は一時的であった。痒みで中途覚醒が続き、両親も熟睡できず、口論やトラブルが絶えなかった。[家族歴]母親は幼少期よりアトピー性皮膚炎を発症し薬物を服用中。[所見]身長 75cm、体重 9kg、肘窩、膝窩、頬部、下顎部に発疹や丘疹、紅斑あり。望診:両頬が赤い。聞診:泣いている。問診:そう痒感が強く寝つけず、よく目が覚める、便秘。切診:手足の冷え、脈診:浮、数尺膚診:赤く熱い。【治療方法】証を「心病」とした。アルミニウム製と銅製の形状の異なる 2種類のてい鍼を使用し、8診目までは週に2回、9診からは週に1回の頻度で実施した。初診時は、銅製のてい鍼で大陵穴に本治法、反応のある経穴に標治法、心包経と心経の要穴付近に摩擦刺激を行ない、そう痒感の強い患部へは、アルミニウム製のてい鍼にて摩擦刺激を行なった。【経過】93日間で17回の施術を行った。初診時治療後、患児の睡眠は良好、そう痒感での中途覚醒は軽減。6診(治療21日目)後以降は中途覚醒がなくなり、 17診(治療93日目)には、 Numerical Rating Scale(母親から聴取)は、全身、頬部、下顎部のそう痒感 10 1、中途覚醒 10 0。また両親の中途覚醒も 10 0、口論やトラブル 10 0、さらに笑顔での会話も増えた。【考察・結語】てい鍼による治療は、小児のそう痒感を軽減し、中途覚醒の頻度を減らしたことによって両親の QOLも向上させたと考えられる。 キーワード:小児のアトピー性皮膚炎、小児はり治療、アルミニウム製のてい鍼、銅製のてい鍼、両親のQOL 164 -Sun-P4-14:24 ストレスによる胸痛のある児に対する鍼治療鍼を用いた鍼治療が有効であった 1例 1)大阪医科薬科大学病院 麻酔科・ペインクリニック 2)明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科伝統鍼灸学分野 桐浴眞智子 1)、和辻直2) 【目的】対人関係のストレスによる胸痛を訴える神経発達症のある児に対し、緊張緩和を目的に鍼を用いた鍼治療で痛みの軽減を得た1例を報告する。【症例】14歳女性。主訴は胸痛。既往歴: 10歳から ADHD、IBS。現病歴:特に誘因なく X-2年に左胸、翌12月に右胸にも痛みを自覚。鎮痛剤が効かず、経過観察するも増悪傾向。X年3月、他院より当科こどもの痛み外来を紹介受診。ストレスによる筋筋膜性疼痛の疑いで緊張緩和目的に鍼を用いた鍼治療を開始した。初診時所見:症状は発作性で痛む場所は不定。ナイフで刺されたような痛みが日に 7回程度、安静で軽快し、朝が辛い。あい気が多い。睡眠、排便は服薬により良好。淡紅舌・薄白苔。浮・虚脈。中・天枢の拒按。評価は、自覚症状の強さ(NRS) 7、 QOL(EQ5d)0.610であった。【治療】病証は肝気の停滞による胃虚気逆を主とし、概ね週 1回の鍼治療を 10回行った。鍼を用い、緊張緩和のために内関(PC6)、中(CV12)、太衝(LR3)等に軽く接触、背部及び前腕・下腿陰陽経脈に沿ってタッピングと軽擦を行った。診察中に母親に助けを求める動作を認めたため、診療は日常会話を行っているように努めた。【経過】治療期間中の舌診、脈診、腹診に著変はないが浮脈とあい気が消失。回を重ねる毎に胸痛の頻度や程度が改善傾向にあると自覚し、終診時 NRSは4、 EQ5dは1.000であった。初診時にみられた診察への緊張感が和らぎ、漸次、自身の言葉で話すように変化した。また以前は嫌がっていた外出も鍼を受けるためにできるようになった。【考察・結語】鍼治療には気血を巡らせる作用がある。日常会話の様な雰囲気を作ることで緊張感が和らぎ、診察や鍼治療に積極的に向き合えるようになり、痛みの増悪するイベントがあったものの胸痛の改善に繋がったと推察する。鍼を用いた鍼治療で緊張が緩和し症状軽減が得られた。 キーワード:鍼、鍼治療、神経発達症、 ADHD 165 -Sun-P4-14:36 伊勢地域における「疳切り」の調査 じねん堂はり灸治療院 西出隆彦 【背景】三重県伊勢市では小児の「疳の虫」に対する施術として「疳切り」と称した鍼が行われていた。当院を受療した伊勢市出身の 50代女性からは、本人や近隣の子供だけでなく親世代も幼少期に疳切りを受けていたとの証言を得ている。また伊勢市史(2009)には「疳の虫とは、親指と人差し指の間に出る青い筋のことで、宇治地区や西豊浜町では虫を封じこむカンノムシノオジイサンという人が筋を切って治したという。鹿海町では針医者に筋を針でついてもらった」と記載があり、近隣の多気町史(1992)にも「手の親指と人差し指を開いて、間の筋を切る」との記載がある。しかし、現在ではあまり知られておらず、失伝の可能性が高いため、今後の小児鍼研究に寄与することを目的として調査を行った。【方法】(1)宇治地区や西豊浜町、鹿海町で聞き取り調査を行った。(2)疳切りを実施していた鍼灸院への取材を行った。【結果】(1)公民館や集会所、民家へ訪問して聞き取り調査を行ったが、当該地区で疳切りを行っていた鍼灸院を見つけることはできなかった。(2)50代女性の記憶を基に調査すると、宮後地区の A鍼灸院( 2010年廃業)で疳切りが実施されていたと判明したため、 20 21年10月に取材を行った。取材に対応した A鍼灸師(73)は 50年前に伊勢市の鍼灸院へ嫁いできており、当時すでに先代鍼灸師が疳切りと称して三間( LI3)付近の細絡への刺激を行っていた。 A鍼灸師は後を継ぐ形で廃業まで疳切りを行っていた。1970年代には疳切りだけで 1日30人の来院があったとのことだった。【考察・結語】疳切りは三重県伊勢市で古くから行われていたものの、現在実施している施設は無いと考えられる。しかし、疳虫症の治療として『小児針法』(米山、森 , 1964)に「二間で点状瀉血を行う場合もある」と類似した手法が紹介されており、他府県においては現在も行われている可能性がある。今後はより範囲を広げ、調査を継続したい。 キーワード:疳の虫、疳切り、小児鍼灸 166 -Sun-P4-14:48 症状の聴取に工夫を要した小児片頭痛に対する鍼灸治療の一症例 1)東京有明医療大学附属鍼灸センター 2)東京有明医療大学保険医療学部鍼灸学科 曽田真由美 1)、水出靖1,2)、平松燿1)、飯田百合子 1)、山口沙和 1)、木村友昭 1,2) 【目的】病態を把握するためには患者の状態を適切に把握することが大切である。しかし、自覚症状を容易に共有できない場合も多い。今回は医療面接で所見を得ることが困難だった小児片頭痛症例に鍼灸治療を行ったので報告する。【症例】9歳男児[主訴]頭痛[現病歴]X年2月、塾の時間を増やしたところ、週に1回1分以内のクラっとする頭痛と、月に1回2時間ほど悪心を伴う頭痛を発症した。頭部外傷の既往なし。頭痛専門医にて小児片頭痛と診断され鎮痛剤を処方されたが、以前より服薬回数が増えてきたため、X年5月、当鍼灸センターへ母親と来療した。[所見]悪心を伴う頭痛:部位と性質に関して上手く表現できない。日常動作で増悪。前駆症状は重だるさと生あくび。随伴症状は悪心。誘発因子は疲労と塾のテスト。クラっとする頭痛:部位は上手く表現できない。倒れそうな感覚で、発作時以外は元気。左耳介周囲に触覚過敏領域あり。寝つきが悪い。患児からは明確な症状が表出されなかったことから、母親への聴取や描画法を行なったところ片頭痛やめまいであることが判明した。【治療】頸肩部の筋緊張緩和とリラクゼーションを目的に、主に僧帽筋に対してディスポーザブル小児鍼での押圧や豪鍼による切皮刺激、背部や腹部に施灸を 1回/1、2週間の頻度で行なった。【経過】約7ヶ月間の経過中、片頭痛の頻度は変わらなかったが、随伴症状のめまい、悪心、左耳介周囲の触覚過敏、寝付きの悪さは改善ないし消失した。【考察及びまとめ】頭痛の頻度に変化は見られなかったが、随伴症状は緩和されたことから、鍼灸治療の継続により頭痛も軽減する可能性があると考える。小児の場合、自覚症状を的確に表現できないため、保護者からの情報収集や描画法を取り入れるなど、成人とは異なる医療コミュニケーションの工夫が必要と考える。 キーワード:小児、片頭痛、医療コミュニケーション、鍼灸 167 -Sun-P4-15:00 左側上下顎臼歯部の痛みに対して鍼治療を行った1症例歯原性歯痛と非歯原性歯痛の併発疑い 1)大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科 2)紗楽鍼灸院 高橋沙世 1,2)、小田若菜 1)、山本伸一朗 1) 【目的】歯が痛いといって鍼灸院に行くことはあまりなく歯痛に対する鍼治療の報告は少ない。今回、左側上下顎臼歯部の痛みに対して鍼治療を行い良好な経過が得られたので報告する。【症例】39歳女性、自営業(パソコン作業)。主訴は食事中、左側の上下奥歯に痛みが出るので左側でかめない。[現病歴] X-5年左側下顎臼歯部の根管治療を行った。X -1年5月同部に痛みが出現し、非歯原性歯痛の診断のもと当鍼灸院と大学病院で治療を行い、8月末症状が寛解したため略治とした。12月下旬食事中かみ合わせると左側上下顎臼歯部に痛みが出現し歯科治療を開始した。痛みが続くので X年4月ペインクリニックで投薬治療を開始した。5月中旬痛みが治まらないため当鍼灸院に来院した。【治療】鍼治療は僧帽筋、胸鎖乳突筋、咀嚼筋の筋緊張を緩和する目的で刺鍼し、疼痛緩和には山元式新頭針療法を行った。左側の翳風 -大迎、側頭筋圧痛部 -下関をつないで3/15Hzで15分間鍼通電を合計10回行った。【経過】初診時、左側上下顎臼歯部の疼痛、左側の頬と上下顎臼歯部辺りの歯茎の熱感、左側舌と喉に痺れの自覚症状があった。これまで経験した一番強い痛みをVAS値100とすると痛みの VAS値は10、かんだ時は一時的に VAS値30になる。ペインクリニックでデュロキセチン塩酸塩を処方してもらい、歯科医院では左側上顎5番の虫歯治療が終了し、左側上下顎 6番の根管治療を行っている。7診目、柔らかいものなら左側でかめるようになり投薬治療を終了した。10診目、かんだ時の痛みの VAS値は15になり補綴物を入れて歯科治療が終了した。【考察・結語】患者は以前、非歯原性歯痛の診断のもとブロック注射や鍼治療を行い寛解していた。今回、歯科治療やペインクリニックでの投薬治療を進めても痛みが改善しなかったことから、非歯原性歯痛が再燃したのではないかと考え以前有効であった鍼治療を再度行うことで痛みが軽快し歯科治療を終了することができた。 キーワード:非歯原性歯痛、臼歯、咀嚼筋 168 -Sun-P4-15:12 持続性特発性顔面痛と診断された患者に対する鍼治療の1症例 1)大阪大学歯学部附属病院歯科麻酔科 2)大手前短期大学歯科衛生学科 酒井浩司 1)、中井麻衣 1)、山田雅治 1)、河野彰代 1,2)、工藤千穂 1) 【目的】2017年に国際疼痛学会が痛覚変調性疼痛という概念を提唱し、これを受けて2020年に国際口腔顔面痛分類に特発性口腔顔面痛の章が設けられ、 3疾患の分類が発表された。その一つの疾患である持続性特発性顔面痛と診断された患者に対して鍼治療が有効であった症例を経験したので報告する。【症例】 60代男性。既往歴、糖尿病、強迫性障害。X年6月初旬に眼窩下神経領域の麻痺を自覚し、X年6月中旬に当科を受診。右側鼻翼基部から眼窩下部、右側口蓋部に時折締め付けられるような痛み、痺れ、違和感があり持続性特発性顔面痛と診断されブロック注射と漢方薬、低出力レーザー照射による治療を開始した。痛みはやや軽減したが、痺れと違和感には変化がなく、X年10月より鍼治療を開始した。【治療方法と評価】右側顔面部の痛み・痺れ・違和感に対して、太陽、四白、迎香、上迎香、下関を選穴し、遠隔部の経穴は、陰谷、太谿、復溜を選穴した。右肩の張りなど不定愁訴に対して追加穴を加え全身治療をおこなった。鍼治療と併用して低出力レーザー治療も継続した。知覚異常の程度は VAS値にて評価した。【経過・考察】鍼治療開始前の VAS値は、痛み57、痺れ50であった。5回目の治療後のVAS値は、痛み25、痺れ25。鍼治療10回目の治療後の VAS値は、痛み22、痺れ22であった。治療経過に従って緩やかに VAS値は減少する傾向がみられた。鍼治療の回数を重ねる度に痛みや痺れは軽減し違和感の範囲は狭くなった。症状を忘れていることもあり、会話時や食事の時も気にならなくなるなど自覚症状の改善が見られた。持続性特発性顔面痛にはうつ病や不安症などの既往歴がある場合が多いと報告されている。本症例では強迫性障害の既往があったため、右側顔面部の症状だけでなく不安感や不定愁訴を含めた全身治療をおこなった。不安感や恐怖感を与えないよう適宜問診し鍼治療をおこなったことが症状の緩和に繋がったのではないかと考えられる。 キーワード:口腔顔面領域、痛覚変調性疼痛、顔面痛、知覚異常 169 -Sun-P4-15:24 オトガイ神経知覚異常患者に対する鍼灸治療 1)大阪大学歯学部付属病院歯科麻酔科 2)芦屋百会鍼灸治療院 3)広島大学大学院医系科学研究科歯科麻酔学 山本伸一朗 1,2)、高橋沙世 1)、小田若菜 1)、 花本博1,3) 【目的】抜歯・嚢胞摘出術後のオトガイ神経知覚異常に対して鍼灸治療で改善を認めたので報告する。【症例】52歳の女性。主訴は左顎の痺れとゴロっとした違和感。[現病歴]X-2年12月に当院口腔外科で左側下顎智歯抜歯及び顎骨嚢胞摘出術を受けた。 2週間後に頬側歯肉軽度腫脹、創部に感染所見が見られ、左オトガイ神経知覚異常が認められた。X-1年2月、鍼治療を希望されて当科に紹介された。[所見]左オトガイ部に痺れと違和感、しこりがあった。洗顔時や冷たい風で痺れが増強し、歯ブラシが左歯肉舌側に触れるとピリピリした。 VAS値は痛み 0mm、痺れ 66mm、SW知覚検査は左右両側 0.008gだが感じ方が異なった。痛覚閾値は左で 8gと鈍麻であった。電流知覚閾値(CPT)は Aβ線維が左 179/右85、Aδ線維が左 52/右34で左が鈍麻であった。温覚閾値は右 40.1℃、左 48℃以上で左右差を認めた。舌診と脈診から肝虚証であった。【治療・経過】治療は 4回目までは毎週、以後2〜5週毎に行った。下関、太陽、巨膠、大迎、翳風、合谷、風池の取穴に加えて肝虚証の治療を行い、下顎や頚部の運動療法と養生法を自宅で行ってもらった。4回目の治療後にオトガイ部外側の痺れが軽減し、8回目の治療後には中央 1/4のみ痺れが残っていた。痺れの VAS値は14回目に20mmまで改善した。それ以降、電子温灸器で低温 47℃、 600mJの温灸と自宅での台座灸を開始した。16回目の治療前、左の温覚閾値が 42.8℃、CPTはAβ線維が左 105、Aδ線維が左 32と改善を認めた。【考察】筋緊張の緩和および神経損傷部位の血流改善を目的として咀嚼筋や頚肩部への鍼治療を行った。治療後にオトガイ神経知覚異常症状が改善したため、鍼治療が神経修復に効果を認めた可能性が考えられた。また、下顎の運動療法や軽い運動、リラックスできる養生法の実践が効果を高めたと考えられた。【結語】抜歯・嚢胞摘出術後のオトガイ神経知覚異常に対して、鍼灸治療が有効であった。 キーワード:オトガイ神経知覚異常、温度覚鈍麻、咀嚼筋、鍼灸治療、電気温灸器 170 -Sun-P4-15:36 下歯槽神経損傷に伴う知覚鈍麻・痺れに対する鍼治療の1症例 埼玉医科大学東洋医学科 山本彩子、小内愛、堀部豪、井畑真太朗、 村橋昌樹、山口智 【目的】抜歯後の下歯槽神経損傷による障害は4〜8週間以内に回復すると言われているが、薬物療法の無効例がある。今回、薬物療法で期待すべき効果が得られない、抜歯後の下歯槽神経損傷による痺れ・感覚鈍麻に対して鍼治療を行い、症状軽減を認めた症例を報告する。【症例】52歳女性。[主訴]右側下口唇部の痺れと感覚鈍麻。[現病歴]X-1年10月に近医歯科の健診にて、右第1大臼歯の埋伏による下歯槽神経の圧迫を指摘され、X-1年12月に歯科口腔外科を紹介受診。口腔内XP、CT、MRIの結果、同様の所見を確認。同月に埋伏歯の抜歯直後より、右下口唇の痺れと感覚鈍麻を自覚、右オトガイ神経麻痺と診断。術後よりプレドニゾロン、メコバラミンを服用するも期待すべき効果は得られず、X年2月に当科受診。身長 153cm、体重 49kg、血圧 100/ 72mmHg、脈拍 80bpm(整)。右三叉神経第3枝領域触覚・痛覚鈍麻、[鍼治療]40mm・16号、ステンレス製単回使用鍼、下関、オトガイ孔部、合谷、足三里に 10分間置鍼。2回目以降は下関とオトガイ孔部に、1Hzの鍼通電療法を追加。治療間隔は 1回/週。痺れの評価は触覚・痛覚検査、Visual analogue scale(VAS)。【治療・経過】初回時の痺れのVASは45mm、無自覚に涎を垂らし、唇がゴムの様な感覚。4回目は75mm、痺れの面積が縮小したような感覚。無意識に口の中を噛む回数が減少。治療16回目には食事の取り辛さが減少。治療35回目は8mmに軽減し、日常生活動作の支障が改善。触覚・痛覚検査は治療35回目まで左右差が認められたが、問診で感覚鈍麻の自覚的改善を聴取。【考察・結語】本症例の痺れ・感覚鈍麻の軽減は、鍼治療による軸索再生の促進効果や、主に脊髄や脳を介する鎮痛機構が賦活化したものと考える。標準治療で期待すべき効果が得られなかった、下歯槽神経損傷による痺れ・感覚鈍麻に対し鍼治療が症状の軽減に寄与した可能性が示唆された。 キーワード:鍼療法、電気鍼療法、下歯槽神経損傷、オトガイ神経麻痺、軸索再生 171 -Sun-P4-15:48 鍼灸刺激による口腔内免疫活性の変化 1)九州看護福祉大学看護福祉学部鍼灸スポーツ学科 2)九州看護福祉大学大学院看護福祉学研究科健康支援科学専攻 花田雄二 1)、塚本紀之 1,2) 【目的】これまで鍼灸刺激により獲得免疫である口腔内の唾液中sIgA分泌と口腔内の自律神経活動の関連に焦点を当て、検討を行ってきた。しかし鍼灸刺激による自然免疫への影響を検討した研究は少なく、鍼灸刺激により自律神経を介した自然免疫の調節についてはほとんど明らかになっていない。鍼灸刺激が口腔内の免疫活性および自律神経活動にどのような影響を与えるのか検討する。【方法】対象は九州看護福祉大学鍼灸スポーツ学科に通う男子学生 30名とした。封筒法で鍼刺激群 10名、灸刺激群 10名、無刺激群 10名に割り振った。唾液アミラーゼ活性値を測定後、サリベットを用い唾液を採取した。介入は仰臥位にて、鍼刺激群、灸刺激群は足三里穴、頬車穴(左右4部位)に10分間の鍼灸刺激、無刺激群は10分間の安静をとらせた。10分間の介入直後および介入30分後に唾液アミラーゼ活性値を測定、唾液を採取した。採取した唾液を用い、唾液分泌量、唾液総蛋白濃度、唾液sIgA濃度、唾液ディフェンシン濃度を測定した。【結果】介入前と介入直後、介入前と介入30分後の唾液アミラーゼ活性値、唾液分泌量、唾液総蛋白濃度、唾液 sIgA濃度に有意な差はみられなかったが、唾液分泌量は鍼刺激群、灸刺激群で増加する傾向が、唾液総蛋白濃度は鍼刺激群で増加する傾向が、唾液sIgA濃度は鍼刺激群、灸刺激群で減少する傾向がみられた。【考察・結語】今回の鍼灸刺激では各指標に有意な差がみられなかったため、鍼灸刺激により30分以内の口腔内の免疫活性に影響を与えることを示すことができなかった。唾液総蛋白濃度、ディフェンシンは交感神経活動の関連性が認められており、鍼刺激群では唾液総蛋白濃度が増加する傾向がみられたため、鍼刺激群でディフェンシン分泌に影響を及ぼすことが予想され、その解析結果についても報告したい。 キーワード:口腔内免疫、鍼刺激、灸刺激 172 -Sun-P4-16:00 ギラン・バレー症候群によるしびれに鍼治療が有効であった1症例 1)福島県立医科大学会津医療センター鍼灸研修 2)福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室 宮田紫緒里 1)、津田恭輔 2)、山田雄介 1)、 加用拓己 2)、鈴木雅雄 2) 【目的】ギラン・バレー症候群(以下 GBS)は、先行感染に伴い両側性弛緩性運動麻痺で急性発症する免疫介在性多発根神経炎である。今回、GBSによる下腿の強いしびれに対して鍼治療が有効であった1症例を報告する。【症例】63歳女性主訴は下腿の強いしびれ。[現病歴]X年にCOVID-19を罹患し自宅療養にて寛解したが、13日後に下肢の疼痛と脱力を自覚し体動困難に至り当院総合内科へ入院した。精査後、GBSの診断となりIVIg療法は施行せずに下肢の疼痛は改善し、リハビリ療法により歩行補助具での歩行が可能になった。しかし、経過中に下腿の強いしびれが出現したため、入院12病日に主治医より当科へ紹介となり、しびれに対しての鍼治療が開始となった。[初診時現症]しびれ は強い電撃様のピリピリとした性状であり、突発的に自覚した。部位は両側の足関節周囲に1日最大6回認めた。その他、腰下肢筋の筋力低下に加えて両下肢深部腱反射の消失と振動覚の低下を認めた。[東洋医学的所見]問診では、痿躄、下腿麻木、易疲労感、労作後の倦怠感などを聴取し、舌は暗紅、痩薄、少苔、脈は細、虚の所見を認めた。[評価]1日におけるしびれの回数としびれの強さは患者の訴えを評価した。【治療】鍼治療は弁証論治に基づき気血両虚証、血痺証とした。初診から第5診は下腿にざん鍼を実施し、第6診以降は足三里、三陰交、血海に捻転補瀉手技と鍼通電療法を 1日1回、週 6回の頻度で実施した。【経過】突発的な強いしびれは鍼治療実施毎に軽減し、「鍼治療を始めてからしびれが減って弱くなり足が楽になった。」と患者の訴えを聴取した。鍼治療継続により1日6回あったしびれは第10診目には消失し、入院30日目に退院が可能となった。【考察・結語】本症例のしびれはGBSに伴う異常感覚 と考えられるが、鍼治療によりしびれの改善が得られており、本症例に鍼治療が有効であったと考えられた。 キーワード:ギラン・バレー症候群(GBS)、しびれ、鍼治療 173 -Sun-P4-16:12 上頸神経節置鍼法を用いたアトピー性皮膚炎の一症例(第2報) 山田鍼灸治療院 山田幹夫 【はじめに】難治であるアトピー性皮膚炎に自律神経の調節を目的とした上頸神経節置鍼法を用いたところ、症状が軽減した症例について、第61回三重大会発表の続報として報告する。【症例】患者男性、36歳、体重90キロ 202X年8月A皮膚科クリニックにてアトピー性皮膚炎と診断され、プロトピック軟膏、コレクチム軟膏、デルモベート軟膏処方、通院加療中。手の甲、手指の亀裂、皮膚の乾燥、湿疹、全身のかゆみがある。不眠、手洗い不可、2か月間上記にて通院加療するものの一向に良くならないので鍼治療を求めて来院した。[既往歴]3年前当院にてアトピー性皮膚炎の治療5カ月 30診、緩解。腰痛【治療・経過】全身の皮膚の状態とかゆみの改善を求めて週1回頻度の鍼治療40ミリ・18号鍼を用いて蠡溝、合谷、外雲門、舌咽神経点、腎兪、水分、会に置鍼、雀啄様刺激後留置,委中に斜刺留置加えて50ミリ・18号鍼で左右の上頸神経節傍らに8分雀琢様刺激。3診目にはかゆみが一次的に減弱、睡眠がとれるほどになるが、皮膚の状態は改善が見られなかった。5診目以降で指先や手の乾燥による亀裂が改善するが、顔や頭のかゆみが増大、全身の皮膚状態も赤く、眠りの質が悪化。10診以降併用していた処方薬(塗り薬)を中断して鍼のみとして治療を継続中。12診で全身のかゆみは減弱し四肢の皮膚の状態は改善、手指の亀裂は消失した。【考察・結語】上頸神経節置鍼法を用いた鍼治療は、自律神経に働きかけ、アトピー性皮膚炎のかゆみや皮膚の状態を改善する事が前回の発表に引続きに確認できた。アトピー性皮膚炎の原因の一つに自律神経の関与があるが、QOLの改善とともに難治に上頸神経節置鍼法が有用であるのでリスクの高い頸部刺鍼法の確立と症例の集積が課題である。 キーワード:アトピー性皮膚炎、上頸神経節置鍼法、自律神経、 QOL 174 -Sun-P4-16:24 アトピー性皮膚炎に対する鍼治療患者記入質問票で重症と評価した1症例 名古屋平成看護医療専門学校はり・きゅう学科 辻大恵 【目的】アトピー性皮膚炎(AD)は痒みとそれに伴うQOLの低下をきたしやすい疾患である。ADに対する鍼灸治療の評価では、痒みには NRSやVASが、QOLには SkindexやDLQIが使用されているが、 The Patient Oriented Eczema Measure(POEM)が使用されることは少ない。そこで、本症例ではADに対する鍼治療の効果をPOEMで評価したため報告する。【症例】38歳女性。主訴はADによる痒み。[現病歴]生後間もなく、ADと診断された。症状の増悪と寛解を繰り返しながら現在に至り、X年より本校附属鍼灸院にて鍼治療を開始した。近医よりヒスタミン受容体拮抗薬、皮膚保湿剤、外用 JAK阻害剤、外用副腎皮質ホルモン剤を処方されている。[所見]皮膚の紅斑や乾燥、落屑を特に顔面部、手指、腰背部、足背に認める。痒みの増悪因子は季節の変わり目や夜間、ストレスである。[評価]ADの病状にはPOEMを、痒みには NRSとVASを、QOLにはDLQIを使用して、毎回の鍼治療前に行った。【治療・経過】鍼治療は江川らの報告を基に弁証を風熱証、治則を清熱涼血、配穴を大椎、膈兪、肝兪、曲池、合谷、血海、三陰交、太衝とした。鍼治療は 1週間に 1回の頻度とし、8か月間に 18回行った。POEMは鍼治療開始時に20点(重症)であったが、鍼治療を継続することで12点(中等症)や6点(軽症)を示した。なお、NRS、VAS、DLQIに大きな変化はみられなかったが、鍼治療を受けたことで痒みの改善を示すコメントを得ることが多くあった。【考察】POEMで重症と評価した ADに対して鍼治療が有用であることが示唆された。また、先行報告では軽度から中等度のADには1週間に2〜3回の鍼治療で良好な状態が維持できたとされているため、痒みやQOLをより良好な状態にするためには鍼灸治療の頻度やセルフケアの実施についても検討する必要がある。 キーワード:アトピー性皮膚炎、 POEM、The Patient Oriented Eczema Measure、痒み、 QOL 175 -Sat-G-10:50 鍼灸施術に応用できる腰痛に関連する要因の検討 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 鈴木宥翔 1)、小川日奈子 1)、須藤里香 1)、高田柚希 1)、野口真吾 1)、恒松美香子 1,2) 【背景】腰痛には、身体の様々な要因が関与していることが示唆されている。鍼灸施術を行う上でも、どのような要因が腰痛に関連しているかを考慮した上で、その部位に刺激を与えることが効果的な施術を行う上で有用であると考えられる。そこで、本研究は、腰痛に関与する身体の要因を明らかにし、有用な鍼灸施術部位を検討すること目的とする。【方法】対象者は20名の大学生とし、 Visual analogue scaleによる腰部、股関節、膝関節、足関節の疼痛の程度、 Modified Thomas test(MTT)による腸腰筋の柔軟性、股関節・体幹の屈曲および伸展の関節可動域、超音波画像診断装置を用いた腸腰筋の厚さ、ハンドヘルドダイナモメーターを用いた股関節の屈曲・伸展の筋力、側面からの写真撮影とその写真を基にした骨盤の傾きを評価した。測定した項目と安静時の腰痛の程度との関連をピアソンの積率相関係数で検討した。【結果】安静時の腰痛(以下、腰痛)の程度と股関節痛の安静時・運動時痛には、正の相関が認められた。また、安静時の腰痛の程度と MTTとの間には、負の相関が認められた。安静時の腰痛の程度と大殿筋および腸腰筋厚との間には、負の相関が認められた。【考察】腰痛が強い者ほど股関節の痛みが強かったことより、腸腰筋などの腰部と股関節をつなぐ組織の状態が腰痛に関連していることが考えられた。また、腰痛が強い人ほど MTTの値が小さかったことは、股関節の可動域の悪さが腰痛に関連したと推測された。さらに、腰痛が強い人ほど、大殿筋・腸腰筋厚が薄かったことは、これらの筋の作用を他の腰部の筋肉が代償し負担をかけたために腰痛が発生した可能性があると考えた。腰痛症状改善のための鍼施術を行う際は、腰部だけでなく、股関節周囲の症状にも注意を払い、必要に応じてその部への刺激を行うことも有用であると推測される。【結語】腰痛には股関節の状態が関連することが示唆された。 キーワード:腰痛、腸腰筋、股関節、鍼施術 176 -Sat-G-11:00 ヒトにおける足三里への鍼通電刺激は全血 LPS耐性を変容するか? 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 3)筑波大学医学医療系 藤川新大 1)、恒松美香子 1)、玉井秀明 1,2)、 小峰昇一 1,2,3) 【目的】足三里(ST36)への刺激は免疫応答に影響を及ぼす可能性が示唆されているが、その効果は不明な点が多い。他方、エンドトキシン(LPS)の血中流入は炎症を惹起させ、生活習慣病、自己免疫疾患、 COVID-19の後遺症など、様々な疾患に関与する。本研究ではヒトにおける足三里への鍼通電刺激(EA)がLPS由来の血中炎症応答に与える影響を解析することを目的とした。【方法】若年男女63名を無作為に偽処置群(CON, n= 32)、鍼通電刺激群(EA, n=31)に分けた。左右の足三里に対し、CON群は切皮(2〜3mm)程度、 EA群は2.5cm程度の深さとなるよう刺入し、EA群には通電刺激を追加した。両群共に介入前と 4日間の介入後に採血を行った。介入後の全血に対してLPSを添加し、 3時間の培養を行った。その後、血漿中の炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-6)、抗炎症性サイトカイン(IL-10)濃度を解析した。また、末梢血単核細胞を単離し、異物貪食能解析のため末梢血単核細胞に蛍光標識ビーズを添加し、 FACSにて解析を行った。鍼刺激及び採血は有資格者が実施した。【結果】介入前後の比較において、両群共に TNF-α、IL-6の濃度に差は認められなかった。介入後において、CON群の全血にLPSを添加すると炎症性サイトカイン濃度は増大した。一方、 EA群においてはTNF-αの分泌増大は抑制され、CON群に比してEA群で有意に低値となった(CON群 ; 281.4± 120.1pg/mL、EA群 ; 216.7±89.4pg/mL)。IL-6とIL-10はLPS添加により増大したが、EAによる差は認められなかった。LPSにより異物貪食能は増大したが、差は認められなかった。【考察・結語】ヒトにおける足三里深部への鍼通電刺激は、足三里切皮程度の刺激に比してLPS誘導性の炎症応答を抑制する可能性が初めて明らかになった。この効果は、LPS由来の血球炎症により惹起される疾患の発症・進展の抑止に有用である可能性が示唆された。今後は足三里が誘導する効果の経穴特異性を検証していく。 キーワード:鍼通電刺激、エンドトキシン( LPS)、免疫応答、炎症性サイトカイン 177 -Sat-G-11:10 鍼刺激による精巣機能への効果ついて 1)関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科 2)関西医療大学スポーツ医科学研究センター 武井陽星 1)、西川陽菜 1)、久保結菜 1)、白川雄大 1)、馬場遥大 1)、山口由美子 1,2)、伊藤俊治 1) 【目的】我々はこれまで雌マウスの三陰交穴への鍼刺激により血中エストロゲン濃度が変化することを報告してきた。今回、雄マウスの三陰交穴と腎兪穴への刺激による精巣臓器の変化に着眼した。鍼灸での不妊治療は数多く報告されている。東洋医学にて古代から遺精やインポテンツ等の原因には腎精不足であることが示唆されている為、三陰交穴の他に腎兪穴も刺激した。鍼刺激による不妊治療への効果や適応が示唆されれば一般不妊治療や生殖補助医療よりも安価で行えることが期待される。これらを目的として実験動物を用いて鍼刺激により精巣組織や、血中ホルモン濃度がどのように変化するか検討した。【方法】 15週齢のウィスターラット雄 21匹を無作為に三陰交穴刺激群( S群) 7匹。腎兪穴刺激群(B群) 7匹、コントロール群(C群)に分け、週2回5週間、計 10回の鍼刺激を行った。鍼刺激は麻酔下で15分の置鍼を行い、 C群は麻酔のみを行った。鍼はステンレス製の1寸の01番を使用した。三陰交穴と腎兪穴の部位に関しては中獣医学を参考に決定した。5週間後に採血、屠殺し、精巣組織を採取して重量測定を行った。採取した精巣はホルマリン固定して顕微鏡観察を行った。血中テストステロン濃度をELISA法で測定し、また腸内細菌叢についても変化の測定を依頼した。【結果】S群の精巣重量が C群に比べ有意に増加していた。血中テストステロンは、S群で高くなっていたが、有意差を示すには至らなかった。しかし、組織学的には精巣組織は大きな違いが認められなかった。【考察と結語】三陰交穴の刺激により雄ラットにも変化が認められた。三陰交穴の鍼刺激には生殖腺へ影響を及ぼすことが考えられた。これまで三陰交穴は女性でも、男性でも不妊治療の治療穴のひとつとして使用されていたが、今回の結果より生物学的なメカニズムは生殖腺の変化を介していることが考えられた。今後更にこのメカニズムについて研究していきたい。 キーワード:テストステロン、精巣 178 -Sat-G-11:20 鍼刺激による男性型脱毛症への効果について 1)関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科 2)関西医療大学スポーツ医科学研究センター 西川陽菜 1)、武井陽星 1)、久保結菜 1)、白川雄大 1)、馬場遥大 1)、山口由美子 1,2)、伊藤俊治 1) 【目的】男性型脱毛症(以下AGA)に対して鍼灸での治療法は確立されていない。AGAには男性ホルモンの関与が報告されている。我々のラットを用いた研究で鍼刺激により血中性ホルモン濃度が変化する可能性が示された。AGAの治療穴に三陰交穴や腎兪穴が挙げられる。これらを利用し、AGA治療に鍼刺激による男性ホルモンのコントロールが利用できる可能性とジヒドロテストステロン(以下DHT)の濃度に変化がないか検討した。DHTを産生する酵素であるαリダクターゼの変化についても検討した。【方法】15週齢のウィスターラット雄21匹を無作為に三陰交刺激群(S群)7匹、腎兪穴刺激群(B群)7匹、コントロール群(C群)に分け、週2回5週間、計10回の鍼刺激を行った。鍼刺激は麻酔下で15分の置鍼を行い、C群は麻酔のみを行った。鍼はステンレス製の1寸の 01番を使用した。三陰交穴と腎兪穴の部位に関して中獣医学を参考に決定した。 5週間後に採血、腎兪穴周辺の皮膚組織を採取し筋膜、脂肪層を除去した皮下組織を残した。皮下組織からは RNAを抽出しリアルタイム PCR法により5αリダクターゼを測定した。血液からは ELISA法により DHT濃度の測定した。【結果】ラットには 5αリダクターゼが 3種類存在するが、 5α-リダクターゼ 2,3は皮膚ではほとんど検出されなかった。S群の血中テストステロンは高い傾向にあり、5α-リダクターゼ 1の発現も高値を示したが、DHTの血中濃度には違いがなかった。【考察結語】5αリダクターゼの活性が高まっていたことから生成されるDHT量も皮膚では増加しているとが考えられた。DHTは脱毛を促進する可能性が高く、AGAを治療するには三陰交穴への刺激は逆効果であると考えられる。今後はDHTの濃度を下げる治療穴を検索したいと考えている。ただ、ラットと人間では発毛のメカニズムが異なる可能性がある為併せて研究していきたい。 キーワード:男性型脱毛症、テストステロン 179 -Sat-G-11:30 肩こり・腰痛患者数と気象データとの相関 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部 鍼灸サイエンス学科 荒瀬巧麻、浦田繁 【目的】肩こり・腰痛の訴えは非常に多く、鍼灸治療がその受け皿のひとつになっている。また、近年気象と病いとの関係が研究され、「気象病」という概念が確立しつつある。気象病は、痛みや不快感と関連しやすいことが報告されているが、鍼灸患者についてそれら関連を調べた報告は、少ない。本ゼミでは、鍼灸治療センターにおける「腰痛」「肩こり」の患者動態を調べるとともに、気象データとの関連について検討した。【方法】2010年4月1日から2015年5月31日までに鈴鹿医療科学大学附属鍼灸治療センターを受診した新規患者2354例のうち、肩こり・頸部痛患者481例と腰痛患者452例を対象とした。調査項目は、年齢・性別・受診日・主訴とした。気象データは、2014年津気象台発表の気圧・降水量・気温・湿度・風向・風速・日照時間とした。解析は、性差、月別患者数と気象データとの相関とした。【結果】新患 2354中、男性 941人( 40.0%)、女性 1413人( 60.0%)であった。年齢は、 53.3±19.1歳(平均値±標準偏差)であった。「肩こり・頸部痛」患者の月別推移は、全体では 4月に 59例のピークがあった。「腰痛」患者の月別推移は、4月に54例、6月に 55例でピークがみられた。「肩こり・頸部痛」については、全体で月別患者数と最小湿度との間に負の相関が認められた(相関係数 -0.58、p<0.05)。「腰痛」については、男性で 1時間最大降水量との間に正の相関が認められた(相関係数 0.65、p<0.05)。【考察および結語】「肩こり・頸部痛」では、月別患者数と最小湿度との間に有意な負の相関が見られたことから、湿度の低い日があると受診数が増加する可能性が示唆された。また「腰痛」では、男性について 1時間降水量と月別患者数との間に有意な正の相関が認められたことから、集中的な降雨があると腰痛での受診数が増加する可能性が示唆された。 キーワード:腰痛、肩こり、鍼灸、患者、気象データ 180 -Sat-G-11:40 教科書に記載される五臓病証 『新版東洋医学概論』記載の五臓病証の検討 大分医学技術専門学校鍼灸師科 久保田晃一、木場由衣登 【目的】『新版東洋医学概論』2022年第1版第8刷に記載される五臓病証は中医学を基礎としているが、旧版や他の中医学の参考書に記載される病証、舌証、脈証と異なる点が多い。今回の調査では教科書に記載される病証を比較し、より深く理解するための検討を行った。【方法】対象書籍は、(1)『新版東洋医学概論』 2022年第 1版第8刷、(2)旧版『東洋医学概論』 2006年第 1版第 14刷、(3)城戸勝康著『東洋医学概論』 1992年初版、(4)『基礎理療学I(東洋医学概論)』2019年改訂第6版第 2刷、(5)『針灸学[基礎篇]』1998第2版第 3刷、(6)神戸中医学研究会訳『中医学基礎』1977年初版、(7)『全訳中医診断学』2019年第7刷等とした。【結果】1992年までの教科書では、寒熱虚実による臓腑病証が主流であった。国家試験が施行される 1993年以降は、中医学の五臓病証が流入している。『新版』では、生理・病理、舌脈所見、弁証・鑑別のポイント別での記載が整備されている。しかし、中医学の病証として完備されていない点がある。病証の増減、記載すべき病証「肝鬱気滞の梅核気・腎陽虚の浮腫」の別項への記載、用語の注釈「目乾(目の乾き)・乾燥するが多く飲めない(口乾)」の記載の前後、抽象的な表現「爪の栄養障害・月経異常」の記載などが散見する。また、『新版』の臓腑病証は、第 2章「生理と病理」の第 2節「蔵象」に早い段階で記載がある。【考察】病証の記載は統一されておらず、『新版』の五臓病証は新たに、生理・病理、舌脈所見、弁証・鑑別のポイント別での記載の工夫がされている。さらに五臓病証をより深く理解するためには、前提となるべき、陰陽、五行、八綱、病因病機、四診の知識が必要であるため、その知識を先に学ぶと理解しやすいのではないかと考える。【結語】現状では中医学から学ぶが、病証の用語とその意味、背景の思想である陰陽や五行の基礎、八綱、病因病機、四診の知識を習得する必要があると考えられる。 キーワード:東洋医学概論、中医学概論、漢方概論、中医基礎理論、臓腑病証 181 -Sat-G-11:50 疼痛に悩む育児中の女性に有用な対策の検討 1)帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 2)帝京平成大学東洋医学研究所 大澤佑斗 1)、皆川陽一 1,2)、宮崎彰吾 1,2) 【目的】先行研究において、育児に伴い頸部や肩の疼痛を訴える女性の割合が増加するにもかかわらず、その対策は不十分であることが指摘されている。一方、疼痛は鍼灸臨床で最も遭遇することの多い症候であることから、私たちは「疼痛に悩む育児中の女性に有用な対策」を卒業研究の一環として検討することとした。【方法】本学倫理委員会の承認(2023-117)を得て、指導教員が豊島区立東部子ども家庭支援センターで講師を務めた産後セルフケア教室に参加した育児中の女性8名から同意を得てアンケート調査を実施した。【結果】回答した 8名の年齢(平均±標準偏差)は34±5歳であった。子どもの数は1人が 5名(63%)、2人が3名(38%)で、子ども(2人の場合は第2子)の年齢(月齢)は3.5±0.9であった。疼痛の訴え(複数回答)は、肩こりと腰痛が各8名( 100%)と最も多く、手首の痛みが5名(63%)と続いた。疼痛に対して鍼灸を受けている者は1名(13%)で、受けてみたいと回答した者は3名(38%)であった。鍼灸を受けてみたいと回答した3名に費用に関する質問をしたところ、 「症状が軽減するなら、費用に応じて受けたい」、「症状が軽減するなら、費用に関係なく受けたい」、「公的保険があれば受けたい」とそれぞれ回答した。なお、「費用に応じて受けたい」と回答した者に「理想とする1回当たりの施術費用」を尋ねたところ 3000円と回答した。【考察】定頸前後の子どもを育児中の女性には特に「肩こり」「腰痛」「手首の痛み」への対策を示す必要があることを確認した。また、「疼痛に悩む育児中の女性」の約3人に1人に鍼灸の潜在的な需要がある可能性が示され、この潜在需要を掘り起こすには、1回当たり3000円以下の費用で対策を提供することが望ましいと考えられた。さらに、医療機関や施術所などで適切な処置を受ける余裕がない者も多いことから自宅で手軽にできるセルフケアも有用と考え、今後はその対策を考案し、実践したい。 キーワード:産後ケア、セルフケア、育児、アンケート、肩こり 【数字、 アルファベット】 3Dデータ化196 3次元画像162 Acupuncture66,128,131,132 acupuncture132,185 ADAMTS5201 ADHD209 ADL146 Age-period-cohort分析169 Agoraphobia131 Antispasmodic132 autonomic nervous system129 Behavior analysis130 bleeding132 Case report131 Case Report67 Chemobrain130 Classical Interpretation131 Clinical Acupuncture67 Clinical Acupuncture Studies67 Collaborative treatments64 CPGs71 CSCATTT92 DeepLabCut130 Disaster128 disaster area129 DSAM208 EBM71 Education66 Emotrics146 Endoscopic Submucosal Dissection132 Enhanced Recovery after Surgery65 ERAS-K65 EZR103 eスポーツ168 fascia158 fMRI151 Gastrointestinal Symptom Rating Scale 191 GHQ207 HAD176 hematological malignancies132 H波198,199 ICD-11121,123,169 ICHI121 ICT教育86 Image Analysis130 Incidence155 Integrative approach65 interview129 ISO/TC249119 Japan66 Japanese style acupuncture185 JLCDAM91 Keele STarT Back screening tool164 L*a*b*139 Korea National Rehabilitation Center64 Literature review128 Long COVID-19128 objective evaluation130 opioid-induced constipation129 orea National Rehabilitation Center 64 Panic Disorder131 Panic Disorder Severity Scale131 PCS165 PDAS167 Physician66 PMDD114 PMS114 POEM214 PPT163 Pressure Sensors130 Pubmed84 QOL145,214 RA148 RDQ167 safe acupuncture129 SF-MPQ-2147 Shinkyu185 SI1141 Silicone Gel130 Sleep131 Sleep disorders131 Sleep problems131 Spinal cord injury64 Spine65 SSS-8133 Stroke64 Student66 Support128 The Patient Oriented Eczema Measure214 thrombocytopenia132 University Hospital In Japan67 Upper Gastrointestinal Tract132 VAMFIT137 volunteer activities129 Western and Korean Medicine64 WHO-FIC121 YNSA112 Z世代56 【あ】 アウトカム102 アクシデント170 アスレティックトレーナー76 アスレティックトレーニング76 圧痛閾値163 アトピー性皮膚炎111,214 あはき教員養成機関183 アプリケーションソフト184 アメリカンフットボール154,155 アルミニウム製のてい鍼209 アレルギー111 アンケート143,174,218 アンケート調査168,172 174,183,186 安静時fMRI151 安全刺入深度157 安全性59,150,156,204,205 アンチエイジング163 胃運動191 胃音191 胃癌術後190 育児218 医師94 意識障害194 意識調査117,168,203 医師と鍼灸師の連携99 医師法62 いじめ208 胃食道逆流症190 医師連携173 医中誌84 一本化91 胃電図191 医はき師94 医鍼連携72 意味197 医療DX123 医療コミュニケーション210 医療従事者向け105 医療的ケア78 医療連携166,170,174 インシデント170 陰部神経鍼通電142 うつ症状175,177 うつ病136 運動機能146 運動パフォーマンス154 衛生操作135 衛生的刺鍼203 衛生面205 疫学調査155 エコー62,63,157,159,161 エコー下鍼治療159 エコー装置160 エストロゲン202 エビデンス54 炎症性サイトカイン215 エンドトキシン (LPS) 215 円皮鍼198 横隔神経204 横断研究176 おうち薬膳125 血134 押手203 悪阻143 オトガイ神経知覚異常212 オトガイ神経麻痺212 オピオイド誘発性便秘症189 温灸器174 温度覚鈍麻212 温度特性151 オンライン173 オンライングループワーク187 オンライン授業189 【か】 カーフレイズ運動196 開業鍼灸院172,173,175 介護146 介護職員175 介護負担136 海図115 ガイドライン73 解剖学184 解剖学用語85 カウンセリング69 過活動膀胱75,200 かかりつけ181 顎関節症149 学習者支援57 学生183 学生アンケート183 加工灸150 下行性疼痛調整系53 可視化196 下肢神経痛166 下歯槽神経損傷212 下肢痛166 画像解析162 下腿部位診断106 肩こり197,217,218 肩凝り182 片窓鍼管203 価値観を押しつけない177 学校教育189 滑走158 活用48 家庭医療学49 過敏性腸症候群74 下部尿路症状75,100 紙媒体183 痒み214 カリキュラム186 カルテ58 カルテ項目124 疳切り210 間欠性跛行165 がん検診169 韓国150 看護師95,175 観察研究103 患者176,217 患者数137 患者動態169 がん性疼痛189 関節可動域194,199 関節包靱帯157 感染205 感染対策135 疳の虫210 漢文85 漢方48,147,166 漢方概論138,217 漢方診療を行う医師174 漢方薬61,81 漢方薬との併用96 顔面神経麻痺73,144,145 顔面痛211 管理指針114 緩和ケア189 記憶の多重貯蔵モデル57 気胸204 危険深度205 気象データ217 基礎教育208 北里式経絡経筋治療178 北里式経絡治療200 北里方式経絡治療165 吃逆192 機能性消化管疾患診療ガイドラインー過敏性腸症候群 (IBS)74 機能性消化器疾患191 機能性ディスペプシア191 機能的結合151 気分障害97 灸151,179 臼歯211 灸刺激152,213 灸セルフケア154 吸息156 灸頭鍼200 教育82 教育機関137 教育効果185 教科書138,188 共起関係185 協調学習支援187 共同研究173 曲泉201 ギラン・バレー症候群 (GBS)213 筋・筋膜性腰痛160 筋緊張198,199 筋硬度196 筋収縮158 近赤外線144 近赤外線偏光治療器142 緊張型頭痛208 クモ膜下出血205 クライシス対応51 クリーンニードルテクニック205 クロスオーバーデザイン182 クロス分類マルチレベルロジスティック回帰モデル169 経筋・経別106 経穴詳解83 経穴部位85 痙縮193,194 形成外科手術145 傾聴177 経脈病証138,141 経絡経穴概論87 経絡経穴学82 経絡系統治療システム137 経絡治療139,181 血圧179,182 穴位主治条文140 月経痛144 月経不順144 結合組織159 煙150 健康教育155 肩甲挙筋159 健康診断169 現代医学122 現代医学的思考による鍼刺激179 減量166 瞼裂比144 後遺症135,145 効果197 高額訴訟205 抗がん剤の副作用149 口腔顔面領域211 後頸部経穴196 後頚部痛159 膠原病60 口腔内免疫213 合谷82 構造学的因子153 構造特性152 江蘇省206 黄帝内経素問(水熱穴篇第六十一) 137 黄帝明堂経輯校141 後頭下筋群157 後頭下三角196 江南地域206 股関節215 呼吸182 呼吸器疾患107 呼吸性洞性不整脈 179 五行色体表139 国際規格 (IS) 119 国際機関118 国際疾病分類第11版138 国際条約118 五臓スコア139 呼息156 古典85 コロナ渦136,137 コロナ罹患後症状135 こわばり144 今後の課題171 コンピテンシー187 【さ】 災害88 災害医療92 災害支援90,91 災害支援活動208 災害対策203 再現性156 再受診動機172 在宅医療79 在宅医療介護78 在宅診療81 サイトカイン152 座位保持困難195 採用症状138 坐骨神経鍼通電156 左右同時血圧測定181 三陰交82 参加型臨床実習185 産後ケア218 三叉神経領域180 産婦人科114 支援者支援207 耳介迷走神経177 視覚障害136 自覚症状175 軸索再生212 刺激時間163 自己対処法175 志室140,159 思春期208 辞書用語部122 システマティックレビュー141 ジストニア195 実習186 実態調査124,136,168 169,170,171 膝頂201 質的研究185,187,197 質評価71 質問紙190 質問紙法168 刺入深度204 市販加工灸150 しびれ167,213 自閉症スペクトラム障害177 シミュレーション202 耳鳴134 耳鳴質問票 (THI) 134 耳門穴149 ジャイロセンサ133 雀啄159 尺度101 若年女性190 若年性リウマチ148 重症頭部外傷194 重度障害78 皺眉筋149 集毛鍼195 主治141 主治症83 主治条文141 出現率156 受療率173 循経取穴198,199 至陽140 上頸神経節置鍼法214 上肢ジストニア195 少沢141 小殿筋157 小児210 小児鍼灸210 小児のアトピー性皮膚炎209 小児はり208 小児はり治療209 上部消化管愁訴192 症例189 症例集積134 症例対照研究164 職員研修186 触診197 書痙195 女性153 女性アスリート171 自律神経179,214 自律神経症状181 新型コロナ136 新型コロナウイルス135 鍼灸48,60,74,79,84,90,111 113,124,136,139,144,147 153,167,171,173,176,184 189,191,194,207,210,217 鍼灸安全対策ガイドライン104 鍼灸安全対策マニュアル104 鍼灸あん摩マッサージ指圧172 鍼灸院174 鍼灸院経営49 鍼灸学用語集122 鍼灸教育115,183,188 鍼灸禁止令207 鍼灸ケアシート193 鍼灸師76,92,95,187 鍼灸実態調査207 鍼灸施術135 鍼灸治療100,133,134,137 143,177,178,192,212 鍼灸の歴史185 鍼灸用語122 鍼灸利用状況175 鍼灸療法168 鍼灸理論188 鍼灸臨床138 神経系152 神経障害性疼痛147 神経損傷156 神経発達症209 人工呼吸器194 腎臓深度156 身体診察167 靭帯損傷202 身体の悩み171 身体表現性障害178 深度157 真のアウトカム102 心拍数182 心拍変動179 心拍変動解析182 腎兪140 心理社会的要因101 診療ガイドライン71 診療録58 髄空137 推奨71 睡眠154,179 睡眠障害179,180 頭痛の診療ガイドライン202172 ストレス164,192 スポーツ76,153,155 スポーツ外傷・障害154,155 生活習慣176 整形内科63 性差医療52 生殖医療68 生殖医療施設70 生殖補助医療68,110 精神医療97 生成AI183 精巣216 製造安定性152,153 精巣血流110 生命徴候93 西洋医学94 咳135 脊髄梗塞193 施灸角度151 世代効果56 接触鍼198 舌痛147 セルフケア90,105,145 173,179,180,218 仙骨部刺鍼142 仙腸関節161 専門学校附属施術所169 専門教育168 前立腺特異抗原110 総合診療60,94 相互理解48 操体法113 臓腑経絡106 臓腑病証138,217 僧帽筋上部197 咀嚼機能163 咀嚼筋211,212 咀嚼力163 足関節199 卒後研修172 卒前教育184 素問198 【た】 第一背側骨間筋201 体温164 大学病院170 台座灸151,152,153 帯状疱疹後神経痛 (PHN)147 体性−自律神経反射74 代替医療114 大腿後面痛161 大道団結208 体表解剖106 対面授業189 太陽174 代理アウトカム102 ダウンロード184 多施設173,175 他施設連携99 多重代入176 多職種協働58 多職種連携51,55,72,78,80 多職種連携教育186 打鍼192 多組織連携51 七夕126 多嚢胞性卵巣症候群142 ダブルライセンス93 多様性208 単回使用毫鍼59 短冊126 男性型脱毛症216 男性不妊110 地域医療79,80,93,173 地域包括ケア55 チームアプローチ55 チーム医療70 知覚閾値148 知覚異常211 置鍼199 知的財産118 知的障害者家族136 中医学138 中医学概論217 中医基礎理論217 中医鍼灸206 中学生155 中国150 中国思想50 中殿筋161 中途覚醒180 中穴200 超音波160 超音波エラストグラフィ196,197 超音波ガイド下鍼通電療法161 超音波画像157,204 超音波画像診断装置157,158,159,160 超音波画像装置158 超音波診断装置62,156 腸骨筋158 調査84 調査報告169 腸腰筋215 治療再現161 椎骨動脈157,196,205 痛覚変調性疼痛53,211 通電ガイド下刺鍼法156 月ごとの変化184 つわり143 手足の痺れ149 低AMH142 定位反応83 低周波鍼通電202 低周波鍼通電療法147,165 鍼209 データ集積173 データヘルス123 テキストマイニング141,184,185 テストステロン216 電気温灸器212 電気ていしんコード204 電気鍼療法212 電子カルテ123,124 電子教材86 電子システム175 電子媒体183 天柱205 伝統医学61,88,122 伝統医療118 伝統的知識118 添付文書59 電流密度202 湯液治療178 統計解析103 統合医療172,184 銅製のてい鍼209 動体158 疼痛143 疼痛評価149 頭皮鍼112,180 東北50 東洋医学87 東洋医学概論87,138,217 督脈140 徒手的刺激200 特許205 突発性難聴134 トリガーポイント161,163 【な】 長野式治療108 難治性178 難治性てんかん177 日中韓150 日本医学史50 日本人と外国人171 入院143 入眠困難180 妊産婦143 認知行動療法178 認知心理学57 認知反応時間154 熱分布特性152 燃焼温度曲線150 燃焼特性150 脳卒中186,192,193 ノンテクニカルスキル92 【は】 パーキンソン病181 肺経160 排尿日誌100 胚盤胞142 背部経穴204 バター摂取176 発汗発作181 八卦頭鍼法162 発達障害97 パニック症177 バランステスト106 鍼88,149,162,197,202 鍼・マッサージ・ストレッチ171 鍼イメージ201 はりきゅう体験105 鍼刺激182,201,213 鍼施術215 鍼治療73,75,109,134,135 144,145,146,149,154 155,160,164,165,170 192,194,195,197,209,213 鍼通電142,196,201 鍼通電刺激215 鍼通電療法167,200 鍼電極202 鍼の抜き忘れ170 鍼療法212 パンデミック135 反応点治療133 「冷え」164 冷え症176 東日本大震災51 皮下組織160 被災者支援207 膝前十字靭帯損傷202 非歯原性歯痛211 非特異的腰痛164 皮膚色139 皮膚粘弾性162 百会82 病院168 病院勤務鍼灸師70 評価101,102,163 評価ツール193 標準参照仕様123 病証スコア190 病状質問票100 美容162,163 美容鍼162 病鍼連携55,166 病態把握167 病的共同運動144 病棟内鍼灸師98 表面筋電図149 疲労骨折153 枇杷葉温圧灸療法147 ファシア62,63,159 不安176 不安症状175 腹部絞扼感193 腹部膨満感191 不随意運動195 不登校208 不妊54,69,110 不妊症54,142 不妊鍼灸54 不妊鍼灸治療142 不妊治療68,70 不眠178,180 プライマリ・ケア49,81 震え195 フレイル予防136 プレゼンティーズム206 プロアジリティテスト154 文献調査199,206 文献レビュー104 平衡感覚133 ペインビジョン148 ベル麻痺145 変形性膝関節症201 弁証111 片頭痛210 便秘190 棒灸198 膀胱痛症候群200 望診139 訪問鍼灸146 ボディケア171 ボランティア90 ポリファーマシー81 ホルモン202 本治198 【ま】 マッサージ88,207 末梢性顔面神経麻痺109,145,146 末梢性めまい133 松本岐子108 窓口91 麻痺性イレウス143 マルコフ連鎖モンテカルロ法169 慢性痛148 慢性疼痛53,165 慢性疼痛ガイドライン53 慢性腰痛163,167 三重軍政部207 三重軍政部月例活動報告書207 味覚障害149 三つの課題89 未病155 脈診139,188 脈診習得法 (MAM)188 脈診評価表 (MAT)188 ミラーニューロン177 無料配布174 明堂経141 命門140 めまい133 免疫応答215 免疫系152 目標設定177 モデル・コア・カリキュラム115 【や】 夜間頻尿200 薬機法62 薬剤師96 柳原法109 山崎良齋188 有害事象104,170,192 有限要素法202 ユーザーの特徴184 誘発筋電図198,199 誘発筋電図F波201 腰下肢痛167 養生53,155 養生法83 腰痛101,159,160,164 165,166,215,217 腰部脊柱管狭窄症165,166 腰兪137 抑うつ176,178 予後予測101 【ら】 落下鍼170 リウマチ148 リカレント教育187 陸上競技153 リスクマネジメント59,203 離脱理由172 リハビリテーション93,146 流派伝承206 両親のQOL209 臨床家83 臨床研究84,99 臨床実験85 臨床実習136,185 リンパ球111 『霊枢』 経脈篇138 令和6年能登半島地震207 レッドフラッグ63 レディース鍼灸174 連携48 連携医療55 ローラー鍼90,133 六部定位脈診188 ロジスティック回帰分析190 【わ】 若者文化56 演者索引(敬称略)【あ】 会沢いずみ145 青木奈美江163,173 赤石 頌伍175 浅香  隆170 淺田 麻希200 朝日山一男207 足立 恵子175 足立  修175 阿部里枝子140 鮎澤  聡156,172,186,193 荒木 善行124,203 荒瀬 巧麻217 有田龍太郎61 安齋 昌弘187 【い】 飯田 通容136 飯田百合子210 家島 大輔133 五十嵐久佳196 池藤 仁美162 池本 英志201 伊佐治景悠110 石井  輝153,154,155 石井  正51 石井 祐三152,153,184,204 石上 邦男186,193 石山すみれ72 井尻 朋人195,198,199 井田 剛人165,178,200 糸井 信人148,152,153 糸井マナミ152 伊藤 和憲53 伊藤  剛147,165,178,181,200 伊藤 俊治202,216 伊藤 千展75,100 伊東 秀憲147,165,178,200 伊藤 雄一165,178,200 稲井 一吉89 井畑真太朗134,146,170,212 今井 賢治182,191,205 今西 好海149 今村 頌平203 井門奈々子165,178,200 岩澤 拓也172,175 岩村 英明164 【う】 上田 隆勇162 上野 暁生204 上原 明仁135,169,185 内田 匠治138,141 内田ちひろ175 内野 容子204 梅田 雅宏151 浦田  繁156,176,217 浦邉 茂郎164 浦山 きか50 浦山 久嗣85 【え】 江川 雅人111 榎本 恭子207 蛯子 慶三144,174 遠藤 伸代145 遠藤 美紀78 【お】 生出 拓郎96 王  財源162 大井 優紀162 大内 晃一139,147,163,173 大川 祐世71,102 大木島さや香80,203 大澤 佑斗218 大下 紘平152 大杉 美奈175 大高ちがや163,173 大谷 倫恵181 大塚 素子140 大槻 健吾164 大森 祐輝156 岡田  岬191 小川 修平163,173 小川 哲央164 小川  一160,196 小川日奈子215 小川 裕雄169 沖中美世乃137 屋  由美148 奥津 貴子207 奥茂 敬恭201 尾崎 朋文205 小田 若菜211,212 小田木 悟158,166,192 小野 直哉91,118 【か】 海沼 英祐164 加倉井和美163,173 笠井 正晴201 加島 雅之98 梶原 優花197 粕谷 大智153,171,197,206 形井 秀一150,202 片岡 裕恵158 桂井 隆明165,178,200 加藤久仁明173,175 金子聡一郎136,148,173,175,177,180,184,204 金子 泰久169,185 金本 明梨174 神谷 哲治112,194 加持 綾子166,200 加用 拓己103,117,190,213 辛島  充110 河井 正隆115,183 川喜田健司188 川口健太郎76 川嶋 睦子106 川浪 勝弘201,205 河野 彰代211 河村 廣定133 川本 譲司117 神田かなえ189 【き】 菊池 友和196 菊池 勇哉135 北川 洋志163 北野 吉廣204 木戸 正雄137,188 紀平 晃功185 木村 啓作153 木村 研一196 木村 友昭119,164,170,175,202,210 木村 雅洋142 木村 容子144,174 桐浴眞智子209 【く】 工藤  滋136,137 工藤  匡201 工藤 千穂211 久保 結菜202,216 久保 益秀176 久保田晃一217 熊井  司158 栗林 晃大169 【け】 毛塚 巳恵149 【こ】 小泉 直照113,166 小糸 康治157,165,197 小井土善彦84 小内  愛134,146,170,212 古賀 義久164,170 小坂 知世173,175 後藤  唯150 木場由衣登138,217 小早川義貴92 小林  只62 小松 範明142 小峰 昇一215 小宮ひろみ52 小山 浩司158 是元 佑太203,207 近藤 亜沙165,178,200 近藤 海斗160,161 近藤  宏167 近藤 美貴175 【さ】 斉藤  海76 斉藤  究157,161 齊藤奈津美81 斉藤 宗則138,141 酒井 浩司211 坂井  孝176 坂井 友実115,158,164,166,170,175,192,200 坂口 俊二134 櫻庭  陽172,186,193 佐藤 健太58 佐藤想一朗168 佐原 俊作204 三戸 敦雄152,153 三瓶 真一54 【し】 塩崎 郁哉201 塩田 誠也146 志田 貴広201 篠崎 波輝182 篠原 昭二138,141 篠原 大侑182,191 柴田 健一172,173,175,187 清水 洋二124,207 白川 雄大202,216 陣内 哲志193 新原 寿志119,135,203 【す】 菅沼 亮太68,69 菅原 正秋104,135,170,203 杉山 英照175,191 杉若 晃紀207 鈴木沙有理117 鈴木 卓也178 鈴木 俊明195,198,199 鈴木 雅雄117,190,213 鈴木 眞理163,173 鈴木 宥翔215 須藤 里香215 砂川 正隆201 角谷 英治183,188 【せ】 関  真亮135 銭田 良博63,159 仙田 昌子139,147,163,173 【そ】 曽田真由美210 外松恵三子177 【た】 高倉 伸有149,197 高田久実子174 高田 光俊206 高田 柚希215 高梨 知揚167,170,197 高野 道代135,171,189 高橋 海人144,174 高橋 健太157,161 高橋 沙世211,212 高橋 靜佳143 高橋 秀郎179 高橋  護143,195,198,199 高山  真48,88,166,184,194,204 高山 美歩149,170,197 瀧本  一159 田口 太郎121,135 田口 知子170 武井 陽星202,216 武田  卓114 武田 真輝133,192,198 武村 政徳146 竹谷 真悠158,192 立川  諒164,202 橘  綾子160 立石 和子187 田中 滋城158 田中 隆一180 田邊 美晴144 谷 万喜子195 谷口  授158,170,185,192 谷口 博志74,158,164,170,185,191,192,200 谷口美保子152,153,164 種市 敢太159 玉井 伸典76 玉井 秀明182,215 【ち】 チュロウンバト オユンチメグ201 張  建華162 【つ】 塚本 紀之213 辻  恭子174 辻  大恵214 辻  涼太205 辻田 純三146,182 辻丸 泰永205 津田 恭輔79,190,213 恒松美香子135,215 恒松隆太郎137 角田 朋之164 角田 洋平164 鶴埜 益巳186,193 【て】 寺澤 佳洋94 【と】 土井 章男160,196 東内あすか195 徳竹 忠司137 富澤 麻美165,178,200 冨田 賢一55,93,135,151 戸村 多郎184 鳥海 春樹163,173 【な】 中井 一彦190 中井 麻衣211 中川 紀寛124 中川 俊之139 中川 善貴117 中沢 良平49 仲嶋 隆史171,207 永田 宏子151 永野 響子157,165 中原  崇170 長嶺 澄佳182,191 中村 沙樹189 仲村 正子82,135,174,205 中村 元昭97 中村 吉伸164,181 南雲世以子154,164 奈須 守洋149 鍋田 智之154,168,179,180 鍋田 理恵179 奈良 上眞206 成島 朋美172,186,193 【に】 西川 陽菜202,216 西出 隆彦210 西村 健作161 西村 直也59,203 二本松 明201,205 【の】 野口 真吾215 野村 美香95 【は】 萩原 彰人 橋本  隆124 橋本  厳147 花田 雄二213 花本  博212 馬場 遥大202,216 濱田  淳137 林  佳子133,192,198 林 健太朗145,157,165,197 林  知也133 判治 由弘166 【ひ】 東垣 貴宏137,188 久木久美子176 久光  正201 土方 彩衣133,192,198 平田 耕一162 平尾 智広189 平岡 光一205 平木小百合147 平松  燿210 廣井 寿美182,191 廣瀬明日香 広瀬 統一199 【ふ】 吹野 将大199 福島 正也124 福田 晋平135 福田 文彦115,117,189 福田  翔158 福世 泰史104,135,203 藤江里衣子57 藤川 新大215 藤田 洋輔124,185,203 藤本 英樹153,154,155,164,170 船水 隆広87 古川雄一郎105 古庄 敦也158,199 古瀬 暢達135 古田 高征146,168,182,207 【ほ】 星野 卓之147,165,178,200 細井  聡76 細島 光洋162 堀川 奈央179,180 堀口 正剛208 堀部  豪73,109,134,146,170,212 本郷 誠司175 本田 明奈69 本田 伊克56 【ま】 前倉 知典107 前田 智洋136 前田 寛樹157,161 前道 俊宏158,199 間下 智浩139,147,163 増田 研一163 増田 卓也60,99 松浦 浩市207 松浦 悠人164,166,170,172,173 175,191,200,208,209 松尾 知美117 松木 宣嘉169 松熊 秀明154,168,179,180,205 松下 美穂86 松田えりか101,186 松田 静香187 松田 尚香70 松本  修117 松本  淳194 松本  毅150 松本美由季148,152,153 【み】 水出  靖170,210 水上 祥典137,188 水野 公恵174 溝口 香絵174 三谷 直哉143 光澤  弘137,188 光野 諒亮176 皆方 英樹170 皆川 陽一191,218 宮城 凌央183 宮嵜 潤二176 宮崎 彰吾218 宮澤 勇希186,193 宮田紫緒里190,213 宮武 大貴154,179 宮本 成生159,160 宮脇 太朗104,135 三輪くみ子163,170 【む】 武藤 厚子137,188 村上あきつ189 村上 高康207 村上 裕彦108 村上 慶泰184 村越 祐介76,153,154,155 村瀬 智一124,151 村田  愛136 村橋 昌樹124,134,146,170,212 【も】 茂木 麻美124 母袋信太郎157,165,174 森川 真二90,133 森田  智119,135 森野 弘高209 森本 賢司133 【や】 矢嶌 裕義149,170,197 矢島 道子188 安田進太郎143 安野富美子164,170 矢津田善仁207 矢野  忠115,188 山内 理恵133 山岡傳一郎140 山川  烈177 山口あやこ208 山口  智134,146,196,212 山口 沙和167,210 山口由美子202,216 山崎 寿也135 山崎 正史198 山下 和彦179 山下 幸司123,124 山下 勝大196 山下  仁135 山田 隆寛149 山田 雅治211 山田 幹夫214 山田 雄介190,213 山見  宝83,140 山本 彩子212 山本伸一朗211,212 矢山 和宏162 【よ】 横須賀まな美125 吉川 一樹172 吉田 和平133 吉田麻衣子160 吉田 行宏155 吉野 亮子162,171 米倉 まな136,148,172,173 175,177,180,187,191 米山 礼香147 【わ】 脇  英彰178 和田 恒彦137 渡邊 一平151 渡邉  善 渡邉 大祐141 渡邊  健156 渡邉 真弓164,181 和辻  直122,138,141,209 【アルファベット】 Arita Ryutaro66,67,128 Bolot kyzy Shirin167 Fukuda Fumihiko130 Furuta Taiga132 Hiraiwa Shinya130 Ikemune Sachiko129 Imai Kenji129 Ishii Tadashi66,67,128 Ishii Yuzo66,67,128 Ishizaki Naoto132 Itoh Kazunori129 Kamiya Tetsuharu66,67,128 Kaneko Soichiro66,67,128 Kanno Takeshi128 Kasuya Daichi128 Kayo Takumi132 Kikuchi Akiko66,67,128 Kitakoji Hiroshi129 Koizumi Naoteru66,67,128 Lee Jae-Dong65 Matsuura Yuto131 Miwa Masataka128 Miyamoto Nao130 Murakami Yoshiyasu66,67,128 Nagata Shinichi67 Nakamura Suguru131 Ngatu Nlandu Roger189 Nishino Seiji131 Ohsawa Minoru66,67 Okada Misaki129,130 Ono Rie66,67 Patil, Crystal L197 Saito Natsumi66,67 Sakai Tomomi131 Schlaeger, Judith M149,197 Seo Byung-Kwan65 Son Chihyoung64 Suzuki Masao132 Suzuki Satoko67 Takayama Shin66,67,128 Taniguchi Hiroshi129 Taniguchi Sazu129 Tsunematsu Mikako129 Yasuno Fumiko131 第73回 (公社) 全日本鍼灸学会学術大会 宮城大会 大会役員 学会会長 若山育郎 公益社団法人 全日本鍼灸学会 会長 関西医療大学 名誉教授 大会会頭 山真 東北大学大学院医学系研究科 漢方・統合医療学共同研究講座 特命教授 大会副会頭 今井賢治 公益社団法人 全日本鍼灸学会 学術部長 帝京平成大学 ヒューマンケア学部 鍼灸学科 教授 中沢良平 公益社団法人 全日本鍼灸学会 東北支部長 一寸法師ハリ治療院 院長 顧問 佐藤和宏 公益社団法人 宮城県医師会 会長 安藤健二郎 一般社団法人 仙台市医師会 会長 武藤永治 公益社団法人 全日本鍼灸学会 元東北支部長 石井 正 東北大学病院総合地域医療教育支援部 教授 相談役 三潴忠道 福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座 特任教授 安齋昌弘 仙台赤門医療専門学校 校長 佐竹正延 仙台赤門短期大学 学長 橋孝義 東日本医療専門学校 校長 橋 賢 宮城県立視覚支援学校 校長 鈴木一幸 MCL盛岡医療大学校 校長 飯島正治 福島医療専門学校 校長 橋本博明 一般社団法人 青森県鍼灸師会 会長 戸ア幸治 一般社団法人 岩手県鍼灸師会 会長 稲井一吉 公益社団法人 宮城県鍼灸師会 会長 菊池直人 一般社団法人 秋田県鍼灸師会 会長 奥山千晴 一般社団法人 山形県鍼灸師会 会長 金澤秀紀 一般社団法人 宮城県鍼灸マッサージ師会 会長 山田幹夫  公益社団法人 全日本鍼灸学会 元諮問委員 山田鍼灸治療院 院長 実行委員長 三瓶真一 公益社団法人 全日本鍼灸学会 東北支部 学術委員 三瓶鍼療院 院長 プログラム委員長 宍戸新一郎 公益社団法人 全日本鍼灸学会 東北支部 学術委員 仙台赤門医療専門学校 教員 副プログラム委員長 鈴木雅雄 公益社団法人 全日本鍼灸学会 教育研修部長 福島県立医科大学会津医療センター附属研究所 漢方医学研究室 教授 広報委員長 山内隆一 保健堂治療院 院長 渉外委員長 山田愉生 山田鍼灸治療院 財務委員長 栗和田健規 公益社団法人 全日本鍼灸学会 東北支部 学術委員 はり・きゅう・マッサージ 仙台けんえい訪問院 代表 副財務委員長 真壁佳宏 公益社団法人 全日本鍼灸学会 東北支部 学術委員 y’m ワイム鍼灸治療院 院長 サポート委員長 小沢 薫 公益社団法人 全日本鍼灸学会 東北支部 学術委員 福島県立視覚支援学校 教諭 大会監事 粕谷大智 公益社団法人 全日本鍼灸学会 監事 田常雄 公益社団法人 全日本鍼灸学会 監事 波田 康 公益社団法人 全日本鍼灸学会 監事 実行委員 谷口博志 公益社団法人 全日本鍼灸学会 副学術部長 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 金子聡一郎 公益社団法人 全日本鍼灸学会 編集委員 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科 准教授 川嶋睦子 公益社団法人 全日本鍼灸学会 東北支部 学術委員 ガネーシャ鍼灸院 院長 加納 舞 公益社団法人 全日本鍼灸学会 学術部 MCL盛岡医療大学校 鍼灸学科 学科長 佐藤 駿 さとう鍼灸院 院長 三戸敦雄 公益社団法人 全日本鍼灸学会 東北支部 学術委員 ときわ会病院 手塚清恵 公益社団法人 全日本鍼灸学会 東北支部 学術委員 福島医療専門学校 教員 國分俊繁 仙台赤門医療専門学校 学科主任兼臨床所主任 松田静香 仙台赤門医療専門学校 事務主任 大渡光弘 東日本医療専門学校 副校長 南洞大宥 東日本医療専門学校 鍼灸スポーツ科学科 学科長 石井祐三 東北大学大学院医学系研究科 地域総合診療医育成寄附講座 助手 加用拓己 福島県立医科大学会津医療センター附属研究所 漢方医学研究室 助手 津田恭輔 福島県立医科大学会津医療センター附属研究所 漢方医学研究室 講座等研究員 宮田紫緒里 福島県立医科大学会津医療センター附属研究所 漢方医学研究室 山田雄介 福島県立医科大学会津医療センター附属研究所 漢方医学研究室 工藤慎大 福島県立医科大学会津医療センター附属研究所 漢方医学研究室 事務局長 相澤啓介 公益社団法人 全日本鍼灸学会 東北支部 学術委員 相澤はり・きゅう・マッサージ治療院 院長 事務局次長 益子勝良 公益社団法人 全日本鍼灸学会 東北支部 学術委員 鍼灸サロン libera -リベラ- 代表 第73回 (公社) 全日本鍼灸学会学術大会 宮城大会 抄録集 (2024年4月20日発行) 編集:第73回(公社)全日本鍼灸学会学術大会 宮城大会 実行委員会 発行者:(公社) 全日本鍼灸学会  〒102-0074 東京都千代田区九段南3-4-5ビラ・アペックス市ヶ谷302号室 TEL 03-6272-3960 FAX 03-03-6272-3961  e-mail:honbu@jsam.jp  URL:https://jsam.jp/ 印刷所: (株) ライフクリエーション